旅の途中

にいがた単身赴任時代に綴り始めた旅の備忘録。街道を歩いたり、酒肴をもとめてローカル線に乗ったり、時には単車に跨って。

ボクも町中華で飲ろう 華山@浦和

2024-05-17 | 日記・エッセイ・コラム

狭い路地裏の、さらに奥まったマンションの1階にその町中華はあった。
自転車置き場の入り口に、移動式の黄色い看板がなければ、Googleマップ を覗いても到達は難しい。

多くのお客さんが4種類設定される「今日の定食」を注文する中、ボクらはギョービーから始める。
ジューシーでモチモチ、でもいい感じにきつね色に焼き上がった “ぎょうざ” が評判に違わず美味しい。
ビールグラスが冷えていれば申し分ないのだけれど、そこはある意味町中華クオリティ。

秀逸なのは小皿メニュー、280〜400円の設定なのだけれど、小皿いっぱいに美味しいが溢れる。
“くらげサラダ” に “焼き豚” それに “麻婆豆腐” が並んで、これは絶品アテの3兄弟。
2本目の一番搾りが空いて、小上がりの卓には “レモンサワー” が登場。調子が出てきたぞぅ。

パラッパラの “チャーハン” を取り分けた頃、熱々の餡かけラーメンがやってきた。
品書きに “華山麺” と、店の名前を冠している位だからここの看板メニュー、確かに美味い。
アッサリした味付け、たっぷり野菜の餡に細麺を絡めて音を立てて啜る。絶品ですよ。

小上がりに上がってから小一時間、満腹を抱えて路地に出る。ちょうど昼の暖簾を下ろす頃だ。
もう午後は何もできないなぁ。でもこんな休日も良いかも知れない。
次は純粋にランチに、そう “華山麺” を食べに来よう。ごちそう様でした。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Toremoro / 柏原芳恵 1984


人生のそばから 長沢茶屋@妙高市

2024-05-14 | 旅のアクセント

群馬県長野原町を起点に、R292は志賀草津道路として日本国道最高地点(標高2,172 m)を通過する。
そのまま辿ると新潟県妙高市に至るわけだが、新潟長野県境は富倉峠を越える。

雪深いこの辺りは小麦が採れないから、そばのつなぎにオヤマボクチ(ヤマゴボウ)の葉っぱの繊維を使う。
コシが強くみずみずしい食感の “富倉そば” は、幻のそばなんて言われたりする。

新潟方面に所用があったGWの終盤、軽井沢ICを降りて新緑の上信越高原に車を走らせた。
この富倉峠を越えてまもなく「山菜そばまつり」の赤い幟旗を目にする。っと、慌てて車を減速するのだ。

件の「長沢茶屋」の前では、運動会に登場するようなテントを張っている。
地元の親父さんたちが採りたての山菜を販売している。おっと、“たけのこ汁” を振舞っている。
ボクたちは、蕎麦のチケットと “笹寿司” を求めて店内に入る。親父さんがトレーでたけのこ汁を運んでくれた。

笹の葉に酢飯をよそり山菜、椎茸、胡桃などの山の幸や、大根の味噌をのせた笹寿司は上杉謙信の野戦食。
子どもにころは、確か妙高高原の駅弁として売られていた。海水浴の思い出と重ねてボクには懐かしい。

嬉しいのはたけのこ汁、姫竹(ねまがりたけ)が入っている。
姫竹の水煮、玉ねぎ、じゃがいも、溶き卵、味の決め手はサバの水煮、これっ北信濃のソールフードだ。

懐かしい味を堪能するうちに、せいろが山菜の天ぷらを従えて登場する。
コシが強くて、喉越し、香りの高さともに申し分ない “富倉そば” が美味しい 。

取り立てて予定のなかった今年のGWだけど、思いがけず美味しいロングドライブが楽しい。

 

*長沢茶屋さんは新潟県側のお店なので、本来「長沢そば」と書かないといけないかも知れませんね。
関係者の皆さん、ひろい心でお許しください。

<40年前に街で流れたJ-POP>
青春のいじわる / 菊池桃子 1984


玉川上水と武蔵野うどんと多滿自慢と 西武拝島線を完乗!

2024-05-12 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

副都心の高層ビル群をバックに、急行拝島ゆきが湘南新宿ラインとデットヒートで高田馬場に滑り込む。
遠出する予定のない連休、天気も良いから、東京の裏庭で乗って呑んでみる。

拝島線の起点は小平駅、駅前広場は花に溢れて落ち着いた郊外の駅だ。
起点から3駅連続で他線と交差をしたり、地図を見ると南へ西へとそれこそ直角に進行方向を変えている。
これは西武鉄道が、合併したいくつかの私鉄線、軍や工場への引込線を繋ぎ合わせた歴史による。

列車は新宿から拝島まで直通するもののほか、小平から玉川上水をシャトルするものがある。
ちょうど引き上げ線から折り返しの玉川上水ゆきが入線してきた。
イエローの2000系は1977年からの古参車両、呑み人がこの沿線に住んでいた頃は、絶賛勢力伸長中だった。

乗車前には小平駅周辺を散策して「小平ふるさと村」を訪ねてみた。
旧小平小川郵便局舎は明治41年の和風建築、昭和58年まで現役であったというのは、ちょっと驚きだ。

旧神山家住宅主屋ではギターマンドリンクラブが演奏会をしていた。
奏でる加山雄三の「旅人よ」が旅情をかきたてる。えっ、そんなに遠くまで来ていたっけ?

裏手に廻ると杉皮葺の水舎小屋があった。
旧小川村が開かれると玉川上水から分水され、33か所に設けられた水車は脱穀や製粉に用いられたという。
なんだかまだ東京が遠かった時代の、武蔵野の風景が目に浮かぶ「小平ふるさと村」なのだ。

近くに評判のいい手打うどんの店を見つけた。まずはここでビールを呷る。きょうは夏日だ。
そして “たまなす” 登場、玉葱と茄子ってことだ。
思い描いていた武蔵野うどんよりもかなり上品な一杯は、玉葱の甘味と相まってなかなか美味しい。

ところで2000系の6両編成は、玉川上水駅の折り返し用2・3番ホームに終着する。
萩山で多摩湖線、小川で国分寺線と交差した後、再び西に向きを変えてわずか4駅の運行だ。

駅の改札を抜けてみる。南口には木漏れ日を映してキラキラと玉川上水が流れていく。
この先終点の拝島まで、鉄路はこの煌めきに寄り添うように延びている。

モーターの唸りを聞いて、視線を水面から頭上に転じると、ちょうど多摩モノレールの電車がやってきた。
2つの路線が交差して、閑静なこの駅も朝夕は乗降客と乗換客で混雑するのだと思う。

1番線には堂々10連の20000系が軽快に進入してきた。この急行拝島ゆきでラストスパートになる。
玉川上水からは3駅、右に大きなカーブを描いて、横田基地へ向かうJRの引込線と交差すると終点の拝島だ。

4路線が乗り入れ6方面に鉄路が伸びる拝島駅は、なかなか規模の大きなジャンクションだ。
橋上駅の南口側からは、奥多摩から丹沢までの山々を眺める。目を凝らすろ富士が頭を覗かせている。

大きなケヤキを囲むように6つの登録有形文化財を有する酒蔵、石川酒造までは南口から徒歩15分。
蔵自らが「酒飲みのテーマパーク」と称する様に、季節の日本酒やビールを味わうために多くの人が訪れる。
地ビールとイタリアンの「福生のビール小屋」と日本料理の「食道いしかわ」があって、ボクは後者を択ぶ。

もちろんメニューの酒はすべて多満自慢、まずは冷たい “純米生原酒あらばしり” からいただく。
アテは “豚の角煮”、とろとろの豚肉にナスを添えて、白髪ネギを絡めてちょい辛子、美味しいね。

遅れて登場した “だし巻き玉子” に、二杯目の “熟成純米生原酒” はまろやかな味わいがいい。

何度か訪ねている石川酒造だけど、ずいぶん客層に外国人観光客が多くなった。
InstagramにX、SNSで調べては訪ね、訪ねては発信して、訪れる人は増えていく。
正直、彼らに教わる映えるスポットや美味しい店は多いのだと思う。そんな事を考える拝島線の旅だ。

西武鉄道 拝島線 小平〜拝島 14.3km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
17歳の地図 / 尾崎豊 1984


水曜日は家呑み派 「常山 飛 直汲み生酒」

2024-05-08 | 日記・エッセイ・コラム

いい “たけのこ” が手に入ったから、今宵は家呑みってことで。
料理は “たけのこ” に徹するから、その他は手を抜いてデパ地下で見繕ってきた。

“たけのこ” をじっくり味わえる、春を感じる一品は “若竹煮”、細切りのお揚げはボクのリクエスト。
お揚げでちょっぴり甘味を増した一品は、日本酒にあうと思うのだ。

先日の北陸新幹線の旅で立ち寄ったのは常山酒造、“純米吟醸辛口 飛 しぼりたて直汲生” を開ける。
淡麗旨口とでもいうのかな、キレの良い淡麗なのだけど、米の旨みもじゅうぶんに感じる。

お刺身を白い陶器に盛りつけたら、テーブルが一挙に華やぐね。
それから “揚げイワシの甘辛” は青唐辛子を添えて、こんな肴で淡麗旨口を重ねる。
いただいた「常山」と描かれたグラスに、ひとつ買い足してペアにした。掌に収まってかわいらしい。

土鍋が湯気を上げて “たけのこご飯” が炊き上がったら、しゃもじで混ぜて木の芽をちらす。
品のいい茶碗に盛り付けて、なめこ汁と並べたら、なんだか料亭気分と自賛。
訪ねた蔵で求めた旨い酒を、こうして家呑みで開けると、呑み鉄旅は二度美味しいのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
ひとり / 中島みゆき 1984


芝桜と秩父神社と天覧山と 西武池袋線・西武秩父線を完乗!

2024-05-04 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

急行の赤い電光表示も誇らしげに、飯能ゆきの10両編成が3番ホームに入ってきた。
この6000系電車は1992年のデビューと云うから、すっかりベテランの貫禄を身につけている。
西武鉄道線を完乗してから9年が経った。このあたりで再び沿線を呑み歩きたい。

最初に旅する池袋線の起点は西武池袋駅、池袋のランドマークとも言える西武池袋本店の1階にある。
このビルは昨年9月に米投資ファンドが買収、売場・ブランドは次々に取り扱い終了となり改装に入っている。
よもやこの青い看板が落ちるようなことにだけはなって欲しくない。。

所沢を出てから、池袋線は緩やかな勾配を直線的に駆け上がってきたのだけれど、
狭山市に差し掛かる頃には、耐え切れず、大きなカーブと急な勾配で狭山丘陵を登る。
途中下車した入間市駅も、そんなカーブと勾配の中にあった。

航空自衛隊の町入間には、旧陸軍航空士官学校跡地に「修武台記念館」という歴史資料館がある。
チャンスがあれば見学会に応募してみたい。今回は敷地外から F-86F-40 をパチリ。

隣接する「彩の森入間公園」では噴水が飛沫をあげ、新緑が木陰をつくっている。
沿線に住んでいたなら、バケットとチーズとワイン、それに文庫本を持って昼寝に出かけたい。

丘陵を登ってきたのは40000系電車、転換するとクロスシートになって座席指定列車として運用される。
FREE Wi-Fi や多目的トイレを設備し、乗って快適な新型車両だ。

入間市駅から3つ目の飯能駅はスイッチバック構造になっている。
ここから向きを変えて吾野方面へは本格的な山登りになるが、特急を除くほとんどの列車は飯能止まりだ。

飯能駅を背に飯能大橋まで来たら、薫風に吹かれて入間川沿いを下流へ向かって歩いてみる。
加治橋の袂に “天覧山” の五十嵐酒造を訪ねる。純米酒を中心に何本か求めたので何れご紹介したい。

旅の続き、西武秩父ゆきの4000系は、ライオンズカラーの2扉セミクロスシート車両。
いわゆる旧国鉄の急行車両のようなタイプ、たっぷりの旅情に車中酒を楽しむにはこれでなくちゃ。
構内コンビニでワンカップを買って準備万端、でも発車間際に駆け込んできたカップルと相席に。残念。

ところがだ、この華人のカップルは呑み人の前で、不埒なほどイチャつき始めるのだ。
しからば止むなく或いは対抗上?ボクはカポッと “秩父錦 金印” を開けるのだ。
コクとキレのある淡麗辛口にアテの “いぶりがっこチーズ” がよく相応う。これって絶品です。

終点ひとつ手前の横瀬駅で降りると、芝桜の丘(羊山公園)は近い。
秩父のシンボル武甲山を背景に、見ごろを迎えて、色とりどりの花じゅうたんが美しい。

芝桜は北アメリカ原産の多年草で別名をハナツメクサという。
数ある種類の中でも、この “スカーレットフレーム” と “多摩の流れ” が好きかなぁ。

横瀬駅を発った4000系が大きなS字を描いて荒川の河岸段丘を下りる。っとそこは秩父線の終点 西武秩父だ。
秩父線は池袋線の事実上の延伸路線なのだけれど、戦前に開通した吾野までの池袋線と区別している。
秩父線(吾野〜西武秩父)が開通した1966年、同時に特急レッドアローが誕生している。

西武秩父駅はフードコート「祭の宴」や日帰り温泉「祭の湯」を併設した駅舎を持つ。
レジャーランドのような駅は、休日ということもあって、家族連れ、グループ、カップルで賑わっていた。

これだけで腹が膨れるのは分かっていながら、どうしても食べたいのが秩父のB級グルメ “みそポテト” だ。
きょうは秩父そばの人気店「立花」を訪ねて、秩父地粉と武甲山の伏流水で打つ二八蕎麦をいただく。
少し豪華に過ぎる天ぷらを持て余しつつも、喉越し良く、二八を一枚、ズズっと啜って美味しい。

世に名高い例大祭 秩父夜祭(ユネスコ無形文化遺産)で知られる秩父の総鎮守 秩父神社を訪ねる。
お元気三猿、子宝子育ての虎 と つなぎの龍(いずれも左甚五郎作)と極彩色の彫刻が施された社殿は、
徳川家康の命により建てられたものというから、その時代の、例えば東照宮の雰囲気に似ていなくもない。

さて、御本殿に奉納されていた菰樽の一つ “武甲政宗” の蔵が、その重厚な佇を残している。
お約束通りに利き酒を楽しんだら、お気に入りの純米酒を求めてご満悦なのだ。

さて今宵の一杯は飯能駅まで戻って、いや宵というより寧ろ昼呑みの時間ではある。
駅近の隠れ家的居酒屋「なかよし」は、午後2時に縄のれんが掛かる稀有な店だ。

件の縄のれんを潜る。L字に切った年季の入った白木のカウンターが7席、居酒屋というより小料理屋って感じ。
お通しの大根とごぼう天の “おでん” が絶品、上品な出汁がいい味を出している。
唯一がっかりしたのは、地酒の “天覧山” を切らしてしまったんだって、そりゃないよ。

それでは東北の酒で揃えようと、一杯めは秋田県は八峰町、山本酒造店の “白瀑 ど辛” を択ぶ。
“お刺身盛” をつまみながら、日本酒度+15の超辛口が飲みごたえ十分なのだ。

後客が入ってくる。座敷に入った予約客はゴルフコンペの帰り。
小上がりに上がり込んだ5人はリュックを背負ってきた。
なるほど合点が入った。午後2時から暖簾をかけるのは、こういう来客ニーズがあるからだね。

次なるアテは “若鶏の甘唐揚げ”、いいテリをしてるし、これは美味しい。
福島の “会津中将 純米” は、濃醇だがしかしすっきりとした味わい、肉料理にも上手に相手をしてくれる。

さてと、カウンターに常連の二人連れが入るのを潮に店を出る。八十八夜を過ぎて外は明るい。
ゴルフに登山に呑み鉄に、大人の遊びに優しい町に感謝しながら、西武池袋線、西武秩父線の旅を終えよう。

西武鉄道 池袋線 池袋〜吾野 57.8km 完乗
西武鉄道 秩父線 吾野〜西武秩父 19.0km 完乗

君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。/ 中原めいこ 1984


剱岳と越前そばと月清しと 北陸新幹線を完乗!

2024-04-13 | 呑み鉄放浪記

敦賀延伸開業から1ヶ月、桜の季節を待って北陸を旅する。
呑むことと乗ることに的を絞って、北陸3県を早回しに訪ねてみたい。

背後から朝日を浴びて、午前7時前の赤れんがは驚くほど静かに佇んでいる。

07:20、22番ホームから2本目の “かがやき” が滑り出す。

全長22.3kmの長大な飯山トンネルを抜けると、車窓左手に頸城三山が現れる。
連聳する火打山と活火山の焼山を従えて、“越後富士” 妙高山が秀麗に裾野を広げている。

トンネルの合間にチカチカと日本海が煌めくと、やがて “かがやき” は富山平野へと飛び出す。
こんどは立山連峰の “剱岳” が遥か昔に氷河に削り取られた峻険な山容を見せる。

東京から2時間、満開の桜が迎えてくれた富山駅。
枝いっぱいの淡い桜色と、ハンギングバスケットの橙や黄それに紫のコラボレーションが華やかだ。

富山地方鉄道の市内線にガタゴト揺られること5分、丸の内電停を降りると富山城のお濠端だ。
天守閣と石垣、お濠に桜色を映すソメイヨシノ、ビルの間に煌めく立山連峰、この共演は美しい。

かつて高山本線のホーム上で繁盛していた「立山そば」は、とやマルシェの一角で出汁の香りで誘っている。
思わず押した券売機の “白えび天そば” 、白えびの香ばしさと薄めの出汁を絡めてズズッと美味しい。 

旅はテンポよく進む。13:40発の “つるぎ” は富山・金沢と敦賀を結び、名古屋・大阪方面へと連絡する。
真っ昼間の便はまだまだ輸送力に余裕があって、乗客は間違いなく訪日外国人観光客の方が多い。

 

“三笑楽” は合掌造りで有名な五箇山の酒、豪雪地帯の冬の寒で醸した芳醇辛口が美味しい。
金沢までは20分と少々、“白えび小判” を添えて、カポッとワンカップ一杯がちょうど良い。

金沢駅ではいつもの鼓門が迎えてくれる。この日は初夏を思わせるような陽気になっている。
どこへ行こうか考えた末、彦三町から浅野川沿を主計町茶屋街へ向かう。枝垂れ桜が川面に花筏を浮かべている。

柳の芽が揺れる「ひがし茶屋街」は紅殻格子の町家を並べて、石畳を漫ろ歩くのが楽しい。
朱に縁取られた花街の街灯が点る頃に訪れたら、さぞかし美しく幻想的だろうと想像する。

 

この街にも溢れる訪日外国人観光客、その喧騒から「きんつば中田屋」の階上に逃れる。
呑んでばかりのボクだけど、たまには甘味もいいだろうか、しっとりと “ロールケーキ” が美味しい。

慈母観世音菩薩を見上げる加賀温泉駅、新規延伸区間2つ目の駅は金沢から20分の乗車。
今宵は山代温泉の老舗に投宿して、加賀能登の野山の味覚を肴に一杯やりたい。

そして今宵の酒はお隣は山中温泉の “獅子の里”、スッキリとした切れ味の超辛純米を愉しむ。

少しだけお膳を紹介する。日本海の「割鮮」はあられ塩でいただく。この超辛の酒が合うね。
「進皿」の春鯛大根挟みは新玉ねぎのソースで、「羹(あつもの)」の能登豚野菜道明寺蒸しは生姜の餡で美味しい。

「台物」の和牛鍋、豚骨醤油出汁仕立てで、追い麺にべんがらこんにゃく麺が珍しい。
釜炊き御飯は朝利めし、薄揚げの甘味と三つ葉の香りと相まって美味しい一杯だ。

翌日の “つるぎ” は、まずは隣の芦原温泉まで8分の乗車。
一度は訪ねたいと思っていた丸岡城までは、ここから路線バスでアプローチできる。

丸岡城は北陸唯一の現存天守、織田信長の時代、柴田勝豊が一向一揆への備えとして築いた。
荒々しい野づら積みの石垣に載った2重3階の天守に、盛りを過ぎたソメイヨシノが花吹雪を散らす。

さらに隣の福井までは9分の乗車、缶ビールを開けるまでもない。新幹線というインフラの凄まじさを感じる。

新幹線の延伸開業で新しくなった東口広場には、トリケラトプスの親子が出現した。
ふくい観光案内所の屋上には、ハートのモニュメントと2体のフクイティタン。恐竜の増殖が止まない福井駅だ。

この週末、東口のハピテラスでは、福井県内23蔵を集めて「春の新酒まつり2024」が開催中。
この手のイベントには関心が薄いボクは、駅から10分歩いて常山酒造の蔵を訪ねる。
試飲を楽しみ、お気に入りを何本か仕込んだから、いずれ家呑みでご紹介したい。

軽快なチャイムがホームに響いてまもなく、緩やかなカーヴを描いて東京からの “かがやき” が進入してくる。
終点の敦賀まではあと2区間、時間にしてわずかに10分少々の乗車になる。

敦賀駅のまるで要塞のような堅牢で大きな新駅舎にまずは驚くしかない。
名古屋から、大阪からの特急の乗客を8分で新幹線に乗継させるため、どうしても必要な施設らしい。
いつの日か新幹線が大阪方面に延伸したら、ここが寂しい空間になってしまうだろうと想像する。

駅に降り立ったら、真っ先に佐渡酒造先生にご挨拶。この旅でも美味しいお酒を愉しんでます、っと。
松本零士氏は敦賀出身?っと誤解するほど、街角に「銀河鉄道999」と「宇宙戦艦ヤマト」が溢れている。
お気に入りは「別離」という作品、子どもの頃、映画のこのシーンには泣いた。

かつて1枚の切符で東京からベルリンまで旅する「欧亜国際連絡列車」があった。
毎週金曜の午後8時25分、東京発金ヶ崎(敦賀港)ゆきの夜行急行の乗客は、
ここでウラジオストック航路に乗り継ぎ、遥かヨーロッパをめざした。

なんともロマンのある、そしておそらく過酷な旅だったろう。
かつてのウラジオストック航路の桟橋周辺には海上保安庁の巡視船が並んでいる。
時を経ても、この海と空の「あお」と欧亜国際連絡列車の乗客が見た「あお」はきっと変わらない。

旅の終わりに “越前おろしそば” を啜る。
蕎麦前にいただいた “月きよし” は、20年前に廃業してしまった酒蔵の酒を復刻したもの。
氣比神宮に参拝した松尾芭蕉が詠んだ句『月清し 遊行の持てる 砂の上』からいただいたそうだ。
今宵、つるがの湊で見上げる清々しい月を思って、北陸新幹線の旅は終わる。

北陸新幹線 高崎〜敦賀 460.7km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
真夜中過ぎの恋 / 安全地帯 1984


Biz-Lunch Sun'sキッチン@東池袋「天津飯」

2024-04-10 | Biz-Lunch60分1本勝負

池袋のランドマークSunshine60、オフィスフロア専用エレベーターに乗り込む。
とある階で降りると、南面いっぱいに広がるカフェテリア「Sun'sキッチン」がある。

給食会社が受託しているのか、テナントが共同運営しているのかは分からないけれど、
案外と本格的で美味しい賄い料理を食べることができる。

一応、入居テナント従業員専用らしいけれど、ボクたちが席を占めるのに差したる制限はなかった。
2〜3人連れのご同輩のサラリーマン、スマホ片手に一人ランチのアパレル店の販売員、
ちょっぴり混沌とした雰囲気がまた楽しくもある。

そしてボクはと云えば、熱々の餡をかけた “天津飯” をいただく。
カニカマほぐしと万能ネギを散らして見目麗しく、そして美味しい。
お近くにお住まいのあなた、一度、オフィスフロア専用エレベーターに乗ってみたら如何だろう。

<40年前に街で流れたJ-POP>
誘惑光線・クラッ! / 早見優 1984


酒と肴と男と女 おでん処 大酉茶屋@金沢

2024-04-06 | 日記・エッセイ・コラム

ひと頃二人は何度か金沢を訪れた。
それぞれの拠点からちょうど良い距離だったこともあるけれど、
訳ありの二人を包み込んでしまうには、この街は手頃な大きさだと思うのだ。

スナップえんどう白和え
ホタルイカ酢味噌

9年前に新幹線が延伸してからこっち、この街は今までに増して多くの観光客を迎えるようになった。
共通の知り合いにばったりという事も無いとは限らない。
くぐる暖簾は、人気の割烹や居酒屋から、渋い小料理屋とか地味めな酒場へと変わった。

先一杯(まずいっぱい)
イイダコ煮

駅前の喧騒を逃れた路地裏の店で提供される酒は、冷も燗も “菊姫” の一択。
鶴来町は白山比咩神社への参道にある蔵へは、ローカル私鉄に揺られて訪ねたことがある。
“先一杯(まずいっぱい)” は旨口だけど軽やかな口あたりの純米酒だ。

金劔
あじたたき

袖振り合うような狭いカウンター、蛇の目のお猪口で差しつ差されつするのが嬉しい。
“金劔” は鶴来町にある金劔宮(きんけんぐう)からあやかった、米の甘味・旨味を感じる優しい女酒。

山廃純米
もも串、せせり串、ささみ串
くるまふ、梅貝、竹の子 etc

焼き物は塩で、レモンを絞る。でも柚子胡椒かワサビか分かれるのが二人の好みだ。
濃醇で飲み応えがある “山廃純米” は、酸味と濃さのある剛健な男酒。
加賀麩やら梅貝やら、金沢おでんらしく盛り合わせてもらう。香り立つ深みのある出汁が美味しい。

次々に暖簾をくぐってくる常連客に席を譲るように店を出る。
街はちょうどいい感じに黄昏れて、二人が肩を並べて歩くのを許してくれる。
えんじに浮かび上がった鼓門を見上げたら、一緒に居られる時間もあと僅かだ。

Hello, My Friend / 稲垣潤一&高橋洋子


Holiday-lunch RESTAURANT SALT@浦和

2024-04-03 | 日記・エッセイ・コラム

信州上田の “亀齢ひとごこち” が注がれるカウンターはフレンチレストラン。
ペアリングコースをお願いすると5種のお酒を Lunch Course の料理に合わせてくれる。
爽やかな香りの純米吟醸が合わせるのは、旬が訪れた “ほたるいか×菜の花のリゾット” だ。

蕗のソースを絡めた “さわら” は蕪蒸しを添えて、このほろ苦い春の味が美味しい。
白ワインはブルゴーニュの “エジェルテ” のシャルドネ、この辛口がいい。

本日のお肉は “鴨”、ソースは鴨のレバーと八角にマデイラ酒、濃厚だね。
合わせるカベルネ・ソーヴィニヨン “パスカル・トソ” は辛口のミディアムボディ、ベリー系の果実味?
いつもは勝手気ままに択ぶお酒も、たまにはお店のコーディネートに委ねるのも楽しいですね。

<40年前に街で流れたJ-POP>
Rock'n Rouge / 松田聖子 1984 


氷川神社と石神井川の桜と超辛口ばくれんと 埼京線・赤羽線を完乗!

2024-03-30 | 呑み鉄放浪記

林立する高層マンションを縫うように、軽エメラルドグリーンの10両編成が疾走する。
大宮から赤羽そして池袋、呑む旅にはぴったりの街を繋ぐのが埼京線・赤羽線の旅だ。

13路線が乗り入れる首都圏の北の玄関口だけど、街の顔であるはずの駅舎はなんだか懐かしい佇まい。
溢れる人と、古臭くて狭い駅前広場のアンバランス、これもなかなか味がある。

埼京線は新幹線下の地下ホームから出発する。川越発の快速をやり過ごして、19番線の当駅始発に乗車する。
僅かな距離の旅だから、ロングシートでうららかな春の日を浴びながら、ゆるりと行きたい。

大宮は「鉄道のまち」だ。大宮駅、大宮工場、大宮操車場の設置が人を呼び、賑わいを創った。
そして大宮の歴史は武蔵一之宮 氷川神社の歴史とともにある。旅の始めにここを詣でておきたい。

大宮駅から氷川参道そして神社まで参詣者の列が途切れることはない。
初詣の様と言ったら大袈裟だけど、春の陽に誘われて、大宮公園の花見がてら氷川神社に向かう人は多い。

さて埼京線は新幹線と並走して高架線路が都心に向かって延びている。
健脚自慢のエメラルドグリーンは、時折E5系やE7系にバトルを挑むが、たいていは返り討ちに遭っている。

ふたたび東京上野ライン、湘南新宿ラインと出会う赤羽駅に途中下車。結構な乗降客の入れ替わりがある。
一番街のセンベロ酒場で昼呑みを、っと思ったけど、それでは余りに読めた展開と思い直して旅を続ける。

エメラルドグリーンの電車が走る赤羽線の区間は古くからの住宅街、埼京線区間とは雰囲気が違う。
車窓の桜花に見惚れて途中下車、この線路沿いの並木は東京家政大学のキャンパス。

続けてエメラルドグリーンは石神井川を渡る。この狭い谷の両岸に900本の桜が咲き誇って美しい。
この季節には、旧中山道板橋宿から王子の飛鳥公園まで、桜の下を歩きたい。

多くの乗客を吐き出して池袋駅の1番ホーム。埼京線・赤羽線は乗り通してしまえば僅かに30分少々の旅だ。
さてっと、池袋で呑むのもやはり芸がないから、2駅ほど戻ろうと思う。

十条駅から北へ、赤羽線と並行するように延びるアーケードは、200店舗がひしめく十条銀座商店街。
昭和風情のアーケードを漂って、やがてボクは一軒の立ち呑み屋に吸い込まれるのだ。

そして昭和の親父たちを真似て、ボクは “赤星” をグラスに注ぐ。この苦味が泣かせる。
先ずはお手軽に “サバ缶キュウリ” を突っついて、やがて “ミートボールのトマト煮” にクラッカーを散らす。

花冷えの “ばくれん” をお嬢さんが注いでくれる。山形は亀の井酒造の超辛の吟醸酒だ。
アテはホワイトボードに見つけた “ネギトロ”、これには目がない。わさび醤油を垂らして美味しい。

こだわってラインナップした地酒は一杯がワンコイン、かなり優れたパフォーマンスだ。
二杯目の “AKABU” は盛岡の酒。“バラ肉と厚揚げのニンニク炒め” をつまみに、清涼感溢れるやや辛いがいい。

食べ歩きが人気の昭和な商店街、立ち呑み屋のアテも逸品揃いで、きっとまた寄ってしまいそうな十条。
アーケードを這い出る頃には、いい感じで暗くなっている埼京線・赤羽線の旅だ。

埼京線 大宮~赤羽 18.0km 完乗
赤羽線 赤羽~池袋   5.5km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
孤独なハート / 長渕剛 1984


JY17 山手線立ち呑み事情 新宿ばーる@新宿

2024-03-27 | 大人のたしなみ

立ち呑みで巡る山手線の旅もようやくこれで半周、今宵は新宿で呑みたい。
バスタ新宿が出来てすっかり新宿駅の顔になった感のある新南口を降りる。

西新宿1丁目交差点を渡って2つ目の路地を右に折れると何軒かの立ち呑み屋がある。
呑み人が択んだのは黄色い看板を出した店、急な階段を地下に降りる。

 

一番乗りしたこの店で、ボクはロンドンのパブを気取ってみるのだ。
苦味のある Guinness を片手に Fish&Chips を抓む。いい感じのスタートだ。

白は DONA TERESA、なんて事のないテーブルワインだけど、一杯500円とコスパが良い。
次なるアテは “ささみのバルサミコ酢”、これは美味しい。

熱々の鉄鍋で登場した “牛筋のトマト煮”、これも絶品、ワインに合う。
赤は CAPPELLA ROSSO の一択、ピエモンテのワインだね。

ほろ酔いになった頃、決して広くはないお店はいつしか満員になっている。
階段を降りてくるのは若い方が多いね。カップルも。それではオヤジは退散しますか。

新宿駅には信州へと向かう特急も発着している。松本あたりで馬刺か山賊焼で一杯やりたいなぁ。
さて、次回は遠からず代々木でお会いしましょう。ごちそうさまでした。

<40年前に街で流れたフュージョン>
Sunspot Dance / 松岡直也 1984


アクセス特急とハイビスカスの翼と雨宿りの大衆酒場と 成田空港線・北総線を完乗!

2024-03-23 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

オレンジのラインを纏い、シャープで精悍な3100系が、120km/hと120km/hですれ違った。
“アクセス特急” は成田空港と羽田空港を1時間50分で結んでいる。

5つのホームに忙しなく電車が発着する京成高砂駅も、入り口はとっても地味な下町風情の駅なのだ。
この町には夕刻、呑みに帰ってくることにして、今日は北総鉄道北総線と京成成田空港線を乗りたい。

青砥からの複々線を中川にかかるガーダーを響かせて3700系電車が近づいてくる。これは京成電鉄の車両。
京成高砂から成田空港の鉄道は複雑で、4つの鉄道会社が第3種鉄道事業者として線路等の施設を所有し、
北総鉄道と京成電鉄が、第1種または第2種鉄道事業者として路線を運営している。

さらに京成高砂から印旛日本医大の間は両線がダブっていると言うのだから、もう素人には何のことやら。
ややこしい仕組みを理解しようとしていると、各駅停車は新鎌ヶ谷駅に滑り込み、少々停車すると云う。

少し伸びでもしようかとホームに降り立つと、注意を喚起するチャイムが鳴り出した。
轟音が近づいてくる。っと振り向く暇もなく160km/hの猛スピードで真打 “スカイライナー” が飛び去る。

白井駅に途中下車した。豊かな自然が残る閑静な住宅街が広がってる。
この静かな住宅街を歩いて、ちらほらと梨畑が見えてくる辺りに目的の食堂がある。

地産の野菜をふんだんに使った惣菜サラダーと酎ハイレモンを一杯。
菜の花のお浸し、なすと厚揚げの煮物、かぼちゃサラダ、どれも美味しいアテになる。
そして “ピリ辛味噌うどん”、これがまた良い。思わず二杯目のジョッキーを注文してしまうのだ。

満腹を抱えて乗り込む2番手ランナーは、北総鉄道所有の愛称C-flyer 9100形、これもまた斬新なデザイン。
各車両の車端部にはクロスシートがあるから、空いている平日の日中なら車中酒ができるかもです。

時計塔とドーム屋根が印象的な駅舎は印旛日本医大駅、北総鉄道北総線の終着駅である。
千葉ニュータウンに位置するこの駅舎のデザインテーマは「都市と田園の共生」なんだそうだ。

多くの列車がこの駅で折り返すから、次の成田空港行きまでは40分の待ち合わせ。
ショルダーバックに忍ばせていた新書で時間を潰すうちに、オレンジのラインの8両編成が駆け込んでくる。

印旛日本医大から先は京成成田空港線の単独路線。水鳥が遊ぶ印旛沼を眺めて、成田空港までは所要15分。
成田空港駅のきっぷ売り場はJRも京成も長蛇の列、この辺りが訪日旅行の最初のボトルネックだろうか。

折角だからと展望デッキに上ってみた。赤い翼に混じってハワイアン航空のA330が駐機中。
ハイビスカスを飾ったPualaniさんの横顔に、久しぶりにハワイで羽根を伸ばしたいと思うのだ。

京成高砂まで戻ってきた。突然降り出した大粒の雨に追われて、今宵は南口の大衆酒場に駆け込む。
カウンター6席、テーブル4卓の完全なるローカルな店、ジョッキまで冷やした生ビールのレベルは高い。

コロッケのような分厚い “ハムカツ” がジューシーで美味い。ボクの好きな “たぬきとうふ” は箸休めに。
並びに座ったご常連お二人の消防団談義を聞きながら、“白ホッピー” を軽く2度ステアする。

ナカをお代わりしたら “豚バラ生姜漬け焼き” を焼いてもらう。これがまた絶品。
っと雨雲レーダーを眺めていたら、10分後にちょっとだけ雨が止みそうだ。この機会は逃せない。
雨宿りの大衆酒場で〆る今宵も渋めな北総線と成田空港線の呑み鉄の旅なのだ。

京成電鉄 成田空港線 京成高砂〜成田空港 51.4km 完乗
北総鉄道 北総線 京成高砂〜印旛日本医大 32.3Km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
Voyager / 松任谷由実 1984


ボクも町中華で飲ろう 登龍@新馬場

2024-03-20 | 日記・エッセイ・コラム

品川駅ではやや肩身がせまい感じの各駅停車に乗車して2駅、新馬場駅の高架で浦賀行きを見送る。
階段を降りて品川神社の新馬場参道を東に進むと旧東海道に当たる。品川方面に戻るといつもの登龍だ。

ときおりランチ遠征する大盛りの聖地・登龍、わざわざ休日に訪ねるのは、ギョービーをしたかったから。
小皿の “ピリ辛もやし” を突っつきながら “一番搾り” を呷っていると、ほどよくきつね色の一皿が登場する。
お酢8醤油2をつけて、大ぶりな “餃子” を口に放り込むと、あちちと肉の旨味が溢れて美味しい。

たまに昼から飲んでる商店街の旦那衆が飲んでいた “スーパーチューハイ” を頼んでみる。
ランチメニューにはない “豚肉と茄子の味噌炒め” の濃厚な味に、スッキリしたレモンの果実味が合うね。

〆はお隣さんに倣って “チャーシューメン” を。最近になってこの店は麺もイケることに気付いたボクだ。
登龍でギョービー、ささやかな夢が叶ったのは、4月上旬を思わせる温かな休日の昼前なのです。

<40年前に街で流れたJ-POP>
渚のはいから人魚 / 小泉今日子 1984


成田山新勝寺と北ウイングとシャリキンと 京成本線を完乗!

2024-03-16 | 呑み鉄放浪記 私鉄編

大きな弧を描いて青砥駅に京成成田行きの快速特急が進入してくる。
スカイライナーのルートを成田空港線に譲って、この快速特急が京成本線の花形だ。

ソメイヨシノに先行して、上野公園前に寒桜が満開だ。
アジア系、欧米系を問わず、相変わらず外国人が多い。映える日本の桜を背景に自撮りに興じている。

コツコツと階段を登っていくと、本来この公園の主役である西郷隆盛が佇んでいる。
こんな穏やかに晴れた休日には、美術館でも巡って、テラスで珈琲を楽しむのも良いかもしれない。

京成上野駅は西郷隆盛の足元に2面4線のホームを持っている。
2番ホームから滑り出したスカイライナー41号の後を追って、快速佐倉行きで京成本線を呑む旅は始まる。

轟音を響かせて江戸川橋梁を渡ると、3700系の8両編成は千葉県に入る。
車窓に見える河川敷の球場には、少年たちが明日の大谷翔平をめざして白球を追いかけている。

京成佐倉に降りたのは初めてかもしれない。駅を背に道路は佐倉城址に向かって登り坂だ。
佐倉城址公園も桜の名所ではあるが、開花まではあと1週間は必要ではないだろうか。
代わりに土塁と生垣の通りに旧佐倉藩士の武家屋敷を訪ねる。凛とした雰囲気が良い。

駅への帰り道で「房州屋本店」という老舗の蕎麦屋さんを見つけて先ずは一杯。
冷酒を舐めながら、山葵をきかせて “そば豆腐” をいただく。そばの実の食感が楽しくもある。 

なめこ汁を従えて “舟せいろ” が登場する。
おろし、なめこ、わさび、と薬味を変えつつ舟形のせいろ一枚を楽しむ。美味しい午後だ。

旅の後半は3000系の8両編成、今度のは快速の成田空港行きだ。
とは云え次の目的地である京成成田まではわずかに10分と少々、それでも成田山には寄らない訳にいかない。

“長命泉” の蔵元を冷やかし、川豊本店から漂う蒲焼の香りを振り切って、成田山の門前に辿り着く。
那羅延金剛(ならえんこんごう)と密迹金剛(みっしゃくこんごう)が睨みを利かす仁王門には真紅の大提灯、
訪日外国人観光客が喜びそうな大提灯には「魚がし」の文字、築地の魚河岸講の奉納出そうだ。

階段を登り切ると、弘法大師が自ら彫ったとされる御本尊不動明王を納めた大本堂、
そして西からの薄日に照らされて、十六羅漢を彫りめぐらせた三重塔の朱が美しい。

アンカーの快速成田空港行きは都営浅草線から乗り入れる5500形、
地下鉄車両とは思えないスタイリッシュなフェイスは、歌舞伎の隈取りを現代風にアレンジしたのだそうだ。

京成成田から成田空港間は1978年の開港に合わせて開通した。
呑み人も仕事柄ここへはずいぶん通った。40余年を経ても変わりなくグリーンのサインは輝いている。

映画のシーンのように すべてを捨ててく airplane
北ウイング 彼のもとへ 今夜ひとり 旅立つ

海外渡航が特別なものであった時代、昭和な呑み人には染み付いた中森明菜の曲だ。
実際、旅人の数だけドラマがあり、その舞台であるのが北ウイングだと思う。

第2ターミナルから無機質な通路を延々と歩くと、東成田という忘れ去られたような薄暗い地下駅に辿り着く。
ここは開業当時の成田空港駅、この駅を起点に芝山千代田駅までを芝山鉄道が、京成成田へ東成田線が走る。

旅の終わりに、芝山千代田から京成成田間を乗り通す。
時間にしてわずか10分の旅、芝山千代田での乗客はエアカーゴ関係にお勤めの方が多いようだ。

市役所通りを跨ぐ開運橋の袂に「寅屋本店」の赤提灯が揺れている。今宵は昭和レトロな大衆酒場で呑みたい。
ここのビールは “赤星” の大瓶、泣けてくるねぇ。磨かれて角がすり減ったカウンターで一人酒だ。

 

“刺身3点盛り” は、マグロ、真鯛、はまち。良いところを切っている、侮れない一皿だ。
傍に春の苦味を纏って “菜の花の辛子酢味噌”、大人のアテって感じだね。これは美味い。

熱々の餡をかけて “蓮根のはさみ揚げ” をいただく。隣の親父さんが食べていたのに倣ってみる。
餡に焼けそうな口に “シャリキンホッピー” を流し込んで美味しい。
そう、キンミヤのシャリキンが飲めるこの店は、すでに呑み人お気に入りの一軒なのだ。

京成本線 京成上野〜成田空港 69.3km 完乗
京成東成田線 京成成田〜東成田 7.1km 完乗
芝山鉄道    東成田〜芝山千代田 2.2km 完乗

<40年前に街で流れたJ-POP>
北ウイング / 中森明菜 1984


十石舟と金のかっぱと金鵄政宗と 雨水の京都旅

2024-03-13 | 日記・エッセイ・コラム

少し前のことですが、城南宮の「しだれ梅と椿まつり」を訪ねた翌日、ふらりと伏見を歩いた。
十石舟が浮かぶ運河沿いを歩き、寺田屋旅館を覗いて、金色のかっぱと戯れたころ、ほろ時雨。
それではと、冷たい雨が通り過ぎるのを酒蔵小路で雨宿り、ここは伏見十八蔵の酒が楽しめる。

最初に択んだ “金鵄正宗”、五百万石で醸した落ち着いた香りの旨酒だ。アテに “金平柚子風味” が美味い。
“きびなご甘辛煮” を抓みながら二杯目は “花洛”、濃厚な旨みのアテにとろりと生酛づくりの純米酒が合う。
帰りの車中酒に “英勲” を仕込んで、結局呑むばかりの雨水の候の京都旅、そろそろ終わりを迎えるのだ。

<40年前に街で流れたJ-POP>
モニカ / 吉川晃司 1984