働き方改革関連法ノート

労働政策審議会(厚生労働大臣諮問機関)や厚生労働省労働基準局などが開催する検討会の資料・議事録に関する雑記帳

兼業・副業「自己申告制」未来投資会議提案

2020年06月16日 | 副業・兼業 労務管理
兼業・副業促進案として「労働者の自己申告制度」
未来投資会議(第39回)が本日(2020年6月16日)午後3~4時、官邸4階大会議室で開催された。配布資料によると、議案(1)兼業・副業の促進では兼業・副業の促進に向けた対応案として「労働者の自己申告制」が提案された。

今後、厚生労働省・労働政策審議会で労働基準法を改正する動きが考えられるが、兼業・副業の勤務時間をめぐり「働く人」への過度の負担にならないか、慎重な検討が必要。

また、「申告漏れや虚偽申告があっても企業の責任は問わない」という制度あって、つまり、ケースによっては企業の安全配慮義務や健康配慮義務が問われないといった制度であり、過重労働につながるといった懸念も強い。

未来投資会議(第39回)議題

(1)兼業・副業の促進
(2)フィンテック/金融
(3)デジタル広告市場
(4)今後のウィズコロナ、ポストコロナ時代の成長戦略の立案に向けた方向性

未来投資会議(第39回)基礎資料抜粋
兼業・副業の意向

・会社員へのアンケート調査によると、 新型コロナウイルス感染症の感染拡大後の2020年4~5月にかけて、現在の仕事・働き方の問題を解消する、又は満足度を高めるための取組として「副業」を挙げる割合は66%、「フリーランス」を挙げる割合は46%まで上昇。

・その背景として、リモートワークの進展等によって就労時間が減少し、自分で使える余裕時間が生み出されていることと関連していると推察される。

ウィズコロナ、ポストコロナの働き方の方向性
・会社員へのアンケート調査によると、ウィズコロナ、ポストコロナの働き方の方向性として、「兼業・副業の一般化」が 60.1%となり、「時間・空間の制約からの解放」(81.6%)、「企業内外を自在に移動する働き方の増加」(60.7%)とともに高い割合である。

兼業・副業の促進に向けた対応(案)
1.兼業・副業の現状と課題
・人生100年時代を迎え、若いうちから将来を見据えて、自らの希望する働き方を選べる余地を作っていくことが 必要。ウィズコロナ、ポストコロナの時代の働き方としても、兼業・副業などの多様な働き方への期待が高い。

・実態をみると、兼業・副業を希望する者は、近年増加傾向にあるものの、他方、実際に兼業・副業がある者の数は横ばい傾向であり、保守的。

・背景には、労働法制上、兼業・副業について、労働時間を通算して管理することとされている中、「兼業・副業先での労働時間の管理・把握が困難である」として、兼業を認めることに対する企業の慎重姿勢がある。

・このため、労働時間の管理方法について、ルールを明確化することが必要。

2.労働者の自己申告制について
兼業・副業の開始及び兼業・副業先での労働時間の把握については、新たに労働者からの自己申告制を設け、その手続及び様式を定める。この際、申告漏れや虚偽申告の場合には、兼業先での超過労働によって上限時間を超過したとしても、本業の企業は責任を問われないこととしてはどうか。

3.簡便な労働時間管理の方法について
・本業の企業(A社)が兼業を認める際、以下(1)(2)の条件を付しておくことで、A社が兼業(B社)の影響を受けない形で、従来通りの労働時間管理で足りることとしてはどうか。

(1)兼業を希望する労働者について、A社における所定の労働時間(*1)を前提に、通算して法定労働時間又は上限規制の範囲内となるよう、B社での労働時間を設定すること(*2)。
*1 「所定の労働時間」とは、兼業の有無と関係なく、各企業と労働者の間で決められる、残業なしの基本的な労働時間のことで、通常は、法定労働時間の範囲内で設定される。
*2 B社において36協定を締結していない場合は、「A社における所定の労働時間」と「法定労働時間」の差分の時間、B社で兼業可能。B社において36協定を締結している場合は、当該協定の範囲内で、「A社における所定の労働時間」と「B社の36協定で定めた上限時間」の差分の時間、B社で兼業可能。

(2)A社において所定の労働時間を超えて労働させる必要がある場合には、あらかじめ労働者に連絡すること により、労働者を通じて、必要に応じて(規制の範囲内におさまるよう)、B社での労働時間を短縮させる(*)ことができるものとすること。
*B社の労働時間の短縮について、労働者から虚偽申告があった場合には、上限規制違反についてA社が責任を問われることはない。

・また、これにより、A社は、従来通り、自社における所定外労働時間(*)についてのみ割増賃金を支払えば足りることとなる。
*企業によっては、所定労働時間を法定労働時間より短く設定し、所定外労働時間であっても法定労働時間内であれば割増賃金を払わないこととしている場合もあるが、その場合は法定労働時間を超える部分。

第39回 未来投資会議 配布資料(首相官邸ホームページ)

「兼業・副業で自己申告制 政府、企業の責任問わず」日本経済新聞
日本経済新聞電子版(2020年6月16日配信)によると、「厚生労働省の労働政策審議会で検討し、年内に正式に結論をだす」と報じた。また「兼業・副業に関心を持つ人は増えているが、導入に慎重な企業は多い。副業先での労務管理の責任を問われかねないためだ」と伝え、安倍晋三首相の会議で「本業の企業が兼業先の影響を受けずに、労働時間や割増賃金の管理ができるようルール整備を開始したい」と発言したことを紹介した。

兼業・副業で自己申告制に関する「未来投資会議の案では労働者が2つの会社の仕事が残業時間の上限規制に収まるよう調整する。本業の残業が増えれば、もう一方の労働時間は抑える。労働時間は通算し、法定外労働時間が発生した分は、どちらの企業も割増賃金を払わなければいけないルールは変えない」とされている。

なお、日本経済新聞は「政府の規制改革推進会議は昨年(2019年)、労働時間を通算する仕組みの見直しを提言していた。副業側の企業も割増賃金を支払わなければいけないことが、副業の受け入れに二の足を踏む要因になっているためだ。ただ、過重労働につながるとの声もあり、未来投資会議は現状を維持する案にした」と付け加えた。(日本経済新聞電子版、2020年6月16日配信)

「兼業・副業の労働時間は自己申告で 未来投資会議、時間管理の考え方まとめる」毎日新聞
毎日新聞政府も未来投資会議において政府が「兼業や副業の労働時間は労働者の自己申告制とし、申告に漏れや虚偽があった場合、企業は責任を問われないとする案を示した」と報じ。「兼業・副業を認める条件として、本業と兼業・副業を通算した労働時間が法定労働時間や上限規制の範囲内となるように、本業の企業が兼業・副業に伴う労働時間を設定したり短縮させたりできるという方針も提示した。割増賃金は自社での残業などについてのみ支払うこととしている」と伝えた。

また、毎日新聞は「労働基準法は複数の職場で働く人の労働時間は通算すると定めている。厚生労働省の検討会は2019年8月、労働時間を通算して把握することは実務的に困難と指摘し、労働者の自己申告制を選択肢の一つに挙げていた。安倍首相は労働政策審議会(厚労相の諮問機関)で早期に結論を出すよう指示した」と、さらに「複数の職場で働く人の労災を認定する際、全ての労働時間を合算した残業時間を基に判断する改正労災保険法は今国会で可決、成立した。9月1日に施行される見通し」と報道した。(毎日新聞電子版、矢澤秀範記者、2020年6月16日配信)


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