荻野洋一 映画等覚書ブログ

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プエルタ追悼

2007-08-31 03:20:00 | サッカー
 MEDIAPRO社とAUDIOVISUAL SPORT社の問題はさておき、悲しむべき重大な出来事が起きてしまった。すでに日本でも各メディアが報じているように、セビージャのアントニオ・プエルタが、8月28日火曜日、午後2時半、ビルヘン・デル・ロシオ病院で亡くなった。享年22。土曜日のヘタフェ戦の途中に突然しゃがみ込み、すぐに意識不明となった。DF仲間のドラグティノヴィッチが慌てて指を口に入れ気道を確保し、ドクター団が飛んできた。いったんは息を吹き返し、拍手の中、歩いてロッカールームに下がったプエルタだったが、ロッカールームで再び意識不明となり、ICUでの懸命の治療も虚しく帰らぬ人となってしまった。

 スペイン全土が悲しみ打ちひしがれていることについては、各メディアで数多く報じているので、そちらを参照していただければよいのではないかと思うが、選手としての彼は、非常に有望な左サイドバック、または左サイドハーフであった。
 すでに22歳にしてフル代表に呼ばれるようになってきていたし、クラブにおいては、左サイドバックとしては、元主将のダビ、フランス代表エスキュデ、セルビア代表ドラグティノヴィッチとポジションを争っており、左ハーフとしては、ブラジル代表アドリアーノ、ポルトガル代表ドゥダとポジションを争っていた。
 上記のごとく非常にハードな立場に立たされつつも、プエルタはおのれのキャリアを、持ち前の切れ味鋭いドリブル突破と、ライン際からの意外性のあるミドルシュートで切り開き、レギュラーの座を確保していた。
 やや荒削りだが、彼の果敢なドリブル突破で相手最終ラインを壊し、マイナス気味のクロスで得点機会をいったい何度つくったであろうか。

 セビージャの背番号16、アントニオ・プエルタ。彼を追悼する最も相応しい方法は、彼の左サイドでの果敢な突破を記憶に焼き付けること。そして、2006年4月のUEFAカップ準決勝シャルケ04(ドイツ)戦で決勝点となるゴラッソを決めたという事実(セビジッタからは「クラブの命運を変えたゴール」と語り継がれている)を歴史に記載することである。


P.S. 10月に彼は初めて父親となるはずであった。「アイトール」とすでに名付けられた未来の息子を見ることなく他界した若き父に代わって、未亡人など親族の希望により、この子は新たに「アントニオ」と名付け直されるのだという。

暴走するテレビマネー

2007-08-29 04:57:00 | サッカー
 リーガ・エスパニョーラ2007-08シーズンは開幕から大荒れであった。試合内容がではなく、開幕当日の夜になって、中継映像が世界配信されないことになったからである。映像収録と国内放映を司るAUDIOVISUAL SPORT社と、映像素材の世界中のライツホルダーへの配信を担当するMEDIAPRO社の関係がこじれ、訴訟合戦に発展してしまったためである。2009-10シーズン以降のリーガ映像権の独占を目論むMEDIAPRO社の攻勢に業を煮やしたAUDIOVISUAL SPORT社が、伝家の宝刀を抜き、中継映像の世界配信へのパイプラインを切断してしまったのである。おかげでMEDIAPRO社が送信して寄こすハイビジョン映像には、「Service is NOT available」の文字がしおらしく映されるのみ。

 今回のトラブルの詳細は現地新聞に詳しいが、要するに、テレビマネーの莫大な利権に絡む主導権争いが醜く世間を巻き込んでしまったのである。

 プロスポーツ映像の利権をめぐってはよく、電通の横暴ぶりばかりがやたらと巷間に伝わるが、事は日本だけのことではないようである。早く解決して欲しいものだが、「情熱的」なスペイン人同士の喧嘩だけに、なかなか収まりがつかないおそれがある。やれやれ。

セビージャ、5冠宣言

2007-08-21 13:56:00 | サッカー
 今シーズンもセビージャの準備が順調そのもののようだ。プレシーズンの最後を飾るスーパーカップ第2戦、レアル・マドリーをアウェーで3-5と粉砕してみせた。この試合を見に行った後輩によると、カヌーテの動きはよく恥骨炎はあまり心配なさそうだ。ハビ・ナバーロ、エスキュデ、アドリアーノと、けが人が出ている点と、最高の右SBダニエウ・アウヴェスがチェルシーに引き抜かれそうな点が心配である。
 ホセ・マリア・デル・ニド会長は、今シーズンの目標を「5冠獲得」と述べている。つまり、リーガ、コパ・デル・レイ、UEFAチャンピオンズリーグ、国内スーパーカップ、欧州スーパーカップを獲る、という意味だ。大きく出たものだが、とりあえずまずはそのうちのひとつを早速獲った。

セビージャの出場者(スーパーカップ第2戦):
パロップ;ダニエウ・アウヴェス、ファシオ、モスケラ(ケイタ)、ドラグティノヴィッチ;ヘスース・ナバス、ポウルセン、マルティー、ドゥダ(ケルジャコフ)、レナト(マレスカ);カヌーテ

スリッツ

2007-08-19 03:07:00 | 音楽・音響
 フォーレなどといったものを黄昏れて聴き惚れているのではいけないと「一念発起」しつつ、ブログ『MINER LEAGUE』の著者の「昔、ヴィニ・ライリーになりたいと思ったこともあった」という有難い御言葉に刺激を受けて、旧Factory一派(だったと思う)のポーリン・マーレイのアルバムを捜索するが見つからず。代わりに上掲スリッツの『ジョン・ピール・セッション』を聴いてみる。

 それにしても、十代に愛聴した女の人たち、ポーリン・マーレイ(元ペネトレーション)、アリ・アップ、スージー・スー、Au Pairs、あるいは少し遅れてヴィルナ・リントといった人たちは、今頃どこでどう暮らしているのだろう? さしずめヴィルナ・リントあたりは、スウェーデン映画でお母さん役をやっていたりしたとしても…それはそれで別にショックではない。
 むかし渋谷公会堂に見に行ったスージー&ザ・バンシーズのライヴはかなり興奮させられた記憶があるのだが。

 ところでむかし、元スリッツのアリ・アップが一時的にドン・チェリーとグループを組んでいた記憶が漠然とあるのであるが、何というのだっただろうか? 御記憶の方おられましたら、ご教示いただけると嬉しいのですが。

ガブリエル・フォーレ

2007-08-19 02:00:00 | 音楽・音響
 久しぶりにガブリエル・フォーレの『Requiem』を繰り返し聴く。このあまりにもロマンティシズムのど真ん中にくる曲は、イギリスやドイツの演奏者ではなく、ミシェル・コルボーズ、アンドレ・クリュイタンス、またはフィリップ・ヘルヴェッヘ&アンサンブル・ミュズィーク・オブリークの、フランス語圏の計3枚をもっぱら聴いてきた(特に、ピリオド楽器を崇拝していた十数年前はヘレヴェッヘ盤のみ聴いた)。
 きのう今日聴いてしまったのは、アンドレ・クリュイタンス&ソシエテ・デ・コンセール・デュ・コンセルヴァトワール盤なのだが、とりわけ甘美なこのバージョンに渇きを癒すとは、体の不調のなせる業としか思えぬ。われのこの詠嘆へのだらしのない傾斜は、大いに警戒しなければならないように思える。

 それにしても、名曲なのだ。思わず、嗚咽の一歩手前のようなしゃっくりを引き起こしてしまう名曲なのだった。