これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

選ばれし日

2009年11月19日 18時43分30秒 | エッセイ
※ お断り
 このエッセイは、江國香織さんの著書『左岸』の内容を一部含んでおりますことを、ご了承願います。

 娘の誕生日は5月3日である。
「ミキの誕生日は憲法記念日だから、学校でプレゼントがもらえなくて淋しいな」
「そりゃそうだけど、夏休みや冬休み、春休みに生まれた人だって同じだよ」
 私は慰めにならない返事で答えた。
 もっとも、誕生日当日、ゆっくりとお祝いができるというメリットはある。
「ミキ、憲法記念日というより、ゴミの日ですって言ったほうが、おぼえてもらえるかもよ」
 私がキツいジョークを飛ばすと、娘はムッとしてにらみつけてきた。
 しかし、その後、自己紹介をするときは、「誕生日は5月3日、ゴミの日で~す♪」と言い、笑いを取っているらしい。

 先日、友人のブログを見ていたら、「誕生色」のサイトが紹介されていた。
 興味をひかれて試してみると、私の誕生日、10月18日は「パールグレイ」という聞きなれない色であるとわかった。
 家で夕食の話題にすると、娘も「ミキの色は?」と身を乗り出して聞いてきた。再び、サイトにアクセスし、5月3日をチェックする。
「ティールグリーン? そんな色あったんだね。じゃあ、お父さんの色は?」
 夫の誕生日は6月16日だ。日付をクリックすると、一般には好まれない色が飛び出してきた。
「黄土色だってー!! あっはっは~!!」
 私も娘も、大きな声で笑い転げた。が、夫は無関心を装い、ひたすら洗いものに励むばかりだった……。
 つまらん。

 今、私は江國香織さんの『左岸』を読んでいる。これは、『冷静と情熱のあいだ』に続く辻仁成さんとの共作で、茉莉と九という幼なじみのラブストーリーを、江國さんは茉莉側から、辻さんは九側から展開する話題作だ。
 まだ読み終えていないが、江國さんの得意とするエキセントリックな女性が、波乱に満ちた半生を力強く生きる様が読者を惹きつけ、飽きずに読める。
 最初の波乱は、最愛の兄・惣一郎の自殺であった。大人びた中学生、惣一郎が、母校である小学校で首吊り自殺をしたという電話がかかってくるのだ。運命の日は、10月18日……。

 何で、私の誕生日にするかなぁ!?

 とたんに、著しく感情が入り込み、「なぜ自殺を」ではなく、「なぜこの日を」が私の中では焦点となった。1年は365日、いや、うるう年も含めれば366日あるというのに、すごい確率である。
 先が読みたくなるストーリー展開なのだが、ここだけはどうもいただけない。

 通勤カバンからはみ出た本に、ミキがチラリと視線を走らせた。
「左岸って、どんな本? 面白い?」
「うーん、難しくって、中学生にはまだ読めないと思うよ」
 私はすまして答えた。
 ナイショ、ナイショ、ナイショにしておかなくっちゃ♪



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 「いとをかし~笹木砂希~」(エッセイ)
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コメント (22)
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