これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

シャンパンファイト

2012年12月06日 19時52分23秒 | エッセイ
 なにやら、不快な臭いがする。何か腐ったような、鼻が拒否する悪臭だ。
 どこが発生源なのだろう。臭いの元をたどってみたら、左手の小指のつけ根あたりだった。
 なぜ、こんなところが、こんな臭いになっているのか、まったくわからない。入浴を終え、あとは寝るだけだというのに気分が悪い。
 一体何の臭いなのか。私は記憶を巻き戻し、心当たりを探した。

 帰宅したのは3時間前だ。駅に着いたら、雨が降っていた。「夜から雨」との予報通りである。私は折り畳み傘を差して、家まで歩き出した。
 さすがに、12月ともなると、手袋なしでは寒くて我慢できない。バッグから、フリースの赤い手袋を取り出し、両手にはめる。10分ほど歩いて、玄関で傘をたたもうとしたら、結構濡れていた。そのまま、玄関先で乾かそうと思い、ドアの外に広げてカギを開けた。
 夕食のあとは、明日のお弁当の下ごしらえをした。メニューは、肉団子の甘酢あんかけだ。合いびき肉にたまねぎのみじん切り、片栗粉を加え、油で揚げればよい。
 前回は手抜きしたせいで、みじん切りが大きくなってしまい、玉ねぎ団子と呼んだほうがいいような失敗作となった。左手で玉ねぎを押さえ、今回はねちねちと包丁を動かし、しつこいくらいに細かくする。
「みじん切り器が欲しいなぁ」としみじみ感じた。
 お風呂のあと、干した傘を取り込みに行く。すっかり乾いたようなので、たたんでバッグにしまおうとしたら、まだ濡れているところがあった。ひんやりした水滴が、わずかに手を湿らせる。「まだだったか」と諦め、そのまま放置した。

 記憶をほじくり出しても、それらしいものがない。「まあいいや」と気持ちを切り替え、ハンドソープをたっぷりつけて手を洗った。すっきりしたところで、暖かい布団に入り、ぐっすり眠った。
 翌朝、出勤するとき、玄関の傘に手を伸ばす。もう完璧に乾いているはずだ。
 だが、よく見ると、まだ水滴が残っている。


 
 これはおかしい。

 一応、乾燥してはいるが、水であれば、しずくの跡が残るのは変だ。ここ以外にも、水滴のあとが見つかった。



 そこで、ようやく謎がとけた。
 傘を干した場所に視線を落とすと、やはり思った通りである。



 この小さなシミこそ、手の臭いの元凶なのだ。
 傘を干していたとき、どこぞの猫に、おしっこをかけられたのだろう。そうとは気づかぬまま、傘をたたむさい、左手が尿に触れてしまった。それで、ひどい臭いに悩まされたというわけだ。
 バラバラのジグソーパズルが組み合わされて、絵柄が見えてきた気分である。原因がわかって気が晴れた反面、けしからぬ猫に腹を立てた。

 スポーツの表彰式や祝勝会で、シャンパンをかけあって勝利を喜ぶことを、シャンパンファイトまたはシャンパンシャワーと呼ぶようだ。
 当ブログも、おかげさまで、本日500回目の更新を迎えた。足かけ4年半、ちまちま続けてきた身としては、一杯飲みたい気分である。
 しかし、私がかけられたのは、シャンパンでなくショ……。
 ううう、言わんでおこう……。


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コメント (18)
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