これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

テナーサックスがやってきた

2010年09月26日 17時48分20秒 | エッセイ
 娘は、中学校で吹奏楽部に入っている。担当はテナーサックスだ。部に代々伝わる、オンボロ楽器を借りて、活動している。
「ねえ、お母さん。次のコンクールで、ソロを吹くことになったから、自分の楽器が欲しいんだけど……」
 そういえば、前からマイ楽器が欲しいと言っていたが、具体的な話がないので受け流していた。だが、今回は少し違う。
「50万くらいあればいい楽器が買えるって、先生が言ってた」
「ご、ごじゅうまん!?」
 そんなにするのか!
 さらに、娘は、ポケットから小さなメモを手渡した。
「サックスのワタナベ先生の電話番号だよ。買いに行くとき、一緒に来てくれるっていうから、電話して」
 ううう……。
 こちらの中学では、マイ楽器を買う際、プロ活動をしている外部指導員の方が立ち会ってくれる。楽器選びは難しいので、プロからの的確なアドバイスが必要なのだ。しかも、ボランティアというからありがたい。
 ここまでお膳立てされれば、買うしかないだろう。
 早速連絡し、土曜日の夕方に、店で待ち合わせることにした。

 お茶の水には、実にたくさんの楽器屋がある。指定された店は、先生が懇意にしているところで、駅から2分ほどだ。木管楽器売り場に行くと、店員さんが声をかけてきた。
「ワタナベ先生とお待ち合わせですか?」
「あっ、はい」
「先生はもうお見えになっていますから、こちらへどうぞ」
 試奏のできる個室に案内され、ワタナベ先生とご対面し、挨拶を交わす。
「先にいくつか選んでおきました。あとは、本人の好みですね」
 すでに、テーブルの上にサックスが数個並んでいる。サックスならば、セルマー、ヤマハ、ヤナギサワあたりがいいのだとか。先生のイチ押しはセルマーらしい。
「この3つはセルマーで、こっちがヤマハです」
 しかし、セルマーの3つはどれも同じに見える。どこが違うのだろう??
「はい、型は全部同じですよ。でも、吹いてみると全然違うんです。それぞれ、楽器の癖がありますからね」
 なるほど、身長や体重が同じ人間でも、性格や学力、運動能力などが異なるのと同じで、楽器にも個性があるということらしい。
「ネットで安物の中古品などを買うのが一番よくないです。実際に吹いてみないとわかりませんから」
 そういえば、お友達ブロガーが、ディスカウントストアで中古のフルートを格安で手に入れたら、音が出なかったと日記に書いていた。あれは最悪パターンだったのか。なんでも、詐欺まがいの行為に引っ掛かることもあるというから、素人は特に気をつけなければいけない。

 その部屋には、チューバがいくつも置いてあった。大きさに驚いただけでなく、「\1,155,000」という値札にも仰天する。
「うわあ、チューバって高いんですね。テナーサックスがいくつも買えます」
「そうですね。でも、管楽器で一番高いのはフルートなんです。いいものになると、平気で500万、600万します。プラチナ製もありますし」
「……」
「楽器全体では、ヴァイオリンです。こちらは億ですからね」
「……」
 だんだん、口がきけなくなってきた……。
 そんな話を聞いてしまうと、50万のサックスなんぞ、微々たる額である。もっと高いものが欲しくなってくるから不思議だ。
 楽器屋に入ると金銭感覚が狂う。他の楽器は見ないほうがいい。

「これが一番吹きやすいです。軽く音が出るから、これにします」
「やっぱり? 先生もそれが一番だと思う」
 一通り試奏をしたあと、娘と先生の意見が一致した。今回は、飛び抜けて吹きやすい楽器があったので、短時間で決まったが、甲乙つけがたい場合は何時間も迷うという。お気に入りが見つかって何よりだ。
 購入したのはセルマー製である。



 リュック型のケースも一緒に買った。非力な女の子の、強い味方だ。



 ベルの下の彫刻が美しい……。



 そうだ!
 ろくに練習しなかったら、代金は娘の貯金から返してもらおう。




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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (16)
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