長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、
主に東経140度北緯36度付近での
来たりし空、去り行く風…etc.を紡ぎます。

今週末の演奏会@成城ホール

2023年06月16日 06時32分02秒 | お知らせ
おはようございます。
今年は花の暦が早いようで、菖蒲園の様子が気になる一方、夏の高原からはニッコウキスゲ開花のニュースが届きます。
梅雨の晴れ間に覗く空がこんなに青いのならば、私もどこかへ行きたいもの…

揺すぶられる旅情を胸に秘め、
さて皆さま、今週末、こちらへお出かけになるのは如何でしょう?

6月も早や3週目の今週末18日(日)、
小田急線 成城学園前 駅北口 徒歩3分、
成城ホール(世田谷区/砧区民会館)にて、邦楽の演奏会がございます。

13時開演で終演は16時ごろ。
入場は無料、お出入り自由にて、
長唄、笛、囃子、小唄など、伝統的な古典邦楽から新作の現代邦楽などがお愉しみいただけます。
また、企画番組として長唄杵家流御家元・杵家弥七師の「三味線のお話」もございます。



杵徳社中は、
三味線三重奏曲「ペーパードール」
長唄「もみじ橋」
そして、歌舞伎舞踊「近江のお兼/おうみのおかね」としてご存じの方も多いかと存じますが、
古典長唄「晒女/さらしめ」を演奏いたします。

團十郎娘(だんじゅうろうむすめ)、というタイトルでもお耳になさった方もいらっしゃるかも、
7代目市川團十郎が、文化十(1813)年六月に江戸森田座で初演いたしました、八変化舞踊のうちの一曲です。

舞台は琵琶湖畔、花道を暴れ馬を追いかけて、田舎娘キャラを表す濃い緑色のきものに、布ざらしのたらいを抱えた力自慢の女の子・おかねが派手やかに登場します。

相撲の組み手の振りをして男衆と立ち廻りをしたり、まだ知らぬ恋へのあこがれを盆踊りの風情でしっとり舞い、越後獅子にもございます晒(さらし)の合方(あいかた)では、長尺の布を…現代で言えば新体操のように振り回しなびかせて踊るとても面白い番組で、開幕から3か月ものロングランの大人気を博したそうです。
近江の地名を詠み込んだ歌詞も、ご当地ソング的な旅情を誘います。

一口に晒の合方と言っても、バリエーションが豊富ですから、
越後獅子は三下りで、出稼ぎである大道芸の心情を描いた都市の憂鬱をも内包する曲調ですが、
晒女は二上りで、朴訥としたカントリーで鄙びた明るい農村、里の牧歌的雰囲気です。
三味線音楽の奥深さと申しましょうか。

七代目の團十郎と言えば、歌舞伎十八番を制定し、その豪奢な暮らし向きにお上から睨まれ江戸追放になり、また、子息・八代目に團十郎(のちに自殺しますが昭和の歴史やミステリー作家たちの格好のネタでして、20世紀には面白い小説が沢山ありました)を譲り、自分は五代目海老蔵を名乗り…云々と、エピソードのとても多い名優で、
四谷怪談の民谷伊右衛門に代表される色悪と、市川家のお家芸である荒事の両方を得意とした、思い馳せるだに、タイムマシーンで観に行きたい役者のひとりです。
今回は踊りは無く、地(じ)の演奏のみですが、江戸時代文化文政年間の芝居町の賑わいをご想像頂いて、ご観覧いただけましたら嬉しいです。

「近江のお兼」と申しますと、新橋演舞場での先代の七世中村芝翫丈の舞台が想い出されます。
当時、芝翫丈は体調を崩されて、私が物凄く愉しみにして伺った日は、当代の芝翫=当時・橋之助が代演でした。客席から悔しげに睨んでいた一観客に申し訳なさそうに踊っていた橋之助丈には、いま思うと、しみじみとごめんなさいです…30年以前の記憶。
芝居好きな人間というものは、自分の贔屓俳優に激しい執着をいだいているものなのです。

伊豆半島西海岸の松崎町に、江戸時代に左官の名工として名を馳せた入江長八(いりえ ちょうはち)の記念館がございます。
長八は、漆喰で彫塑する独自の技法を編み出した職人で、もう二十年近く以前、同記念館に参りましたところ、「近江のおかね」という画題での作品があり、びっくりしました。
長八は文化12年生まれとのことですから、七代目團十郎が活躍した同時代に生きて同じ江戸の空気を吸っていた人間です。
同記念館の土産用絵はがきがあったので記念に買い求めたのですが、いつだったかの午年の、年賀状の返礼に友人に送ったので、もう手元になく、写真でお見せ出来ないのが残念です。

…というように、キリがない近江のお兼に対する私のシンパシー…
冷静に真心を込めて演奏いたします。

ご来場をお待ちしております。

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長唄の発声・歌唱法ワークショップがあります。

2023年06月09日 21時15分20秒 | お知らせ
関東地方は梅雨入りしたようでございます。
空も晴れぬが、心も晴れぬお年頃の皆さまに、ひととき、浮世を離れ日本の伝統文化に触れていただければ、ほのかに明るいともしびが胸のうちに灯るかも知れません…

というわけで、
JR中央・総武線 及び 京王井の頭線 吉祥寺駅 北口徒歩3分の
コピス吉祥寺A館7階
(以前は伊勢丹百貨店 吉祥寺店でした。往年のTVドラマ「俺たちの旅」オープニングテーマで、中村雅俊と秋野太作、田中健が水浴びする池はこの前庭に在りました)
吉祥寺美術館 音楽室にて

6月17日 土曜日 夜19時より受付まして、20時ぐらいまで、
長唄の発声・歌唱法のワークショップがございます。
参加費は無料です。どなたでもご参加頂けます。
講師は生まれも育ちも生粋の吉祥寺ネイティブ、長唄杵徳会家元・杵屋徳衛です。

この季節にぴったりの"いたこ=潮来出島"(カタカナじゃないほうですょ…)
雨に濡れながらひそやかに咲く、水辺のあやめ草に恋心をそこはかとなく唄い込んだ素敵な曲を体験します。
 ♪いたこでじまの マコモのかげで アヤメ咲くとは しおらしや…

当月歌舞伎座で当代市川中車丈が熱演中の「ども又=傾城反魂香/けいせい はんごんこう」は、琵琶湖畔の土産物・大津絵がテーマになったお芝居です。
その大津絵の画題の一つが"藤娘”というキャラクターで、
昭和時代にⅥ尾上菊五郎が新演出で藤音頭入りの歌舞伎舞踊「藤娘」を再編し、人気曲に仕上げたのは有名なお話ですが、
そのはるか以前の、安政元年(1854=日米和親条約、締結さる)に落語でお馴染みの初代ではないほうの中村仲蔵が、
今回みなさまに唄って頂く「潮来」入りの趣向で上演して以来、
いたこ入りで踊る形態の藤娘もございます。しみじみして佳いものです。

ご参加下さった皆さまに、当日の教材の、特製「潮来/いたこ」杵徳譜の楽譜をプレゼントいたします。
定員は15名様で、予め前日の金曜日までに、
電話0334680330か、メールou.kinetoku@gmail.com
へ、ご予約をお願い致します。

とある古典芸能従事者の方が、体験レッスンをなさったとき、
メールでご予約があったので待っていたところ、いらっしゃらないので、ご連絡したら、
「予約はしたけれど行くとは言っていません」との、ご返事を頂いたとか。
なぞかけのような世の中になって参りました。

きっかけは軽い気持ちでありながらも、前向きなご参加をお待ちしております。
限られた時間でも、豊饒なひと時が皆さまにもたらされますように…
嬉しくお待ちしております。

【追伸】
同企画は7月15日(土)にもございます。
まったく同じ内容です。ご参加受付しております。
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明日の演奏会@吉祥寺

2023年06月03日 12時29分38秒 | お知らせ
新暦なれど6月2日の悪天候にて、昨日被災された皆さまに御見舞い申し上げます。

さて今日は旧暦四月十五日、夕暮れには美しい月も昇りましょうほどに、先ずは表題写真のご説明。
一年間双葉のままだった檸檬の実生がありまして、どうなるのかなぁ…と気にしておりましたところ、このほど目出度く脇芽が生えて参りました。
令和の一年寝太郎噺とでも申しましょうか、気長に暮らすと佳いことがあるものです。

ご案内が遅くなりましたが、明日4日(日)は、吉祥寺駅南口 徒歩2分の 武蔵野公会堂にて、
武蔵野邦楽連盟による、“邦楽 春の会”が開催されます。

開場は12時半、開演は13時。終演は16時の予定です。
古来よりの日本の伝統文化である長唄、箏曲、現代邦楽の演奏をお楽しみ頂けます。
入場は無料、お出入りは自由です。



ご来場をお待ちしております。
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