これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

33にちなんで

2012年03月18日 16時56分21秒 | エッセイ
 3月は送別会のシーズンである。今月は、職場絡みで2件、プライベートで2件の食事会があるのだが、最初の会では冷や汗をかいた。
 メンバーは、3年前に卒業した学年の担任団だ。3年間、苦楽をともにした仲間で、5人中2人はすでに別の学校に異動している。今月いっぱいで、もう1人異動することになったから、4月からは私を入れて2人しか残らない。
 せっかくだから、異動した2人も呼んで、5人でディナーをということになった。
 場所は、池袋にあるフレンチレストラン「トラントトワ33」である。あいにくの雨だったが、時間通りにお店に到着した。
「こんばんは」
「こんばんは」
 墨田区の学校に異動した悠子さんが、先に来ていた。職場からの3人が合流し、4人揃う。あとは、葛飾区の学校に勤務する吉崎さんが来るのを待つだけだ。
「来年は担任?」
「まだです」
「私は1年に入ることになりました」
「大変ですね」
 たわいのない話でも、久しぶりだと盛り上がる。現況の報告から始まり、昔の思い出話まで、話に花が咲いた。時計を見ると、予約時間から15分が過ぎている。
「吉崎さん、遅いですね」
「どうしたんでしょう」
「携帯持ってないから連絡もつかないし。もうちょっとで来るんじゃないですか」
 しかし、私は非常に不安だった。普段の彼は几帳面で、時間に遅れることはまずないのだが、何の連絡も入れずに、会議などをすっぽかしたという前科はある。自宅の番号なら知っているという先生に頼み、親御さんと連絡をとってもらった。
「家には帰っていませんでした。今日は送別会だから遅くなる、と言って出かけたそうです」
「じゃあ、やっぱり来るんでしょうか」
 多少はホッとしたものの、30分過ぎても、彼からは何の連絡もない。
「別の送別会だったりして……」
「いいよ、もう。始めちゃおう!」
 吉崎さんに見切りをつけて、ワインを注文し、コース料理をお願いした。
 アミューズに続いて前菜が来る。右端はカリフラワーのポタージュなのだが、珍しくて美味だった。



「おいし~い」
 安くて美味しいという評判通りの味である。いや、空腹という調味料を加え、さらにグレードアップしたかもしれない。店名「トラントトワ」とは、フランス語で「33」を表すが、この4人にとっては「さんざん待たされる」の意味となった。
「あっ、携帯に着信がありました!」
 吉崎さんと仲のいいゆき子さんが、液晶画面を見て叫んだ。もしや、彼が職場から掛けてきたのではと察し、折り返し、かけ直してくれた。
「やっぱり吉崎さんからでした。どうしても抜けられない用事があったそうです。これから出るので7時半くらいになるとのことでした」
「よかった~!」
 1時間半遅刻は褒められたことではないが、すっぽかされるよりはずっといい。これで、安心して次の料理を楽しむことができる。
 フォアグラのソテー。下には大根が敷いてあり、こってりとさっぱりのコンビネーションとなっている。



 重くなく、軽過ぎもなく、いいあんばいに仕上がっていた。
 魚料理。



 ワインがなくなり、赤を1本追加したところで、吉崎さんが飛び込んできた。
「いやあ、お待たせして申し訳ありません」
「よかった、これで全員揃いましたね」
 吉崎さんのビールとお料理が運ばれてきた。乾杯のやり直しをして、吉崎さんの近況を聞く。彼もなかなか忙しいようだ。
「次のお料理から、みなさん、ご一緒でよろしいですか?」
「はい、そうしてください」
 給仕の女性は、いやな顔もせずに、吉崎さんの空いた皿を下げては、次のお料理を持ってくる。私たちは、ひとまず休憩だ。
 そして肉料理。



 このときは気づかなかったのだが、私の衣装が一部写ってしまい、見苦しいことをお詫びする……。
 食後は、チーズと、



 デザートが待っている。



 この日は、ガトーショコラのバニラアイスクリーム添えだった。
 どのお料理も申し分なしで、5500円は安い。グルメサイトの口コミはあてにならないというが、少なくともこのお店に関しては間違いではない。すったもんだはあったけれど、無事に送別会が終わったことに感謝する。
 あとから調べると、店名の由来が載っているサイトがあった。
 どうやら、オーナーシェフが33歳のときにオープンしたから、「トラントトワ33」とつけたらしい。監督時代の長嶋茂雄氏のファンか、3月3日生まれなのでは、という私の予想はあっさり外れた……。
 店の入口の、「本日は予約のお客様で満席です」と書かれた掲示板を思い出す。人気があって、予約なしでは入れないというから、今度行くときも、ちゃんと電話をしなくては。
「33」の意味するところは、「みみ寄りな店」なのかもしれない。



クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (16)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする