これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

大人のおままごと

2012年12月02日 17時28分46秒 | エッセイ
 ちょっと時間があったので、スーパーの帰りに雑貨屋をのぞいた。
 こういうときは危ない。特に欲しいものがなくても、衝動買いすることがあるからだ。案の定、「これいいかも」と一目ぼれしたフライパンに手が伸びた。



 翌朝、早速、玉子料理を作り始める。
 まずは、私の玉子焼きからだ。ハート型が小さくて、玉子液を2回に分けないと入りきらない。



 一応できたが、きれいなハートにならなかった。意外に難しいものだ。



「おはよう」
 夫が起きてきた。すかさず、実験台に使う。
「ねえ、目玉焼き作ってあげるよ」
 夫に目玉焼きを作るなど、新婚以来かもしれない。彼は用心深くうなずいた。
「……うん、じゃあ頼もうかな……」
 さきほどのフライパンを洗い、油を引いて卵を落とす。ジュワーッと盛大な音を立て、白身が沸騰し始めた。あとは、頃合いを見てひっくり返せばよい。
 だが、火力が強すぎたのか、白身がこびりついている。これでは取り出せない。「こんにゃろ~」と格闘すること数分、黄身が壊れてボロボロになってしまった。



「わあ~っ、これが目玉焼きか!?」
 夫に泣かれた。愛がないから、ハートにならなかったのだ。仕方ないだろう。
「おはよー」
 最後に娘が起きてきた。今度こそ、上手に作らなくては。
「おはよう。オムレツ食べる?」
「うん」
「ハート型にしてあげるよ」
 おそらく、油が足りなかったから、こびりついたのだ。今度は多めに入れてみよう。卵に牛乳とチーズと加え、弱火で根気よく焼き上げる。やっと成功したと思ったら……



 焦げていた……。
「焦げた面を下にして、見えないようにすればいい」と悪知恵を働かせ、素知らぬ顔で食卓に並べた。
 しかし悔しい。せっかく可愛いフライパンを買ったのに、使いこなせないのでは意味がない。なぜ失敗したのかを突き止め、明日は絶対成功してやると誓った。
 敗因その1。サラダ油では、ハートの隅々まで行き渡らないらしい。バターに替えて、こってりと塗りつけることが重要だ。
 敗因その2。火加減が強すぎた。何しろ薄手なので、火力の小さなコンロを最小にしなければならない。ハートの下のとんがりは特に焦げやすいから、火から遠ざけるようにする。
 ままごとのような道具に、なぜこうも真剣になるのか、自分でも不思議だ。

 翌朝、バターが反射するフライパンに卵を落とし、目玉焼きに挑戦する。



 透明だった白身が白濁し、ボコボコ音がしたら裏返し、両面を焼く。
 今度は焦げていない。やっと成功したのだ。
「バンザーイ!!」



 いそいそと皿に盛りつけると、夫が横から口を出した。
「黄身が破れてる」
「……」

 えーい、うるさいっ!!


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コメント (12)
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