これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

おいてきぼり

2008年11月20日 20時04分30秒 | エッセイ
 目が覚めたとき、あたりは暗闇だった。時間はまもなく午前0時になるところ……。

 どうしてこんな時間まで、居間の床に寝ていたのだろう?

 まったくわけがわからず、しばし考え込んでしまった。その日は私の誕生日だったので、小6の娘と夫から花をもらったあと、近所のイタリアンレストランで豪華なコース料理をいただいた。久しぶりのワインにはしゃぎ、帰宅してから何通かメールの返信をしたはずだ。だが、そこから先の記憶がない。
 寝室をのぞいてみると、夫と娘が温かい布団の中で、安らかな寝息を立ててぐっすり眠っている。私はかなりのダメージを受けた。

 ひどーい、どうして起こしてくれなかったの! 私の誕生日だっていうのに、二人でさっさと寝ちゃって……。あんまりじゃないの!

 二人の気持ちよさそうな寝顔を横目でにらみ、私はすごすごと洗面所に向かった。

 なんてみじめな誕生日……。

 寝ようとしたら、布団までもが冷たかった。

 翌朝、夫と顔を合わせても、ムカムカしておはようの挨拶しかしなかった。もっとも、普段から会話が弾まない夫婦だから、いつも通りと言えないこともなかったが。
「おはよう」
 娘が起きてくると、それまでの気詰まりな空気が一変する。しかし、その日の娘はやけに機嫌が悪かった。
「お母さん、昨日は何時に寝たの?」
 いきなり尖った声で話しかけてきた。
「うーんと、12時だったかな……」
「ミキは、お母さんのせいで寝不足なんだよ~!」
 どこが寝不足なのだ。あんなにグースカ眠りこけていたくせに。
「お母さんだって寝不足だよ。なによ、二人して先に寝ちゃってさ。どうして起こしてくれないのよ!」
 思わず不満をぶちまけると、娘は心外だと言わんばかりに、声を荒げて反論してきた。
「起こしたよ! 何度も何度も体を揺すって、耳元で話しかけて! でも、お母さんは全然起きなかったの!」
 ワインに酔った私は、9時頃から居間で眠り込んでしまったらしい。娘の声に反応する様子はなく、起きる気配ゼロだったものだから、ついに諦めて放置し二人で床に就いたという。
「でもね、心配になったからミキは何度も起きてお母さんを見に行ったの。11時くらいまで眠れなかったんだから! それなのに、それなのに、何で起こしてくれないのなんてひどいっ! キーッ」
 娘は怒り出し、金切り声を上げて私を罵りはじめた。ムキになっている娘を見て、私はこらえきれずにふき出した。

 そうか、そういうわけだったのか! 見捨てられてなくてよかった!!

 以来、朝寝坊を注意すると、娘にこう言い返されようになってしまった。

「何さ、お母さんだって起きなかったくせに!!」



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コメント (4)
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