これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

創作活動の妨げ

2009年05月18日 05時22分38秒 | エッセイ
※ PCトラブルにつき、更新が遅れましたことをお詫びいたします。

 恥ずかしながら、私は片づけが苦手だ。テーブルには郵便物や筆記用具、薬などが散乱し、出窓には本、カタログ類が積み重ねてある。リビングの隅には、洗濯ずみの衣類が山になっているという有様だ。
 しかし、来客があれば、見栄を張って部屋をきれいにする。本やカタログをしまい、衣類を収納して、人並みの部屋を演出するのだ。だから、お客さんが来なければ、ずっと片付かないままとなる。

 そんな私を勇気づけてくれるのが、さかもと未明さんである。
 雑誌で、彼女の仕事部屋を見たことがあるが、ウチなど足元にも及ばないくらいの散らかりようだった。床には、本や雑貨類が何重にも積み重なって散らばり、「どうやって机までたどり着くのだろう」と疑問を感じたほどだ。棚にも本や資料が無造作に詰め込まれ、机の上は文房具などで埋め尽くされていた。
 しかし、その部屋を背景に、さかもとさんは妖艶に微笑んでいる。そして、自信たっぷりにこう断言するのだ。
「私はアーティストだから、創作活動の妨げとならないよう、片づけはしません」
 部屋の美化に気を奪われると、よい作品を生み出せなくなるという意味らしい。
 
 なんと素晴らしい……!!

 私は、その潔さに感心した。
 一応、こちらもクリエイターの端くれである。出窓を片付ける時間があれば、エッセイのひとつでも書きたいと思う。決して汚い場所が好きなわけではないが、優先順位が違うのだ。
 料理は好きだけど、後片付けは嫌いという例えが、一番近いかもしれない。

 そして、片付けの優先順位が低い理由はもうひとつある。
 職場の机もごちゃごちゃしているのだが、仕事をする上で大きな支障があるわけではない。私と同じく片付けの苦手な同胞の言葉を借りれば、「デスクは片付いていないけど、どこに何があるかはわかっている」からだ。
 つまり、物理的には無秩序に見えても、頭の中ではスッキリと整理整頓されているのである。
 特に、私のようにエッセイを書く者には、記憶のファイリング作業が大切だ。ひとつのテーマに沿って、関連したエピソードを探し出し、適切な言葉でつなぎ合わせてオチをつけるには、記憶が整理されていなければならない。
 記憶容量が大きいわけではないから、どうでもいいことはさっさと忘れて、面白かったことや役に立ちそうなことだけを保存しておく。取捨選択した情報は、日記という記憶媒体に残すことがほとんどだ。事件が起こらず、ネタに困ったときなどは、日記を読み返して記憶の発掘作業をすれば、何かしらの話が書ける。
 
 遊びに来たお客さんに、頭のフタをパカッと開けて、こう言ってみたいものだ。
「ほら見て。部屋の中は片付いてないけど、頭の中は完璧なのよ。バッチリ整頓されてるでしょ」
 が、残念なことに、頭の中は見せることができない。
 ならば、こちらでもいい。
「私はクリエイターだから、片付けしている時間がもったいないの。その分、新しいエッセイを書きたいからね」
 ……しかし、よほどの傑作を書かなければ、大言壮語で終わってしまうだろう。

 結局、どちらもできず、来客のたび、私は片付けに追われることになる。
 さかもと未明にゃなれないな~。



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コメント (17)
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