これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

35個のどらやき

2010年11月18日 20時35分58秒 | エッセイ
 急きょ、仕事でお茶菓子を用意することになった。
 予算には限りがあり、高級な菓子は買えそうもない。1個100円から150円までが限度だ。
 デパートに行くと、まずは和菓子屋が目に入る。その日のうちに食べなければならないものや、個包装されていないものは避け、無難で喜ばれそうな品を探す。

 あっ、どらやきだ~!!



 子どもの頃の愛読書、『ドラえもん』の影響だろうか。私はどらやきが好きだ。お値段は137円で、ビニール包装もされている。迷わず「これにしよう」と即断した。

 私には、慎重さに欠ける面がある。特に、好き嫌いといった感覚で行動すると、ろくな結果にならない。この日もそうだった。
「どらやきでお待ちのお客様、大変お待たせしました」
 年配の店員さんがヨロヨロしながら、品物を持ってこちらに向かってくる。手にしているのは、引き出物を入れるような、大きな大きな紙袋だ。私はその大きさに仰天した。

 デ、デカい!!

 ご丁寧にも、底が抜けないよう、袋を二重にしているではないか。思わず、二、三歩、後ずさりしてしまった。
「重いですから、お気をつけてお持ち帰りください」
「は、はい……」
 店員さんから袋を受け取ると、腕に強力な負荷がかかる。

 こりゃ、たしかに重いわぁ!!

 明らかな選択ミスである。何しろ、35個もどらやきを買ったことがないので、こんな重量になるとは予想できなかったのだ。山ほど後悔しながら、ひきずるようにして紙袋を持ち帰った。
 家で重さを量ってみると、4kgもある。
 男性ならともかく、体力の落ちてきたアラフォー女性に、この重量は厳しい。指に食い込んだひもの跡がジンジンし、「バッカで~」と囃し立てているようだった。

 クソッ、失敗した……。

 翌日は、この重たい荷物を職場に持っていかねばならない。キャスターつきのバッグを使いたかったが、そんなもので出勤したら悪目立ちしそうだ。動きやすい格好で、他の荷物を減らし、駅からはタクシーに乗って、どうにかこうにかたどり着いた。
 なんだって、ここまで苦労しなきゃならんのだろう……。
 
 どらやきの活躍する場面が来た。カステラがふわふわで、粒餡の甘味もちょうどいいから、予想通り、大人からの反応はまずまずである。
 だが、生徒にはさほどでもなかったらしい。後片付けのさい、ゴミ袋に餡の塊が捨ててあるので驚いた。
 今どきの若者には、餡が食べられない者もいるという。人の苦労も知らないでと、苦々しく思ったときだ。横から大きな声が聞こえてきた。
「あっ、餡だけ捨ててある! 信じられない! こういうことする人、誰ッ!?」
 見ると、菓子なら何でもござれという女子生徒が、仁王立ちになって怒っている。
「どらやきを、こんな風に扱うなんて許せない!」
 そのとき、気まずそうに下を向いた女子がいた。おそらく、その子の仕業なのだろう。
 私たち大人が注意するより、よっぽど効き目がありそうな気がする。
 あれこれ大変だったが、最後はスッとして終わった。




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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (16)
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