これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

栃木は美味しい

2009年04月19日 20時34分11秒 | エッセイ
 両親が、住み慣れたさいたま市から那須塩原市に引っ越して、はや2年となる。
 以来、年に数回は、泊まりがけで遊びに行くようになった。

 観光地とは逆の、さびれた場所である。舗装されていない砂利道には、背の高い雑草が路肩に生え、雑木林も広がっている。歩行者や自転車はおろか、車さえもめったに通らない。
 だが、隠居するにはもってこいの静けさだ。
 母が、1キロほど離れた場所に小さく見える民家を指さし、言った。
「ほら、あれがお隣さんよ」
 回覧板を回すにも、車で届けるのだという。新聞の配達はあるが、ゴミの回収はない。車を20分ほど走らせて、直接、ゴミ処理場に持ち込む仕組みになっているらしい。
 不便きわまりないが、田舎での暮らしは、隣家の生活音まで筒抜けの都会生活では味わえない開放感がある。子供たちがけたたましい笑い声をあげて、ドタドタと走り回っても近所迷惑にならないし、楽器の演奏だって、カラオケだってやり放題だ。

 この春休みにも、夫と娘と3人で泊まりに行った。東北自動車道に乗り、途中の佐野SAで休憩したとき、目を惹く弁当があったので買ってみた。
 その名も『日光百物揃千人武者行列~栃木の美味しい名物が行列を作ってやってきた~』である。

 日光の伝統行事から名づけられたこの弁当には、霧降高原豚の辛みそ焼・地元産の雛鶏のカツ・日光ゆばの煮物・栃木のゴボウとかんぴょうの煮物・鹿沼こんにゃくの煮物・日光強めし・桜ごはん・プチトマト・お漬け物・柏屋特製「小福もち」といった、県自慢の逸品がおさめられている。

 宇都宮の餃子は、残念ながら入っていない。仕方ないので、帰りのお土産にすることにした。
 800円という値段の割には、満足のいくお弁当だったので、東北道に乗った際にはぜひお勧めしたい。

 両親は、家庭菜園を作り、茄子やきゅうり、小松菜、カボチャ、トマトなどの野菜を育てて暮らしている。しかし、所詮はアマチュアの道楽といったレベルだ。近所の、といっても何キロも離れているのだが、親しい農家の方に、あれこれアドバイスをもらって勉強中である。
「小松菜、持っていく?」
 母に聞かれて、もらうことにした。東京で買うより、味が濃くて美味しいような気がする。
 じゃがいも、長ネギ、山芋などをもらったこともある。
「ウチのだけじゃないんだよ、近所からももらうから、とても食べきれないの」
 何と、両親が育てているものと同じ野菜を、プロからおすそ分けされることがあるのだという。
「しかも、ウチでできたのより、ずっと立派でね……。悔しいけど……」
 母のふくれっ面に、私は失笑した。相手に悪気がないとはいえ、実力の差を思い知らされて落ち込んだようだ。
「ははは、しょうがないよ、キャリアが違うもん。じゃあ、ありがたく頂きましょ」

 栃木の人は温かく、食べ物は美味しい。
 私も退職したら、栃木に住もうかな……。



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コメント (18)
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