これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

新しいメル友

2009年08月20日 19時56分00秒 | エッセイ
 先日、中1の娘のミキが、クラブで仲良しの先輩にメールアドレスを教えてもらった。
「家のパソコンからメールしてもいい?」
 夫はメールに反対だ。
「家のパソコンは、お父さんのアドレスになってるんだぞ。ダメだ!」
 ミキはふくれっ面をして、黙り込んでしまった。
 たしかに、プロバイダ経由のアドレスを、安易に教えたくないという気持ちはわかる。
「じゃあ、フリーメールでミキのアドレスをゲットすればいいよ」
 私が口出しして余計なことを言うと、今度は夫が黙り込んでしまった。

 まずは、Googleを試してみる。
「アドレスとパスワードを考えて。単語を4個くらいつなげないと、使えるアドレスにならないかも」
 私の注文に、ミキは食欲で答えた。
「じゃあ、ウニ、大トロ、イクラ、甘エビかな?」
 GoogleのGmailでは、ドットが使えるようだ。
 uni.ootoro.ikura.amaebiとつなげていくと、何やら「三菱東京UFJ銀行」を連想してしまうのは、私だけだろうか……。
 何でもくっつければいいというアドレスは、幸いなことに使用可能だった。
 しかし、Gmailはやけに重い。すぐ砂時計になってしまうので、やめにした。
 次は、私も使っているgooにトライした。
 gooメールは、ドットの代わりにハイフンやアンダーバーで区切りを入れるので、さきほどのアドレスにちょっと手を入れればよい。スムーズにアカウントを取得することができ、めでたくミキのメールデビューとなった。
「あのさ、最初にお母さんと練習したい」
 ミキの要望に応え、私は張り切って練習相手を引き受けた。
「今、空メールを送ったから、アドレス帳に登録しておくんだよ。受信メール画面から返信ボタンを押すと、メール作成ができるの」
 ちょっとやり方を教えるだけで、子供はあっという間にコツをつかむ。細かい操作を教えなくても、すぐさま返信が届いた。
「登録完了(^_^) いつでもメールしてOKだよ!」

 ゲッ! 顔文字も入れたのか!!

 練習後、すっかり自信がついたようで、ミキは先輩あてのメールを作成しはじめた。
 10分ほどして送信したが、なかなか返事が返ってこない。その先輩も、親のパソコンを使っているという話だから、ときどきメールチェックする程度なのだろう。
「返事が来なくてつまらないよ~! お母さん、明日またメールちょうだい」
 メールを始めたばかりの頃は、私も同じだったなと思い出す。

 翌朝、私は職場に向かう電車の中で、ミキあてのメールを打った。
「おはよう。今日はちゃんと宿題をするんだよ」
 どうせメールを送るなら、他に伝達事項はないかと頭を働かせてみた。
「そうそう、爪も切っておいてね」
 我ながら、何とつまらないメールかと呆れるが、ミキはそう思わなかったようだ。
「メールありがとう☆ 宿題やってるよ。爪もちゃんと切るから安心してね」

 ふ~ん、口で言うよりメールで伝えるほうが、素直に聞くかも……。

 予期せぬ効果に、情報化社会を実感した。
 これからは、子供とのコミュニケーションの手段として、メールを積極的に活用すべきなのかもしれない。

 一日の勤務を終え、新鮮な気分で帰宅すると、夫がプリプリ怒って一日の様子を伝えてきた。
「ミキはパソコンばかりしていて、ろくに勉強しなかったよ」
 すべてを言い終える前に、ミキの言い訳が割り込む。
「だって、先輩からメールが来てたんだもん。返事出さないといけないから、仕方ないじゃない」
「だから、お父さんはメールに反対なんだ!」
 二人の言い合いが始まり、私は呆然とした。まさか、こんなことになっていたとは。
 ふと、ミキの指を見ると、爪が伸びたままだった。私の視線に気づいて、ミキが先手を打ってくる。
「ああ、爪は今切ろうと思っていたの。本当だよ!!」

 ……いかん、早まったかな!?



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