これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

シェフになれない主夫

2009年01月25日 20時28分54秒 | エッセイ
 仕事のあと、友人と美味しいものを食べに行くことがある。
 主婦が家を空けるには、夫の協力が必要だ。夕食の支度や子供の世話を頼み、オーケーが出ないと夜遊びはできない。
 夫はやけに強気だった。
「どうせいつも簡単なおかずだろ。それくらいならオレにもできるから、行ってきていいよ」
 ……たしかに、私の料理は簡単にできるものばかりだが、ちゃんと栄養バランスも考えているのだ。もっと他に言い方があるだろうと、私は気を悪くした。
 腹いせに、お出かけの日はフレンチのフルコースをいただき、ついでに映画を観て、日付が替わるころに帰還してやった。

 翌日、小学生の娘に聞いてみた。
「昨日の夕食は何だった?」
「うんとね、サケの塩焼きと刺身だったよ」

 何だ、その組み合わせは!! あり得ないっ!

「野菜はあった?」
「トマトだったかな……。でも、ちょっとしかなかった」
 私はガッカリした。もともと料理は苦手な人だから、期待していなかったけれども、娘のために努力しようという気持ちが欲しい。
「お母さん、夜出かけないでよ。お父さんが作ると美味しくないから」

 たしかに、今までの夫の料理を思い出すと、やけに油っこかったり、意味もなく強い火力で焼きすぎたりと、失敗ばかりだ。娘に不評なのもうなずける。
 それだけでなく、ガスレンジには食材が飛び散り、床はこぼれた調味料や油でベタベタしているから、私にとっても頭が痛い。

 しかし、お出かけはしたい。そこで、もうひと手間かけることにした。
「煮物を作っておいたから、食べる前に温めてくれる? 真鯛は塩ふって焼いてね。ブロッコリーも茹でてあるよ。それから……」
 献立を考え、あとは焼くだけ、温めるだけ、盛り付けるだけですむように、あらかじめお膳立てしておけばよいのだ。ここまですれば、いくらなんでも大丈夫だろう。
 私は安心して家を出た。今日は楽しくイタリアン♪
 いとしの赤ワインを飲みながら、前菜を食べていたら、夫からメールが来た。
「煮物を温めていたら、焦がしてしまいました。せっかく作ってくれたのに、スミマセン」

 何ですって?! 

 私はひたすら、携帯の液晶画面をにらみつけるばかりだった。どうせまた、無駄な強火で加熱したに違いない……。

 こみ上げてくる怒りで、私の顔もワインと同じ色になりそうだった。



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コメント (15)
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