夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『はじまりのうた』

2015年02月28日 | 映画(は行)
『はじまりのうた』(原題:Begin Again)
監督:ジョン・カーニー
出演:キーラ・ナイトレイ,マーク・ラファロ,ヘイリー・スタインフェルド,アダム・レヴィーン,
   ジェームズ・コーデン,ヤシーン・ベイ,シーロー・グリーン,キャサリン・キーナー他

シネ・リーブル梅田で3本ハシゴの2本目、トータルではこの日3本目に観たのがこれ。
前述の『やさしい人』に鬱憤が溜まりましたが、これは邦題に偽りなし。
こちらには「やさしい人」がいっぱいいて、癒やされます。
いつものキーラ・ナイトレイの変顔も封印されて、めちゃ美人顔。

かつては凄腕の音楽プロデューサーだったダン。
友人のサウルをパートナーに、自らレコード会社を設立。
人気ミュージシャンを次々と発掘してきた。
しかし時代に取り残された今、それを認めようとせず、
サウルからクビを言い渡されてしまう。
失意のうちに酒をあおって酔いつぶれる寸前にたどり着いたバー。
そこで耳に飛び込んできた女性の歌声に心を奪われる。

グレタというその女性に思わず声をかけたダンはスカウトを試みるが、
友人に無理強いされてステージに上がっただけのグレタにはまるで欲がない。
嘘をついても始まらないと、自分のかつての仕事、
そして現況を包み隠さずグレタに話すと、意外にも彼女はそれを面白がって、
デモテープを作る話に乗ると言う。

金のないダンは、サウルのもとを訪ねてデモテープを作る資金をくれと頼むが、
サウルはデモテープを聴くのが自分の仕事、それを作る金は出せないと。
ならば最初から自力でアルバムを作ってやると、ダンは無謀な決意をする。

スタジオを借りる金ももちろんない。ならば金のかからない路上で録音すれば良いだけ。
ニューヨークの街の音をそのまま取り入れたアルバム作りをダンとグレタは始めるのだが……。

ダンは複雑な家庭問題で妻子と別居中、年頃の娘バイオレットにどう接して良いかわかりません。
一方のグレタも、死ぬほど好きだった恋人のデイヴに裏切られ、
しかもそのデイヴはミュージシャンとして早々に成功。
心に傷を負ったふたりを癒やす音楽の力は偉大で、父と娘の絆を生むのも音楽。

ジョン・カーニー監督の『ONCE ダブリンの街角で』(2006)同様、
街に音楽が溢れる様子がとても素敵です。
男女の垣根を越えた友情を見せるグレタと旧知の友人スティーヴ、
ダンに発掘してもらった恩を忘れないラッパー・トラブルガムなど、
人と人との繋がりによるぬくもりがいっぱいに広がって。
むさくるしい容貌のマーク・ラファロは『フォックスキャッチャー』とまるで異なるこっちでも好演しています。

ほどほどにロマンチック、ほどほどに切なく、目一杯あったかい。
この日1本目だった『味園ユニバース』と本作、どちらも大好きな音楽映画になりました。

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『やさしい人』

2015年02月27日 | 映画(や行)
『やさしい人』(原題:Tonnerre)
監督:ギヨーム・ブラック
出演:ヴァンサン・マケーニュ,ソレーヌ・リゴ,ベルナール・メネズ,ジョナ・ブロケ他

TOHOシネマズ梅田で『味園ユニバース』を観たあと、梅田スカイビルへ移動。
シネ・リーブル梅田にて3本ハシゴする予定で、本作はその1本目。

原題の“Tonnerre”は、舞台となっているフランスの町トネールのこと。
邦題がこんなだから、さぞかしいいお話かと思ったら……。(--;

ブルゴーニュ地方の小さな町トネール。
殺伐としたパリでの生活が息苦しくなったミュージシャンのマクシムは、
父親が一人で暮らしているこの町へ2カ月の予定で戻っている。

過去にアルバムも出しているマクシムを訪ねてきたのは、
父親の友人の姪で、地元紙の記者をしている若い女性メロディ。
地元出身の有名人を取材したいと言うのだ。

とても可愛い子だけれど、自分にはあまりにも若すぎる。
そう思いつつもマクシムはついつい連絡を取り、メロディのほかの取材にも同行。
ワインの醸造所ではオーナーからひやかされ、
まんざらでもなさそうなメロディを落とすことに成功する。

幸せな数日間が過ぎるが、ある日、メロディに連絡がつかなくなる。
元カレでサッカー選手のイヴァンとよりを戻した様子で、
マクシムのもとへは匿名で「ロリコン野郎」とメールが届く。
どうしてもメロディのことをあきらめきれないマクシムは……。

マクシム役のヴァンサン・マケーニュは美形なのでしょうけれど、
私は苦手な「河童ハゲ」で、頭頂部ツルリ、まわり長髪。
この髪の毛が乱れたときは、私の思うセクシーとはほど遠く、げげっ。
それでも最初はいい話だと思っていたのに、途中から怒濤のサスペンスフルな展開に。
なんだ、ミュージシャンの話じゃなくて、ストーカーの話やん。

以下、ネタバレ全開です。

メロディに電話をかけまくり、取ってもらえないとわかると家まで押しかけ。
イヴァンのチームメイトから彼の家を聞き出して待ち伏せする。
ふたりのデートのあとをつけ、銃で脅してイヴァンに傷を負わせると、
メロディを誘拐、監禁しちゃうという、唖然呆然の展開に。
しかし、捕まったマクシムをなぜかかばうメロディにまたもや唖然。

男性ストーカーの話を聞くと、毎度思い出す辻村深月の一文
確かに、男性は相手のことが好きでたまらんからストーキングするのではなく、
自尊心を傷つけられたからストーキングするのですね。

こんなまさかの展開に退屈はしませんでしたが、終始イライラ。
で、結局、誰が「やさしい人」なのよ。
マクシムのお父さんだけやんか、やさしくてマトモなのは。

女性を支配しようと思っても無理。
男性に都合良くできた作品だなぁという印象が残りました。
だけど巷の評判がとてもいいのですよね、これ。
私にはわからん。

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『味園ユニバース』

2015年02月25日 | 映画(ま行)
『味園ユニバース』
監督:山下敦弘
出演:渋谷すばる,二階堂ふみ,鈴木紗理奈,川原克己,松岡依都美,
   宇野祥平,松澤匠,野口貴史,康すおん,赤犬他

TOHOシネマズなんばへ行くときは、日本橋のコインパーキングに駐車します。
そこから劇場へ向かってテクテク歩くときに通る、大阪・千日前の味園ビル前。
だから、本作を観るならばなんばで、と固く心に誓っていましたが、
昼から休みを取った先週の月曜日、梅田でも上映してるんやから梅田でええがなと。
いとも簡単に崩れる決意。TOHOシネマズ梅田にて。

さて、『ばかのハコ船』(2002)と『リアリズムの宿』(2003)から気になりはじめ、
『松ヶ根乱射事件』(2006)で新井浩文に注目するとともに凄い監督だと思い、
『天然コケッコー』(2007)のDVDを購入して、
『苦役列車』(2012)でやっぱり好きだわと思った山下敦弘監督。
本作は大阪が舞台ということもありますが、山下監督の作品は外せません。

事件を起こして服役中だった茂雄(渋谷すばる)は、
刑期を終えて出所した日、何者かに殴打されて気を失う。
目覚めたときには記憶が飛び、自分の名前さえ思い出せなくなっていた。

公園で眠る茂雄の耳に聞こえてくる音楽。
それに引かれて歩いてゆくと、バンド“赤犬”のステージが繰り広げられていた。
茂雄は突然ボーカルのマイクを奪い取ると、和田アキ子の“古い日記”を熱唱。
度肝を抜く歌声に聴衆は大喜び、しかし歌い終わった茂雄はバタンと倒れる。

赤犬のマネージャーで小さなスタジオを営むカスミ(二階堂ふみ)は茂雄を連れ帰り、
医者のマキコ(鈴木紗理奈)に診せる。
マキコの紹介で病院へ行き、CT検査を受けさせると、脳に異常はなし、
一時的な記憶喪失に陥っている可能性があるらしい。

「ゆっくりやったらええがな」。カスミは名前のわからない茂雄をポチ雄と呼び、
居候させる代わりに仕事を手伝え、そして歌えと言う。
ポチ雄の歌に引っ張られ、赤犬の面々も練習に精を出すように。
ボケ気味のカスミの祖父・耕太郎(野口貴史)とも折り合いよく、
ポチ雄はかつての茂雄とは別人の生活に馴染んでゆくのだが……。

『エイトレンジャー2』(2014)は観ていたというものの、
アイドル系男子も女子もまったくわからん私は、
数週間前の『The Covers』を観るまで「シブヤスバル」だと思い込んでいました。
シブタニくんだったのですね。失礼しました。
ジャニーズ系はみんな歌下手だと思っていたのに、これも誤りですみません。

心に染み入る彼の歌『記憶』。アップテンポの『ココロオドレバ』と両方◎。
ステージに戻ってきた茂雄になんらかの台詞を言わせたり、
子どもを引き取ってやり直すところを盛り込んだりするほうが、
巷のレビューでは高い評価を得たかもしれません。
だけど私はこのラストが大好き。多くを見せずとも、希望を感じさせます。

小ネタですが、ひそひそ声で話す医師役がいまおかしんじで笑いました。
そう、私が観るのを途中で挫折した映画の監督です。
もうひとつ小ネタ。『The Covers』の埋もれ歌のコーナーで、
リリーさんがデーモン閣下が歌う“赤いスイートピー”を紹介していて、
本作ですばるくんが同曲を歌うシーンがあり、これは偶然かと笑い。

後日、渋谷くんが宣伝のために出た番組でほとんど無言状態になり、
放送事故かと問題になったというトピックが目に留まりました。
ものすごく人見知りなせいであんなことになったらしいですが、
私は本作と『The Covers』を観て一気に彼のファンになってしまいました。
もろ愛想のない、私の好きなタイプ(笑)。
彼は愛想がないといっても、決して感じが悪いわけではない。
実際、リリーさんや夏菜ちゃんの質問には、訥々と、
でも言葉を選びながら一所懸命、かつ楽しそうに応えていましたもの。

記憶を失っても、音楽の記憶は失われない。
『パーソナル・ソング』はやはり本当なのかも。
歌が魂を救う。

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『フォックスキャッチャー』

2015年02月23日 | 映画(は行)
『フォックスキャッチャー』(原題:Foxcatcher)
監督:ベネット・ミラー
出演:スティーヴ・カレル,チャニング・テイタム,マーク・ラファロ,シエナ・ミラー,
   ヴァネッサ・レッドグレーヴ,アンソニー・マイケル・ホール,ガイ・ボイド他

義父の米寿を祝う日、午後2時にダンナ実家へ集合。
私は大阪駅で“和久傳”のお弁当と“キルフェボン”のケーキを調達してから向かうため
(個人的には“アマレーナ”のほうがずーっと好きだけど)、
その調達に動線のよい大阪ステーションシティシネマで映画を1本。

『マネーボール』(2011)のベネット・ミラー監督のよる、実在の事件の映画化。
終始漂う不穏な空気、そして驚きのラストに戦慄。

1984年のロサンゼルス・オリンピックで金メダルを獲得したレスリング選手マーク・シュルツ。
しかし、マイナーな競技ゆえ生活は苦しいままで、華やかさのかけらもない。
同じく金メダリストの兄デイヴをずっと頼りにしてきたが、
独身のマークとちがい、妻子を持つデイヴは家庭サービスに忙しそう。

そんなこんなでもやもやを感じていたある日、
大財閥デュポン家の御曹司ジョン・デュポンから突然呼び出される。
レスリングをこよなく愛するジョンは、自らも選手になりたかったのに、
レスリングを嫌う母親のせいで断念した経緯がある。
指導者として一流のチームを作ろうと“フォックスキャッチャー”を結成、
マークにぜひとも参加してほしいと言うのだ。

ありあまる金を持つジョンは、マークがふっかけてみた給料を即了承。
ジョンはデイヴの参加をも望むが、マークの話を聞いたジョンは、
自分は妻子とともに今の暮らしを続けたいと断り、
しかし、マークには自分の力を信じて行ってくればいいと後押しする。

最先端のトレーニング施設を有するデュポン邸へと移り住むマーク。
トレーニングに集中できる理想的な環境を手に入れたと思われたが……。

実在の殺人事件が基になっているということだけ知っていたので、
何も起こりそうにない展開に、最初は「あれ?」と思いました。
ただ、何も起こらないとは言え、ジョンがとにかく怖い。
いまやコメディの帝王の印象すらあるスティーヴ・カレルにゾワ~っ。
何を考えているのかわからず、賢いのか阿呆なのかも不明。
精神を患っていたようですが、それが表に出てこないのが余計に怖い。

マーク役のチャニング・テイタムも、今までとはずいぶん印象がちがいます。
兄から離れて独り立ちしたいのに、いつまで経っても兄が頼り。
暗く塞ぎ込む表情は好きじゃないけど素晴らしい。
デイヴ役のマーク・ラファロは、誰からも尊敬される懐の深い人物を好演。
とにかくこの3人の演技が光っています。

ジョンの母親じゃないけれど、レスリングは私も苦手。
あんなムキムキの体であんなユニフォームを着てくんずほつれず、
どうも見ていたい気持ちになれません。
だけど、母親のせいで好きなものをあきらめたジョンが、
母親が亡くなった後すぐに取る行動に、
子どもが興味を持つものは嫌いでも理解に努めなくちゃならんのかなと思いました。

山あり谷ありの物語ではなく、淡々と進みます。
その静けさが恐ろしく、十二分に観応えあり。

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『ジョーカー・ゲーム』

2015年02月21日 | 映画(さ行)
『ジョーカー・ゲーム』
監督:入江悠
出演:亀梨和也,伊勢谷友介,深田恭子,小澤征悦,小出恵介,
   山本浩司,渋川清彦,田口浩正,千葉哲也,光石研,嶋田久作他

TOHOシネマズ梅田本館から別館アネックスに移動して、
前述の『ビッグ・アイズ』とハシゴ。
ジョニー・デップのヒゲ男とどちらを観に行くか迷ったと書きましたが、
正確には本作とヒゲ男のどちらを観るかを迷ったのでした。
どちらもハズレの可能性大、ビミョーでしょ。(^^;
結論、ヒゲ男を観ないことには何とも言えません。

原作は柳広司の同名連作短編集。
友人が「めっちゃ面白かった」と言っていましたが、私は未読です。
最近注目株の入江悠監督の作品も過去にまだ観たことがなくて、
私にとっては新しいものだらけ。

第二次世界大戦前。
陸軍士官の嘉藤(亀梨和也)は仲間をかばい、誤って上官を殺してしまう。
銃殺刑の執行直前に現れたのが陸軍中佐の結城(伊勢谷友介)。
結城は周囲の反対を押し切って嘉藤の身柄を引き取り、
自身が創設した秘密組織“D機関”のスパイに嘉藤を抜擢する。

嘉藤はほかにスカウトされた民間人とともに過酷な訓練を受ける。
その間、嘉藤に対して敵意あらわな三好(小出恵介)と諍いになり、
発砲した三好がD機関を追放されるという悶着も。

そんなこんなの日々が過ぎ、やがて初めての任務に就くことに。
それは国際都市“魔の都”に駐在する米国大使グラハムが隠し持つ、
機密文書“ブラックノート”を奪い取って来いというもの。
同じく訓練を受けた小田切(山本浩司)、実井(渋川清彦)と一緒に魔の都へ向かうのだが……。

かなりショボいご都合主義で、ええんかこんなんでと思わなくもないですが、
そのご都合主義に笑わされて、そこそこ楽しめます。
お金はかかっているのでしょうが、なんでしょう、このチープ感。
これを観ると、やっぱりトム・クルーズってすげぇなと思います。

個人的には、
ちょっと気になる渋川清彦も見られ、
『イヌゴエ』(2005)以来注目している山本浩司もいつになくよく映っていた。
・伊勢谷友介の側近を演じる小澤征悦のますます暑くなった顔も見られた。
・大根だと思いつつ、深キョンは相変わらず可愛かった。
・裏切り者かと思いきや、小出恵介くんはやはりいい人役だった。あ、ネタバレ。
……ってことで十分です。

ほいでこれ、続編があるんでしょうかね。
また乗せられてしまいそう。(^o^;

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