これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

カニばさみ

2010年05月02日 14時17分23秒 | エッセイ
 昨年7月、本羽田干潟で採集してきたクロベンケイガニは、10カ月経った今でも健在である。
 残念なことに、昨年12月に脱皮して以来、右のハサミがなくなってしまった。
 脱皮の様子は、こちら「さすがのクロベンケイガニ」をご覧いただきたい。
 
 ハサミがもげてしまったのなら、水槽に落ちていそうなものだが、それらしいものは見当たらない。奇妙に思い、仲良しの理科の先生に聞いてみた。
「それは、もしかすると、脱皮に失敗したのかもしれませんね。片っぽのハサミだけ、抜けなかったんじゃないでしょうか」
「ええっ、そんなことあるんですか?」
「うーん、僕は地学が専門なんで、正確なことは言えませんが、そんな気がします」
「たしかに、脱皮したあとの抜け殻には、ちゃんとハサミがついているんです。きっと、中身もあったんですね」

 何ともドジなカニである。私に似たのだろうか……。
 しかし、エサを取るのも、穴を掘るのも、左のハサミだけでしなければならないから不便だ。せっせと体を動かしているが、時間がかかり、気の毒になる。暖かくなったら、自然に帰そうとも思うけれど、これでは死んでしまいそうだ。

 先日、このクロベンケイガニが、2度目の脱皮をした。
 脱皮をすると、2匹に増えたように見えるけれども、片方は抜け殻である。一回り大きくて、動くほうが本体なのだ。



 この写真でいうと、左が抜け殻で、右が本体だ。1回目の脱皮と同様、抜け殻に寄り添う行動が見られ、ほほえましい。
 狭い水槽の中で、ストレスもあるだろうが、うまく環境になじんで成長しているようである。
「お母さん、ベンケイちゃんにハサミがあるよ!」
 娘がカニの変化に気づき、大きな声をあげた。
 こちらは抜け殻である。左のハサミはあるが、右はないのがおわかりいただけるだろうか。


 そして、こちらが脱皮後の本体だ。なんと、右のハサミが復活しているではないか!


「ああっ、本当だ!」
 私は、生命の神秘に目を白黒させた。娘も相当驚いたらしい。
「また生えてくるとは思わなかった。しかも、色が違うし」
「そうそう、白っぽいよね」
「何か、ちっちゃくない?」
「たしかに、小さいね」
 復活したハサミは、色白で華奢だけれども、ちゃんと動く。穴を掘ったり、泥を運んだりと、活躍していた。こんなことがあるとは思わなかった。まだまだ、知らないことがたくさんあるようだ。

 私も娘も、声を揃えて言った。
「ベンケイちゃん、よかったね!!」
 3回目に脱皮するときは、忘れるんじゃないよ!




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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (12)
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