これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

10月18日に生まれて

2009年10月18日 20時41分19秒 | エッセイ
 今日は私の誕生日だ。
 中一の娘から「プレゼントは何がいい?」と聞かれ、しばし考え込んだ。予算は1000円以内という。欲しいものは予算をオーバーしているし、予算内で買えそうなものは思いつかない。
 去年は紺のハイソックスをもらった。これは冬の必需品だから重宝する。娘からプレゼントされたものだと、とりわけ暖かく感じる。今年はハイソックス以外がよいが、なかなか決まらない。
 娘は、らちが明かないと見て「じゃあ、一緒にお店に行って決めてよ」と言った。
 
 子供のとき、母の誕生日にあげたプレゼントを思い出した。
 母は年齢の割には大人げないので、ずい分気をつかったものだ。
 ブラウスやセーターなどの衣類は気に入る確率が高く、「高かったでしょう。ありがとうね」と大喜びする。しかし、大事にしまっておくだけで、全然着てもらえない。
 マグカップや湯飲み茶碗などの陶器は、「うちにいっぱいあるのに、どうしてこんなもの買ってくるのよッ!」と叱り飛ばされる。そして、押し入れ収監の刑となる。
 思い余って「お母さんは何が欲しいの?」と聞けば、「何もいらないよ。無駄なお金をつかわなくていいからね」と答える。真に受けて、プレゼントを用意しないでいると、姉や妹を相手に「砂希は何もくれなかった……」と陰口を叩く。
 悪気があるわけではなく、母は気分屋なのだ。そのときの感情でものを言うから振り回され、母に愛されていないのではと感じたこともあった。

 夕方、娘のミキと一緒に駅ビルに行った。ここには、可愛い雑貨の店がいくつか入っており、何か見つかりそうだ。ローラ・アシュレイの石鹸皿、鯛焼きやドーナツの箸置き、クラシックな写真立て……。目を引くものがたくさんあり、かえって迷ってしまった。
「決まった?」
「ううん、まだ」
 どれもこれも可愛いのだが、決定力に欠けている。暗くなってきたし、そろそろ選ばないといけない時間である。
 そういえば、「小さめの手提げがあるといいな」と感じたことがあった。ちょっとスーパーまで、郵便局まで、というときに使える小ぶりのバッグはないだろうか?
「お母さん、こっちにバッグがあるよ」
「どれどれ」
 ゴンドラに目をやると、真っ先に視界に飛び込んできたバッグがあった。フェルト地のハンドメイドで、何色ものアップリケが賑やかだ。私は、ひと目見て気に入った。



「あ、これいいじゃん!」
 商品を手に取り値札を確認すると、「1525円」と書いてあった……。

 ダメだ、予算オーバー!!

 私がガッカリしていると、ミキが財布を取り出し言った。
「ちょっと待って。今いくらあるか確かめるから」
 ミキは所持金を確認すると、顔を上げた。
「大丈夫、2000円あるから買えるよ。これでいいのね?」
 かくして、私はお気に入りのバッグを手に入れたのだった。

 誕生日は、生まれた本人が祝福を受ける日ではなく、母親に感謝する日だという説もある。
 私は丸々と肥えた赤子だったせいか、出産時、母はひどく出血したらしい。母子手帳にも、出血量1050ml多量と記録されている。
 幼いときは、母の愛情を疑ったこともあったが、命がけで産んだ子供が可愛くないはずもない。自分が母になって、それはよくわかった。
 今ならば、素直に言える。
 お母さん、私を生んでくれてありがとう。



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コメント (32)
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