これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

あの辺、その辺、どの辺

2012年10月18日 22時13分55秒 | エッセイ
 40代半ばを迎え、老眼がどんどん進んできた。
 メガネやコンタクトを入れていると、遠近感がつかめず蚊も取れない。何度も空振りした挙句、気がついたら刺されている。何とも腹立たしい。
 思い切って、仕事のない日は裸眼で過ごしてみた。私の視力は0.06くらいだ。もちろん遠くは見えないが、新聞や雑誌を読むのに都合がいい。料理だって楽々できる。
 調子に乗って、コンタクトなしで外出することにした。電車の行き先はわかるので、乗り間違えることもない。友人とランチを楽しもうと、渋谷方面の店に向かった。駅から徒歩5分のイタリアンで、初めて行く場所だったが、あの辺だろうと見当はつく。大ざっぱな性格が災いし、詳しく調べもしなかった。
 予約した時間の10分前に駅につき、「あの辺」を目指して歩いた。
 しかし、お目当ての店の看板がない。おやっと首をかしげ、「その辺」をウロウロ探し回った。コンタクトなしの視力では、せいぜい2m先しか見えず、吹雪の中で遭難した気分である。携帯には地図機能もついているのに、アナログな私は使い方がわからない。一体、「どの辺」なのだろうか。

 こうなったら、電話をかけるしかないっ!

 時計を見ると、約束の時間から、すでに5分経過している。店の電話番号を引っ張り出し、急いでダイヤルした。
「あのう、予約の笹木と申します。近くまで来ているんですが、お店が見つからないんです」
「今、どこにいらっしゃいますか」
「○○小学校裏という交差点です」
「えーと、そこから緩い坂を上ってもらえますか」
「はい」
「上ったところに、ハチマン通りという大通りが見えますか」
 渋谷付近は車の往来が激しく、道の名前どころか看板さえも目に入らない。
「見えません……」
「……」
 私の目が悪いのは確かだが、あちらも道案内には慣れていないようだった。
「近くにセブンイレブンがありますか?」
 受話器の向こうから、作戦変更の気配が漂ってきた。
「あっ、ハイ、あります」
「すぐ近くですので、今からスタッフがお迎えに上がります。そちらでお待ちください。お召し物の特徴を教えていただけますか」
 どうやら、スーパー方向音痴と思われたらしい。だが、それは間違いではない。
 まもなく、黒いエプロンをつけたお姉さんが、キョロキョロしながら横断歩道を渡ってきた。私は左手を高く上げ、「笹木でーす!」と合図した。
 日にちを間違えたり、時間に遅れたりという失敗は経験したことがあるけれど、お迎えに来てもらったことは初めてだ。目的地は、そこから50メートルほどの至近距離にあり、何とも恥ずかしかった。

 よーし、コンタクトを作り直そう!

 老眼対策で、度の弱いコンタクトにしていたのだが、これを機に強くした。



 お出かけのときには、ちゃんとコンタクトを入れ、地図を確認しておかなくちゃ。
 でも、方向音痴は何をしても直らないだろうな。


    ↑
クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (22)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする