これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

カードはいずこ

2011年10月23日 20時21分07秒 | エッセイ
 職場のセキュリティカードをなくした。(詳しくはこちらから)
 定期入れに収納していたので、落としたとすれば駅である。防犯上、重要なものだ。何とか見つけたい。
 まずは、西武池袋線を当たってみた。
「あのう、落し物に、こういうカードがありませんでしたか?」
 私は担当者に代わりのカードを見せて、落とした状況を説明した。
「ちょっとお借りします」
 担当者は私からカードを受け取ると、パソコンの画面とにらめっこし始めた。落し物や忘れ物が登録されているサイトを検索しているらしい。直接、他の駅に行かなくても、ここから西武線全線の拾得物がチェックできるという。デジタル化が進むと便利である。
「うーん、ちょっと見当たらないですね。東京メトロにもアクセスできるので、そちらも確認しましょうか?」
 副都心線や有楽町線にも乗り入れをしているからだろう。守備範囲の広さに感心するが、東京メトロは利用していないので、その可能性はない。私は、礼を言って案内所を出た。
 あまり期待していなかったが、やっぱりダメかと力が抜け、フラフラと家まで歩いた。

 残りはJRである。ここで見つからなかったら、もはやお手上げだ。駅員さんに、落し物の取り扱い場所を聞くと、問い合わせセンターの電話番号を教えてくれた。
「JR東日本全線のお忘れ物、落し物を管理している番号です。6時から24時までご案内しておりますので、こちらにどうぞ」
 翌日、電話をかけようと受話器を取る。「ここにもなかったら、紛失届けを出さないといけないな……」とプレッシャーがかかり、「やっぱりやめた」と受話器を置いた。
 験かつぎで、事務室のサトミさんからもらった、「開運」の文字が入った「高尾山天狗うちわサブレー」を食べる。何もしないで電話すると、また「ありません」と言われそうで怖い。



 軽くて、サクサクした食感が好印象のサブレーだった。
 気合いを入れて、再度受話器を取り、お忘れ物センターのダイヤルを押す。
 電話だと、現物が見せられないから、言葉で説明するしかない。落としたと思われる日、場所、カードの色やロゴを伝えたあと、右隅に「笹木」という名前が入っていると付け加えた。
「今、お調べしますので、そのままお待ちください」
 ふう、と息をついて待っていると、1分も経たないうちに答えがあった。
「あのですね、それらしいものがあります。拾得日は10月17日、場所は○○○駅、笹木さんというネームラベルがついています」
 名前が決め手となったらしい。思わず、声が上ずった。
「あっ、それです! たしかに、その日は○○○駅に行きましたので、間違いありません!」
 ビンゴだ。逆転満塁ホームラ~~~ン!
 しかし、続きがあった。
「今、どこにあるかといいますと、上野駅なんです」
 上野!? ちと遠い。持ち主の手を離れて、カードが遠くに移動してしまったのか。だが、引き取りついでに動物園に寄って、パンダを見る手もあるな、と余計なことを考え始めた。話はさらに続く。
「このカードは、クレジットカードと同じように証明書類という区分で扱いますので、一週間経つと警視庁に移管されます。場所は飯田橋になります。明日でちょうど一週間ですから、どちらになるか微妙なところですね」
 飯田橋のほうが近い。あちこちを転々としているカードには悪いが、私にとっては都合がいい。たしか、ここでは、「日本のロングセラー商品展」という催しがあるはずだ。
 主婦の悲しい性で、引き取りそのものよりも、ついでに寄る場所に気を取られる。
「日曜日は、上野の拾得物所が休みなので、明日、電話で確認してもらえますか」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
 元気よく挨拶して、私は電話を切った。
 どちらに転ぶかわからないが、ブログのネタになることだけは確実である。
「上野や飯田橋より、まずは高尾山に行ったらどうなんだっ!」と、天狗さんに怒られちゃうかしら……。



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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (20)
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