これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

たまごっちを探せ!

2008年06月18日 22時06分15秒 | エッセイ
「あれ? たまごっちがない」
 日曜日の朝だった。小学生の娘が、必死でたまごっちを探し回っている。散らかった机やテーブルの上、手提げの中などを何度も確認したようだが、どこにも見当たらない。1階の祖母の部屋まで捜索したのに、とうとう見つけることができなかった。
「いつ、なくなったの?」
 そう聞くと、娘は眉間にシワを寄せて考え込み、それからイヤな顔をして答えた。
「昨日はあったんだよ。……もしかして、ジョナサンに置いてきたのかも」
 たしかに、その前日、夫と娘はジョナサンへお昼を食べに出かけている。お店に問い合わせてみると、それらしい忘れ物があるというので取りに行くことにした。
「でも……もう死んじゃってるよね……」
 娘が暗い声でつぶやいた。たまごっちは、空腹や病気になってから12時間以上放置されると死んでしまうのだ。昨日の昼になくしたのであれば、遅くとも夕方には空腹となり、朝には液晶画面がお墓に変わっているはずだ。
 時計を見ると、すでに11時を回っている。これはもう、諦めるしかないと思った。
「見つかっただけでもよしとしなくちゃね。また1代目から育てなよ」
 私はがっかりしている娘をなぐさめて、ジョナサンに送り出した。
 
「ただいまぁ♪」
 しばらくすると、娘が夫に連れられて、やけに明るい声で帰ってきた。
「たまごっち、生きてたんだよ」
 得意そうに液晶画面をこちらに近づけ、笑顔で話を続ける。
 おお、元気に動いているではないか! 奇跡だ!!
 おそらく、アルバイトの若い女の子あたりが、ご飯やおやつを食べさせたりウンチを流したりと、世話を焼いてくれたのだろう。そうでなければ、生きているはずがない。
 さすがは外食産業、見事である。



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コメント (3)
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