これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

ワタシの受精卵♪

2012年01月08日 20時56分25秒 | エッセイ
 年末に転院し、年明け早々に体外受精をした。体外受精はこれで3度目だが、新しい病院の高度な技術には驚くことが多い。
 採卵は、無麻酔で実施する。針で、膣壁や卵巣を刺すのだから痛いはずだが、細い針を使っているので、他院より痛みが少ないという。私は高齢ということもあり、卵は1個しか育っていない。一瞬で終わることを祈っていた。
「はい、じゃあ、こちらのモニターを見ていてください」
 オペ室では、超音波の映像を見せてくれる。卵巣の中に、大きな黒い影が映る。これが卵胞だ。
「右」
「はい」
 右の卵巣の卵子を採るということなのだろう。まもなく、看護師とおぼしき女性の声がした。
「チクッとします」
 いよいよというときでも、身構えてはいけない。力を抜いて、リラックス、リラックス。かすかな痛みのあとは、針先から吸い取られていく卵胞が映る。やがて、卵胞の姿はなくなり、影は見えなくなった。
「終わりました」
 ほんの何秒かの出来事だった。採血検査のほうが、よっぽど痛い。楽な採卵に感動である。

 そして、翌日、病院に電話をかける。受精したかどうかの確認だ。
「笹木さんですね。顕微授精で受精しました」
 ああよかった。私は胸をなでおろした。
 受精卵は1日経つと2つに分割し、2日目には4分割となって成長していく。まれに、受精しても、正しく分割しない場合もあるらしい。その翌日も、分割したかの確認をするため、病院に電話をかけた。
「はい。分割が見られますので、移植にいらしてください」
 やった!
 受精卵を子宮内に戻すことを胚移植という。受精卵は、子宮からさらに卵管に移動し、そこで成長したあと、3日から5日かけて子宮に戻ってくるという。戻ってきたときに、子宮内膜に着床すれば、妊娠成立である。
 着床率は加齢とともに落ちる。果たして、そこまでたどり着けるかどうかは、やってみないとわからない。
 クリニックに着くと、移植前に培養士から受精卵について話をされた。
「受精卵は胚ともいいまして、4つのグレードで判定しています。一番いいのがグレード1で、着床率も高いです。



 グレード2は、フラグメントという細胞の断片が入り込んだ胚で



 グレード3は、フラグメントに加えて、細胞の大きさが不ぞろいです。



 グレード4は、不ぞろいの細胞プラス、フラグメントの多い胚ですが、妊娠する可能性がないわけではありません」



 つまり、グレードの高い卵ほど、妊娠率が上がるということだ。移植の直前に、どのグレードかを判定するため、この時点では教えてもらえない。「グレード4だったら、どうしよう」と、かなり不安になった。
 ようやく、移植の時間がやってくる。
「グレードは2でした。子宮内膜の厚さは8mmです」
 ベストではないが、ベターな卵に安堵する。子宮内膜は、10mm前後が着床に適しているという。ちょっと足りなかったけれども、こちらもベターな範囲のようだ。
「はい、じゃあ左のモニターをご覧になってください。受精卵を映します」
 前の病院では、3日目に移植をしていたから、8分割の卵だった。初めて、4分割の受精卵とご対面である。



 ちゃんと写真をくれるところがうれしい。
「今度は、右のモニターをご覧になってください。子宮内に卵が入っていきますので、ご確認をお願いします」
 白い点が、するするするっと下降し、画面の中央で止まった。患者に、ここまで確認させてくれる病院が、他にあるのだろうか。これも、写真つきである。



 あとは、15分ほどベッドで安静にして帰宅した。
 家で、古い超音波の写真を引っ張り出してみた。
 妊娠初期で、娘が胎児のときだ。1995年11月6日 13週5日と書いてある。



 あの受精卵も、大きく成長してほしいものだ。
 そう念じて、母子手帳ケースの中に、受精卵の写真をすべり込ませた。



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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (18)
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