これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

こんな荷物アリ?

2008年09月21日 20時30分36秒 | エッセイ
 その日の飲み会は、聖二の話で盛り上がった。
「うちのベランダで、伝書鳩がうずくまっていたんだよね。すっかり弱っていて飛べなかったから、このままじゃカラスに食べられると思って家に入れたんだ」
 聖二は、これまでに何度か、カラスが鳩や雀を襲う場面を見たことがある。エサにされては可哀想だと感じた。
 足の輪を抜き取り、連絡先を確認すると、ほんの数キロ先の住所が書いてあるではないか。聖二はすぐさま電話をかけてみた。
「もしもし、お宅の伝書鳩が飛べなくなっているので、うちで保護しているのですが、引き取りに来てもらえますか?」
 先方は慣れた口調で返答した。
「そうですか、ありがとうございます。では、宅配便を手配しますので、お手数ですがこちらまで送っていただけますか」
 聖二は面食らった。
「ええ!? 宅配便ですか? 生き物を送っていいんですか?」
「はい、いつもそうしているんです。鳩は、一週間くらい飲み食いしなくても生きられるから、大丈夫です」
 そういう問題か? と思ったが、聖二はあえて口を挟まなかった。
 やがて、宅配便の業者がやって来て、空気穴のついた箱に鳩を収納し、トラックに積み込むとあっさり去っていった……。

「へえ~、鳩を宅配便で送ることができるなんて知らなかったわ。ビックリね」
 陽子はそう言うと、一気にビールを空けた。他のメンバーも同じ意見だった。世の中には、まだまだ知らないことがあるものだ。
「宅配便は、やっぱり○マトだった?」
 真奈美がワイングラスを片手に尋ねると、聖二は笑って答えた。
「いーや、違ったよ。ネコの会社じゃ、食われそうな気がして頼めなかったんじゃないかぁ?」
 ドッと笑いが起きた。

 知り合いに、○マトのセールスドライバーをしている福田がいたので、早速聞いてみた。
「ああ、鳩ね。送れるよ。鳥かごに入れて、上と下だけ段ボールで覆うんだ。料金は大きさと重さで決まるから、普通の荷物と一緒だよ。ただし、死んでも保障はないけど」
 福田は淡々と説明し、つけ加えるように言った。
「配達ルートにペットショップがあると大変だよ。ウサギや犬、猫なんかも普通に送られてくるから、車内が臭くなっちゃう」
 特に臭うのがハムスターなんだそうな。鳩は臭わないけれども、クックッと鳴いてばかりでうるさいらしい。動物アレルギーのあるドライバーはツラいだろうな。

 もとは運輸会社の末端に過ぎなかった宅配業務が、今やこんなに発展するとは驚きだ。
 将来は、酔いどれ亭主や家出娘を連れ戻すのに、宅配便を使える日が来るかもしれない。
 ……なわけないか。



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コメント (6)
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