むすんで ひらいて

すべてが帰着するのは、ホッとするところ
ありのままを見て、気分よくいるために

信州 つづり路 1

2012年09月27日 | 旅行
今、名古屋にいても東京にいても、巨峰に梨にデラウェア、長野県産の秋の果物をよく見かけます。
そこは毎年、家族で夏のハイキングと冬スキーに訪れた、想いで深い地。

先日、安曇野を経て、再び白馬へトレッキングに来ると、これまで馴染んだ光景に、わたしや家族のその時々、30年あまりの情景が重なり、さらに、両親が若い頃、山登りやスキーに来ていた話を聞きながら、直接知らない時間にも心を馳せてみることで、記憶のカケラが長い時間軸の中で繋ぎ合わされていく感じがありました。


初日。 安曇野の高速を下り、信州の郷土料理“おやき”を囲炉裏で温めて、お昼ごはん。
表面がパリッと焼けた皮の中に、しっとり詰まった具。
選んだのは、ナスと、野沢菜 ほふほふ。




北アルプスの湧き水を引いた広大なわさび田を、端からはしまでぐるりと歩く。

近くを流れる川は、今も変わらず澄んでいて、うれしい








車窓から、コスモスのさわやかなピンクや白を眺めてきたところなので、水車小屋の軒下、彼岸花の鮮やかな赤に、ハッとする。



散策路を一回りしてくると、なにか自然の素材を燃す、懐かしい匂いが谷間に立ち込めてきて、幼い日、とうふ屋さんのラッパの聞こえた夕暮れ時を思い出す


暗くなりかけた頃、白馬に到着
9才だった8月末、もう、少し肌寒くなった山の空気を半そでの腕に感じ、旅行者で賑わうお土産屋さんのワゴンから、白地にブルーグレーで描かれた、うさぎとクマのTシャツを選んだ。 
あの、思い入れのペンション街へと向かう。

今では、落ち着いた一角になっているけれど、当時ステキだな。と思っていた、洒落た洋食屋さんは健在!

さっそく夕食を注文すると、ウェイターさんが話しかけてきてくれた。
「名古屋からですか。 僕にも、(名古屋市)昭和区におばあちゃんがいるから、ここの畑で採れた野菜や自家製漬物を、年に何度か小包にして送ってるんですよ」

そう言って食後、畑の、赤と黄のミニトマトを白い器に盛ってだしてくれ、帰り際には、りんごを一個、「明日の朝にね」と、そっと手渡してくれた。

びっくりプレゼントにお礼を言うと、彼は、お皿を下げながら、
「りんごはね、たくさんおいしいのがあるけど、昔、生ってるのをひとつ、こっそりいただいて食べたもんです。 ああいうのが一番、うまいんですよ!」
と、わんぱく時代をかみしめるように、頷いた。


だけど、後からむいたこのりんごも、それに負けないぐらい、格別な味わいでしたよ

つづく

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森のこちらと、あちら側

2012年09月26日 | 旅行
久しぶりの更新です。

今日は、秋晴れにふさわしい、雲ひとつない青空が広がり、街の音が高く吸い込まれてしまったように静かです。

9月は、友人の住む西東京の森へ出かける機会がたくさんありました。
どういうわけか昔から、一度訪れた場所が気に入ると、とにかく3回、続けて足を運んでしまいます。
時には、自然に用事が重なってそうなることも。

今回は、上、中旬と秋の気配を帯びていく森を歩き、下旬は雨模様だったので、しっとり緑を深める木立を外側から眺めました。




ホテルのお庭から、森の周遊コースが始まります。
9月1日。 すうっと踏み入った小道をほんの少し歩いただけで、葉を透かす陽射しは薄らぎ、クマゼミ、アブラゼミのシャワーにすっぽりと包まれました。
そこに佇むと、さっき庭で人とすれ違ってきたことが、はるか遠いできごとに思えます。




中旬。 お部屋から望む空は、まだまだ夏いろ。
右下に見下ろすガーデンチャペルでは、小さな結婚式が開かれていて、参列者のひとたちが、扉から敷かれた赤いカーペットを挟んで、扇子をはたはたさせたり、白いハンカチで首元を拭いながら、中から出てくるふたりを待っていました。

森の中は、ツクツクボウシ、ヒグラシの声に空気が緩み、黒い子猫がひとり、あっちこっちの茂みを覗きながら、先の方を歩いていました。


そして下旬、三度目の朝。 隣のテーブルで朝食をとっていたアメリカ人らしい二人の、外を向いていた女性が、まだ明るい庭にキラキラ舞ってきた小雨を目にし、
「雨が降ってるじゃない!」
と言って、クロワッサンをちぎる手を止めました。

まもなく、一面の芝生はみるみる背筋を伸ばし、節のごつごつした大木は、柳のような枝をゆさゆさと振りはじめ、向こうに広がる森も、そっと水に覆われていきました。



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