これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

柿責めの刑

2009年11月22日 19時59分51秒 | エッセイ
 私の実家には柿の木があった。甘百目という品種で、実が丸く、名前の通り甘味の強い柿だった。
 母は、柿の実が熟すとすぐにもいできて、私たちに食べさせた。来る日も来る日も、食後のデザートやらサラダやらで食卓に登場し、柿責めに遭った。食べきれない柿は台所に並べられ、甘ったるい匂いをプンプンさせて待機していた。
「早く取らないと、鳥に突付かれちゃう」と母は木に目を光らせていたが、私は「さっさと食べられてしまえ!」と願うばかりだった。

 結婚して家を出たときは、ちょっぴりホッとした。
 しかし、嫁ぎ先には柿の木が2本もあることを、あとから知った。
「東側の柿は渋柿なのよ。中央の柿は甘柿だけど、自分で食べる柿は買ってくるわ」
 さすがはお嬢様育ちの義母だ。言うことが違う。
 笹木家の柿は食用ではなく、もっぱら鳥の餌や芝生の養分として活用されているのだ。

 柿責めから解放されたと油断していたら、数年前、職場の机に枝つきの柿が6個置かれていた。
「うちの柿です。食べきれないので持ってきました」
 産休代替の先生が、好意で配っていたのだった。

 ……いらんちゅうに……。

 だが、わざわざ自宅から重いものを運んできたのだ。無下に断れず、お礼を言って持ち帰るしかなかった。
 今の職場にも、柿を配る教員はいる。私は「結構です」と言って受け取らないが、もらった先生が皮を剥き、皿に載せて「食べてね」と声を掛けてきたときは、ありがたく頂戴する。人様が手間暇かけたものは美味しい。

 去年の今頃、娘が家庭科の授業で巾着を作ることになった。色鮮やかなバンダナを2枚重ねて縫い合わせ、四隅が上で広がるように紐を通す簡単な巾着だ。
 バンダナの色を各自で選ぶため、娘から「どれがいいかな?」と相談を受けた。
「このピンクと水色がいいんじゃない?」
「うん、じゃあ、それにするよ」
「この巾着、お母さんのお弁当を包むのにちょうどいいなぁ」
「ふーん、欲しい? なら、できたらお母さんにあげるよ」
 そして、完成した巾着をもらったのだが、私はこれが柿に見えて仕方ない。



「なんかさ、柿に似てるね」
「ああ、似てる似てる。そういえば、オレンジ色のバンダナで作った子もいたよ」
「やばいよ! それ、柿そのものじゃん!!」
 そっちのほうが面白かったかも……。

 そして、本日のおやつは、この「柿団子」だ。
 中にはつぶあんが入っていて、とてもいいお味だった。



 実は、柿責めが懐かしいのである。



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コメント (20)
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