これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

昔の通知票

2011年09月22日 21時03分40秒 | エッセイ
 母に頼み、昔の通知票を送ってもらった。
 小学校から高校まで、すべて保管してくれたことがありがたい。
 とりわけ、私が関心を持ったのは、中学校の通知票である。中を開くと、当時の思い出が心に蘇ってきた。

 1年生の担任は理科の先生で、大学を卒業したばかりの若造である。努力家だが神経質ゆえに、「腹を下しやすい」のだと言っていた。陰では「ゲリセン」というあだ名がついていたらしい。
 中学校は小学校と違い、何をどのくらい勉強すればいいかがわからない。成績がイマイチだったため、ゲリセンは所見欄に「数学と体育に力を入れてください」と書いている。数学は嫌いだったし、体育は苦手なこともあり、適当にやっていたら悲惨なことになってしまった。



 2年生では、育休から復帰したばかりの女性の先生が担任になった。教科はやはり理科で、生物が専門だったようだ。
 私は、この先生が好きだった。おしゃれで美人の面はもちろんのこと、常に冷静で落ち着いているところがいい。基本的に、騒々しい人は嫌いだ。母が感情的な人間で、年がら年中、大声でわめいてばかりいたから、担任の穏やかで知的な雰囲気に憧れたのかもしれない。
 先生にほめられると、「もっと頑張ろう」という気持ちになれる。勉強時間がぐんと増え、成績も大幅にアップした。この頃から、テストで90点以上を取るのが当然と思うようになった。



 3年生でも、またまた理科の先生が担任となった。
 この先生は、30代後半、子持ちのパパで、数学の免許状も持っている。ひ弱そうに見えるのに、実は空手の心得があり、殴りかかってきた男子生徒を、たやすく取り押さえたことがある。
 三者面談で「志望校合格は確実」と言われて以来、手抜きをするようになり成績が落ちた。



 こうして3年間を振り返ってみると、苦手な科目は、音楽と体育だとわかる。音痴で運痴では情けないが、残念ながら事実だ。2つの教科の関連については、まったく気づかなかったけれども、スポーツではリズム感が重要だといわれている。元体育教師の夫は歌が上手いし、ギターも得意だから、どこかでつながっているのかもしれない。

 中3の娘に、私の通知票を見せると、食事もそっちのけで、夢中になって眺めていた。
「4に○や×がついているけど、これは何?」
「5に近い4だと○、3に近い4だと×がつくんだよ」
「へー、昭和だね」
 ひと通り目を通したあとは、自分の成績と比べはじめた。
「何で2なんか取ったの? ミキは一度も取ったことないよ」
「たしか、ペーパーテストが60点台で、ソフトボールの実技テストでも三振したような覚えがある……」
「実技ができないなら、筆記で頑張らなきゃダメじゃん」
「……」
「お母さんは、5教科の成績はいいけど、実技科目を怠けすぎ。もっと真面目にやればよかったのに」
「……」
「でも、これくらいの成績の人でも、学校の先生になれるんだね。知らなかったよ」
「……」
 なにやら、親子関係が逆転したような感じで居心地が悪い。
 しかし、母親が天才ではなかったことで、娘は安心したらしい。
「さて、数学の予習でもしようかな」と机に向かいはじめた。
 私の場合、努力よりも運のよさで、将来の夢をかなえたような気もするのだが。



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コメント (22)
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