これは したり ~笹木 砂希~

ユニークであることが、ワタシのステイタス

イヴ・サンローラン展 人混みとの戦い

2023年11月12日 21時38分38秒 | エッセイ
 素敵なドレスが展示されていると評判の、イヴ・サンローラン展のチケットを買った。



 比較的空いているであろう平日に見ようと、仕事の予定を調整して休みを取る。
「国立新美術館周辺でランチできる店はないかなぁ」
 検索すると、正統派古典料理を提供するレソールというフレンチレストランにピピッときた。最近では、ホームページの写真や雰囲気で、当たりの店を判断できている。
 当日はシャンパーニュを飲みながら、ランチコースを堪能した。





 熊本の「菊鹿」という白ワインも美味しかった。



 この白は、豊かで深い味がして、口の中いっぱいにブドウが広がっていくところが素晴らしい。フレンチによく合う一杯だった。



 デザートもいただき、満足して国立新美術館に向かうと、予想以上に混雑している。平日でこの人出では、土日はどうなってしまうのだろう。壁の説明文も、人の背中に阻まれてスムーズに読めない有様だった。デザイン画などのこまごまとした作品には、順番待ちの行列ができている。
「もういいや。ドレスだけ見られれば」
 幸い、マネキンが着ているドレスやスーツは行列のすき間から見ることができた。パーティーに着ていけそうなもの、普段使いに近いもの、防寒できそうなもの、マニッシュなものなど、実に多様な衣装が展示されている。
 アルコールが入り、眠気に負けそうなことも理由のひとつだが、もっと大きな要因は人混みが苦手だからであろう。ランチの満足感があった分、展覧会への期待度が下がったこともよくなかった。自分のペースで動けず、行列に並んでノロノロと見て回るのが苦痛で、私はさっさと歩き始めた。少々離れた場所から、衣装の全体像がつかめればよい。
 以前、アドベンチャーワールドのパンダたちを見に行ったとき、ブロ友さんから「そんなにあっさり見終わるなんて信じられない」と驚かれたことがある。パンダもドレスもじっくり鑑賞したいと思っているが、人垣ができていると、とたんに面倒になってしまうらしい。ひと目見たあとは、とっととその場を離れることしか考えられない。さすがに撮影可のエリアでは写真を撮ったが、館内には30分もいなかったと思う。





 展示の顔となったワンピースもあった。








 こんな雑な見方をしても、目の保養になるし、心に残る言葉も見つかった。
「私の目標は巨匠たちと自分を比較することではなく、最大限彼らに近づき、その才能から学ぶことだった」
 21歳で鮮烈なデビューを果たし、4年後には自身のブランドを発表したイヴ・サンローラン。その40年後に引退するまで、世界のファッションシーンをリードしていたというのに、何と謙虚な姿勢だろう。
 アルコールと人に酔い、ボーッとした頭でも、氏の偉大さは伝わってきた。
 展示は12月11日までだ。
 私のように混雑した場所が苦手な方は、18時以降20時まで開館している金曜・土曜を狙うことをオススメしたい。

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『ミステリと言う勿れ』原作を読む

2023年11月05日 20時57分26秒 | エッセイ
 田村由美さんは大好きな漫画家のお一人だ。『巴がゆく!』でファンになり、『BASARA』はリアルタイムに楽しませていただいたが、就職やら育児やらですっかり疎遠になっていた。
『ミステリと言う勿れ』が映画化されたことで、今はこの作品を描かれていると知り、読みたくなってオンラインで取り寄せた。



 ページを開いたところで違和感に気づく。
「そうか、今まで読んだ作品は、女の子が主役だったからかな」
 この久能 整(くのう ととのう)君が、驚異的な記憶力と観察力で、いくつもの事件を解決しちゃうのだからビックリする。特に便利な暮らしに慣れている現代人は、記憶の代わりにデジタルを使った記録ですませ、対面から得られる情報に疎くなっているので、スーパーマンに見えるのかもしれない。
 1巻は「ふむふむ、なるほど」と軽く読めた。整君のすごいところは、自分の思考を余すところなく言語化できる能力だ。私も結構勘の働く方だが、どうしてそうなるかを上手く説明できなくて、「何となく」とか「適当に」などとお茶を濁すこともある。整君にはそういうところがなくて、バッサバッサと謎をぶった切って進んでいくところに憧れる。
 だが、2巻、3巻と進むにつれ、登場人物が増えて人間関係を理解するのに手間取り始めた。
「ああ、今日はもうやめておこう。頭がついていかない」
 整君の理路整然とした謎解きを堪能するには、自分の頭も整理しないといけないのだ。髪型だけ整えたって、頭の中がグチャグチャだと面白さが半減してしまう。いや、髪型だって乱れていると家族に指摘されたのだっけ……。
 ひとまず、昼間からスパークリングワインを飲んで、理解力が低下しているときはやめておこう。次は最初に読むであろう5巻を一番上にして、私は全巻を届いたときの段ボールにしまい始めた。続きは、アルコールが入っておらず、頭が働くときに読むことにする。
 うれしかったのが、巻末の「たむたむタイム」である。



 田村センセイのお人柄なのだろうが、仕事中の裏話などが描かれていて、いつもクスッと笑ってしまう内容になっている。久しぶりに再会して、独身時代に戻った気分になった。読み終わったら娘がこの漫画を読むので、母子2代で楽しませていただこう。

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北京豆知識

2023年10月29日 17時22分55秒 | エッセイ
 中国は、近くにあるのに遠い国のひとつだ。
 でも、知人が何度か行き来しているので、話を聞いたら印象が変わった。
「今回はね、北京に行きました。時差は1時間ですよ」
 日本が午後6時だったら、北京は午後5時らしい。ヨーロッパやアメリカと違って、まさに隣国との印象を受けた。
「東京にいるのと同じように、快適に過ごせます。お店はほぼ同じですし。街並みの写真を見ますか」
 たしかに、衣料品もファストフードもブランド品も、たくさん揃っているようだ。
「あれ……」
 気になったのはこの写真である。



「スターバックスは絵でわかりますが、星野珈琲もあるんですか」
「いえいえ、星巴克珈琲というのがスターバックスなんです。当て字ですね」
「なるほど」
 勘違いして、スフレパンケーキを探す人がいるかもしれない。私などは特に危ない。
「代金は日本よりちょっと高いかもしれません。あちらは現金が使えない店が多いので、アリペイを入れました」



 ここで混乱した。
「33円? どうなっているんですか」
「人民元も¥で表示されるんですよ。1元が120円なので、660円ぐらいですね」
「えええ」
 いやあ、知らないことが多いと実感する。おみやげに、パンダとお菓子をいただいた。



「どれどれ、お菓子を食べてみよう」



 見た目からして美しいが、中身は何だろう。実は、ロウソクだったりして……。
「えーと、パッケージの漢字を検索してみようかな」



 どうも、チョコレートケーキの一種らしい。たしかに、中はこんな感じになっていた。



 甘さ控えめで、なかなか美味しい。2個入りだったので、残りは夫にあげたら、素直に食べていた。中国のお土産をいただくのは初めてかもしれない。
 スモッグがひどいとか、お腹を壊すなどという話も聞くが、「そんなことなかった」という声もある。万里の長城も一度は見たいし、旅行先の候補に入れていいかも……。
 中国が、にわかに近くに感じられてきた。
 我ながら単純!

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レディに一目惚れ

2023年10月22日 17時45分58秒 | エッセイ
 誕生日が近づいてくると、家族が気をつかって尋ねてくる。
「ケーキは何がいいの。前に欲しいのがあるって言ってたじゃない」
 そうそう。アトリエアニバーサリーのフェミニンなデコレーションで祝ってほしいと思っていたのだっけ。すかさず、ホームページを検索してみた。
「これがいい」



「こっちでもいい」



「どこで売ってるの?」
「池袋か新宿三丁目だね」
 答えながら、通勤定期を持っているのは私だけなので、自分で買うべきではないかと思った。なんか違う気もしたが、好きなケーキが選べるのだから「まあいいか」である。
 ケーキを買うには、日が暮れる前に職場を出なければならない。いつもより早く退勤した。池袋より新宿伊勢丹が近いので、まずはここから攻めたら、すぐにレディのケーキに出会えた。
「スイートレディホワイトをください」
「プレートをおつけしますか」
「はい」
 自分の誕生日とはいえ、「お誕生日おめでとう 砂希ちゃん」などとは頼みづらい。さすがに痛すぎる。無難に「ハッピーバースデー ママ」にした。
「買えた、買えた♪」
 帰宅するや否や冷蔵庫に入れる。クリームが溶けたら悲惨なことになりそうだ。真夏じゃなくてよかった。
 夕食の寿司をいただき、いよいよケーキが登場する。



「わあ、可愛い」
 よく見ると、HPとはドレスの柄が違うが、ウロコのようなデザインもまた素敵だ。
 後ろはこんな感じ。



 横からは……あまり見ない方がいいかもしれない。



「ロウソクをもらったからつけてみよう」
 クジャクの羽のように差してみたが、家族からは不評だった。
「何か千手観音みたいじゃない?」
 うん、まあ、そう言われればそうかも。



「ハッピバースデートゥユー」
 バースデーソングを歌ってもらい、ロウソクを吹き消す。誰かに祝ってもらえることが嬉しい。
 いよいよレディにナイフを入れるときがやってきた。胴体を抜かないと、うまく切れそうもない。3人で分けるにはちょっと大きいので、2日がかりで食べればよいかもしれない。



 カステラはフワフワ、クリームも軽くて、サクサク切れる。
 断面はこんな感じ。ドレスの中にもイチゴがあって、満足感が大きい。



 背が高いので、カットしたあとは寝かせた方が安心だ。



「いただきまーす! 美味しいね」
「うんうん、イケる」
 あっという間に食べてしまい、残りの半分に目が行った。
「全部食べちゃおうよ」
「そうだね」
 さすがにお腹いっぱいになったが、美味しいうちにいただけたのは正解だった。
 食後、ダラダラとネットサーフィンをしているときに思いつく。
「そうだ、Facebookにケーキをアップしよう」
 お祝いメッセージを寄せてくれた友人もいたので、お礼とともにレディを紹介したら、反応がすごかった。
「可愛い!」
「キレイなケーキですね」
 小学生のお嬢さんがいる友人からは「娘が誕生日のケーキをこれにして、って言ってます」なんてコメントも書き込まれ、レディは大人気である。
 ドレスがピンクのレディもいますからね。

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英文メールを書いてみた

2023年10月15日 20時56分45秒 | エッセイ
 勤務先の高校で、留学を希望する生徒からの申請書を受け取った。
「なになに、ニュージーランドか」
 留学の条件は、受け入れ先の学校が正規の高等学校であることが必須となっている。日本にある大使館に電話をすれば教えてもらえるので、ニュージーランド大使館を調べてみた。
「え? 直接、現地に掛けてくださいってどういうこと?」
 HPを見たら、日本ではなく、ニュージーランドの電話番号が載っていた。貧乏な公立校には無理だ。
「おっ、メールアドレスもあるじゃん」
 すかさずメールを送ってみる。日本語で、受け入れ校が正規の高等学校に相当するかを尋ねたのだが、どうもこの手の質問には対応していないらしい。
「ご自身で問い合わせされてはどうですか。当該校のアドレスはこちらです」
 そんな回答が返ってきたので、初の英文メールにチャレンジすることになった。
 まず、頼りにするのはパソコンが得意な職員だ。
「ああ、それなら、Google翻訳ですね。日本語を英語に翻訳してくれますから、メールに貼りつければいいだけです」
「へ~、そんなに簡単なんですか」
「ただね、仕上げは英語科の先生に見てもらった方がいいかもしれませんね」
「はーい」
 早速、Google翻訳にアクセスする。日本語から英語への翻訳を設定すると、こんな感じになった。



 私が日本の高校で教員をしていること、生徒がそちらに留学予定であること、正規の高等学校ですか、どうぞよろしくお願いしますといった言葉を並べ、タイトルは「Greetings(ご挨拶)」とした。合っているのかどうかわからないけど。
「英語の先生、英語の先生は……いないじゃん」
 待てずに送信ボタンを押した。奇妙なメールかもしれないが、気持ちは伝わるだろう。
「おおっ、返事が来た!」
 2時間後ぐらいに先方から返信があり、ドキドキしながら開封した。
「Hi Sasaki」
 理事に相当する立場の方からだったが、何とくだけた書き出しなのだろう。
 メールをありがとう、正規の高等学校です、その生徒のお名前を教えてもらえませんか、などと短い文が並んでおり、ちょっと感動する。
 翻訳を使わなくても理解できたが、文末の「Kind regards」という語の意味がわからず気になった。
「敬具?」
 どうも結びの言葉らしい。こちらの気持ちを受け止めてもらい、丁寧な対応をされたことを嬉しく思う。
「返事の返事を送るぞ!」
 こちらも結びの言葉を使ってみたい。「Many Thanks」が気に入り、ラストにつけてみた。
 再度、送信ボタンを押すと、遠いニュージーランドが近くに感じられ、笑みが浮かんできた。
 英語の先生に採点してもらわなかったけれど、一日でとても賢くなった気がする。

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コレステロール値が高いワケ

2023年10月08日 20時49分19秒 | エッセイ
 その日は隣接する区の中学校で上級学校説明会が行われた。校長同士が知り合いというご縁で勤務校が呼ばれ、私が学校説明のために出向くことになった。
「終わった終わった。中学生は可愛くていいね~」
 どの生徒も真剣に話を聞いてくれたので、こちらもつい熱が入り、口数が多くなる。終了後はのどがカラカラだった。
「おっ、もう5時か。お茶して帰ろう」
 初めの場所だと、どんな店があるかわからない。オシャレなカフェを見つけた瞬間、ここがよいのではと閃き、ドアを開けて突進した。紫芋のパフェとホットのカフェラテを注文しひと息つく。



「ん~、おいし。労働後のスイーツはやめられないね」
 食べながら思い出したことがある。そういえば、健康診断って来週じゃなかった?
 私の悩みはLDLコレステロール値が高いことだ。過去3年間の数値はこんな感じになっている。



 何で下がらないのか不思議に思っていたが、先日、NHKラジオの「健康ライフ」を聞いて納得した。
「LDLコレステロールの高い方は、脂の多い肉を鶏のささみや大豆製品に置き替えて、チーズ、卵など控え目にすることをオススメします」
 なるほど、脂ののったロースが好きで、毎朝玉子料理をいただき、ピザやトルティーヤが好物だと、この数値は当然というわけか。今まで、ほとんど自覚がなかった。ついでに生クリームにも格別な愛情を感じるのだから、脂質異常は当然であろう。
 食べ物だけでなく、運動についてもアドバイスがあった。
「一日7500歩以上は歩くようにしましょう。電車の中ではなるべく立つ、エスカレーターは使わず階段を上るなども効果があります」
 これは9月からやっている。てきめんに体調がよくなり、体重が落ちてお腹がスッキリしてきたが、継続すればさらに改善できそうだ。欲張った目標を立ててみたい。
 30代までは健康診断に備えて食事や運動を意識しなかった。何もしなくても、これといった異常がなかったからだ。しかし、40代以降は血糖値が高かったり、コレステロール値に戸惑ったりと、常に何らかのトラブルを抱えている。これらを放置すると血管がもろくなり、動脈硬化などの深刻な病気に発展していくというから、もっと粗食に舵を切らないといけないのだろう。
「でもまあ、パフェはたまのお楽しみってことで」
 まずは、鶏ささみの料理を勉強しましょうか。

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御朱印ください

2023年10月01日 22時07分08秒 | エッセイ
 涼しくなってきたので、武蔵野三十三観音巡りを再開することにした。
「そうだ、文化祭振替休業日の火曜日なんかいいかもね。空いていて」
 出かけるのはもっぱら土日ばかり。多くの人が働いている平日に外出することが、とびきりの贅沢という気がした。
 しかし、翌日は仕事である。遠出せず、西所沢駅から歩いて巡ることのできる4つのお寺だけにしよう。
 その一つに新光寺というお寺がある。ここの印象は強烈で忘れられない。
「おおっ、キレイな観音様だなぁ~」



 第一印象はよかった。入ってすぐの場所で、すかさずスマホを出して撮影する。写真の出来映えを確認するため画面を見たら、藪蚊が「ブウ~ン」と飛んできて、液晶にとまった。やたらと大きくて、触覚も足も真っ黒なのに、白い斑が点々としている。見た瞬間に鳥肌が立った。
「ヒッ」
 心臓がジャンプしていても、手は反射的に蚊を叩きつぶす。境内で、観音様の前なのに殺生してしまったことを反省し、仏罰が下りそうだと天を仰ぐ。
 心臓の鼓動が落ち着いたところでお線香を上げ、観音堂にお参りする。あとは御朱印をいただくだけだ。観音堂の隣にそれらしい建物があったので、インターホンを押してみたが何の反応もない。
「あれっ、誰もいないのかな」
 人の気配も感じられず、引き戸に手を掛けたら、スルスルと抵抗なく開いた。中にはお経を収める箱や小銭の入った受け皿などが重ねられており、閉店処理をしたままの状態となっている。どうやら、人はいないらしい。
 そして、人の代わりに、ここにも藪蚊が何匹も潜んでいた。まさか留守番をしているわけではないだろうが、私の脳裏には「三十六計逃げるに如かず」という言葉しか浮かんで来ず、脱兎のごとく逃げ出した。おかげで、虫刺されの被害はない。これも条件反射であろう。
 あとから知ったことだが、ネットで調べてみたら、このお寺は日曜日であれば有人となるようだ。それ以外の日は、セルフサービスで記入済みの御朱印を入手することができるようなことが書かれていた。残念ながら、私の目には蚊ばかりがクローズアップされ、御朱印を見つけることができなかったが。
「キイ~、悔しいな」
 先日、新聞にも、9月の長雨でボウフラが繁殖し、涼しくなったこの時期に蚊に刺されやすいとの記事が載っていた。御朱印欲しさに長居していたら、何カ所も刺されて難儀したに違いない。人間、諦めが肝心だ。
「新光寺には、12月の日曜日に行けばいいや」
 巡礼は、仏の心で回りましょう。

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9月の時候の挨拶は?

2023年09月24日 22時10分41秒 | エッセイ
 職場で使っているパソコン、東芝dynabookを開く。



 先日、近隣の小・中学校の校長先生宛に会議の開催文を送ろうと考え、文案を考えながらWordを立ち上げた。
「さて、9月の時候の挨拶は何だったかな」
 ビジネス文書は挨拶から始まるのが普通だ。検索すると、「秋涼の候」がトップに出てくる。だが、その日の都心の最高気温は33度。まったく涼しくない。
「ダメダメ。他のを探してみよう」
「秋晴の候」なるものもあったが、大気が不安定で雷雨に見舞われることもあり、これまた相応しくないようだ。「白露の候」にいたっては、熱帯夜の連続で朝露の影も形もないから、不適切極まりないと言わざるを得ない。
「そういえば、中学校の校長先生は教科が国語だったわね」
 ふと思い出して警戒する。アンポンタンであることは、バレずに済ませたい。
 季節外れの暑さは手紙にまで影響を及ぼしているようだ。職員室を出ると、廊下の熱気がムア~。ちょっと歩けば汗がジト~。
「ふうふう、7月に使う挨拶の方がピッタリじゃない?」
 たとえば、「盛夏の候」や「炎暑の候」などにしたら、校長先生たちは何度も首を上下に振って、力強く頷いてくれるかもしれない。まあ、やらないけれど。
 迷った挙句、私が選んだものは「仲秋の候」である。ちょっと風流で雅な雰囲気ではないか。
 そそくさとプリントアウトした開催状を封筒に収め、ポストに投函したら、土曜日から涼しくなってきた。29日の金曜は中秋の名月が拝めるようだし、やっと秋らしくなるのかと嬉しく思う。
 クーラーなしで寝られるとは、幸せだなぁ!

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群馬土産ひもかわうどんを食らう

2023年09月17日 21時27分52秒 | エッセイ
 その日の昼食は、天神峠に行ったときに購入したひもかわうどんにした。



「なになに、できるだけ大きな鍋にお湯をたっぷり沸かしてくださいってか」
 ネットで作り方を確認すると、幅広うどんのためか、通常よりもゆとりを持って茹でることが推奨されている。ならば、我が家で一番ビッグサイズのパスタ用鍋がよかろう。推定水量は10リットル。これなら文句なかろうと自信を持って臨んだが、結論からいえば甘かったようだ。
「沸騰したら、麺がくっつかないように1枚ずつお湯に入れるわけね」
 ドドッとまとめて放り込んだら、ミルフィーユになるのであろう。上から丁寧に剥がし、グラグラしている湯の中へ沈める。ここまではオーケー。茹で時間は10分なので、鍋の様子を見ながらじっと待つ。
「あれれ、麺がすごく膨らんできたよ」
 茹でる前は2cmほどの幅だった麺が、倍ぐらいの太さになってきた。こうなると、麺が鍋いっぱいに広がって、身動きがとれなくなる。入れ過ぎたかと後悔しつつ、苦しまぎれに箸でちょこちょこかき混ぜた。
「うーん、10リットル入れても4人前は無理みたい。麺を分けて煮物の鍋に1人前、パスタ鍋に3人前にすればよかった」
 次回があることを前提に、あの手この手を駆使したい。
 4cmに膨れ上がった麺は10分後に茹で上がり、水洗いをした後、ザルに上げる。そうめん用の上品な器では収まり切れないので、味噌汁のお椀を使った。



「わあ、すごい」
 家族を呼ぶと、ワンタンの皮が長くなったような麺に感嘆の声が上がる。見た目のインパクトが強烈なのは間違いない。ネットには「麺というよりラザニア」といった評価もあり、その通りだと頷いた。
「美味しいね」
「うみゃい」
 反応は上々だ。七味を掛けても掛けなくても、うどんの旨味が口の中に押し寄せてくる。計算外だったのは、1本を切らないように茹でた割に、口に入る限界は3分の1本であったことだろうか。最初から半分程度に切って茹でることをオススメしたい。
 混みあった鍋の中を箸でかき混ぜたせいか、裂けてしまった麺もあった。



 扱いは丁寧に、と自戒する。
 10月には紅葉を見るため、ここを再訪したいと思っている。
 土産はもちろん、ひもかわうどん!

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牛肉のない牛丼をことわざで表すと

2023年09月10日 09時25分59秒 | エッセイ
 平日の夕食作りは夫に任せているが、週末は自分で好きなものを作る。毎週土曜日、スーパーに行って土日分プラス翌週の弁当のおかずを買うのが常だ。
 しかし、昨日はどうしようもない買い忘れをした。
「お昼は牛丼にしようと思ったのに、牛肉スライスを忘れた……」
 紅ショウガやら玉ねぎやらは買ったというのに、何たる失態。かといって、もう一度スーパーに行く元気はない。
「小さなことはできたのに、肝心なものを忘れるってことわざがあったな」
 このパターンに一番近いのは「仏造って魂入れず」だろうか。牛丼作って牛肉入れず、という偽ことわざが浮かんできたが、それはもはや牛丼ではないと一人でツッコミを入れた。
「そうだ、弁当用に買った牛モモステーキ肉があったじゃない!」
 焼き肉用の中厚切り肉がないときは、ステーキ用の肉を5mm厚さのそぎ切りにすることがある。月曜にピカタを作ろうと思って買った肉だが、冷凍庫の豚や鶏に変更すればすむ話だ。これをさらに薄く切って牛丼用にすれば、円満に解決すると閃いた。
「おいし~い! 今日の肉は余計な脂がなくてさっぱりしているね」
 知らん顔をして食卓に並べたら、家族から褒められた。牛丼詐欺だな、これは。
 失敗は昼だけではなかった。卵が結構たまっていたので、夕食の副菜は卵の信田煮(しのだに)にしようと思っていた。信田煮には油揚げがいる。湯通しして口を開き、卵を割り入れたら楊枝で口を閉じ、砂糖醤油のつゆで煮るだけという手軽さがよい。


  (料理本からのイメージ)
 鉄分、カルシウムなどがバッチリとれる上、まろやかで家族も大好きだ。しかし、エコバッグの中には油揚げがなかった。
「しまった、これも買い忘れかぁ~!」
 うっかりにも程がある。これをことわざで表すと、「画竜点睛を欠く」ではないか。信田煮、油揚げを欠く。ぴったりではないが、一番近い気がした。
 この場合はメニューを変更しないと無理だろう。卵を消費できる別の料理を考えていたら、ジャガイモが1個だけ残っていたことを思い出した。
「卵とジャガイモを使った料理といったら、スパニッシュオムレツかな」
 レシピを検索する。ピピッときたのが、理恵蔵さんという方の「スペイン人に教わったスパニッシュオムレツ」である。材料がシンプルな上、別の作業をしながら作れる点に惹かれた。
 玉ねぎのみじん切りをたっぷりのオリーブオイルに入れ、弱火で放置、あめ色になったらさいの目切りのジャガイモを入れ、フタをして放置、ときどき塩コショウをして混ぜ混ぜ。ジャガイモがホクホクになったら取り出して、ボウルに割り入れた卵液と合わせ、フライパンで焼けばできあがり。



「珍しいね、オムレツなんて」
「いい味」
 こちらも家族に好評だった。理恵蔵さん、ありがとうございました。
 何とかなったからよかったけれど、買い物リストは慎重に作らなくちゃね。

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バーモントカレー甘口に限る

2023年09月03日 17時26分04秒 | エッセイ
 昨日、母と墓参りに行ってきた。今回は姉と娘のミキも来てくれて、4人で賑やかに墓石を拭き、花と線香を供えてきた。
 祖母の命日に合わせ、5月にお参りしたときは、雑巾がない、ゴミ袋を忘れたなどと失敗の連続だったが、今回はバッチリ。正午を回ったあたりで帰りのタクシーに乗り込んだ。
 お昼は蕎麦にしたくて、運転手にどの店がよいかを聞いてみた。
「駅前には2軒あるんですが、1軒はやめた方がいいです。もう1軒はまあまあだけど、わざわざ行くほど美味しいわけじゃないですよ」
「そうですか。じゃあ、まあまあの店で下ろしてください」
「わかりました」
 実に正直な運転手さんだった。やはり地元に人に聞いてみないと、裏事情はわからない。
 駅から2kmほど離れた場所には、有名な蕎麦屋があるらしいが、そこまでしなくてもよいだろう。
「こちらが無難な店ですよ、どうぞ」
 車から下りて店の入口を開けたら、すでに満席だった。せっかく教えてもらったけれど、これでは入れない。かといって、別の蕎麦屋に行く気はないので、眉がㇵの字になる。同じ表情を浮かべた姉と相談した。
「どうしようか」
「蕎麦じゃなくていいから、何か食べられるところを探そう」
「カレーでよければ、いつもお茶する店にあるよ」
 そんなわけで、5月にも来たカフェでランチということになった。全体的に駅前の人出は多かったが、運よくこちらは席が空いていた。81歳の母にメニューを説明する役は娘に任せて、私も食べたいものをチョイスする。うーん、肉が食べたいな……。
 まずは姉が口火を切る。
「みんな決まった? アタシも野菜カレーにするわ」
「ミキはハヤシライス」
「角煮カレー」
「おばあちゃんも野菜カレーだって」
 母が「ご飯は少なめにして」とつけ加える。
「わかった」
 あら、ご飯の量を減らすなんて珍しい……。母は年の割にはよく食べる方なのだが。そういえば、昨年4月に腸の手術をしているし、年々体力は落ちているだろうから、もっと気をつかわないといけないのかもしれない。
 そんなこんなで体調に気を取られ、母の味覚をコロッと忘れていた。
「お待たせしました」
 角煮カレーが来たぁ~!



「ご飯少なめの野菜カレーです」
「あ、こっちです」
 母の前にトレイを誘導する。野菜が意外に大きくて、箸を使った方が食べやすいようだ。箸を持ったついでなのか、母は先に野菜を全部食べてしまい、ご飯とルーが残っていた。スプーンに持ち替え、ご飯を2~3回口に運ぶと、困ったようにつぶやく声が聞こえた。
「あれえ、これは辛いね」
 そこでやっと思い出した。母は山葵の辛さなら平気なのだが、カレーはハウスバーモントカレーの甘口でないと厳しいのだ。この店のカレーは、実際には中辛程度なのに、ひと口食べては水を飲み、ツラそうに食べている。野菜はひとつも残っておらず、ご飯を減らしたことも裏目に出たのだろう。ハヤシライスを勧めればよかったと後悔した。
 まだ私が小学生だったとき、母の友人である美容師さんの店に遊びに行ったことがある。髪を切ってもらって、夕飯にカレーをいただいた。だが、このときも母は辛くて食べ切れず、母のカレーに慣れていた私も口の中が燃えていた。
「食べさせたくなくて、うんと辛くしたんだ。もう友達じゃないよ」
 母はそう決めつけ、帰り道では悪口が止まらなかったが、私は違うと思った。きっと、美容師さんの家では普通の辛さなのだけど、母にとって過酷な辛さだっただけ。学校の給食だって、カレーはまあまあ辛いのだから、中辛以上にチャレンジしていこうと子どもなりに考えた。今では辛口だって問題ない。

「ふー、食べられたよ」
 頑張ったようで、母の皿がからっぽになった。多少はホッとしたけれど、無理をさせてしまったかと気が引けた。
 調べてみたら、カレーが辛いときには、メープルシロップやハチミツをかけると食べやすくなるらしい。
 次の墓参りは1月を見込んでいる。
 ハチミツは……一応持っていく?

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霧の谷川岳

2023年08月27日 22時52分25秒 | エッセイ
 コロナが5類引き下げとなってから、親友の幸枝と出かける機会が増えた。
「今度、天神峠に行ってみない?」
「どこにあるの、それ」
「上毛高原からバス。割に近いよ」
「ふーん。行ってみたい」
 よくわからなかったので、ネットで調べてみたら、麓の土合口駅まではバスで行き、そこからロープウェイに乗って天神平駅に上がり、リフトか徒歩で天神峠に到着するようだ。それはともかく、天神平から分岐するもう一つの道を行けば、あの谷川岳に登れるということもわかり驚いた。
「えっ、すごい。せっかくだから、ちょっとだけ谷川岳も登ってみたいな~」
 アウトドア派の幸枝は何度も谷川岳を制覇している。どんなものかと聞いてみたら、予想に反して彼女はいい顔をしなかった。
「初心者コースって書いてあるけど、岩場が多くて危ないよ。下りられなくなって泣いている女性もいたし、毎回のように救助のヘリが飛んでるからね」
「ふーん」
「しかも、登ったと思ったら下りになって、また登り直し。それの繰り返しだけど大丈夫なの」
「……大丈夫じゃないかも」
 ちぇ~っと思ったが、足手まといになってもいけないので、今回は素直に諦めることにした。山は逃げないから、もっとコンディションのよいときにしよう。
 当日、東京都心の最高気温は37度だった。汗をかきかき電車に乗り、大宮から新幹線に乗って上毛高原に着く。まずは、標高746mの土合口駅からロープウェイに乗った。
 料金表を見ると、「ペット800円」との表示に気づき、クスリと笑う。犬などは喜んで走り回ることだろう。



 しばらくすれば、標高1319mの天神平駅に着く。一気に573mも上がってきたわけだ。ロープウェイから外に出ると、空気がひんやりしていた。
「うっ、寒ッ!」
 それもそのはず、霧が深くて景色が霞んでいる。





「遠くが見えない」
 展望の頂と書いてある案内板を目にして、どこがだよと毒づいた。



 そんなときでも幸枝は楽しんでいる。
「じゃあさ~、まず、あの鐘を鳴らしてみよう!」



 カランカラーンと乾いた音が響き、トレッキングが始まった。行く手は霞んでいるけれど……。



 幸いなことに雨は降りそうにないが、山も見えない。
 めげずに、上り坂を歩いていく。





 途中で、石の上に載っている犬の糞にギョッとした。踏んでしまったら大変じゃないかと顔をしかめる。街中でも山の上でも、糞の処理はしっかりしていただきたいものだ。
 標高が高くなるにつれ、徐々に景色が変わってきた。





「おお~、何か山らしい景色が見えてきた!」
「霧が晴れてきたね」





 まもなく天神峠。天神平駅からリフトに乗れば、山道を歩かずに来られるので、スカート姿の女性や軽装の男性も見えてくる。苦しい思いをしたくはないが、山の空気や景色を堪能したいという方にはいいだろう。
「着いたっ!」
 標高1500mジャストの天神峠に到着だ。181m上がるのに約40分かかった。



 しかし、霧しか見えない……。
 1977mの谷川岳が見える絶景スポットも、ひたすら白い。



「うーむ」
「むむむ」



 展望台に上って、「そのうち霧が晴れるのでは」と期待し待ってみたが、一番よく見えたときでもこの程度。



 私に登られたくなくて、谷川岳は姿を見せてくれないのかも。拒否されると「なんでよ~!」と余計に燃えてくる。
「今日は無理だね」
「うん。神社でお詣りして帰ろう」



 諦めて下山を始める。帰りはゲレンデから下ってみた。こちらは割に明るい。





 谷川岳は一部しか見えなかったけれど、他の山が見えたから気分も上がる。山には人の気持ちを高揚させる何かがあるから、山岳信仰なるものが生まれたに違いない。毎日、仕事で小さいながらもトラブル多発でストレスを抱えているが、「そんなものは、どうでもいい」と割り切れるようになるのが不思議だ。
 ロープウェイに乗る前にランチをいただく。シチューのパングラタンにした。



 ちなみに、おみやげは幅4cmのこのうどん。



 埼玉県鴻巣市の川幅うどんよりは細いが、家族には「おもしろい」と好評だった。まだ食べていないけど。
 さあ、次こそ、谷川岳につながる道に行ってみよう。

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むくみが悩み

2023年08月20日 21時35分27秒 | エッセイ
 むくみやすい体質は損だ。
「ああ、また靴下のあとがついてるよ。指輪も抜けないし、キーッ!」
 夏は特にいけない。汗腺が発達していないのか、あまり汗をかかない割に、喉が渇くものだから、どうしても水分を多くとりがちだ。仕事を終えて履き替えた靴がきつくなり、翌朝は顔が腫れぼったくなる。運動しても、出た水分より飲んだ水分の方が多くて、かえって体重が増えると虚しい。
 唯一の救いは熱中症になりにくいことだろうか。体に水分をため込んでいるので、暑い部屋で掃除をしても、料理をしても、具合が悪くなることはない。
「もしかして、暑い部屋にいるから、むくんでしまうのかも?」
 どちらが先なのだろうか。体脂肪計に乗ると、16%とか17%という数値が表示されるので、やはり、余計な水分で重くなっているようだ。
 友人から「ラクダみたいだね」と言われたときは苦笑するしかなかった。猛暑、酷暑の毎日に適応しようと、体が変化したのかもしれない。でも、ラクダではちょっと……。
「むくみを撃退する食べ物ないかな」
 心当たりがないこともない。たとえば、血行をよくする玉ねぎなどは、間違いなくプラスに働くだろう。生食の方が効果大と知り、ネットでレシピを見て「酢玉ねぎ」を作ることにした。
 まずは玉ねぎを薄切りにする。



 これに酢・水・ハチミツを煮立てたものをかけ冷ます。
 保存容器に入れ、6時間たったら食べられる。



「うん、酸っぱくて美味しい。これだったら簡単だから続けられるわ」
 玉ねぎは一度に4分の1個、約50gを食べないと効果が期待できないという。毎日せっせと食べていたら、尿量が増え、体が軽くなってきた。これはいいと思っていたのに、1カ月ほどで問題が起きた。
「いたたたた、歯が、歯が」
 私は歯が弱い。虫歯の治療跡だらけで、知覚過敏になっている箇所も多いせいか、酢との相性が悪かった。硬いものを噛むと痛みが走り、料理方法を変える必要に迫られた。
「じゃあ、焼き玉ねぎかな」
 次にチャレンジしたのは玉ねぎのソテーだ。
 薄切りにするところは同じだが、油を敷いたフライパンに入れる点が違う。



 そのまま火をつけ、フタをして弱火で蒸し焼きにする。



 10分ほど経ったらかき混ぜて、さらに10分焼けば甘味が出て食べやすくなる。
 これに醤油をかけ、かつおぶしをまぶせばでき上がりだ。



 粗熱がとれたら容器に入れる。といっても、結構な量なので、それなりに大きくないと入りきらない。それでまた、酢玉ねぎの瓶を使った。



「液体じゃないのに、何かおかしくない?」
 家族からは不評だったけれど、他に選択肢はない。知らん顔をしてやり過ごした。
 かくして、むくみは順調にとれている。体重もかなり減ってきた。お腹周りもスッキリして体が軽い。血行がよくなると、肌も若がえり、40代に見られることもある。
 私と同様に、むくみやすい方はぜひお試しを!
 それにしても、この暑さはいつまで続くのだろう。
 もし、クーラーが壊れたりしたら、玉ねぎをやめてラクダに戻ろうっと。

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日傘の買い替えどき

2023年08月13日 20時32分17秒 | エッセイ
 夏の日傘は必需品。
 紫外線が気になる年代から使ってきたが、しばらく経つと破れたり折れたりして買い替え、今のものは6代目ぐらいだ。



 刺繍が気に入り、できるだけ長く使いたいと思っている。



 傘だけでなく、収納袋の防水性も高く、濡れた状態でバッグにしまっても安心できる。



 ところが、結構、トラブルが起きて、私に買い替えを迫ってくる。
「あれえ、柄が畳めない……」
 最初の問題は伸ばした柄が縮まらないというものだった。布の部分は畳んであるのに、バッグから鶏の骨のような柄がニョキッと顔を出し、どうにも見苦しい。
「滑りが悪くなってるからいけないんだ。オイルを塗ってみよう」
 解決策がひらめく。さすがに天ぷら油はやめた方がいいだろうと、スクワランオイルを塗ってみる。すると、スムーズに動くようになり、伸びた柄を押し込もうと悪戦苦闘することはなくなった。
 次に、伸びた柄を固定できないというトラブルに見舞われた。
 ある日、傘を閉じたときに「ポロッ」と落ちていく何かを見た。すぐにはわからなかったのだが、伸ばした柄を固定するための金具だったらしい。



 ボール状のパーツがついていた場所に丸い穴が空いていたので、「これはまずい」とわかった。駅に着き、傘を差しても、「ひゅうぅ~」と柄が縮まってしまう。このぐらいの、冗談みたいな長さになってしまい、非常に困った。



 きっと、すれ違った人から「何だアレ、あはは」と指を差されるだろう。うーむ。
「そうだ、金具があったところを持てばいいんじゃない?」
 取っ手ではなく、少々上の部分を持てば、この問題もクリアだ。はっはっは。
 しかし、最大の問題を知ってしまい、ちょっと困っている。
「笹木先生、UV加工には寿命があるので、日傘は毎年買い替えるものなんですよ」
 若手の女性職員からやんわりと、紫外線対策について指摘を受けた。調べてみたら、たしかにそんなことが書いてある。1年とは書いていないが、2~3年でUV加工の効果がなくなるため、買い替えのタイミングを迎えるものだという。
「えー、今年でもう3年目だから、効果ないかも。まだ使えるのにどうしよう」
 ひとまず、9月まではこれでいこう。
 来年は……同じ傘を死に物狂いで探してみようかな。

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しょっぱいマンデリンフレンチ

2023年08月06日 21時37分00秒 | エッセイ
 毎朝、職場に着くとすぐにコーヒーをいれる。
 マンデリンフレンチの豊かな風味が口いっぱいに広がり、幸せな気分になったところで楽しくない仕事に取りかかる。仕事が嫌いなわけではないが、休日に家でのんびり過ごす方がよいに決まっている。特に月曜日は気合いが必要だ。
「ぶつくさ言ってないで、さあ頑張ろうか」
 その日も、エンジンがかかったはずだったが、何やら左の奥歯がジンジン脈を打っていた。
「いたたたた」
 どうやら熱いコーヒーが歯に沁みたようだ。上の奥歯、ちょうど犬歯の隣あたりが痛い。虫歯だったら厄介だが、気をつけて様子を見なくては。
 モチベーションはイマイチ上がらなかったが、その日はそれ以上悪くならなかったからまだよかった。
 問題は次の日だ。お約束のモーニングコーヒーを三口ほど飲んだところで、上の奥歯だけでなく、下の奥歯まで痛くなってきた。
 ズキズキ、ズキズキ。
 痛みと連動して左目から涙がブワッとにじむ。頬を伝って口に入り、しょっぱい味がした。これはただ事ではない。
「ひー」
 涙だけではなかった。左耳付近のリンパも腫れているし、肩も凝っている。これは医師に診てもらわないとダメだろう。私は涙目で電話を掛け、歯科の予約を取った。
「笹木さん、これは知覚過敏ですね」
「あらまあ、またですか」
「磨くとき、どうしても左側に力が入っちゃうんでしょう。何本も削れています」
「ああ……」
 心当たりはある。歯ブラシを替えたせいだ。「やわらかめ」と表示されているものを買ったのだが、なぜか、それまで使っていた「ふつう」表示のものより硬かった。そのときは、疑問を感じながらも「まあいいや」と思ってしまった。力を抜いて磨けば平気だろうと考えていたが、朝の慌ただしい時間だと雑になる。そこで傷ついたのかもしれない。
「薬を塗っておきますから、来月また見せてください」
「はい」
 医師が塗ってくれたものは、白いコーティング剤のようなものだった。完全に沁みなくなったわけではないが、通院前に比べれば9割減といったところか。あとは時間の経過とともに軽くなっていくはず。
「あー、腹立つわぁ。あの歯ブラシは掃除用にしてやる」
 硬い分、さぞかし汚れが落ちるだろう。
「で、新しい歯ブラシはどうしよう」
 もしや、買い置きがあったかもと引き出しを漁ってみる。
「あったあった」



 パッケージには「ふつう」と書かれたものが見つかったが、これは夫に使ってもらおう。
「他のないかな」
 別の引き出しを開けて探してみると、それらしいものが目に入る。
「ややっ」



 ラッキーなことに、以前使っていたものと同じメーカーで「やわらかめ」のものが見つかった。
 買い置きをすっかり忘れ、「ヘッドの小さいやつにしようかなぁ」と安易に買い替えたことが間違いだったわけだ。
「最初から、これを使えば痛い思いをしなくてすんだのに」
 唯一の利点は、痛くて食欲が抑えられ、余計なものを食べずに済んだことかもしれない。
 ようやく涙がとまってきた。
 明日はきっと、熱いマンデリンフレンチが美味しく飲めるはず!

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