これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

上には上がいる

2010年04月11日 17時25分46秒 | エッセイ
 始業式、勤務校の校長が、壇上から校務分掌の発表をした。
「1学年担任、1組××先生、2組○○先生……」
 生徒は静かに聞いているが、内心、気になって仕方ないところだろう。2年、3年と続き、生活指導部のメンバーにうつったときだ。「山田道江先生」というべきところを間違えた。
「山田ミチオ先生。……失礼しました、山田道江先生」
 あちこちで、クスクス笑いが起きる。言われた本人は、「あれっ!」とおどけて見せたが、男性にされるのはよろしくない。
 ニコリともせず、「噛みすぎでしょ」と辛口意見を述べる先生もいて、不評だった。

 しかし、私が2校目に赴任した高校の校長は、こんなものではない。着任式で何のメモも持たずに壇上に上がり、教科順に並んでいる新任者に「アンタ、誰だっけ」と聞きながら紹介したのだ。耳が遠いものだから、聞き間違えて、違う名前にされてしまった先生もいた。私は、あまりの出来事に呆然となり、全校生徒の前でバカ面を晒したおぼえがある。
 そんな芸当を見せた校長は、あとにも先にも、その方しかいない。

「あはは、お母さん、間違えられなくてよかったね」
 家で娘に話したら、相当ウケていた。
「そうだね。笹木サキオ、なんて言われたらイヤだもん」
 ヨヨギと言われたことはあるけれど、面白いから許す。
「ミキの学校の校長先生も、スゴい間違いしたことあるよ」
 娘の話によると、作文コンクールに入賞した生徒を表彰する場面だったらしい。
「すごく頭のいい子で、西川アリサちゃんていうの。銀賞だったんだよ」
 そのアリサちゃんが壇上にのぼり、校長と向き合った場所に立った。校長は、凛とした声で賞状を読み上げた。
「表彰状、○○作文コンクール銀賞……」
 校長は自信満々に名前を言った。
「西川アサリ」



 すぐさま、生徒たちはザワつきはじめた。
「アサリだって」
「アリサじゃねーの?」
「アリサだろ、どう考えても」
 しかし、校長は最後まで、失敗に気づかなかったそうだ……。
 アリサちゃんには申し訳ないが、私は涙が出るほど笑ってしまった。
 いや~、上には上がいるものだ。それとも、下には下が、というべきか?
「ひっひっひ、校長先生はきっと、『あさりちゃん』を全巻持っているんだね」
「うん、たぶん隠れファンなんだよ」
 そうじゃなければ、こんな間違いしないでしょ。
 ね、校長センセ。




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コメント (12)
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