これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

今日か明日か

2009年06月25日 22時01分34秒 | エッセイ
 中学の英語で、こんな諺を教わった。
「Never put off till tomorrow what you can do today.」
 今日できることを明日に延ばすな、という意味のこの英文、聞いたときは感心したものだが、実践できたためしがない。
 なにしろ、私は無類の面倒くさがり屋である。明日やればすむことを、ご丁寧にも今日しようだなんて考えるはずがない。
 むしろ、私が好きなのは、「明日できることを今日するな」という、アラブの諺だ。「今日中にやらなきゃ」と思うよりも、「明日までにやればいいんだ」と考えたほうが性に合う。

 つい先日も、翌日の授業の準備をしようとしたら、他の仕事が長引き、時間がなくなってしまった。残って仕事を片付けるという選択肢もあったが、私が選んだものは「明日の朝、早めに来てやればいい」という選択肢だった。
 後回しにするのは仕事だけではない。
 翌日は早めに家を出たため、あおりで仕度の時間がなくなり、朝食後に飲むビタミン剤も「学校に着いてからでいいや」となり、さらには「口紅とコンタクトレンズも学校で」とエスカレートした。
 小走りで駅まで急ぐと、止まっている電車が見えた。だが、止まっている場所がおかしい。ホームに進入する途中で停止したのか、後ろの3両ほどが、ホームにたどり着いていなかった。
 駅からは、携帯電話片手に、渋い顔をして引き返してくるサラリーマンが何人も見受けられた。
 イヤ~な予感だ。
 自動改札付近には人が立ち止まり、電車の発車予定を知らせる電光掲示板が消えている。
「お客様にお知らせします。本日、6時40分頃、当駅におきまして人身事故が発生しました影響で、西武池袋線は、ただいま上下線とも運転を見合わせております……」
 何度も繰り返しているせいか、やけに滑らかな口調の放送だった。

 なんてこったい!!

 1時間目が始まる前に準備をしたかったのに、これでは授業に間に合うかどうかもわからない。そうと知っていれば、ビタミン剤を飲み、口紅を引いて、コンタクトも入れてから家を出たのだが、もはや手遅れだ。
 時計を見ると、すでに事故発生から40分経過している。運がよければ、そろそろ運転再開するかもしれないと思い、私は人であふれたホームに向かった。ドアの閉まった電車が停止位置より手前で止まったまま、ぐったりと待ちくたびれていた。
 10分ほど待つと、待望のアナウンスが聞こえた。
「大変お待たせいたしました。各駅停車新木場行き、まもなく運転を再開いたします。」
 運転再開はうれしかったが、行き先が問題だった。私は池袋に行きたいのだが、新木場行きだと有楽町線直通となるため、途中で乗り換えなければならない。一瞬戸惑ったけれども、列車のダイヤが乱れているときは「来た電車に乗る」が鉄則なので、ひとまず乗ることにした。

 これって、人をひいた電車じゃないか……。

 しかし、贅沢を言っている場合ではない。何でもいいから、私は一刻も早く職場に到着したい。
 結局、この判断は正しかったようだ。動き出した電車の中で、幸運なアナウンスがあった。
「ダイヤが乱れました関係で、地下鉄への直通電車はありません。この電車は、行き先を変更して、準急池袋行きとさせていただきます」
 私はもろ手を上げて、拍手をしたい気分になった。

 1時間目開始の12分前、私はようやく学校に到着した。もっと遅くなると覚悟していたから、不幸中の幸いである。手早く準備をして、どうにか間に合わせた。
 
 やっぱり、「今日できることを明日に延ばすな」は正しい。
 でも、この性格じゃ、できないだろうな……。

 ちなみに、「明日できることを今日するな」という諺は、怠け心を助長するものではなく、「明日のことを思い煩うことなく、今日できること、なすべきことに集中せよ」というのがその真意らしい。



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コメント (12)
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