これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

ハズレ映画

2009年10月01日 21時01分47秒 | エッセイ
 十年来の映画仲間、涼子さんから久々にお誘いを受けた。
「映画を観にいきませんか。観たい作品があったら教えてください」
 メールを読んで、私はしばし考え込んだ。観たい映画はあるが、私のチョイスはハズレばかりなのだ。『トゥームレイダー2』『ハート・オブ・ウーマン』『オーシャンズ11』……。意気揚々と出掛けた割には、ガッカリして帰ってくる作品が多い。
 対する涼子さんは、映画のチョイスが上手い。『X-MEN』『ミッション・インポッシブルⅡ』『レジェンド・オブ・ゾロ』など、素直に笑って楽しめる作品を選ぶ。
 それでも、一応、私の希望を伝えてみた。
「『男と女の不都合な真実』を観たいです」
 聞くところによると、下ネタ満載のコメディらしいので、上品でエレガントな涼子さんには、ちと厳しいかもしれない。ほどなく、彼女から返信があった。
「それはどんな話なのかしら。全然知らないわ」
 ……これは脈なしとみた。強引に押して、またしくじったら気まずい。ひとまず、彼女の持ち札を探ることにした。
「別にどうしてもというわけではないのですが、涼子さんは何か候補がありますか」
「私は、ハリソン・フォードの『正義のゆくえ』が気になります」
 何だ、そりゃ。
 聞いたこともない作品だったので、正直言って気が進まなかったが、これまでの実績から彼女のチョイスに期待することにした。
「日比谷でしか上映していませんから、10時15分に劇場前で待ち合わせしましょう」
 そんなわけで、今日はこれを観ることにした。

 映画の評判は、あてにならないことがある。
 一昨年公開された『グッド・シェパード』は特に忘れられない。先に夕食をすませてから観ようと思ったのに、レストランで私の携帯に職場からの緊急連絡が入り、席を外して話をしていたら、食事が遅くなってしまった。
 あわてて劇場に駆けつけたものの、上映開始時刻はとうに過ぎており「大変申し訳ありませんが、ご入場できません」と断られた。かといって、このまま真っ直ぐ帰るのも面白くない。機転の利く涼子さんが、他の映画館を検索し始めた。
「入間市で8時15分からっていうのがあるわよ。行ってみる?」
 入間市は、池袋から急行で40分ほど下った駅である。諦めの悪い二人は、西武池袋線に乗り、入間市の映画館に滑り込んだ。この映画は、3時間近くもの上映時間だったので、帰る頃には日付が変わってしまった。
 だが、後味の悪い映画で、苦労して観ただけの価値が感じられなかった。人気のない上りの最終電車に乗り、冷静になった私は、「ここまでしなくてもよかったかも……」と後悔した。

 映画館のチケット売り場では、前に並んでいる人たちが、作品名を告げる声が聞こえてきた。
「正義のゆくえ」
「正義のゆくえ」
「正義のゆくえ」
 何と、誰も彼もが、私たちと同じ映画を観ようとしているではないか。
「え~、意外と人気なんですね、この映画」
 私が驚いていると、涼子さんもうなずいた。
「やっぱり、ハリソン・フォードだからかしらね」
 さほど狭くない劇場も、ほぼ満席である。
 ほどなく映画が始まった。重い内容を淡々と描き、まったく退屈しない、起伏に富んだ作品だった。さすがは涼子さん!!

 ここで、私の一番の失敗チョイスを紹介しよう。
 1994年に公開されたアニメーション『ストリートファイターⅡMOVIE』である。
 たまたま、新宿まで買い物に出かけ、映画館の前を通ったのが運のつきだった。ゲームは好きだったし、上映時間も短いから、衝動的にフラフラと入ってしまったのだ。
 もともと、期待はしていなかったが、予想以上にひどかった……。
「何で、そんなの観たのよ」と妹にはバカにされ、夫には呆れられた。
 まあ、ハズレの映画があるからこそ、傑作の有難味がわかるのだろうな。



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コメント (16)
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