これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

許容範囲

2011年07月07日 20時50分46秒 | エッセイ
 先月、娘のミキが、英検3級を受験した。ようやく結果が出て、得意げに成績表を差し出した。
「一次試験には受かったよ! 今度の日曜日に二次試験があるから、受験票の写真を撮らないと」
 英検に一次と二次があるとは知らなかった。二次は面接試験になるそうだ。
「写真? プリクラでいいよ」
 夕食時だったので、面倒くさくて適当に答えた。ミキはしばらく沈黙したあと、むっつりと続けた。
「お母さん、本気で言ってるの?」
「い~や、冗談」
「ほら、ここ読んでごらん」
 ミキが、二次試験の受験票を持ってきた。

 写真貼付欄(縦3cm×横2.4cm) プリクラ・サングラス着用・写真のコピーは認められません。

「あっ、ダメって書いてある……」
「わかった?」

 他の欄にも目を通してみたが、あれこれと細かいことまで書かれているので驚いた。

 禁止事項
 ①試験会場への道順などの問い合わせ ②自動車・オートバイでの来場 ③会場内での携帯電話等の使用。理由のいかんにかかわらず、携帯電話等を使用した場合は試験を失格とします。

 きっと、常識のない受験者が多くて、対応に苦慮したことがあるのだろう。
 だが、こまごまと書かれると、逆に「書いていないことはオーケーだな」と考える場合があるかもしれない。不意に、私のいたずら心が刺激された。
「ミキ、メガネはいいんだよね?」
「そりゃあ、大丈夫でしょう」
「これなんか、どうかな?」
 私は引き出しの中から、古いおもちゃを取り出した。



 学生時代に、東急ハンズで購入した、パーティー用グッズの鼻つきメガネである。
 ミキは食事中だというのに、大笑いしてイスから転げ落ちた。
「これなら、サングラスじゃないから許容範囲でしょ?」
「ダメに決まってるでしょ! そんな写真じゃ落ちるよ!!」
 ……そうだった。
 英検の写真を撮ることではなく、二次試験に合格することが目的だったことを思い出した。ならば、機械ではなく、七五三のときにお世話になった写真館に行ったほうがいい。
「は、鼻に明太子が入った……」
 食事中の話題としては、ふさわしくなかったようだ。



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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (12)
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