これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

桜に集合

2010年04月01日 19時31分11秒 | エッセイ
 庭の桜が八分咲きになった。大の字になって開いた花が、ふわふわと綿のように、枝や幹を飾りつける。
 思わず見とれてしまう美しさに、桜の下で、宴会を楽しむ人々の気持ちがよくわかる。

 桜に惹かれるのは、何も人間だけではない。ときには、蜜を求めた蜂がやってくる。私は、子どもの頃、何度も蜂に刺されたことがあるため、羽音を聞くだけで鳥肌が立つ。
 花が散る頃には、毛虫が姿を現す。地面にパラパラとフンが落ちているときは、桜の下を通らぬよう、気をつけねばならない。過去には、アメリカシロヒトリが大量発生した年もあったそうだ。背中に長い毛をびっしり生やし、見ているだけで体中が痒くなるこの虫が、ウジャウジャひしめき合っている様子を想像すると、気が遠くなる。もし、今度同じことが起きたら、私は実家に非難するだろう。

 先日、珍しいお客が来た。
 スズメよりもひと回り小さな、緑色の小鳥である。枝にとまり、花にくちばしを突っ込んで、蜜を吸っているようだ。

 何ていう鳥だろう?

 初めて見る鳥だ。緑といっても「ウグイス」ではあるまい。ウグイスは、滅多に人前に姿を見せないというではないか。
 そういえば、「ウグイ」という名の生き物もいた気がする。はてさて、どんな生物だったろうか。
 調べてみると、コイ科の地味な魚だった。



「ウグイ」の複数形は「ウグイス」。なんつって♪

 絶望的なジョークを思いついたが、人格を疑われてはいけないので、口外せずにおいた。

 どうやら、この緑の鳥は「メジロ」というらしい。



 3羽でやってきて、薄ピンクに彩られた枝の上を、好き勝手に渡り歩いている。体の重みで枝が揺れ、花びらがハラハラと散る。鉄棒のように枝で前転したり、サーカス顔負けの綱渡りをしたりと、曲芸師のような身のこなしに喝采を送りたくなった。

 そうだ、カメラ、カメラ!

 部屋からデジカメを持ち出し、数メートルの距離から構えても、メジロ3兄弟は逃げようとしない。野鳥は警戒心が強くて、撮影が難しいと聞いていたが、この鳥たちは人間に慣れているようだ。シャッター音に臆することもなく、悠々と舌鼓を打っていた。
 5分ほど経ち、引き上げどきと見たのか、3兄弟は何の前触れもなく飛び立っていった。

 あーあ、行っちゃったよ……。

 取り残された淋しさと、ろくな写真が撮れなかったもどかしさに、私は落胆した。
 しかし、30分ほどすると、またもや桜には緑色の姿が戻ってきた。しかも、今度は4羽に増えている。私は、3兄弟の長男が、彼女を連れてやって来たのではと想像した。
「今度こそ」と意気込み、ベランダに出てレンズを向ける。メジロたちは、先ほどと同じように、私にまったく気づかないのか、あるいは気づいたのに無視しているようだった。

 ひょっとすると、こんな会話がささやかれていたのかもしれない。
「ねえ、近くに人間がいるわよ」
「ああ、さっきもいた奴だ。俺たちの写真を撮ろうと、無駄な努力をしているのさぁ」
「あはは、望遠レンズもないのに、無理よね~!」

 はい、その通りです……。

 頑張った割には、この程度の写真しか撮れなかった。非常に残念だ。
 中央やや上のメジロ君が、おわかりになるだろうか。



 メジロ君、今度は来るときは、ご両親も一緒にね。




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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
 「うつろひ~笹木砂希~」(日記)
コメント (8)
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