これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

振り返れば『戦メリ』

2013年01月17日 21時14分07秒 | エッセイ
 2013年1月15日、映画監督の大島渚氏が亡くなった。
 氏の代表作のひとつである『戦場のメリークリスマス(以下戦メリ)』が好きだったので、お気に入りのワイングラスを割ってしまったような喪失感がある。
『戦メリ』は、ポップスターのデヴィット・ボウイ、ミュージシャンの坂本龍一、お笑いスターのビートたけしという豪華キャストが出演し、1983年に公開された映画である。第二次世界大戦中のジャワ・日本軍俘虜収容所を舞台に、東の文化と西の文化が衝突し、人間ドラマが編み出される。
 暴力的な場面はさておき、俘虜を恥と考える日本と、生き延びることは恥ではないとするイギリスとの対比は興味深かったし、いつしか独特な世界に引き込まれ、スクリーンから目が離せなくなる魅力があった。加えて、主題歌の美しい旋律が相乗効果を生んでいた。
 しかし、ストーリーがよくわからない。特にビートたけしの、どアップで終わるラストが理解できない。ちょっと悔しくて、解読のヒントを探しに本屋へ行ってみた。
 シネマファイル『戦場のメリークリスマス』 講談社



 昨日、大島監督の訃報を知り、あのとき買った本を久しぶりに出してみた。
 映画のクランクインが、1982年の8月だったそうだ。今から、実に31年前のことである。
 30歳の坂本龍一は、髪を剃り青年将校に扮した。目元には妖しい色気が漂っている。軍服が似合うところが、制服フェチには見逃せない。



 ビートたけしは、北野武ではなく、タケちゃんマンだった。レギュラー番組を何本もかかえ、超過密スケジュールをやりくりしての出演だったという。スーパースターのデヴィット・ボウイを差し置いて、タケちゃんの都合に合わせて撮影したらしい。

 

 今は、タケちゃんも映画監督として名をはせている。時代の移り変わりを感じるばかりだ。
 そして、大島監督も若い。



 撮影中の監督は、ビートたけしから見ても「ほとんど狂気」と映ったようだ。思い通りに動かないトカゲに、「バカヤロー、どこの事務所だ!」と叫んだり、「トカゲに3秒止まれって言っとけ」などの無茶な要求をしたりと、いくつもの伝説があるらしい。映画への熱い想いが、人間性を変えてしまうのかもしれない。
 監督の裏話として、最初はボウイではなく、ロバート・レッドフォードに打診したというくだりがある。残念ながら、「この映画はアメリカ人には理解されない」という理由で断られたが、私はそのほうがよかったと思う。レッドフォードではジェントルマン過ぎて、倒錯的な色合いが出せないからだ。
 なにしろ、この映画では、坂本龍一とデヴィット・ボウイのキスシーンがある。



 当時、高校生の私には、これはかなりの衝撃だった……!
 大島監督と聞けば、坂本龍一とデヴィット・ボウイのキスシーンが浮かんでくるのも無理はない。
 結局のところ、本を読んでもストーリーはわからないままだ。大島監督の「日本の神と異国の神のドラマです」という解説に、ますます混乱した。
 だが、坂本龍一が心強い発言をしてくれた。
「むずかしい。ぼく、だって、自分でやっててわかんないんだもん」
 ビートたけしも、援護射撃をしてくれる。
「あれがわからないヤツは頭が悪いというと、いまのヤツはバカだから、わかったような顔して泣いたりなんかするんでさ、作戦にうまく引っかかっちゃうんだ」
 ……そうか、わからなくていいのか。
 でも、やっぱり、もう一度観てみたい。
 大島監督のご冥福をお祈りします。
 合掌。


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コメント (14)
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