これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

ランチの怪奇現象

2010年09月23日 19時26分32秒 | エッセイ
 私の仕事は、7月、9月が忙しい。疲れてボロ雑巾と化した体をいたわるため、近場の都会・池袋で栄養補給し、気分転換を図ることにした。
 サンシャイン60にある、某フレンチレストランで夫とランチをする。高層階に行くと、気分が開放的になり、リフレッシュ効果がある。
 シャンパンで乾杯したあとは、真鯛のカルパッチョをいただく。



 ここまでは普通だった。
 2皿目、フォアグラのポアレが運ばれてきたときだ。シャッターを押しても、フラッシュが光らない。思わぬ異変に、私は「あれ?」「あれ?」を連発した。強制モードにしても、まったく反応しないではないか。
 おかげで、こんな写真になってしまった……。



 いかにも不味そうだが、実は素晴らしい味なのだ。フォアグラの外側はカリッと香ばしく、下にはリンゴが敷いてある。しつこくなりがちなフォアグラも、ほのかな酸味とまろやかな甘味が加わって、品よく仕上がっているのだ。これなら、いくつでもいただけそうな気がする。

 3皿目の魚料理が登場したときも、沈黙のフラッシュであった。もしや、祝日ということに気づき、カメラの中の小人さんが寝てしまったとか……。そんなはずはないが、何とも不思議で仕方ない。
 私は夫に話しかけた。
「ねえ、カメラ、壊れちゃったみたい。フラッシュがたけないよ」
「そりゃ残念だね。もう古いんだろ」
「うん、7年くらい経っているかな。新しいの買わないと」
「今のカメラは、液晶部分が大きいんだよね」
 そうそう。わたしのカメラは、コンパクトで持ち運びには便利なのだが、液晶部分が小さくて見づらい。早いところ買い替えて、ブログ更新に備えなくては。

 メインディッシュは肉料理だ。一応、撮影してみたところ、フラッシュだけでなく、バッテリーにまで不調が拡大している。朝、充電したばかりなのに電池マークが点滅し、残量が残りわずかであると告げていた。
 いよいよ、寿命だろうか。
 支払いをすませ、帰宅するときには、頭の中がデジカメ購入計画でいっぱいになった。まず、ヤマダ電機に行って、操作が単純そうなものを探さなきゃ……。
 珍しく頭を使った弾みか、突然、妹の話を思い出した。
「ヴェルサイユ宮殿に行ったとき、急にカメラのシャッターが下りなくなったんだよね。お姉ちゃんたちのは何ともないのに、アタシだけ写真が撮れなくて参った」
 妹は、心霊スポットに行くと、肩が重くなったり気持ち悪くなったりすることが多く、「きっと、ヴェルサイユにも、たくさん集まっているんだね」などと言っていた。
 そこで気がついた。
 サンシャイン60は、かつて巣鴨監獄、東京拘置所などと呼ばれた施設の跡地である。ここでは、第二次世界大戦後、東条英機をはじめとする、多くの戦犯者たちが収監・処刑されたはずだ。
 怪奇現象が起きても、おかしくない。

「もしや」と疑問がわいた。
 家に着くと、早速カメラを取り出し、部屋の中を撮影する。
 パシャッ、ピカッ。
 先ほどまでは、うんともすんとも言わなかったフラッシュが、息を吹き返した。何事もなかったかのような、活躍ぶりである。

 やっぱりね……。

 カメラが壊れたわけではなくて、場所が悪かったということだろうか。眉間にシワを寄せて考え込んでいると、光に反応した夫が振り返った。
「なんだ、直ったじゃないか」
「そうみたいね」
「新しいの買わないですむな。ああ、よかった!」
「…………」

 しまった、夫の前でやるんじゃなかった……。




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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (12)
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