これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

スカートの中

2008年11月09日 21時10分56秒 | エッセイ
 人に見せないことを前提としている場所に、人間性が表れるような気がする。
 たとえばスカートの中。
 隙のないおしゃれをする人はここにも手を抜かず、誰に見せるわけでもないのにレースで彩られた下着を身に着けていたりする。あっぱれである。
 そして、目的のためには手段を選ばないタイプの私は、寒いときにはこっそり毛糸のパンツを履いたり、腹痛があれば腹巻をしたりする。
 服もまたしかり。
 ブラウスの下にババシャツなんていうのもアリだ。

 どうせ見えないんだからいいじゃん!

 しかし、油断大敵とはよく言ったもので、いつかギャフンと言わされるときが来る。

 ある朝出勤したら、職場にレントゲン車が止まっているのに気づいた。
 そうか、今日は健康診断なんだっけ。
 思い出したとたん、一気に血の気が引いた。

 ガ、ガードル履いてきちゃった……!!

 見られて困るものは、他にもある。
 先日、パソコンが起動しなくなり、修理のためにサービスマンを呼んだ。
「では、ハードディスクから必要なデータを取り出したあと初期化して、直るかどうか試してみましょう」
 バイクでやってきた若いエンジニアが修理の手順を説明した。私と夫は彼に従い、データの取捨選択をすることになった。
「この『運動会』は必要ですか? ずい分容量が大きいですね」
「あ、それはバックアップを取ってあるからいらないです」
 こんな調子で個別にファイルを確認していたら、エンジニアの手が一瞬止まったような気がした。
「……この『砂希ちゃん様』というフォルダはどうしますか?」

 ゲッ!!
 こちらの思考も一時停止した。
 それは私のエッセイを保存してあるフォルダなのだ。まさか、他人に公開する日が来るとは思わなかったから、ふざけた名前をつけたのだった。
「そっそれは消して構いませんっ」
 私はすっかり取り乱して答えた。
「本当に消しても大丈夫ですか? 一応ファイル名を確認してみてください」
 頼んでもいないのに、彼はフォルダをクリックして、わざわざファイルを表示した。

  いいもの見たゾウ      きみはペット以下
  クチニニガシ        すべり込みだよ、人生は
  マッチョなピーマン     横取りセンセイ
  禁断の焼き鳥        男の敵
  猫の倍返し         ズボラー
 
「なに、この変な名前~!」とバカにされそうなファイル名のオンパレードだ。私は部屋からトンズラしたくなった。
 夫も彼も口を半開きにして、無言で画面を眺めたままだった。
 そのとき、前回の更新に必要な下書きファイルがあったことを思い出した。
「あ、『映画でワハハ』だけ残してもらえますか?」
「『映画でワハハ』ですね。わかりました」
 心の中はいざ知らず、エンジニアの彼はまったく気にしていない素振りをした。眉ひとつ動かさず淡々と作業を進めていく。
 こういうときは、相手が無反応のほうがいたたまれない気分となる。
 恥ずかしい思いをした甲斐あって、2時間後、めでたく我が家のパソコンは復活した。

「ああ、パソコンね。俺も赤っ恥をかいたことがあるよ」
 友人の伊東は、昨年、不調のパソコンを電気屋に持ち込み修理を依頼した。
 まもなく、自宅に電話がかかってきた。
「マイドキュメントに保存されている『ナースと乱パー』というデータが消える恐れがありますので、バックアップを取りましょうか?」
 伊東もまた、見えないところで何をしているのかわからない男だったのだ!

 さて、あなたのスカートの中やパソコンには、何の問題もありませんか?




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コメント (14)
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