これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

天空劇場

2011年12月11日 17時01分55秒 | エッセイ
 ご存じの通り、12月10日は皆既月食だった。
「月食、何時から?」
 中学校でも話題になっていたらしく、娘が尋ねてくる。
「えーと、欠け始めるのが21時45分からだって。皆既月食は23時6分から23時58分までで、1時18分には終了と書いてあるよ」
「ふーん、遅いんだね。でも見てみようよ」
 幸い、東京の空には雲ひとつない。月もキレイだが、星も点々と輝いていた。寒いけれども、たまには天体観測も悪くない。
 お風呂から出ると、22時を回っていた。
「お母さん、遅い。もう月食、始まってるよ」
 カメラを見せてもらうと、写りはイマイチだが、部分月食がしっかり収められていた。


(写真撮影 笹木ミキ)

 急いで髪を乾かし、パジャマの上にガウンとコートを羽織ると、私はベランダに飛び出した。

 おお~!!



 わずかな時間しか経っていないのに、思ったより進行が早い。見る見るうちに、月が欠けていった。
 そもそも月食とは、太陽と月の間に地球が割り込み、影がかかることによって、月が欠けて見える現象である。正確な時間まで割り出せる技術に、ひたすら感心した。
 肉眼では、パンチで開けた穴くらいの月も、双眼鏡で見るとメロンパンになる。じわじわと、影の面積が大きくなり、光を奪っていく様子に釘付けである。



「首が痛い……」
 私より先に観測していた娘が、ついに悲鳴を上げた。
 寒さは、さほど気にならないが、ずっと上を向いていると、首や肩が疲れる。天文部などは、寝袋にくるまって寝ながら観測するようだが、理にかなっているのだろう。こちらも、ベランダではなく、庭でひっくり返って見ればよかった。
 時計を見ると、22時55分だ。休憩を取り、23時6分に再開することにした。
 部屋に戻ると、だいぶ体が冷えていたことがわかる。夢中で眺めていたから、気がつかなかったのだ。暖を取り、十分温まったあとは、再び月食観察をした。
「うわぁ、隠れてる!」
 2人で声を揃えて叫んだ。



 これが皆既月食か……。
 もっと黒っぽくなると思ったのに、意外と明るい。暗さは均一ではなく、ところどころにムラがある。これが地球の影なのかと思うと、摩訶不思議な気がする。
 写真撮影に飽きた娘が、話しかけてきた。
「さっき、携帯で撮ったら、こんなちっちゃいの……」



 画面には、泥はねのような月が映っており、思わず苦笑した。
 お次は、日付が変わってからの部分月食を見た。今度は、先ほどと違って、光の部分が増えていく。



 しかし、デジカメがトラブった。ズームにすると、画面に何も映らなくなるのだ。寒さで誤作動を起こしたのか、超遠距離で反応が鈍くなったのか。ひょっとして、深夜の労働を拒否しているのかもしれない。
 どうにか、最後の撮影を終えてから、カメラの電源を消し、寝かせてやることにした。



 結構な時間、戸外にいたのに、ご近所のどなたとも会わなかった。こんなに興味深いものを見ないとは、もったいない。
 もう一度、ふくらみかけた月を見て、私は部屋に入った。
 素晴らしい天空劇場を、どうもありがとう。



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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (14)
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