これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

モンスターペアレント?

2012年11月15日 20時38分39秒 | エッセイ
 娘の高校では、予備校と連携して「進学セミナー」を実施している。毎週、火曜、木曜の放課後に、講師を呼んで大学受験講座を開講するのだ。年間16万円ほどかかるが、塾より手軽だと思い申し込みをした。
 ところが、実態は、期待を裏切るものだった。
「2学期から、セミナーの先生がどうしようもなくてイヤになっちゃう」
 7時過ぎに帰宅するなり、娘はカバンを放り投げ、ブーブー騒ぎはじめた。
「できない男子に、『バカ』とか『死ね』とか、何回も言うんだよ。自分の教え方が悪いくせに」
「マジ? 予備校の先生は授業が上手いと聞いたけど」
「火曜の先生は、すごく熱心で上手。でも、木曜のヤツは、ヘタクソですぐキレて、暴言ばっか。あれじゃ、金の無駄だよ」
 年度はじめに払い込んだ受講料は、一切返還されない。16万が無駄になっては困る。いや、木曜だけなら8万か。いずれにせよ、詐欺のような話だ。
「担任の先生には言ったの?」
「言ったよ。でも、何もしてくれないみたいで、ますますひどくなってる」
「……」
 これは、お金だけの問題ではない。生徒の人権を踏みにじる、あってはならない行為だ。ものおぼえの悪い子を、いかに指導するか教師の腕の見せどころではないか。

 声を荒げるより、自分の力不足を恥じよ!

 底辺校ばかりを経験してきた身としては、怠慢な同業者に腹が立ち、絶対許せないと思った。
「よし、学校に電話をしよう」
「そうしてよ。子どもが言っても、相手にしてくれないからさ」
 しかし、私には時間がない。連日仕事に追われ、体重を減らしながら働いているのだ。チラリと隣を見ると、暇を持て余し、丸々と肥えた夫がいた。
「じゃあ、パパ、お願いね」
「えっ、俺が!?」
 突然、話を振られ、夫はうろたえた。
 だが、彼も元教員である。とんでもない講師から子供を守るため、一肌脱ごうと決心したらしい。
「誰に言えばいいのかな」
「何て言えばいいのかな」
「モンスターペアレントだと思われないかな」
 夫なりに、オドオドと段取りを考え、一発必中の作戦を練っていた。
 翌日、彼は進学セミナー担当者あてに、娘から聞いた現状を報告し、何とかしてほしいと訴えた。手ごたえは、さほど感じなかったという。
「他の保護者は何も言わないみたいだ。うちだけじゃなくて、何人かが同じことを言ってくれれば、真剣に対応してくれるんだけどな」
「ホントだね」
 多数決ではないが、えてして少数意見は黙殺されがちである。はたして、改善されるのか、心配しながら翌週を待った。
 そして、また問題の木曜日がやってきた。
「お母さん、今日はアイツ、バカとか死ねとか、一度も言わなかったよ。よかった!」
「へー、学校は、ちゃんと言ってくれたんだね」
「うん。ちょうど、セミナーの教室の隣が社会科準備室になってて、そこにいた先生も暴言を聞いてたんだって」
 つまり、保護者の訴えを裏付ける形で、教員からも怒りの声が上がったというわけだ。タイムリー・スリーベースヒットをお見舞いしたような、爽快感が込み上げてきた。
 結局、講師は交代することになり、ひと安心である。
 ちなみに、モンスターペアレントは、今風に縮めて「モンペ」というらしい。
 モンペ扱いされなくてよかった~!


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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (22)
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