これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

誕生日の悲劇

2011年10月20日 20時34分36秒 | エッセイ
 一昨日は、私の誕生日だった。
 朝から、友人や家族から、お祝いメールをちょうだいする。どれもうれしかったが、とりわけ感動したのが、もうじき70歳を迎える母からのデコメである。なかなか操作がおぼえられず、送信ミスや誤字ばかりだったのに、その日はピンクの背景の、バースデーケーキがお目見えした。思わず、「気合い入ってるじゃん」と口笛を吹きたくなった。
 しかし、出勤すると、あまりの忙しさに閉口する。前日に休暇を取ったツケだ。結局、7時近くまで一人淋しく仕事をする破目になり、「今日は誕生日なんだが」と悲しくなった。
 ようやく解放され、戸締りをして帰ろうとしたときだ。職場は機械警備なので、施錠時にセキュリティカードで警戒を設定しなければならない。私は、定期入れからカードを取り出そうとして、呆然とした。

 やばい、カードがない!!

 セキュリティカードを入れておいたポケットは、少々ゆるくなっていた。どうやら、持ち運ぶ途中で、カードが滑り落ちたらしい。バッグの中をくまなく探したが、それらしいものはない。ひょっとしたら、駅に落としたのかもしれない。
 ひとまず、部屋に警戒をかけないと帰れないので、職員室に助けを求める。他の先生にカードを借りて、ことなきを得たが、まったく厄介なことになった。
 私はもう一度、「今日は誕生日なんだが」と心の中でつぶやいた。

 家では夫が、ビーフシチューを作って待っていた。食後は、甘栗のモンブランが登場した。



 私はすっかり気をよくして、カードの悩みを忘れた。
 娘から、「誕生日おめでとう!」とプレゼントが渡される。



 開けてみたら、ブックカバーが入っていた。これは重宝する。



 それから、夫と娘には内緒だが、今年は素敵な異性から、プリザーブドフラワーのプレゼントをいただいた。



 真紅のバラで、花びらには金箔で「Thank you」と書かれている。



 うふふふふ~♪
「なんだか、とっても幸せ☆」とニヤけていたら、またカードのことを思い出し、暗くなった……。
 一体、どこにいったのだろうか。

 翌日、事務の担当者に、「カードをなくしたかもしれない」と打ち明けた。
「じゃあ、代わりのカードをお貸ししますが、もし見つからないようだったら、紛失届けを書いていただきます。実費も負担していただきますので、がんばって探してください」
「はーい」
 紛失届けは痛い。「私は大事なカードをなくした愚か者です」と証明するようなものだ。帰りに駅に寄って、落し物を確認してもらわねば。
 すっかりしょげていたら、事務の紅一点、サトミさんが話しかけてきた。
「よかったら、これいかがですか? 高尾山のおみやげなんですけど、『開運』って書いてありますよ」
 サトミさんの手には、「天狗うちわサブレー」なるものが握られていた。たしかに、「開運」の文字がある。



お礼を言って、ありがたくちょうだいしたが、はたして、カードは見つかるのだろうか?
「誕生日 今日からワタシ 愚か者」
 いかん、不吉な句が浮かんできた……。



クリックしてくださるとウレシイです♪

※ 他にもこんなブログやってます。よろしければご覧になってください!
 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (18)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする