これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

戦うバレンタイン

2011年02月17日 20時40分37秒 | エッセイ
 今年も無事にバレンタインデーが終わった。
 この商戦での売り上げは、年間のチョコレート売上高の15%に相当するとも聞く。企業だけでなく、消費者も体を張って戦わねばならず、体力が必要だ。
 私はいつもデパートの特設会場に行くのだが、絶対といっていいくらい混んでいる。売り場は体育館ほどのスペースで、かなり広いはずなのに、ショーウインドーの前ばかりか、通路までもが女性であふれ、異様な熱気が充満している。まるで、正月の初売りのような混雑だ。5m進むのに1分以上かかるような人口密度では、おびただしい数の商品があるとわかっていても、ひと回りするだけのパワーがない。
 たまたま、目についた商品にピンときた。すかさず、店のショーウインドーに割り込み、争うように店員をつかまえ、「○○ください!!」と殺気立った声で叫ぶ。会計を待つ間も、後ろから別の女性が押してきて、弾き飛ばされそうだった。ようやく袋を手にしたときには、冬だというのに汗だくになっている。イベントスペースを抜け、人気のないところで深呼吸し、酸素を補給した。

「パパ、チョコレートだよ」
「わぁ♪ ありがとう!」
 モテない夫は、私と娘からしかチョコをもらえない。大喜びで開けていた。
 まずは、ヴィタメールの詰め合わせからだ。



 何種類ものチョコレートがあると、普通は「美味しそう」と感じたものから手を出すだろう。ところどころ、ボコボコと穴が開くのではないか。
 しかし、A型の夫は左上から順番に、1個ずつ食べている。出席番号順に呼び出しがかかったように、チョコレートがひとつずつ消えていく。何とも理解しがたい習性である。
 そういえば、居酒屋で同僚男性が、メニューの右端から順番に、飲み物を注文していたことがある。彼もたしかA型だったはずだ。

 もう一種類のチョコレートは、神戸の「マキィズ」というお店の商品である。
 ここの店では、見ていて楽しくなるチョコレートが何種類もあった。少々迷ったが、私はバッグ型のものを選んだ。



「なんだ、これ。面白いな」
 夫も興味を引かれたらしく、顔を近づけてまじまじと見ている。
 戦いの名残か、取り扱いが乱暴だったのか。残念ながら、取っ手の部分が壊れてしまったバッグが2個もあった。もっと慎重に持ち帰るべきだったらしい。



 他にも、花札、化石、動物といった、ユニークなチョコレートがあった。それなのに、バッグに決めた理由は何だろう。
 おそらく。
 ホワイトデーは、お返しに本物のバッグが欲しいという、心理の表れではないだろうか。
 鈍感な夫が気づくかどうか、見ものである。

 壊れたバッグをくれたりして……。




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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (20)
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