これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

光の国のアリス

2008年12月04日 20時55分12秒 | エッセイ
 イルミネーションの美しい季節になると、東京ミレナリオを見に行ったときのことを思い出す。
 東京ミレナリオは開催時期と時間に制限があり、子連れで出かけるにはそれなりの覚悟が必要だった。面倒くさがり屋の私は「今年はいいや」と先送りしていたのだが、2005年を最後に休止すると知って以来、何としても行かなくてはと決心した。
 夫は絶対来ない。当時小3だった娘のミキと二人では淋しいので、妹と甥・姪、そして子守要員に両親を誘うことにした。
 ミレナリオを見たあとは食事をして、近場のホテルに一泊したい。妹と両親はさいたま市に、私は練馬区に住んでいるから帰ろうと思えば帰れるが、眠くなった子供にグズられるのは真っ平だし、たまにはのんびり外泊するのも悪くない。
 問題は、大人4人、子供3人がどうやって宿泊するかである。が、ホテルは難なく見つかった。八重洲富士屋ホテルには、定員7名の和洋室があるのだ。電話で予約を入れたら、さらに耳寄りな話を聞いた。
「お子様が添い寝なさるのであれば、もう1人大人が泊まれますよ」
 こうなったら、姉を誘うしかないと思った。

 私の育った家庭は、家族みんなの仲がよい。クリスマスや正月には独立した娘3人が帰ってくるし、夏に揃って旅行することもある。
 ミレナリオを見に行くだけなのに、いつの間にやらオールスター勢ぞろいの一大イベントに発展していた。

 2005年12月28日、ミレナリオツアーを決行した。東京駅で妹や両親と待ち合わせ、ホテルにチェックインする。姉はまだ独身で仕事が忙しく、あとから駆けつけることになっていた。
「細長いね、この部屋!」
 幅は広くないのに奥行きばかりが長いこの和洋室には、すでに布団がひかれていた。やはり畳のある部屋は落ち着く。座椅子を並べてお茶をいれ、日没まで両親や妹とおしゃべりをして過ごした。
 姉が合流したら出発だ。
 しかし、スタート地点の東京駅には、すでに長蛇の列ができていた。
「東京ミレナリオはただいま50分待ちとなっております!」
 うそっ!
 後ろから「去年はこんなに混んでなかったよ」などと愚痴る声が聞こえた。私のように、最後だから行かなきゃと考えた人がたくさんいたのだろう。
「ねぇ、どうする? やめようか」
 子供たちよりも気が短かったのは姉である。自由業で接待される側にいる姉は、不便な環境に慣れていない。
「せっかく来たんだから見ていこうよ。少しずつ動いているみたいだし」
 ぶーたれる姉をなだめて列に並び、信号待ちや時間調整などでさらに足止めされながらも、1時間後には幻想的なあのアーチが見えてきた。

 写真やインターネットと違って、本物はやたらと大きくて迫力がある。
「すっご~い!! キレイだねぇ」
ミキはすっかり興奮状態で、高くそびえ立つ光のアーチに目を奪われていた。姪や甥は抱っこしてもらい、まるで昼間のような色とりどりのまばゆさにご機嫌だった。

やはり、子供のころから美しいものに触れ、情操教育をすることが大切だ。
ここはキラキラ輝く光の城。『光の国のアリス』という新しい話ができそうな気がした。

が、中には頭上ではなく、キョロキョロと他人のバッグばかりを見ている男もいた。これは要注意。
「止まらないで! 歩いてください」
 警官が笛を吹いて怒鳴っている声もした。
 ま、どんな話にも敵役は登場するものだ。我慢、我慢。

 大混雑の通りを抜け、ホテルに戻ったら8時半を回っていた。
 みんなヘトヘトだったけれども、誰ひとりとして遅い夕食に文句を言わなかった。
 両親が元気なうちに、ミレナリオが再開するといいな。




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コメント (9)
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