里の家ファーム

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大晦日に考える 「残った掛け」の返し方

2019年12月31日 | 社会・経済

 東京新聞社説 2019年12月31日
 
 昔は、庶民にとって大晦日(みそか)というと、掛け取り、つまり売掛金の集金人との攻防のクライマックスみたいなところがあったようで、江戸の川柳には、どうも、その手の柳句が多いですね。
 貸し借りは、年内にすっきり払い、払ってもらって、というのが理想ですが、それぞれの懐具合もあってなかなかそうもいかない。
<元日や今年もあるぞ大晦日>という川柳など、一見ナンセンスギャグのようですが、さにあらず。どうにか、掛け取りとの攻防をしのぎ、平和な正月にたどり着いた途端、もう暮れの心配をして、ああ今年の大晦日も大変だと慨嘆する、というのが句意でしょうか。
◆世界中で異常気象
 <晦日そば残った掛けはのびるなり>。これも大晦日の句です。年越しの掛けそばの「掛け」と売掛金の「掛け」を掛け、麺の「のびる」に支払いの「延びる」を重ねたうまい一句ですが、私たちも何だか大きな「残った掛け」を先延ばしにして年を越すような心持ちがしないでもありません。
 投票で決まる恒例の「今年の漢字」から一年を振り返ってみましょう。といっても、一位の「令」ではなく、その他のトップ10。それぞれの漢字を選んだ理由を見ると、四位「変」、五位「災」、さらに六位「嵐」、七位「水」、八位「風」、九位「天」と、実に六つに天変地異というか大嵐というか、15号や19号が記録的大雨などで甚大な被害をもたらした台風がからんでいるのです。
 異常な気象現象は、台風の凶暴化だけでも、日本だけの話でもありません。欧州やインドは今年、熱波に見舞われ、フランスでは史上最高気温の四六度を記録。異常な高温・低温、異常な少雨・多雨は各地で見られ、大規模な山火事も頻発しました。
 多くは地球温暖化が背景にあると考えられています。米海洋大気局によれば、今年七月の世界の平均気温は史上最高を記録。北極圏の海面上にある氷の面積も最小記録を更新したといいます。
◆当事者に「救助」の責任
 折も折、今年は、明日スタートする温暖化防止の国際的取り決め「パリ協定」の準備を整える年でした。そのために各国が集った今月の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)では、各国のCO2削減目標の強化こそ合意されたものの、強い表現は盛り込めませんでした。ルールも全体の合意に至らず先延ばしに…。国連のグテレス事務総長は率直に「がっかりした」とツイートしました。
 今年も、世界中であれだけの異変を経験し、せっかく協定も動きだすのに、私たちはなお、本気で危機感を共有し、この途方もない問題に取り組む体制をつくれていない。これをこそ、大きな「残った掛け」だと感じるのです。
 何にせよ、温暖化に歯止めをかけるため、さらには、腰の重い政府を動かすために、私たちは今にも行動を起こさなければならないのですが、一つ心配なことが…。
 話は半世紀以上遡(さかのぼ)って、一九六四年。一人の女性がニューヨークの自宅アパート前で暴漢に刺殺される事件がありました。その様子を実に三十八人ものアパートの住人が部屋の窓などから目撃していたのに、襲われてから死亡するまで半時間以上もの間、誰一人救助はおろか警察への通報さえしなかったのだといいます。なぜか-。
 「こんなにたくさんの目撃者がいるのだから誰かが救助や通報をするだろう」といった心理が働いたためと考えられています。被害者の名から「キティ・ジェノヴィーズ事件」と呼ばれ、心理学でいう「傍観者効果」の典型例として知られています。
 世界中で異常気象や災害という“事件”が起きていて“目撃者”はほとんど無数といっていいほど多数。どうでしょう。自分じゃなくても誰かが何とかするだろう、という傍観者効果がこれほど働きやすい構図もないのでは。
 しかし、私たちは目撃者である前に当事者です。傷ついた地球の“救助”に責任があります。
 何も海外には飛行機でなくヨットで行こう、などというのではありません。極端に「意識が高い」行動は誰もができることではない。個々がほんの少しだけ、環境を意識したエネルギーの使い方、企業や商品、あるいは政治家の選び方をするだけで、効果は絶大のはず。なにしろ、個々の効果は小さくても、当事者はほとんど無数にいるのですから。
◆恐怖する子どもたち
 過日、ノーベル賞の授賞式から帰国した吉野彰さんが、欧州で接した子どもたちのことを、こう語っていたのが印象に残りました。「(地球環境の未来について)彼らは恐怖心を持っている」
 私たちの「残った掛け」を、未来の世代につけまわすわけにはいきません。来年こそ-。いろんな意味でいい年にしたいものです。


 今年も「掛け」を残したまま年を越そうとしているようです。わたしにとって一番氣になる問題はやはり「地球温暖化」。農業をしているからこそ「自然」には敏感になります。人間や動物・植物がまっとうに生きられる環境を壊してはならないと思います。農薬も、政治も経済もみな繋がっているのです。

 台風被害を受け、ブルーシートのまま、あるいは避難先で新年を迎える方がいます。

明るい年にしたいと思います。

「優しさと多様性の認識」を!
小さなことから行動しましょう!
たとえば・・・
ペットボトルを、プラスチックを
使い捨てライターをマッチに
ボールペンを鉛筆に
化繊を天然素材に

そんなことを考えてみてください。

この1年。

お世話になった皆さんに感謝いたします。

ありがとうございました。

みなさまが、よいお年をお迎えいただけるようお祈りいたします。


ナイキ「北極海航路を利用しない」と宣言。

2019年12月30日 | 自然・農業・環境問題

その理由、知ってますか?
「北極海航路」は航路時間を短縮するというメリットがあるが…

ハフポスト はじめてのSDGS
  2019年12月30日 

    サステナブル・ブランド ジャパン=沖本啓一

 

ナイキはNGOのオーシャン コンサーバンシーと連携し「アークティック・シッピング・コーポレイト・プレッジ(北極海航路企業宣言)」を策定した。気候変動により北極海の氷が融解し、航行時間を短縮する新たな航路が開ける一方で、同社はそれらの航路の利用が環境に大きな影響を与える可能性を懸念。脆弱な北極海の生態系を通過する航路を選ばないことを約束した。アパレルを扱うコロンビアやH&Mなどに加え、海運業の長栄海運、ハパックロイド、MSCなどの企業がこの宣言に賛同、署名している。(サステナブル・ブランド ジャパン=沖本啓一)
  
気候変動の影響で懸念される北極海の「輸送航路」の問題
北極・アラスカを昨年の夏に訪れたというナイキのEVP チーフ・アドミニストラティブ・オフィサーで法務担当責任者のヒラリー・クレーン氏は「美しいだけでなく、広大な地域で、地球の健康にとって重要な地域だ」と話す。

「世界の冷蔵庫」と呼ばれることも多い北極圏は地球の温度を調節し、気候変動に対抗する上で重要な役割を果たすが、気候危機の影響で他の地域の2―3倍の速度で温暖化が進む。氷が融解することで地球上の環境はさらに不安定になるだけでなく、北極圏の貴重な生態系を脅かしているという。

これらの海氷の減少は環境にとってリスクである一方、貨物輸送という観点では、新たな「北極海航路」が開けて従来のルートに比べて航行時間が短縮されるというビジネス上のメリットをもたらす。一部の海上輸送業者によって行われた試験航海と研究によれば、北極海ルートは2030年までにアジア-ヨーロッパ間のコンテナ貿易全体の約8%に利用されると考えられ、2050年までにその貿易の最大10%に利用が増加する可能性がある。利用の増加は「脆弱な北極海の環境に大きな影響を与える」と同社は警鐘を鳴らす。

NGOと協力し誓約を策定、企業巻き込む
「ゼロ・カーボン」「ゼロ・ウェイスト」を目指し「Move to Zero」を掲げるナイキは「Nikeにとって気候変動対策とは、製品の設計と製造方法、世界中に製品を届ける方法を考えることを意味する」とし10月23日、「北極海航路企業宣言」を策定した。「今回の宣言で、私たちは地球を守る、北極海を保護するために役立ちたいという明確な選択をした。それは北極海を利用することではない」とヒラリー・クレーン氏は話す。

ナイキと協働し宣言を策定したのは、米国に本拠を置き海岸のクリーンアップ活動などを行うNGO「オーシャン コンサーバンシー」だ。CEO のジャニス・サールズ・ジョーンズ氏は「ナイキが北極海を健全に保つことが誰にとっても責任のあることであり、それが本当に大事なことであるという認識を持ってくれたことを賞賛する」とし、「今回の発表によって危険な北極海輸送を防ぐために、必要とされる行動を促し、世界的な輸送に伴うCO2排出を削減するためのさらなる協力が生まれることを期待している」と話した。

ベストセラー(デンマーク)、コロンビア(米国)、Gap,Inc.(米国)、H&M(スウェーデン)、ケリング(仏)、利豊(リー&ファン、香港)、PVH Corp.(米国)といったアパレルに関わる大手企業に加え、海運企業からはCMA CGM(仏)、長栄海運(エバーグリーン、台湾)、ハパックロイド(独)、メディテラニアン・シッピング・カンパニー(MSC、スイス)らが、この誓約の作成に関わり、賛同の署名をしている。
Arctic Corporate Shipping Pledge


北極海航路企業宣言
北極は、地球の他の場所よりも2-3倍の速さで温暖化(気温が上昇)している。これにより、夏の海氷が縮小しつづけ、かつてないような海洋生態系の再編成が起き、この地域で暮らす人々にも大きな脅威となっている。北極海航路を通る貨物船が増えることは、さらなる危機を及ぼすことになる。
気候変動により北極の氷が解けることで、これまで航行できなかった航路も貨物船は通ることができるようになる。これらの海路を使うことにより航行時間の短縮も見込めるが、北極海をわたる海運が今後増加すれば、世界でも最も脆弱な環境に大きな影響を与える可能性も懸念される。
世界中に商品を運ぶ企業として、輸送によって排出される温室効果ガスが北極海に危機をもたらし、この航路を通るのをやめなければ状況が変わらないことを認識している。それとは別に、私たちは世界中に商品を輸送することで排出される温室効果ガスの量を減らす努力を続ける。気候変動がすでに北極に暮らす人々、海の生物、生態系に大きな影響をおよぼし脅威となっていることに大きな懸念を持つ企業として、さらなる危機をもたらすことを拒否し、以下の通り誓う。
1. 北極海航路を避ける
a.消費財企業:環境への潜在的影響(見込まれる影響)を認識し、自発的に、各社の商品を北極海航路(地図を参照)を経由して輸送しないようにする。同様に、各社が契約する外洋貨物船や運送会社もこれらのルートを通らない。
b.物流企業:環境への潜在的影響(見込まれる影響)を認識し、各社は意図的に北極海航路(地図を参照)を経由する輸送サービスをしないようにし、自社の貨物船がこれらのルートを通らないようにする。
2. 環境や人への負荷を下げる輸送を促進する
われわれが北極海航路を避ける誓約をしたとしても、誓約することを拒む企業もいる。そうした場合があることを認識し、私たちは環境負荷を下げ、この地域で暮らす人の安全性を確保するための予防措置的な北極海航路の使い方を開発する支援を行う。
この支援では、北極海での重油の使用と輸送の禁止への動きや、国際海事機関(IMO)による「PSSA(特に敏感な海域/A Particularly Sensitive Sea Area)」としての中央北極海の指定、重要な生態学的および先住民の文化的地域を保護する、影響の少ない輸送航路の評価、そして厳格な汚染管理の採用などの活動を促進することが含まれる。

Sustainable Brand Japan
まっすぐ北極海を通過する「北極海航路」は環境への影響が懸念される


江部乙の家、改装。

 今年は雪が少ない。例年だと、納屋の屋根雪降ろしを年末に1回するののだが、今年はまだそれほど積もってはいない。雪かきも少なく、体がなまってしまうのではないかと心配。


トランプに握られた日本人の胃袋

2019年12月29日 | 食・レシピ

日本は見下された国 米国が食の安全に配慮するわけがない
  日刊ゲンダイDIGITAL 2019/12/27


奥野修司ノンフィクション作家
おくの・しゅうじ 1948年、大阪府生まれ。「ナツコ 沖縄密貿易の女王」で講談社ノンフィクション賞(05年)、大宅壮一ノンフィクション賞(06年)を受賞。食べ物と健康に関しても精力的に取材を続け、近著に「怖い中国食品、不気味なアメリカ食品」(講談社文庫)がある。


 以前、中国で農業指導したことのある日本人にこう言われたことがある。 

「食の安全とは、生産者が消費する人を好意的に見ているか嫌悪しているかの違いだと思っています。嫌悪していたら毒を入れても平気です。中国人は日本人を嫌いだし、信用していません。アメリカ人は日本人を見下しています。だから、汚染された土壌で作られたものでも平気で売るのです。輸入食品なしに日本人の食生活は成り立ちませんが、私はできるだけ中国産とアメリカ産は食べないようにしています」
農業の生産現場を知る当事者の言葉だけに、重い。見過ごせないのは、米国の生産者が、日本のことを好意的には見ていない、見下しているということだ。これは多くのの人が、納得できなくとも、否定はできないだろう。沖縄の基地問題や不平等な日米地位協定を持ち出すまでもない。

 今回のホルモン剤入りの安い牛肉の輸入拡大問題の核心もここにある。アメリカの牛肉生産者は別に日本人の食の安全などに気を使っていない。もともと牛肉の大量生産地であるテキサス、ネブラスカ、カンザス、アイオワ、コロラド州などの中西部や南部は、白人の優越感が強く、日本人などの黄色人種に対しては、逆立ちしても好意は持っていないと考えていい。大量生産で余剰気味のホルモン入り牛肉を買ってくれる国があればそれでいいし、販売市場を拡大したトランプは「できる大統領」なのである。
米国の牛肉から、国産牛肉に比べて600倍もの肥育ホルモンが検出されたというのに、国は最新の機器で正式に検査していない。検査すれば日本が禁止している合成ホルモンも出てくるだろうといわれているのだ。

 国民の健康を守るには、安全面の強化をアメリカの生産者に求めるべきだが、それには安倍首相が国民を代表して声を上げるしかないだろう、しかし、これもまた、逆立ちしてもあり得ないことだ。

 となると、食の安全は日本人消費者が自分で守っていくしかない。政府には何も期待できないだろう。とはいっても、今や日本の輸入食料の25%が米国産であり、国別ではトップだ。牛肉や豚肉に限っても、敬遠すれば済むという問題ではない。とりわけ困るのは、加工されて、見えない形で日本人が口にする多くの食べ物にも含まれていることだ。
 どうしたら、自分で安全を守れるのか。次回から検証していきたい。  =つづく


 わたしも「食の安全」は、生産者と消費者の信頼関係の上に成り立つものと考えている。それは、顔の見える関係である。

あなたも野菜、つくってみませんか!

 


数字で振り返る2019年の地球の環境状況

2019年12月28日 | 自然・農業・環境問題

森林火災から絶滅危惧種、エネルギーまで。現在の地球の状況を見てみよう。

ハフポスト 2019年12月25日

Kyla Mandel


この1年は、現在の地球に関する終わりなき情報に圧倒される年だった。気候に対する説明責任に関する訴訟や、マイクロプラスチック汚染...。昨日起こったことさえ忘れやすいのに、半年前に起こったことを覚えている訳がない。
2019年も終わりに近づき、現在の状況を振り返る時だ。生物多様性の減少から廃棄プラスチックまで、多くのレポートが現在の地球の危険度を強調している。同時に、世界中で悪化する洪水や山火事は、私たちに温暖化が進む地球がどうなるかを表している。
破壊は目の前で起こっており、目を反らすことは不可能だ。2019年は、これから社会が本気で温暖化や生物多様性の現象への対策に取り組むならば、大きなチャレンジが待っていることを知らしめた。
しかし、全く進展がなかった訳ではない。再生エネルギーの割合は増え、石炭火力は減った(世界的に)。そして、低炭素にまつわる業界である電気自動車や省エネに関する企業での雇用は増加した。
現在の地球の状況を示す、この1年における重要な統計をここに集めた。

影響
99%:2019年が過去最も暑かった年の上位5位に入る可能性。NOAAのデータによると、人間史上で2番目か3番目に暑い年となるという。
華氏1.71度(摂氏0.95度):20世紀の7月の月間平均気温と比較して2019年の7月がどれだけ暖かかったか。人間史上最も暑い7月となった。
125億トン:8月のある1日でグリーンランドで溶けた氷床の量。アメリカのフロリダ州全体を約13センチの水で覆うだけの量である。
5島:ロシアの北極圏の氷河が溶けて新たに発見された島の数。
10万5144ヘクタール:2019年にカリフォルニアの山火事により焼けた土地の広さ。
1万平方キロメートル:2019年1月〜8月にブラジルのアマゾン熱帯雨林の森林破壊によって一掃された土地の広さ。
1000人:4月にサイクロン・イダイによる破壊的な洪水によってモザンビークで亡くなった人の最低予想人数。過去20年間で同地域を襲った最悪の災害となった。
100万種:地方・国・世界レベルで「革命的な変化」が行われない限り、人間の行動によって絶滅する陸海の生物の種類。(5月に発表された国連調査から)
99.8%:アメリカにいる絶滅危惧種の中で、地球温暖化に適応するのが難しいとされる種類の確率。

経済
10件:1月から9月までにアメリカで10億ドル以上の被害を与えた気候災害の数。
1.3兆ドル:アメリカのグリーン・エコノミー(環境に良い影響を与える経済)の価値。University College Londonによって10月に発表された分析によると、アメリカの約4%の労働人口の約4%が、電気自動車、省エネ、グリーン金融など、低炭素に関わる業界で働いている。
 
消費
310万台:世界で売られた車の減少数。2008年の不景気以降、最も大幅な減少だった。アメリカでは2%の減少が見られた。
42%:世界で販売された乗用車のうち、多くの排気ガスを出すSUVが占める割合。
7%:予想される2020年のビジネス・ジェットの販売の増加の割合。
116億:1つのプラスチック製ティーバッグが沸騰温度前後のお湯に煎じられたときに排出するマイクロプラスチックの数。

7カ月:世界が「アース・オーバーシュート・デー」に達するまでに要した期間。「アース・オーバーシュート・デー」とは、人類の消費が、地球が天然資源を補給するスピードを追い越してしまう時のこと。2019年はこの時点に達するのが過去最も早い年となった。
エネルギー
1100万人:2018年(最新データ)に世界の再生可能エネルギーの業界(生産、貿易から搬入まで)で働いた人の数。
50%:今後5年で予測される再生可能エネルギーの増加率
23%:4月のアメリカの再生可能エネルギーによるシェア。初めて石炭火力(20%)を追い抜いた。

2021年:ヨーロッパ投資銀行が化石エネルギープロジェクトを停止するとする年。

アクション

600万人:世界の150カ国、4500カ所で9月の気候ストライキに参加した人の数。
164人:活動が原因で殺された環境活動家の数。(7月に発表されたレポートに基づく)
1万1000人:11月に気候危機を宣言した153カ国の科学者の数。「アクションを取らなければ人間への甚大な被害は避けられない」と警告した。
28カ国: 政府や企業に対し、気候への行動を問う訴訟が現在行われている国の数。アメリカが最高で1023件。
50%:安定した気候を保つために今後10年に世界中で削減するべき炭素排出の割合。国連の環境プログラムのエグゼクティブ・ディレクター、Inger Anersen氏は、更なるアクションが必要だと言う。「みんなが早く、一生懸命気候変動への対策に取り組むことができなかったことで、更に炭素排出量を削減する必要がある。今後10年平等に分けるとしたら、毎年7%以上の削減が必要です。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。


「御用」は納まらず。

と言っても仕事ではない。すでに雪が降って「御用」は納まった。

江部乙の家を改装している。
和室6畳間の床をぶち抜いて「土間」を作っている。

玄関に入って茶の間に行く構造だったのだが、新たに壁をぶち抜いて、直接こちらへ入るようにした。
なかなかいい感じである。
くつろぎの空間である。
まだ完成していないので、のちほど完成の模様をアップしたいと思っています。


香山リカ「常識を疑え! 」中村哲さんの死に思う、日本の医療界をも侵食する“資本主義リアリズム”

2019年12月27日 | 健康・病気

香山リカ「常識を疑え!

」中村哲さんの死に思う、日本の医療界をも侵食する“資本主義リアリズム” 

Imidas 連載コラム2019/12/27
香山リカ 
(精神科医・立教大学現代心理学部教授)


2019年12月4日、アフガニスタンで長年、人道支援活動を行っていた非政府組織(NGO)「ペシャワール会」の現地代表をつとめる中村哲さんが、現地で移動中に武装集団の襲撃を受けて殺害された。運転手や護衛など同行していた現地スタッフ5人も銃撃で命を落とした。
 襲撃後の第一報では「命に別状はない」と伝えられ、驚きながらもひとまず安堵した人も多かったはずだ。しかしそれから間もなく、襲撃を受けた場所に近い東部ジャララバードの病院から首都カブールの病院への移送中に死亡した、と報じられた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 多くの著作を残した中村さんだが、そのタイトル『医者 井戸を掘る』(石風社、2001年)、『医者、用水路を拓く』(同、2007年)を見るだけで、活動内容がよくわかる。もともとは医師としてアフガニスタンの医療支援に携わっていた中村さんは、あるときからその軸足を「水」、つまり灌漑事業に移すことになる。
 中村さんの死去を受けて、日本経済新聞電子版はキャリアを変えるきっかけなどについて本人が語った2018年のインタビューを再掲した。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52952760U9A201C1000000/)
 タイトルは、「中村哲さん 聴診器をスコップに替えて」となっている。これもまた、中村さんの人生を端的に表現しているといえるだろう。
 2000年、アフガニスタンを大干ばつが襲い、不衛生な水を飲むなどして多くの人たちが感染症にかかった。中村さんは診療に追われたが、栄養失調が重なって命を落とす子どもも少なくなかった。そこで中村さんは考えたという。記事から引用する。
「医者としてやれることはやった。しかし『これでいいのか』との思いがつきまとう。自問自答の末の結論は『診療所で患者を待つ医療はすでに限界。清潔な水と食べ物がなければ命は救えない』。」
 それから中村さんは一念発起し、「『百の診療所より1つの用水路』を合言葉に全長25キロの灌漑用水路の建設を計画」したというのだ。もちろん土木や建築の経験や知識はないが、独学で設計図を描いて重機を運転した。水がやってきた土地では植物が生え、農業も始まった。衛生状態が改善し、仕事によって経済も潤えば、住民の健康状態は当然、良くなっていく。「聴診器をスコップに替え」たのは確かだが、中村さんは医師としてのつとめも立派に果たしていたわけだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 一方、国内の医師たちはどうだろう。最近、ネットで血液を“クレンジング”するという言葉が注目を集めた。これは医師や看護師が行う医療行為なのであるが、その目的は疾病を治すことではなく「健康増進」「老化防止」だ。具体的には、まず静脈血を100~150ミリリットル採取し、そこに酸素分子(O2)より酸素原子がひとつ多いオゾン(O3)を投与する。静脈血は酸素を全身の細胞にわたしたあとなので色が黒っぽくなっているが、オゾンと結合することで赤々とした色を取り戻す。それを再び体内に戻す、という一連の行為がそれにあたる。
 医療にとくにくわしくない人でも、これは静脈血が酸素原子と結合して赤くなっただけであり、何か特別な“クレンジング”(洗浄)を受けたわけではない、というのはわかるだろう。また、体重50キロの人で体内には4リットル、つまり4000ミリリットルもの血液が流れている。この血液の“クレンジング”では、このうちわずか100~150ミリリットルに酸素を付与するだけであって、それを体内に戻したところで血液全体には大した影響を及ぼさないはずだ。
 今回、これがネットで注目されたのは、有名ブロガーやタレント、俳優などが、“私も血液の〈クレンジング〉で自分メンテナンスしてます”“気分がスッキリしました”“カゼを引きにくくなったみたい”などとその効能も含め、SNSで発信していたからだ。それに対して何人かの医師が、血液の“クレンジング”には十分なエビデンス(医学の世界で認められた効果のデータ)がないので、有名人が効果をうたうのはやめてほしい”と警鐘を鳴らしたのだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 実は、内科や皮膚科、婦人科など標榜している診療科名に関係なく、この血液の“クレンジング”や、やはりエビデンスに乏しい“高濃度ビタミンC”の点滴、“高圧酸素”のカプセル療法などを、健康保険を使わない自由診療で行うというクリニックが、いま全国で増えている。
 それはなぜなのか。もちろんクリニック側は「患者さんに少しでも元気になってもらいたいから」などと説明するが、おそらく本音は「医療者側の手間がかからず」「危険も少なく」「それなりに高額だから」であろう。たとえば血液の“クレンジング”なら1回20~30分で1万2000~5000円。しかも多めに採血してオゾンと混ぜてあとは点滴の要領で血液を戻すだけだから、医師ではなく看護師ができる処置だ。数人で同時に行うこともできる。なにせ「エビデンスに乏しい=効果がない可能性が高い」のだから、逆に有害事象つまり副作用の心配もほとんどない。
 やや辛辣にすぎる表現をあえて使えば、毒にもクスリにもならない“安全”な施術だが、血液の“クレンジング”なら血液の色が鮮やかな赤に変わる、といった視覚的なインパクトなどはそれぞれ強くあるので、受けた側はいかにもすごい治療をやってもらった気になる。そして、心理的な作用によって、「元気になった」「頭の霧が晴れたみたい」「カゼも引きにくい」などと健康回復や疾病予防効果をおのずと感じてくれるのだ。
 これまでも標準的な医療を行っている医師たちは、こういったエビデンスに乏しい自由診療での点滴やサプリメント投与などを、非常に冷めた目で見ていた。仲間うちで集まる研究会や学会では、「あれって“ニセ医療”なんじゃないの。よく良心がとがめないよね」などとかなり踏み込んだ批判をし合うこともあった。
しかし、これはある意味、医療の世界の“悪しき伝統”ともいえるのだが、医師はほかの医師がやっている治療や唱える健康法などに対して、よほどの危険を伴うものでない限り、表立っては口出ししない。「賛成はできないが、その医者がやりたければやればいいし、患者さんも受けたければ受ければいい」というスタンスで、スルーする人が圧倒的に多かったのだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 ただ、情報化社会であまりにも多くの医療情報が飛び交うようになり、どう見ても患者さんにデメリットを与えるような発言を繰り返す医師も出てくる中で、「黙ってはいられない」と立ち上がる医師も出てきた。たとえば日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科の勝俣範之教授は、著作や講演、さらにはSNSでさかんに「正しいがん情報の見極め方」を発信している。そこでは、「がんは放置せよ」などと主張する医師の名前をあげて批判することも臆さない。
 医師たちによる「血液の“クレンジング”批判」も、そんな変化の中で起きたことといえる。ただ、実際にはこういった「エビデンスなき医療」はすでに世に蔓延しているとも思われ、いまさら「この療法は効果ありません」と一部が声をあげたところで、流れが止まるとは考えられない。
 この背後にあるのは、やはり「医療にまで広がる市場原理主義」だ。「簡単で儲かる医療をやって何が悪いのか」という声が大きくなりすぎて、抗いにくくなっているのが現実なのである。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 そして、市場原理主義に呑み込まれているのは、何も民間クリニックやそこを運営する医師だけではない。国全体の医療を司る厚生労働省も、「儲かる医療が正しい」という価値観に侵食されているかに見える。
 2019年9月、厚労省は2025年までに「再編・統合を促す公立・公的病院」として、全国424の医療機関の実名を公表した。
ちょうどこの年に団塊の世代が75歳を迎えて後期高齢者になるので、その前に赤字が膨らむ公的病院に手を入れ、医療費抑制を図るのがねらいと考えられる。
 また同年12月17日に政府は、病院再編・統合を促す地域医療構想を進めるため、病院が病床を削減する場合に「ダウンサイジング支援」として2020年度だけで84億円の国庫負担補助金を交付する、と発表した。「病床を減らすための支援金」というのはすぐにイメージできないが、すでに設備投資が行われて赤字が出ているなど、「病床を増やしてしまったが減らしたい状態」に陥っている病院には喉から手が出るほどほしいお金だろう。
 ただ、この「公表された424の病院」がどういう基準で選ばれたのかが問題なのである。これらの病院は、厚労省のワーキンググループが、病床稼働率やこれまでの赤字額などから機械的に計算を行った結果、選定されたのだ。
 その病院がある地域の特性や、どういった患者を扱っているかなど、個別の事情がまったく考慮されていない。そのため、これらの病院のある地域からは、「このあたりで唯一、人工透析ができる病院なのに。ここがなくなったら生きていくことができない」「過疎地の有床診療所なので患者数が少ないのは当然。でも地域の命綱となっている」など、住民の悲鳴のような声が聞こえてくる。
 医療に市場原理をあてはめ、「稼げない病院は統廃合」とナタを振るうことは、「弱者切り捨て」に直結する。それは、多くの医療倫理の綱領や憲章に記されている「すべての人に平等に医療を行う」という理念にも抵触するものである。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 中村哲さんは、「聴診器をスコップに替えて」アフガニスタンに用水路を建設し、結果的に住民の健康改善にも貢献することになった。
 しかし日本の医師たち、さらには厚労省までもが、聴診器を「スコップ」どころか「計算機」に替えて、いかに多くを稼ぎ出すかという考えにとり憑かれているようだ。医療がこれでよいわけがないとわかってはいても、「資本主義の世の中、理想論やきれいごとばかり言っていられない」という途方もない“資本主義リアリズム”――この言葉はイギリスの批評家マーク・フィッシャーの同名の書(堀之内出版、2018年)から取ったものである――に押され、それに抗う有効な言葉を私たちは持てずにいるのが実際のところだ。
 日本から遠く離れた地で、市場主義経済から解き放たれた医療と人道支援を実践していた中村さんは、道半ばで凶弾に倒れた。ただ、その悲劇によって私たちは改めて、「こんな生き方をした日本人がいるのだ」という事実を目の前に突きつけられることになった。
――このままでよいのか。あなたはいま握りしめている計算機を、預金通帳を、別の何かに持ち替える必要があるのではないか。
 私たちはそう問われている。とくに医師である私には、その問いはひときわ大きく響いてくる。少し時間はかかっても、必ず「私が持ち替えるべきものは何なのか」という問いへの答えを、自分なりに出したいと思っている。


勉強しても報われない。

2019年12月26日 | 教育・学校

勉強しても報われない。日本の若者の大学院進学率が低下した理由
  MAG2NEWS 2019.12.12


    このまま行けば、日本の国際競争力低下に歯止めをかけることはますます困難になるかもしれません。東大教授らの調査により、日本の修士・博士号取得者数が減少していることが明らかになりました。なぜ我が国では、世界的な流れに逆行するこのような状況が進みつつあるのでしょうか。健康社会学者の河合薫さんは今回、メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、その原因を世界の常識とは乖離した日本企業が続ける「超ガラパゴス採用」にあるとしています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
   健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

「低学歴化」が止まらまい日本の闇

    日本の「低学歴化」が止まりません。
世界の先進国では過去10年間「修士・博士号」の取得者数が加速しているのに、日本は1割以上減少していることがわかりました(東京大学渡辺安虎教授らの分析による)。
    特に米国と中国では博士号取得者が2割超増加し、修士号でも同様の傾向があるなど、進学意欲が高まっています。一方、日本では16%も減少。東大の修士課程では留学生が半数以上を占めるなど、日本人の「大学院進学意欲」が乏しいこともわかりました。「大学進学率」は一貫して増えているにも、関わらずです。
その背景にあるのが、企業が求める「人材の質の違い」です。世界は専門性を活かした高学歴社会に突入し、博士号や修士号を持っていないと入社できない企業が増えています。ところが、日本では専門性よりコミュニケーション能力。大学の成績より人柄を重視。おまけに、入社後の給料の差が極めて小さいのです。
例えば米国では、修士の平均年収は学部卒の1.4倍、博士では1.68倍であるの対し、日本では修士・博士共に学部卒の1.25倍です。学部卒の平均年収は418万円なので、博士号を取得していても525万円しか稼げないかっこうです(日経新聞「博士」生かせぬ日本企業より)。
    就活でも評価されない、入社しても大して評価されない、大学に残ってもポスドクになるか非正規しかない。そんな状況でわざわざ高い授業料払ってまで日本の大学院に行くわけないですよね。
    こんなことをやっていたらますます世界から取り残されて行くのに…。残念です。
    そして、このような問題が報じられると決まって「だから年功賃金が悪い!」「だから終身雇用が悪い!」と言い出す人たちいますが、そもそもの問題はそこなのでしょうか?
   いいえ、違います。
学問の府である大学が就職予備校化しているのが問題であり、もっと言ってしまえば、自分たちが「使いやすい人材」=優秀な人材と勘違いしている企業の問題です。
    経団連が加盟各社に毎年実施している「新卒採用調査」を見ると、2001年時点では、「誠実性」「協調性」「主体性」「チャンレジ精神」「コミュニケーション能力」はほぼ同じ程度、採用時に重視されていました。
    ところが2005年以降は、「チャレンジ精神」が低下傾向に転じ、一方で「コミュニケーション能力」がダントツトップに躍り出ました。
    その引き金になったのが、経済産業省が2006年2月に「社会人基礎力に関する研究会」の中間とりまとめの中で提唱した「社会人基礎力」にあると、私は考えています。
    この研究会では、社会に出るまでに身につけておいて欲しい能力を議論。かつては、職場や地域社会で活躍するために必要な能力は、大人になる過程で自然に身につくものと考えられていました。しかし、家族の形が変わり、地域の結びつきが弱まり、日本社会の中でこうした能力を身につけることが難しくなり、「社会人基礎力」を定義することで大学のキャリア教育に生かそうとしたのです。

社会人基礎力は、

人との関係を作る能力
(例)コミュニケーション能力、協調性、働きかけ力 等
課題を見つけ、取り組む能力
(例)課題発見力、実行力、創造力、チャレンジ精神
自分をコントロールする能力
(例)責任感、積極性、柔軟性
の3つの能力に分類されます(2006年2月8日公表の経済産業省「社会人基礎力に関する研究会」の「中間とりまとめ」より)。
    繰り返しますが、これらの基礎力はキャリア教育のための指針です。
ところが、企業側が採用を行う際、その人材の良しあしを測る、“モノサシ”に用いているようになった。「コミュニケーション能力」という実に曖昧な能力で人材の良し悪しを測り学業の成績や専門性を軽んじる超ガラパゴス採用が続けられているのです。
    海外で名刺交換をすると、大抵そこには「Ph.D」という肩書きがあります。Doctor of Philosophy、学術博士、博士号です。経営をするにも、人をマネジメントするにも礎となる専門性が必要不可欠です。
   二言目には「競争力をつけなければ世界で勝てない!」と経団連のお偉い方達はおっしゃりますが、まずは自分の目で世界を見た方がいい。世界の企業がどんな人材を重視し、そのために世界のトップ自身がどれだけ学びを続けているか。その努力を怠っている人たちが、日本を低学歴な国に沈没させている。そう思えてなりません。


 とにかく、政府は「教育」にお金を掛けなくなった。先般問題になった「教育の機会均等」もむしばまれ、教育の「格差」も広がりつつある。大学への直接的な援助をやめ、大企業、「兵器」産業を迂回して、企業が欲しがる人材を育成している。これまで、日本の「ノーベル賞」受賞者が口をそろえて言っている「基礎研究」の重要性が無視されている。だからもう数年で日本から「ノーベル賞」受賞者はいなくなるぞと警告を発しているのだが・・・

高学歴者の貧困が日本で起きている。

 


ブラック企業大賞2019

2019年12月25日 | 社会・経済

ブラック企業大賞2019に「三菱電機」 新入社員の自殺で上司が書類送検などが理由
三菱電機は、8月に新入社員の男性が自殺、その上司が自殺教唆をしたという疑いで、兵庫県警に書類送検されている。

ハフポスト日本版編集部 2019年12月25日


長時間労働やパワハラ、セクハラなど、労働環境の「悪さ」で注目を集めた企業を選ぶ「ブラック企業大賞」。2019年の「大賞」は2年連続で三菱電機が選出された。子会社のメルコセミコンダクタエンジニアリングとの連名。
産経新聞などによると、三菱電機は、8月に新入社員の男性が自殺、その上司が自殺教唆をしたという疑いで、兵庫県警に書類送検されている。
遺族側は、亡くなる前日の日付で残された男性の自筆のメモを公開。それによると、上司から「次答えられんかったら殺す」「死んどいた方がいいんちゃう?」「自殺しろ」と言われたという内容だった。弁護士はパワハラによる自殺教唆が立件されることは異例だとしている。
ブラック企業大賞は、弁護士やジャーナリストらでつくる実行委員会が2012年から始め、今年で8回目。12月23日には大賞の発表とともに「授賞式」も行われたが、企業側からの参加は今年もなかった。
個別の企業の事例だけでなく、「ブラック企業」を生み出す社会背景や構造にも関心を持ってほしいとの狙いで始まった。実行委は、広く話題にされることで、誰もが安心して働ける社会を目指したいとしている。
今年は、過去に大賞を受賞した株式会社セブン-イレブン・ジャパン、電通を含む9つの企業・自治体がノミネートされていた。

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高橋まつりさん母が手記 電通に「また踏みにじられた」
  朝日新聞デジタル12/25(水) 

   
 広告大手「電通」の新入社員で4年前のクリスマスに過労自殺した高橋まつりさん(当時24)の母幸美(ゆきみ)さん(56)が、まつりさんの命日の25日にあわせて手記を公表した。電通は違法残業などのために今年9月に再び是正勧告を受けた。幸美さんは「娘の命と尊厳がまたも踏みにじられた想(おも)いです」とつづった。
まつりさんの過労自殺をうけて、法人としての電通が労働基準法違反容疑で書類送検され、2017年1月に石井直(ただし)社長(当時)が引責辞任。17年10月に罰金50万円の有罪判決が確定した。しかし、今年9月に社員の違法残業や、残業時間の上限を定める労使協定(36〈サブロク〉協定)の違法な延長などを指摘された。

  幸美さんは「電通の不眠不休で業績を上げてきた社風は根深いものがあり、ひとりの社員が死んだくらいでは変わらないだろうという私の予想通りでした」として、同社の労働環境の改善を求めた。

  今年4月には、大企業を対象に残業時間に罰則付きの上限規制が設けられた。しかし、終わらない仕事を「サービス残業」でこなしている働き手も少なくない。幸美さんは「すべての職場で長時間労働やハラスメントを禁止し、過労自殺を出した企業や経営者、管理監督者、ハラスメント加害者に対して厳しい罰則を科するべきです」と訴えた。

  幸美さんは昨年12月から厚生労働省の過労死等防止対策推進協議会の委員として、過労死の防止に向けた活動に取り組んでいる。「国民の労働への意識が変わり、誰もが安心して働ける社会を作り、若者たちが活(い)き活(い)きと働き幸せな人生を送れる国になるように、みなさんとまつりと共に力を尽くしてまいります」と手記を結んだ。

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「しんぶん赤旗」2019年12月25日「きょうの潮流」

 街は飾られ、人びとも華やぐクリスマスの朝。ひとりの女性が亡くなりました。もう体も心もズタズタ、はたらきたくない、死んでしまいたい―。悲痛な叫びを残して▼電通の新入社員だった高橋まつりさんが命を絶ってから4年を迎えました。社会人としての抱負や夢を抱いていた24歳がなぜ自死するまで追いつめられたのか。そこには、まともな睡眠時間もとれず、パワハラがくり返される地獄の日々がありました▼がんばり屋で明るく闊達(かったつ)だったという娘を失った母の幸美さん。つらく悲しい自責のなかで、いまも声を上げつづけています。大切な人の命や尊厳を奪うような働き方や社会を許してはならない、と▼今年もブラック企業大賞が発表され、三菱電機が2年連続の汚名となりました。同社では8月に20代の男性新入社員が自殺。遺族は上司のパワハラが原因の過労自殺だったとして労災を申請し、会社に対して再発の防止を求めています▼「飛び降りるのにちょうどいい窓あるで」「殺すからな」「自殺しろ」。亡くなる直前に男性が書き残したというメモには心をえぐるののしりの数々が記されていました。三菱電機では長時間労働などによる社員の自殺や心身を害する問題が相次ぎ、企業の責任が厳しく問われています▼働くものが死に追いやられる異常な世界。苦しめられ、孤立させられ、使い捨てにされる。そんな経済や国のあり方を変えたい。遺族をはじめ人間らしい生き方を望む労働者の切なる思い。過労死のない社会を。


 これを「過労死」と呼んでいいのだろうか?


トゥンベリさん,おとなを糾弾?

2019年12月24日 | 自然・農業・環境問題

トゥンベリさんの「糾弾」発言
小泉環境相は傾聴しては?
「しんぶん赤旗」2019年12月24日


 小泉進次郎環境相が20日の記者会見で行ったスウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(16)に対する発言に批判が集まっています。
 小泉氏は会見で記者からSDGs(持続可能な開発目標)に関し、日本での若者の育成について問われ、「(トゥンベリさんのように)おとなを糾弾するのではなくて、全世代を巻き込むようなアプローチ」を発信してほしいなどと発言。同氏が欧州と北米を温室効果ガス排出が少ないヨットなどで往復しているのを念頭に「正直言って、日本でみんな飛行機に乗らないのは無理」などと述べました。
 トゥンベリさんは今月、米国から欧州にヨットで戻った際、「同じようにしてほしくてこういう旅をしているのではない」と述べています。彼女が「気候正義」と呼ぶ活動には各国で市民が共鳴し、数百万人規模のデモなどを実施。彼女が怒りを込めて各国政府と企業経営者ら「おとな」を糾弾するのは、気候変動への無策によっていかに深刻な危機が迫っているかを示すためです。
 小泉氏は、スペインでの第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)の閣僚級会合で、「私は来年父親になる」などと述べて未来に対する「責任」を語りましたが、トゥンベリさんや若者からの「糾弾」にこそ耳を傾けるべきです。(日)


核兵器禁止条約

2019年12月23日 | 社会・経済

 2019/12/20 Imidas新・時事用語 


  川崎哲 (ピースボート共同代表) 
    
 核兵器は非人道的な兵器であるとしてその開発、保有、使用などを全面的に禁止し、廃絶を定めた条約。2017年に国連で採択された。1968年の核不拡散条約(NPT)が米ロ英仏中5カ国の核保有を認めているのに対して、核兵器禁止条約はいかなる国にもいかなる状況下でも核兵器を全面的に禁じている。 
 成立の経緯は、2010年に赤十字国際委員会が核兵器は国際人道法に反するとの声明を出したことに端を発する。以来オーストリアやメキシコなどの国々が核兵器の非人道性に関して共同声明を発したり国際会議を開催したりするなど運動を展開した。これら諸国政府と国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」が連携し、広島・長崎の原爆や世界中の核実験による被害について、また今日核戦争が起きた場合の世界的影響について議論を喚起した。そして2016年の国連作業部会での議論と国連総会決議を踏まえ、17年3月から条約交渉会議が国連本部でコスタリカ大使を議長として行われ、7月に賛成122カ国で採択された。同年末、ICANはその貢献が評価されノーベル平和賞を受賞した。
 条約は前文で、被爆者(hibakusha)や核実験被害者らの「受け入れがたい苦痛」に言及しつつ、いかなる核兵器の使用も国際人道法に反するとしている。第1条では核兵器の開発、保有、使用、威嚇、配備などをいかなる状況下でも禁止するとし、他国によるこれらの行為を援助・奨励することも禁じている。第4条では、核兵器を保有する国や保有していた国が条約に加わった場合に、国際的な検証下で、不可逆的に(再び保有できないように)廃棄することを定めている。第6条では、核兵器の使用・実験の被害者に対する援助や汚染された環境を回復する義務を定めている。
 この条約は、50カ国が批准した後に発効する(2019年11月末現在、34カ国が批准)。発効後の締約国会議で、核兵器廃棄の道筋の詳細などが話し合われることとなっている。
 今日核兵器を保有する9カ国(NPT上の5核保有国のほかイスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮)はいずれも、この条約に加わる意思を見せていない。とりわけNPT上の5カ国は条約への反対姿勢を鮮明にしている。また、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や日本、韓国、オーストラリアなど米国と軍事同盟条約を結ぶ国々(いわゆる「核の傘」下の国々)も、同様にこの条約に反対している。唯一の戦争被爆国である日本は、条約交渉にすら参加しなかった。その理由について日本政府は「米国の核抑止力が日本の安全保障に不可欠」であるからとしている。これに対して広島・長崎両市長や被爆者団体などは、日本の条約加入を繰り返し求めている。


今朝は今季一番の寒さかな?-15.2℃でした。

 


死体遺棄の生活保護ケースワーカー、公判で見えてきた異常すぎる実情

2019年12月22日 | 事件

  みわよしこ:フリーランス・ライター
 DIAMONDonline 2019.12.21 5:17


異様な事件の異様な背景
「パシリ」化したケースワーカー
 本年6月12日、京都府向日市の生活保護ケースワーカー・Y氏(30歳)が、死体遺棄容疑で逮捕された。6月1日の土曜日、Y氏の担当していた生活保護受給者・H氏(55歳)が女性を殺害した。Y氏は自ら契約したアパートに遺体を隠していたが、発見され、H氏とともに逮捕されたのだった。Y氏の自供により、共犯者Z氏(52歳)の存在が明らかになり、逮捕された。H氏・Z氏およびY氏は既に起訴されている。
 この異様な事件の背景には、H氏がY氏を精神的に支配して「パシリ」化していたという、異様な状況があった。ケースワーカーは受給者の生命線を握っているのも同然の存在なのに、力関係が完全に逆転してしまっていたのである。
 Y氏の公判は、10月から開始されている。12月19日、京都地裁でY氏の第3回公判が行われ、事実関係と背景の確認がおおむね終了した。さらに、異様な事件の発生へとつながった経緯が明らかになってきた。
H氏が女性を殺害し、Y氏がその事実を知ったのは、6月1日だった。その日、高く積み上げられた積み木の塔が、ついに崩れ始めたのかもしれない。前日にあたる5月31日までに、何が起こっていたのだろうか。
 Y氏は、向日市地域福祉課(福祉事務所)で生活保護ケースワーカーの業務に就いて足掛け4年目、同課では最も経験年数の長いケースワーカーとなっていた。H氏を担当し始めたのは、2018年1月のことだった。
 2018年11月、H氏は毎日、Y氏の職場に電話するようになった。電話は、12月に入ると1回2時間程度になり、時には4時間に及ぶこともあったという。閉庁後に電話がかかってくることもあった。代表番号への電話が職場に取り次がれたため、H氏は「閉庁後も通じる」と学習したようだ。
その後は、1日のうちに業務時間内と閉庁後の2回にわたって電話がかかってきたこともあったという。なお、「しょっちゅう長電話になる方がいる」という嘆きはケースワーカーの愚痴の定番の1つだが、通常は30分を超えると「長電話」だ。
 H氏からの電話は、当初は世間話やスマホの使い方に関する内容だったという。そこに、生活保護に関する不当要求が交じり始めた。「転居したいので、家主に追い出されたことにして転居費用を出してほしい」「今かけているメガネは壊れていないけど、新しくつくりたい」といった内容だ。

 あるときH氏は、スーパーで買い物をし、Y氏に電話をかけて「公用車で荷物を運べ」と要求した。Y氏が当然のこととして断ると、H氏はY氏を激しく罵倒し、「お前が怒ったからメガネが壊れた。保護費で新しくつくれ」と要求をエスカレートさせたという。

元暴力団員の洗脳スキル
翻弄されながらも必死の抵抗

筆者は、H氏が暴力団員として培ってきた対人関係スキルに驚嘆した。無害な内容と問題ある内容をランダムに織り交ぜ、相手の警戒心を解きつつ混乱させることは、洗脳の手法として知られている。
 また、スーパーからの荷物運びに関しては、当初は「生活保護受給者の買い物を公用車で運ぶ」という制度の想定外の要求をし、断られると「メガネが壊れたので保護費で新規給付」という制度内の要求へとエスカレートさせている。制度内の要求を断らせて“貸し”をつくり、想定外の要求を呑ませる作戦と推察される。
 Y氏は一貫して、「公務員として、自分はどう行動すべきか」を考え続けていたという。6月1日、H氏の殺人事件が発生するまでは、不当な要求に対して毅然と対応することを心がけていた。しかし毎回、「気分を害したH氏が、要求をエスカレートさせ、部分的に応じざるを得なくなる」というパターンが繰り返された。H氏が一応の満足を示すまで、半日かかったこともあるという。
 Y氏はこれらの出来事を、可能な限りケース記録に残していた。また、生活保護の査察指導員でもある上司に対し、口頭で報告もしていたという。しかし上司の対応は、「今回は仕方がない」「四角四面でもしょうがない」「もっとへりくだった断り方を」といった“指導“に終始していたという。

孤立無援、現金の強請り、
そして土曜日の殺人事件へ

 Y氏がケースワーカーとして、H氏の不当な要求に応じずにいると、H氏は激昂して「上司を出せ」と言うことがあった。Y氏が上司に電話を回すと、上司はH氏に「Yが至らず、すみません」と答え、怒りを収めたH氏は「Yは自分が指導する」と答えた。Y氏に戻ってきた電話の向こうで、H氏は「上司もお前の非を認めている」と新たな要求を突きつけ、謝罪を求めたという。
 恐怖に押しつぶされ、疲弊し消耗したY氏は、電話の着信音が聞こえるだけでストレスを感じ、上司に報告する気力も失っていったという。報告しても、結局はH氏にまた責められるだけである。Y氏は新年度の異動希望を人事に提出し、日々の業務の苦渋について詳細に書き込んだが、希望は叶わなかった。
さらにH氏は、Y氏の携帯電話の番号を知りたがり、「携帯番号を教えろ」「異動するまでには教えてもらう」と迫り続けていた。H氏には異動後も関わり続ける意図があったようである。
 そして2019年4月、訪問調査の折、Y氏はついに「有無を言わさず」という態度のH氏に携帯番号を知られた。その後、職場と携帯電話の両方に電話がかかってくるようになり、頻度も通話時間も増加した。
 Y氏はさらに消耗し、健康状態が悪化した。それでも、休職という選択肢は現実にならなかった。前年度、5人いたケースワーカーのうち1人が、精神的に追い詰められ、他部署に異動していたからだった。Y氏は、自分の休職が職場に及ぼす負担を考えると、休職に踏み切れなかった。4人のケースワーカーは1人で100世帯以上を担当し、Y氏の担当世帯は110世帯になっていた。事件当時は101世帯に減っていたが、厚労省が定めている標準は、都市部で80世帯である。
 さらにH氏は、Y氏を脅し、現金を要求していた。保護費ではなくY氏の私費ではあるが、10回ほどにわたってH氏に渡された現金は、合計100万円に達したという。Y氏の本来の業務は、その現金を収入認定し、H氏に返還を求めることだ。しかし筆者には、遂行できる状況だったとは思えない。
そして6月1日、H氏は女性を殺害した。土曜日だったため、H氏からの電話は、Y氏の携帯にかかってきた。共犯者のZ氏の前で、H氏に「殺す」と脅されたY氏は、結果として死体遺棄に協力することとなった。6月11日、逮捕されたY氏は、「もうこれで、H氏から脅されることも殺されることもなくなる」と、ホッとしたという。
 当時も現在も、Y氏には「公務員として、してはならないこと」という自覚はあった。しかし、成り行きは止まらなかった。

地方分権改革の終着点近くで
起こった悲劇ではないか

 むろん、生活保護ケースワーカーの業務が“キレイゴト”で済むはずはない。周囲を困惑させる行動、児童虐待が疑われる状況、そして暴力など、「処遇困難ケース」の課題は常にある。「複数のケースワーカーで対応する」「警察OBを配置する」といった選択肢もある。しかし、万能の解決策はない。
 関西の中核市の福祉事務所で査察指導員を務めるCさん(30代)は、「向日市は“ケースワーカー自己責任論”に陥っているのではないか」という疑問を語る。
「私たちは、貧困問題の最前線にいます。『貧』と『困』が重なった方々は、自らSOSを出せないことが珍しくありません。SOSを出さない責任をご本人に求めて“貧困自己責任論”で切り捨てるのではなく、そのSOSをキャッチできる社会をつくっていく必要があります。私たちは、その責任の一端を担っているはずです。でも都市部で、ケースワーカー1人が110世帯以上を担当していると、余裕がなさ過ぎて、隣の席のケースワーカーが困り果てていても助けられません」(Cさん)
 結果として、Y氏のメンタルヘルスは、良好な状態ではなくなっていた。Y氏個人に対する何らかのサポートは必要だったはずだ。しかしCさんは、それだけでは不十分だと考えている。
「個人のメンタルヘルスの問題ではなく、組織の在り方の問題でしょう。全般的な人員不足の問題もあります。組織でケースワーカーを支えられる制度を、どうすればつくれるのか。現実的に考える必要があると思います」(Cさん)
 人員不足の原因は、地方分権改革の名のもとで続く公務員削減だ。とはいえ、何もできないわけではない。たとえば神奈川県小田原市は、2017年の「保護なめんな」ジャンパー事件を契機として全庁的な改革に取り組み、福祉事務所の孤立とケースワーカーたちの孤立を解消し、生活保護行政に関して多様な取り組みを重ねている。
 元ケースワーカーで、小田原市の生活保護改革にも関わった櫛部武敏さん(釧路管内生活相談支援センター長)は、経験を踏まえ、次のように語る。
「当事者である担当ケースワーカーは、どれほど困り果て、心細かったことでしょうか。推察するに余りあります。そもそも『行政を対象とした暴力』という認識が、向日市の全庁的に、また上司にあったのかどうか疑わしいという印象も持ちました。研修に基づく対処マニュアルや訓練など、市としての構えもなかったのではないでしょうか」(櫛部さん)

司法はこの異様な
事件をどう裁くのか

その認識や構えは、行政が行政である以上は当然のこととして求められる。
「公平・公正な行政の遂行には、組織としての毅然とした意思が欠かせません。職員を守り、職務遂行の防波堤になるのが管理職であり、市役所組織ではないでしょうか。『ケースワーカーの対応が悪くてすみません』と個人に責任を押しつけるとは……。保身でしかなく、管理職としてあるまじきことです。『許しがたい』と感じます」(櫛部さん)
 民間企業でこのような状況が続くと、優秀な社員から転職していく。いずれは企業活動の継続が危機に瀕し、市場から退場させられるはずだ。しかし行政組織は、危機に瀕しても退場できず、住民や民間企業を巻き込むことになる。筆者は、この20年間で加速した行政組織の縮小こそ、危機の正体だと考えている。
 この状況を、司法はどう認識し、判断するだろうか。司法の認識と判断は、今後のY氏の公判と判決に、どう反映されるだろうか。引き続き、関心をもって見守ろう。


安いアメリカ産牛肉に・・・

2019年12月21日 | 健康・病気

トランプに握られた日本人の胃袋 

安い米国牛肉と「ホルモン依存性がん」急増の因果関係は?


  日刊ゲンダイDIGITAL 2019/12/20

奥野修司ノンフィクション作家
おくの・しゅうじ 1948年、大阪府生まれ。「ナツコ 沖縄密貿易の女王」で講談社ノンフィクション賞(05年)、大宅壮一ノンフィクション賞(06年)を受賞。食べ物と健康に関しても精力的に取材を続け、近著に「怖い中国食品、不気味なアメリカ食品」(講談社文庫)がある。


日本のスーパーに並ぶ米国牛肉。

 安いのはありがたいが、その代わり、残留エストロゲン(女性ホルモン)の濃度がむちゃくちゃ高いという話をしてきた。

「国産和牛に比べて、赤身で600倍、脂肪で140倍もあった」との北海道大学遺伝子病制御研究所客員研究員の半田康医師らによる論文を紹介したが、それでは、その牛肉を食べていると、体はどうなるのか。
あるがん研究者はかつてこう指摘した。

「同じ日本人でも、米国に移住すると卵巣がんとか乳がんとか子宮体がん(子宮内膜がん)のような女性ホルモンに起因するがんが増えるのです。どこに違いがあるのか、これまで謎とされてきましたが、考えられるとしたら食事くらいしかないのです」

 つまり、アメリカ人と同じような食事を続けていると、日本人は乳がんなど“ホルモン依存性がん”になりやすいとの疑いがあるというのだ。
かつて、乳がんの発症率を日本人が「1」とすれば、アメリカ在住白人は「2・5」もあったが、最近は「1・3」に近づいているといわれる。同じ日本人でもハワイに移住した日本人は、白人の発症率に近づくというデータもある。これは明らかに食事を中心とした環境が関係していることをうかがわせる。

 2005年、ハーバード・メディカルスクールの研究者が、9万人の女性を対象にした調査結果を発表した。それは、牛肉に代表される赤肉をたくさん食べると乳がんのリスクを大きく増加させ、その原因は牛に与えられるホルモン剤の残留ではないかとの内容だった。

 日本では、1960年代に比べると、牛肉の消費量は5倍に達している。そのうち25%は米国牛肉だ。そして、ホルモン依存性がんも5倍以上に増加している。
ズバリの因果関係は証明されていないにしても、こうした数々の研究結果があるから、EUは肥育ホルモン使用の米国牛肉の輸入を禁止しているのだ。もちろん米国内でも問題視され、健康志向の人たちは安い牛肉を避け始めている。その点はおいおい書いていくが、日本だけがありがたがってホルモン大量投与の安い米国牛肉を引き受けようとしている現状を知っておいて欲しい。


 牛乳についても同様である。さらに、あの日に「ステーキが食べたい」とおっしゃった方がおいでで、「CO2と牛肉」の関係も広く知ることとなった。


雨宮処凛がゆく! 第506回:あぶり出されるこの国の生きづらさ〜『「れいわ現象」の正体』を読んで。の巻

2019年12月20日 | 社会・経済

 マガジン9 2019年12月18日 
   https://maga9.jp/191218-1/


 気がつけば今年もあとわずかで終わろうとしている。
 2019年を振り返る時、真っ先に浮かぶのが夏の参院選だ。「れいわ旋風」「れいわ現象」とも言える熱気に私もいつの間にか巻き込まれていて、重度障害を持つ議員が二人、誕生した。
 昨年の今頃、重い障害を持つ議員が二人も誕生するなんて、そのうち一人は全身麻痺で人工呼吸器を装着しているなんて、いったい誰が想像しただろう。国会がバリアフリー化されるなんて、国会の委員会質問をその場で文字盤で作成するなんて、その間、速記が止まるなんて、何もかもが前代未聞のことだらけで、「当事者」が国会に入るインパクトに改めて驚いている。
 そんな中、この数ヶ月は『GQ』や『ニューズウィーク』などの雑誌の表紙をれいわ代表の山本太郎氏が飾り、12月に入ってからは「れいわ本」の出版が続いている。私もライターをつとめた『#あなたを幸せにしたいんだ 山本太郎とれいわ新選組』(前回の原稿で書いています)は12月13日に集英社から出版。発売の翌日にすぐさま増刷がかかる売れ行きとなっている。また、12月9日には、朝日新聞記者である牧内昇平氏が書いた『「れいわ現象」の正体』(ポプラ新書)が出版されている。
 「いったい誰が、『れいわ新選組』を支持したのか?」
 帯にこう書かれたこの本をさっそく買い求め、ページをめくり始めてすぐ、涙が溢れたのには驚いた。
 著者は決して山本太郎の支持者ではない。むしろともともとは「『脱原発』ばかり言うタレント政治家」「『一人牛歩』など派手なパフォーマンスを好む」人物として「毛嫌いしていた」という。
 そんな牧内氏が妻から勧められて街頭演説の動画を観るところからイメージが変わり始める。それは神戸・三宮の繁華街の動画だ。
 「自信を奪われてるだけですよ。自分は生きてていいのかって……。生きててくれよ! 死にたくなるような世の中やめたいんですよ!」
 聴衆にそう語りかける山本太郎氏の動画に、牧内氏は「途中から目頭が熱くなった」という。山本太郎氏の話に胸を打たれた背景には、牧内氏が経済部所属で労働問題の記事を多く書いてきたこともあるだろう。過労死やパワハラ死の遺族に取材してきたのだ。命を奪われた人々、その家族と接してきた経験は、大きい。
 そうして牧内氏は、れいわ新選組の支持者たちの取材を始める。
 それはそのまま、底が抜けたようなこの国で喘ぐ人々への取材だった。
 ここ20年ずっと、アルバイトや契約社員、派遣社員として働いてきた50代の男性は、「あなたの生活が苦しいのをあなたのせいにされていませんかってことですよ」から始まる山本太郎氏の演説に「僕のことだ。この人は僕に話している」と涙が溢れたという。それまでは、山本太郎が大嫌いだった。が、「目に涙をためて叫んでいるのを聞いたとき、彼への見方が180度変わりました。僕と同じ目線で話してくれる政治家を、初めて見つけた気がしました」と語る。5万円の貯金から、1万円を寄付したという。
 母子家庭で、貧困とともに育ったという20代の女性は、「どうして若い人たちに借金させてまで学校で学ばせるの? 教育受けたいって若い人たちに、教育受けさせるようにするのが国の役目じゃないですか。将来給料いくらもらえるかわかんないっていう状態で、どうしてそんな人たちに300万も400万も500万も借りさせるような状況にできるんですか?」と山本太郎氏が目に涙をためながら語る姿を見て、「え、私たちのために泣いてくれてるの?」と信じられない思いだったという。
 現在は大学を休学して派遣社員として働く日々。もともと日本学生支援機構から月6万4000円の奨学金を借り、アルバイトをしながら大学生活をしていた。しかし、母が納期までに学費を払えず、退学となってしまったのだ。派遣社員として働き、復学に必要なお金を貯めるのに一年半。その間も月に1万5000円の奨学金返済がのしかかる。苦労してやっと大学に再入学したものの、半年後、また学費が払えないことが判明。休学扱いにしてもらい、学費のために派遣で働いている。
 「洋服はすべて古着。ひどい雨でもバスには乗らない。シャンプーは格安のものでがまんする」「毎日早朝に起きて昼食用の弁当をつくる。疲れた朝、『たまにはコンビニで買ってすませたい』と思うが、おにぎり2つとお茶で最低でも300円。その300円が出せない」
 そんな彼女だが、「れいわ祭」に参加し、千円札一枚を握りしめて寄付の列に並んだという。
 それ以外にも、様々な立場の支持者が登場する。付き合っている彼女の子どもが筋ジストロフィーを患っている男性。元ネトウヨで自民党支持だった共産党員。LGBTのエリート会社員女性。
 本書では多くの声が紹介されている。
 「毎月1千円ずつ、合計3千円寄付しました。10年以上前に個人で会社を立ち上げましたが、倒産するかもしれません。生活が苦しいので、本業とは別に、夜は食品仕分けのアルバイトをしています。生活に直結する消費増税がいちばんの問題です」(九州地方、50代男性)
 この言葉に象徴されるように、4月から7月の投票日までの間に4億円集まった寄付金は、少額の寄付が積み上がったものだった。数千円、数百円という寄付金で4億円集まる政党などれいわ新選組だけだろう。
 そして本書には、「れいわ新選組」が選挙期間中、メディアでほとんど取り上げられなかった舞台裏が記されている。
 「原稿が載らない!」のだ。せっかく取材しても、支持者にどんなに話を聞いても掲載されない。特定の党の支持者の動きだけを紹介するのはどうか、というような批判をされてしまうのだ。しかもこの時点でのれいわ新選組は、議員は山本太郎氏一人だけで政党要件も満たしていない。記事が載らないことに苛立っていた牧内氏は、「れいわ祭2」の森達也氏のスピーチに、痛いところを突かれたと思ったという。以下、森氏のスピーチだ。
 「メディア、テレビ各局来てます。おそらく新聞も各紙来てると思います。これ、いつ放送するんですか? いつ掲載するんですか? 選挙終わってから? 何のために? 選挙終わってから記事を読んで、あるいはニュースを見て、悔しい思いをさせたいから? 人々に。だから今報道しないんですか? 意味が分からない」
 「勘弁してくれ」という気分になった牧内氏は、「れいわ祭2」もそこそこに新橋をあとにしたという。「これ以上この場にいることができなかった」から。正直な人である。
 連日メディアが多くいるのにちっとも報道されない。支持者たちも時に苛立っていたあの現場には、「報じたい」と忸怩たる思いを抱えていた記者もいたのだ。そのことが知れただけでも、嬉しい。
 さて、本書はそんな「れいわ現象」を描写しながらも、この国の「生きづらさ」に照準が当てられている。牧内氏は、まえがきで以下のように書いている。
 「わたしは『れいわ現象』の背後にあるものを正確に言い切る自信がある。それは、現代社会を覆う『生きづらさ』である」
 また終章では、以下のように書く。
 「政治家に『生きててくれよ!』と叫んでもらう必要があるほど、いまの世の中は生きづらくなっている、ということだ」
 考えてみれば、「どんな人だって生きていていい」とか「誰にだって価値がある」だとか「死にたくなるような社会は嫌だ」とかって、ものすごく普通のことだ。普通のことだったはずなのに、私はここ数年を振り返っても、日常でその手の言葉を聞いた記憶がない。逆にメディアから、人々の会話から耳にするのは「役に立たないと生きている価値などない」「生きていたくないんだったら無差別殺人事件など起こさずに勝手に一人で死ね」「国に迷惑をかけるな」「迷惑かけるくらいなら死んでくれ」というような言葉だ。
 少し前、数年ぶりに会った「勝ち組ロスジェネ」の知人は、「ダメな人間は一生ダメ」「世の中には必要な人間と必要じゃない人間がいる」なんてことばかり話していて、聞いているだけで胸が苦しくなってきた。その人自身が、そういう言葉が当たり前の世界で生きているのだろう。それはどれほど、生きづらい日々だろう。弱みなんて決して見せられない世界。そんな関係性。
 この本では、山本太郎氏の言葉が生きづらい人々の心にどう響いたかが丁寧に描かれている。が、牧内氏は先に書いたように支持者ではないし、れいわ新選組を手放しで絶賛しているわけではまったくない。「山本太郎氏への疑問」についても書いている。
 「山本氏を盲信せず、必要があれば議論によって軌道修正を求め、場合によっては見限るのも、支持者たちに課された仕事だろう」。これには多くの人が共感するだろう。
 ちなみに、最近の山本太郎氏をめぐる出来事として、馬淵澄夫議員と共催する消費税減税研究会の勉強会講師に高橋洋一氏を呼ぶという一件があった。これに対しては私も「なんで?」と激しい衝撃を受けたが、当然、意見させて頂いた。この方向は違うのでは。そう思ったら、まずは伝えればいいと思うのだ。それが自分にできることで、山本太郎氏は「人の話を聞く」人物だと思っている。もし今後、山本太郎氏が「聞く耳」を持たなくなったら、その時こそが応援をやめる時だとも思う。が、そう書きながらもなんとなく違和感がある。
 「応援をやめる」とか「支持をやめる」とか、なんだか他人事のようで上から目線に思えるからだ。「山本太郎をどう評価するか」なんてこと以前に、自分が何をすべきか、何ができるかが大事なのだ。
 「お任せ民主主義」では何も解決しない。ヒーローなんて絶対に現れないし、完璧な人間なんていない。誰かに期待してすべてを託すほど自分が無力だとも思っていない。そして山本太郎氏は「完璧さからはほど遠く、いろいろ前のめりすぎて時に間違える人間」だということは、国会議員になる以前から見ている人にとっては深く頷くところだろう。しかし、そのたびいろんな人がいろんな意見を言い、変わってきたのも事実である。
 ということで、「れいわ現象」からこの国を掘り下げた一冊に、改めてこの国の「生きづらさ」が浮かび上がったのだった。


 わたしも「れいわ」の支持者ではない。なので、最近の「雨宮処凛がゆく!」が「れいわ」ばかり取り上げるので前回はスルーしたのだった。しかし、彼のいうことは正しいし実践的なのだ。彼は役者だ。彼の演説は聴衆の心に響く。それで政治から見放された人々が政治に関心が持てるようになるなら陰ながら応援していきたいと思う。今の「れいわ現象」をわたしは支持する。


なんだかんだのエトセトラ。

2019年12月19日 | なんだかんだ。

青森県で震度5弱 

 青森、東北にお住まいの方、お怪我や被害にあわれてはいないでしょうか?まだ余震が続くものと思います。くれぐれもご注意ください

 

日本ジェンダー格差121位
「女性活躍」どころか過去最低に後退
  「しんぶん赤旗」2019年12月18日


世界経済フォーラム
 スイスのシンクタンク、世界経済フォーラム(WEF)が17日発表した2019年の各国の男女格差(ジェンダーギャップ)の報告書によると、日本は前年から順位を下げ、153カ国中121位で、過去最低となりました。安倍晋三政権が掲げる女性活躍推進が進んでいないどころか、逆に男女格差が開いている現状が浮き彫りになりました。
 報告書は、経済、教育、健康、政治の4分野の男女格差を数値化し、順位付け。日本は前年の149カ国中110位から大きく順位を下げました。
 もっとも遅れが目立つのは政治分野で144位に沈んでいます。教育分野では、高等教育機関への入学割合の格差が低評価を受け、前年の65位から91位に低下。経済分野では、賃金格差の拡大が指摘されています。
 一方、WEFによれば、世界全体の男女格差の解消にかかる見込み年数は、前年の108年から99・5年に縮小し改善傾向にあります。
 1位は11年連続でアイスランドとなり、次いでノルウェー、フィンランド、スウェーデンと北欧諸国が続きます。米国は53位、中国は106位、韓国は108位でした。


不平等「維持」が現状
同志社大学教授 岡野八代さん
 今回の順位ですが、ズルズルと後退、というより、経済的な大国とされる国の中で、日本はダントツに男女格差の厳しい国と、認識を変えた方がよいでしょう。
 つまり、揺るぎなく、強い意思で男女不平等を維持しているのが日本の現状です。政治分野における女性の不在が、そのことを象徴しています。政治分野では、閣僚はじめ、国会議員候補者の決定まで、強いリーダーシップがあれば改善可能です。健康や教育分野は一朝一夕で改善できないのと対照的です。
 とはいえ、翻って、政治は市民一人ひとりの意思決定だと考えれば、市民もまたこの現状を維持しています。日本では大切なことは、男性が決めるといった考え方も、やめましょう。そうではなく、私たち一人ひとりにとって大切なことが、政治から締め出されているのです。社会の中枢での女性の不在は、私たちの多様な意見が軽んじられている、そうした認識の変化を迫るのが、今年の順位でした。

 


BREAK THE SILENCE
  2019年12月18日  
伊藤詩織さんの勝訴、海外メディアが続々と報じる「ブラックボックス打ち破る」
「性的被害を発言しにくい国で、#MeToo運動のシンボルが、注目の裁判で勝訴」と報道。日本の「闇」を指摘するメディアも

井上未雪/Miyuki Inoue 
高橋史弥(Fumiya Takahashi)

ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之さんから性行為を強要されたとして損害賠償を求めた民事裁判で、東京地裁が12月18日、山口さんに330万円の支払いを命じる判決を言い渡したことについて、アジアや欧米の海外メディアも詳しく伝えている。
フランスのAFP通信は「日本人ジャーナリストが注目の#MeToo裁判で勝訴」という見出しで速報した。

イギリスのBBCは、伊藤さんは、性的被害を発言しにくい国で#MeToo運動のシンボルになっていると伝えた。証拠不十分で事件化されなかったことを指摘した上で、強制性交を取り巻く環境について触れた。日本では強制性交の被害のわずか4%しか警察への被害届がでない(2017年)点をあげ、伊藤さんが警察へ相談した際に、人形を使ってレイプの現場を再現させられ「セカンドレイプ」のような扱いを受けたことに触れている。
BBC TWOは、過去に伊藤さんを数ヶ月間密着取材し、性的暴行をめぐる日本の刑事法制の問題点を取り上げたドキュメンタリー番組“Japan’s Secret Shame” (日本の秘められた恥)を2018年6月放映している。
BBCは速報で伝えた

ロイターも同様に「日本のジャーナリストが強制性交を訴えた注目の裁判に勝訴」と速報した。
ワシントンポストは、日本では女性が声を上げにくい環境であるものの、伊藤さんの活動は、日本の#MeToo運動を加速させ、全国に性暴力や性差別の撲滅を訴える「フラワーデモ」のうねりを巻き起こしたと、伝えた。
さらに、(男性が管理職に多く)男性支配が強く古典的な日本のメディアは、
伊藤さんが刑事では不起訴になったことから、彼女の訴えを積極的に擁護することはなかった、と指摘した。

■中国メディア「ブラックボックス打ち破る」、韓国も詳報

伊藤さん勝訴のニュースは中国でも注目を集めた。
検索最大手「百度(バイドゥ)」では“伊藤詩織勝訴“が検索ワードランキングのトップ10入り。
現地メディアが日本の報道を引用する形で伝えた。
このうち、共産党系メディアの環球時報(デジタル版)は伊藤さんについて「日本で初めて名前や身分を明かした上で性被害を訴えた女性」と紹介した。
また、ニュースサイト澎湃新聞は「日本司法システムのブラックボックスを打ち破った」と題して記事を掲載。伊藤さんについて「民事訴訟は時間を要し、また辛いものだったが、伊藤さんは訴訟を進めつつ女性の権益のために活動を続けてきた」と評した。
中国では、手記「Black Box ブラックボックス」の中国語版「黒箱」が刊行(初版3万部)されていた。

韓国の全国紙のハンギョレ新聞や東亜日報は「日本の#MeToo運動のシンボルが勝訴」と伊藤詩織さんを見出しでそれぞれ取り上げ、詳報した。

ハフポストWOMAN
2019年12月18日 (見出しのみ)
伊藤詩織さんと元TBS記者の民事訴訟、「合意ない性行為」認め山口敬之さんに330万円の支払命令 東京地裁
伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之さんから性行為を強要されたとして慰謝料1100万円の損害賠償を求めた民事訴訟。

「森友」不開示は違法
値引き根拠など 大阪高裁が逆転判決(見出しのみ)
「しんぶん赤旗」2019年12月18日
国に賠償命令


 ジェンダー格差の顕著な日本で詩織さんが勝訴したことは大きな前進になるだろう。海外のメデイアは期待を込めて報道した。

 そして山口氏が期待した「司法」は「政権」の揺らぎとともにまともになりつつあるのだろうか?

「あなたのブログへのアクティビティ」が5個から大幅に増えました。
よかったよかった!24h以内になったのでしょうか?まだわかりませんがわたしのは20時間前まで表示されています。

スッタフの皆さん、ありがとうございます。


仁藤夢乃“ここがおかしい”第34回少女誘拐「なぜついていった?」と責める前に

2019年12月18日 | 事件

imidas連載コラム2019/12/18
 仁藤夢乃 (社会活動家) 
    
連続して発覚した少女の誘拐事件
 2019年11月17日、大阪府大阪市で小学6年生の少女が自宅を出たまま行方不明になり、6日後に栃木県内で保護され、誘拐容疑で男が逮捕された事件があった。マスコミ各社の報道によると、男はツイッターで少女と知り合い、SNS(会員制交流サイト)で少女に「半年くらい前に女の子が家に来た。話し相手になってほしい。うちに来ない?」とメッセージを送っていたという。
 その後、少女はスマートフォンや靴を取り上げられ、「怖くなった」と容疑者の家から逃げて警察に助けを求めた。容疑者の家にいて保護された別の女子中学生は、6月に行方不明になった際、「しんどい」「少し自由にさせてほしい」などのメモを自分の部屋に残していたという。
 11月27日には、兵庫県の女子中学生を約2カ月の間、借家に住まわせ誘拐したとして埼玉県警が別の男を逮捕している。ツイッターに家出を希望する投稿をした少女に対し、ダイレクトメッセージで「埼玉においで、勉強するなら養ってあげる」と言ったり、「同じ年の子が居候しているから相談にのるよ。生活費は出してあげるから生活を心配することはない」などと送信しており、その家には2人の少女がいたという。
 11月29日には、愛知県の14歳の少女を自宅に住まわせたとして、東京都八王子市の男が逮捕された。男は「ワンルームマンションなのでベッドひとつなんです。なので、一緒に寝ることになりますが大丈夫ですか」などとメッセージを送り、少女を誘い出していた。
責める前にまず目を向けることは?
 これらの事件が連続して明らかになった際、その都度「なぜ、知らない人についていったのか?」などと、少女を責めるような疑問やコメントが大きく報じられた。
 子どもの誘拐事件が起きると、必ずといってこうした声が上がる。上げる側からすれば素朴な疑問かもしれないが、その実、被害に遭った子どもを責めること、ひいては子どもたちがより助けを求めにくい状況を作ることにつながる。そこには大人たちの想像力のなさ、背景への無理解が表れていると思う。
 これらの事件について、子どもの問題として捉えて子どもに責任を押し付けるのではなく、私たち大人の問題として考えなければならない。その場合、目を向けなければならないことは2つあると思う。
 1つは、少女が「家を出たい」と思った背景には何があったのか。困った時に身近な存在ではなく、ネットを通じて声を掛けてきた男性だけが頼りだと彼女に思わせてしまったのはなぜか。誘拐した加害者以外の大人が少女に接触できず、信頼してもらえなかったことを反省しなければならない。
 もう1つは、少女たちを狙う加害者がいることだ。孤立した少女たちを探し、理解者や支援者のふりをして家に誘い込んだり、その後で性暴力を振るうなどして、少女が「困っている」状況につけ込む大人があまりにも多い。そのことに目を向け、そうした大人たちへの対策を考える必要がある。

加害者たちは孤立した少女を狙う
 私は、虐待や性暴力被害に遭うなどした10代の女性を支える活動をしており、年間500人以上の少女たちと関わっている。家出をして、SNSなどを通して見知らぬ男性のところへ行って性被害に遭った少女にも毎年100人以上関わっているが、その多くが「家が安心して過ごしたり、ここにいたいと思える場所ではなくなったりした時に、周りの大人は助けてくれなかった」と話す。
 大人に助けを求めようとしたり、友達や学校、児童相談所などに話をしてみたりしたけれど、適切に対応されず、大人を信用しなくなり、助けを求めることをしなくなった子もいる。そういう時に声を掛けてくるのは、手を差し伸べようとする大人ではなく、性的搾取などを目的とした大人ばかりだという現状がある。
 家族の虐待から逃れるために家出を繰り返していたというある中学生の少女は、「(家出先で)声を掛けてくるのは男の人だけだった。中学生だって言ったけど、みんな体の関係を求めてきた」と話した。また別の少女は、「SNSに『家出しました。誰か泊めてもらえませんか?』と書くと、たちまち数十人の男の人から返信がある」と話す。彼女もSNSで知り合った男性のところを転々とし、性被害に遭ったことは数えきれない。
 加害者たちは少女が孤立した状況を狙っている。今回の誘拐事件でも、周りに頼れる大人がいないと感じ、助けを求められずにいた子どもたちは、犯人が唯一の理解者であるかのように感じてしまったのではないか。そのぐらい追い詰められていたのではないか。危ないと分かっていても、それしか選択肢がなかったのではないか。以前、座間市で「死にたい」とツイッターでつぶやいた女性らが誘拐され殺害された事件で、加害者の元から逃げてきた少女も「死にたいと考えるぐらい追い詰められていたから、どうなってもいいと思っていた」と話していた。
 こうした事件が発覚すると、大人たちは「SNSの使い方や危険を子どもに教えよう」などと張り切るが、そもそも「危ないからダメ」といった忠告に耳を傾けたり、危険を冷静に察知したりできるような状況にある子は、被害に遭うリスクが少ない。

社会の風潮が犯罪を後押しする
 さまざまな報道の中で、そしてネット上でも繰り返される「なぜ、知らない人について行ったのか?」という疑問について言えば、顔が見える関係性の中でも、性被害に遭うことは多くある。性暴力の加害者は多くが近しい人であることが知られているように、知っている人だから安心ということではないはずだ。顔が見える関係性の中にも信頼できる人、そうじゃない人がいるように、ネット上でも信頼できる相手かどうかは、子どもたちも考えながらやり取りをしている。
 ネットやSNS上で、直接会ったことのない相手とやり取りをしたり、友達になったり、恋愛関係になったりすることですら、今の子どもたちにとっては特別なことではない。ネット上でも、顔の見える関係性の中でも、少女たちを信頼させ、力になってくれる存在であるかのように見せることを手口として近づく加害者がいることに注目する必要がある。
 子どもたちにSNSの使い方を教え、自己防衛させること以上に必要なのは、「本当に行って大丈夫かな?」と迷ったり被害に気付いたりした時に相談できる大人が身近にいることだ。しかし、こういった事件が明るみになった時に被害者である少女を責める声があまりに大きいと、子どもたちは自分を責め、被害を相談できなくなる。
 社会の風潮は少女たちを孤立させ、「誰にも相談できない状況」を作る。それは、加害者にとって都合のいい状況となる。「あなたは悪くない」というメッセージを大人たちは何度でも繰り返し、当たり前のこととして発しなければならない。

加害者を放置し続けてきた日本社会
 ツイッターなどのSNSを通して、多くの少女たちが被害に遭っていることは、警察などの統計でも知られている。子どもたちに身近なSNSも、加害者たちにとっては人目に付かず子どもたちに声を掛けやすい、都合のいいツールになっているのだ。しかし、そのような被害があると分かっていたにもかかわらず、これまで有効な対策のないまま、私たちは放置してきた。
 よく「被害を生まないためにどうすればいいか?」と聞かれるが、被害は加害者がいなければ生まれない。そのためにも加害行為がどのように行われていて、どうしたら加害者を生まない対策ができるのかを検証しなければならない。
    
そうして多くの加害者が存在し、加害しやすい状況が放置されていることや、加害者に対して社会の認識や制度が追い付いていない状況にあることを考え、加害させない、加害者を生まない仕組みを考える必要がある。
 そういう仕組みを考えることなく、「SNSは危険だから使わせないようにしよう」「年齢制限を強化しよう」など、被害者の自由や生活を制限したり、被害に遭う人の年齢を制限しようとすることがよくある。しかし、それは大人が「対策をしている」というていを装って責任逃れをしているだけで、根本的な解決にはならない。加害者にとってみれば「18歳以上だから」「18歳以上だと思ったから」「14歳だとは知らなかった」などという言い訳が増えただけで、このような事件が起きる構造に目を向けた対策にはなっていないのだ。

防犯は加害しにくい社会作りから
 海外では、SNS上で買春などを持ち掛けるアカウントを見つけたら警察に通報し、起訴されると通報者に報酬を出す仕組みを作っている国もある。それに対し日本では、加害者にも社会にも「犯罪だ」という認識がなく、法整備も追いついていない。
 被害者が追い込まれないためには、大人に対しても子どもに対しても加害者の手口を学ぶ機会を作り、「危ないかも」「どうしよう」と思った時に相談できる大人が身近にいることが必要だ。そのためにも、私たち大人が被害者を責めることをやめ、子どもたちに信頼してもらえる大人になることが必要だ。
 以前、電車内で痴漢に遭っていた6歳の少女を助けたことがある。その時、迎えに来た保護者は開口一番、「そういう時は防犯ベルを鳴らすのよ。どうして鳴らさなかったの」と少女に向かって言った。母親は「私が迎えに行かなかったから」と自分を責めていた。
 悪いのは、防犯ベルを鳴らさなかった少女でも母親でもない。私は「あなたは悪くないよ。怖かったね。もう大丈夫だよ」と少女に伝え、保護者には、彼女は抵抗できない状況で恐怖で固まっていたこと、彼女を責めずにケアをしてほしいことを伝えたが、大人たちの対応を見て少女は「自分はいけないことをしてしまった」と思ったのではないかと思う。
 保護者だけでなく、教員や児童相談所職員など、虐待や性暴力被害などの支援に関わる専門職ですら、その程度にしか暴力の起きる構造や社会的背景を理解していないことが少なくないのが現状だ。まずは、こうした加害は相手が抵抗できない状況につけ込んで行われることや、被害後のトラウマなど被害の影響を勉強し、理解し、ケアの視点をもって関わる大人が増えることが必要だ。そして、「あなたは悪くない」というメッセージを発し続け、それを当たり前の認識にすると同時に加害者の抑制、被害者のケアの充実に取り組まなければならない。そういう社会にならない限り、被害者は被害を訴えられない。

家出を経験した少女はこう語った
 Colabo(コラボ)で活動する10代のあるメンバーは大阪の少女誘拐事件を知り、小学生の頃から家出を繰り返して生き延びてきた自身の経験に重ねて次のように語った。
「知らない人に会って何されるか分からないけど、もちろん怖いけど、知らない人に対しての怖さよりも、自分はお父さんに対しての怖さの方がでかかったから。お父さんと一緒に暮らすよりは、男の人と体の関係を持って親の支配から逃げる方がよかったから。知ってる人間とか警察とか児相(児童相談所)とかに言えば助けてくれるかもしれないけど、自分の親みたいな人かもしれないし信用できない。知らない人の方が、信用してなくても一生会わないかもしれないし、だから自分が我慢して男の人と会って生活してた。
 家出とか、売春とか好きでやっているという大人が日本に多くいると思うけど、好きでやってる子なんていないんですよ。周りの大人に助けを求めても、もちろん私たちの気持ちなんて分かってくれないし、分かるわけないし。だから、知らない大人に嘘でも同情してもらった方が気持ちは楽になれるから、知らない人に頼っちゃうわけで。本当に知らない大人について行って、殺されるかもしれないけど、親に殺されるよりかは知らない人と一緒にいた方がまし。
 今回の事件も、ついていく女の子が悪いんじゃなくて、女の子がつらい思いをしなきゃいけない環境を作った周りの大人たちが悪いから。ネットでは女の子たちのこと叩く人、多いですけど、お前がその環境になったら、絶対女の子と同じ行動しちゃうと思うし、周りの大人たちに助けを求めて絶対安全な暮らしができるかって言われたらそうじゃないし、何も知らないのに、そんなこと言うなって思います。
(女の子たちを責める声が大きいが)そういうニュースとか見て、経験した人は女の子に共感していると思うし、ネットで叩いてるやつらに怒りが湧いていると思うし。家出だって、家がいたいと思える場所ならしない。お金が稼ぎたいからとか、遊びでやってるとかそんなことじゃなくて、本当に好きでやってる子なんて、一人もいない。大人に寄り添ってほしかったし、話を聞いてくれるだけでもよかった。児相の人たちには家に帰すんじゃなくて、もっと安全な場所に移してほしかった。自分たちがしていることが正しいのかどうかをみんなに振り返ってほしい」

変わらなければならないのは私たち
 彼女は先日、一緒に行った講演で「自分も話したい」と言い、自分の経験を伝えた後、最後にこんなメッセージで締めくくった。
「今日、この場に来ている方の中に、女の子たちを応援したい、そう思っている方がいると思います。その方たちに言います。口だけの応援なんていりません。行動で示してください」
 ネットにかかわらず、家出や性被害について、被害者や子どもたちを責める風潮が日本にはあり、被害者に対するケアも十分に保障されていない。社会の側が、被害者は悪くないということと、被害に気付いたらどうしたらいいかを伝え、被害者を支える取り組みを支援していく必要がある。
 もし、読者のあなたが今回の事件を受けて「なんでそんなことをしちゃったの?」と子どもを責めるような疑問を抱いたのなら、ぜひ、暴力の起きる構造について勉強し、学ぶことから始めてほしい。すでに子どもたちは、書籍で、テレビで、ネットで、さまざまな形で声を上げている。これ以上彼女たちに語らせるのではなく、自分たちで学んでほしい。そういう姿勢を見せる大人が増えてほしい。
 私たちの無知や無理解が、子どもたちを追い詰めている。変わらなければならないのは子どもたちではなく、私たちなのだ。


リゾートホテルと農業?!

2019年12月17日 | 野菜・花・植物

リゾートホテルと農業?! 星野リゾートの新たなコンセプト「アグリツーリズモ」とは

ハフポストはじめてのSDGS
  2019年12月17日
「観光農業の収穫体験だけでは、いまの消費者の価値観に追いついていない」中瀬勝之・総支配人が思いを語った。

  サステナブル・ブランド ジャパン 


©️星野リゾート
62平米のデラックスメゾネットは、なんと「田んぼビュー」


星野リゾートは栃木・那須町にリゾートホテル「リゾナーレ那須」をオープンした。同ホテルは農業と観光を組み合わせた「アグリツーリズモリゾート」をコンセプトに掲げる。ラグジュアリーな宿泊施設でありながら土づくりや野菜の間引きなど、本格的な農業の工程をアクティビティとして提供し、宿泊客の自然や環境への関心や取り組みを促す。中瀬勝之・総支配人は「観光農業の収穫体験だけでは、いまの消費者の価値観に追いついていない」と時代を分析し、「一次産業が盛んな那須町の農家と、訪れる人をつなぐハブを目指す」と地域への思いを語る。(サステナブル・ブランド ジャパン編集局=沖本啓一)

 リゾナーレ那須の温室「グリーンハウス」


栃木の一大リゾート地、那須高原が広がる那須岳の山麓、標高約500メートルまでJR那須塩原駅から車で40分。道中の車窓からは左右に豊かな田畑風景を望むことができる。水源の近い那珂川を渡り、勾配を登って一層「里山」の雰囲気が濃くなった森の中に、ふと瀟洒(しょうしゃ)な建物が目に入る。星野リゾートが11月にオープンしたリゾートホテル「リゾナーレ那須」のエントランスだ。

­­­「那須町は一次生産が盛んな町です」とリゾナーレ那須の中瀬勝之・総支配人は話す。総土地面積に対する耕地面積は全国で11.9%のところ那須町では14.9%。農家のうち、経営耕地面積30アール(3000平米)以上または農産物販売額50万円以上の「販売農家」が占める割合は全国で61.7%だが那須町では77.4%にのぼる。那須塩原駅からリゾナーレ那須に到着するまでに見る景色は、数字以上に土に触れることを生活の糧としてきた人の多さを感じさせる。
 
リゾナーレ那須が掲げるアグリツーリズモとは

Ⓒ星野リゾート
アクティビティ施設「POKO POKO」には託児機能も


「アグリツーリズモ」はイタリアで発祥した、農家が空いた部屋などを旅行客の宿泊場所として提供し農業を観光とする、日本の「農泊」に近いツーリズムだ。農泊とは違い、近年では高級ホテルのような施設やサービスを提供するケースも見られる。リゾナーレ那須は「日本で初めてアグリツーリズモリゾートをコンセプトにした宿泊施設」だという。

4万2000坪の天然の森の中に43室の客室が点在し、敷地内には那珂川支流の自然の小川が流れる。農園「アグリガーデン」では野菜が栽培され、滞在客は収穫期以外の時期にも「間引き」や「土づくり」といった工程でいつでも好きなときに農業を体験することができる。

 Ⓒ星野リゾート
施設内と近隣農家で獲れた約30種の野菜を使用した前菜


農作業をレクチャーしてもらえる「ファーマーズレッスン」や「ハーブティづくり」などのほか、焚火での「焼き芋ミッション」で集めた落ち葉は農作業の温床や肥料に利用されるなど、施設全体で「自然」や「環境とのふれあい」を意識したプログラムを組む。「グリーンハウス」と名付けられた温室でも野菜、ハーブを栽培しているため、天候に関わらず体験が可能。ディナーやアクティビティ拠点「POKO POKO」で提供される、施設内や周辺の農家で獲れた旬の野菜をふんだんに使った料理も魅力的だ。

いまの価値観に沿う農業体験
豪華なリゾートホテルのブランディングと農業はどのように結びついたのか。「高級であれば良いわけでなく、自分らしい暮らしや環境への配慮、ライフスタイルの実現といった価値観を求める方が増えていることを実感していました」と中瀬総支配人は話す。リゾート観光の視点から農業にアプローチするアグリツーリズモリゾートというコンセプトは「那須町で提案する新しい旅のスタイルとして星野リゾートらしく、ぴったり」だったという。

アグリツーリズモリゾートを掲げ開業するにあたって、周辺の農家に指導を仰ぎながら、スタッフ総出で開墾し、種を植えて敷地内の畑をつくりあげた。その中で「収穫体験を提供するだけの観光農業では、いまの消費者の価値観に沿う農業体験に追いついていない」という思いが強まったと中瀬総支配人はいう。

Ⓒ星野リゾート
アグリガーデン


「種を植えるときには土に触れ、そこに虫がいる意味や、どうして野菜を間引くのかといったことまで農家さんに教わりました。それを少しかみ砕いて、お客様に興味を持っていただけるように伝えることは、これまで星野リゾートがしてきたことの延長でもあります。

収穫以外の工程にこそ、求められている価値観の表れがある気がしています。農業の価値、農作物の価値、農家さんの思いをきちんと宿泊客に伝え、地域の農家さんにも嬉しいと思ってもらえる施設をつくりあげたいと考えています」(中瀬総支配人)

環境の課題へ多角的なアプローチ
星野リゾートは2011年、軽井沢事業所(※)でホテル業界初のゼロ・エミッションを達成した。「星のや軽井沢」では自家水力発電と地熱利用設備の導入、温泉排熱利用設備の導入によってエネルギーの約7割を自給自足する。2019年には全施設でのホテルアメニティの詰め替え式への変更を進め、ペットボトルフリーへの挑戦を開始するなど、環境経営の施策を積極的に進めている。(※星のや軽井沢、軽井沢ホテルブレストンコート、星野温泉 トンボの湯、村民食堂、ピッキオの計5施設)
そうした中で「環境への思いを伝える」ことを掲げ開業したリゾナーレ那須だが、これまでの取り組みとは少しアプローチが違う。「環境への思いを表現する方法のひとつとして、那須町で、このスタートラインから、と考えたときには、本質的な農体験を通じてお客様に環境への関心を持って頂くという方法をとりたいと思いました」と中瀬総支配人は説明する。将来的には軽井沢事業所での取り組みをリゾナーレ那須に取り入れたり、那須町での取り組みが軽井沢事業所に反映されることも考えられるという。

「リゾートホテルにおいて、自然や環境が資源だと星野(星野リゾート 代表 星野佳路氏)も普段から話しています。多角的な切り口、アプローチのうちのひとつという位置付けです」(中瀬総支配人)
 
那須町でリゾナーレ那須が一次産業に関わることで、地域の農家の活性化を促すことも狙いのひとつだ。「星野リゾートを通じて周囲にたくさんいらっしゃる地域の農家さんの良いところをお客様に知ってもらうという、ハブの役割をすることで地域に貢献できるのではとも考えています」と中瀬総支配人は明かす。

収穫時期は農家の繁忙期だ。観光客のために時間を用意することが負担だという声は、地域の農家から多く聞くという。そこで農業に密接した取り組みをし、スタッフ自らが土に触れているリゾナーレ那須の強みを生かすことが考えられる。

今は敷地内での農業体験プログラムにとどまるが、「私たちが率先してお客様を農家さんへご案内し、例えば収穫できずに破棄されてしまう農作物を収穫、パッキングする工程までをアクティビティとして提供し、野菜を出荷できる状態にすることができれば、農家さんも嬉しいしお客様にも喜んでもらえる。そういった取り組みも考えられます」と今後の展開に意欲を見せる。

「星野リゾートは人が集まるところに宿泊施設を建てるという『宿泊業』のホテルとは一線を画しています。『観光業』を行い、その手段が宿泊だ、と思っています。地域の観光を盛り上げるということが私たちの使命だと、強く意識しています」(中瀬総支配人)

星野リゾートが環境課題や地域の課題解決につながる事業を行う原動力は、その矜持なのだろう。


こんなことがやりたかった。もう、過去形かよ!