これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

知恵くらべ

2012年04月19日 20時32分15秒 | エッセイ
 仕事の合い間に、お茶を飲もうとして流しに向かった。流しの前にはポットと窓があり、校庭が見える。
 校庭には、3年の男子3人集まっていた。高校生にしては、やや小柄な3人である。何をしているのかと見ていたら、やおら肩車を始めた。上に乗った子は、手にモップを持っている。どうやら、遊んでいるわけではなさそうだ。そのまま、フラフラと背の高い木に近づき、モップで枝をつついていた。
 モップのはるか上にはボールがある。高く上がったボールが、枝に引っかかってしまったのだろう。だが、うまい具合に挟まっており、突いた振動ではビクともしない。このままでは取れないと思ったのか、その男子は、やけくそ気味にモップを放り投げた。

 ズボッ

 とたんに、3人から悲鳴がもれる。
「あーあ、ダメだ」
「モップまで引っかかっちゃった」
 苦しまぎれに放ったモップまで、枝がナイスキャッチしたのだ。たぶん、そうなるような気がしていた。
 私は窓を開け、彼らに話しかけた。
「何してるの」
「あっ、先生。脚立借りられませんか」
「ここにはないから、用務さんにお願いしてごらん」
「はーい」
 彼らは素直に移動し、5分後には脚立に上っていた。
 私だったら、木に登って取りに行く。でも、今の子は、そういう発想がないようだ。子供のときに、木登り体験がないのかもしれない。へたに勧めてケガでもされたら、責任問題に発展するので、黙って見ていた。
 難なく、ボールとモップは取れた。でも、3人は同じ場所に集まったままだ。
「もう終わったんじゃないの?」
「いえ、肝心のものが取れていないんです」
 元々は、3人のうちの1人が、2階からジャージを落としてしまい、木のてっぺんに引っ掛ったのだという。それを取るため、ボールを投げたら落ちてこず、モップを放れば引っかかる。やることなすこと、すべて裏目に出たようだ。高さは5mくらいだろうか。脚立ではとても届かない。
 これは、木に遊ばれている。おかしくて、私は笑いそうになった。
「そうだ、いいこと考えた」
 それでも3人はめげない。元気に、グランドに放水するためのホースを持ってきた。
「これでジャージを濡らせば、きっと重みで落ちてきます!!」
「……まあ、勝手にしなさい」
 彼らはバルブを開いて、ジャージに放水を始めたが、いつまでも見ているわけにはいかない。しばらく目を離していたら、いつの間にかいなくなっていた。作戦は成功し、無事、木からジャージを奪還したらしい。
 勉強ギライの我が生徒でも、「三人寄れば文殊の知恵」となる。
 あとで、水道代を請求してやろうか……。



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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (12)
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