夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『LUCY/ルーシー』

2014年09月29日 | 映画(ら行)
『LUCY/ルーシー』(原題:Lucy)
監督:リュック・ベッソン
出演:スカーレット・ヨハンソン,モーガン・フリーマン,チェ・ミンシク,
   アムール・ワケド,アナリー・ティプトン,ジュリアン・リンド=タット他

翌日も仕事の平日は、できるだけ家に近い劇場で観たいけれど、
帰り道のもろ途中にある劇場では本作の上映時間がめちゃ遅い。
『柘榴坂の仇討』は前日に観てしまったし、『ルパン三世』も同様に遅い時間帯。
前週から体調不良なのに、ここまでして映画を観に行く意味があるのかと自問しつつ、
行けば行ったでしんどかったことも忘れるのでした。TOHOシネマズ西宮にて。

リュック・ベッソン監督「らしく」なかった『The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛』(2011)←良かったけど。
その路線で行くのかと思ったら、少し「らしさ」が戻った『マラヴィータ』(2013)。
そしてこれは、まんま「らしい」。

台北の豪華なホテル前。
ルーシー(スカーレット・ヨハンソン)は知り合ってまもない友人リチャードから、
鍵のかかったブリーフケースを押しつけられる。
ホテル内にいるジャン氏(チェ・ミンシク)にそれを渡してきてほしいと言うのだ。

仕方なくルーシーがフロントでジャンの呼び出しを依頼すると、
コンシェルジュは明らかに怯えた顔。
すぐにエレベーターから降りてきたいかつい男どもにルーシーは拉致され、
ジャンのもとへと連れて行かれる。

ホテルの部屋には複数の死体が転がり、返り血を浴びたジャンの姿。
どうやら彼は恐ろしいマフィアのボスらしい。
とんでもないところへ来てしまったと、ルーシーは命乞いをするが、
ジャンからブリーフケースを開けるように言われ、おそるおそるそのとおりに。

ブリーフケースの中に入っていたのは新種の麻薬。
ジャンに殴られて気を失っている間に、ルーシーは腹部にその麻薬を袋ごと埋め込まれる。
ルーシー以外にも同じように麻薬を埋め込まれた男が3名いて、
それぞれパスポートと旅券を渡され、運び屋となることを命じられる。
到着地で再び開腹されて麻薬を取り出される手はずとなっているのだ。

ところが途中、ルーシーの体内で麻薬の入った袋が破れてしまう。
それらは彼女の脳に異変を生じさせ、超人として覚醒する。

一方、脳科学の権威ノーマン博士(モーガン・フリーマン)は、
人間は潜在能力の10%しか活用できていないが、
20%以上活用できれば、とんでもない力を発揮すると考えていた。

覚醒したルーシーの脳は、20%をも超えてどんどん活用範囲が広がってゆく。
このまま100%に到達すれば死ぬと悟ったルーシーは、
パリに滞在中のノーマン博士と会うために出発するのだが……。

誰でも気軽に楽しめる作品を目指し、かつ女性を主人公にすることが多いベッソン監督。
「気軽に楽しめる」にしては脳の仕組みがちょっぴり複雑。
ま、あんまり難しく考える必要はないのでしょうけれども。

スカヨハは高ビーな女性を演じているときよりずっとイイ。
彼女を助けることを余儀なくされるパリの警官役、アムール・ワケドは、
『砂漠でサーモン・フィッシング』(2012)で大富豪を演じた人。
何の得があってアンタを助けなきゃいけないんだという彼が、
スカヨハにキスされて「想い出に」と言われた瞬間に骨抜き状態。可愛かったです(笑)。

人の命は、知識を伝えるためにある。
だけど、こんなことになるのなら、脳の活用範囲は15%ぐらいがいいなぁ。

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『柘榴坂の仇討』

2014年09月28日 | 映画(さ行)
『柘榴坂の仇討』
監督:若松節朗
出演:中井貴一,阿部寛,広末涼子,高嶋政宏,真飛聖,吉田栄作,
   堂珍嘉邦,近江陽一郎,木崎ゆりあ,藤竜也,中村吉右衛門他

秋分の日の翌日、レディースデー。
まだダンナは出張中なので、仕事帰りになんぞ1本観ることに。

普段はネット予約してから劇場に向かうのですが、
この日はダンナ実家に寄らなければならず、
義父が入れてくれるお茶を飲む時間次第で、どこでどの作品を観られるかが変わります。
本作の開映に間に合いそうだったので、109シネマズ箕面へ。
未体験ゾーンだったエグゼクティブシートに空席があると言われ、座ってみました。

原作は浅田次郎の同名短編小説。
幕末から明治へと時代を同じくしながら、
『るろうに剣心 伝説の最期編』とはまったく異なる趣の時代劇
以前は時代劇は苦手なジャンルだったのに、
避けずに観ているうちにわりと好きだと思えるようになったかも。

彦根藩の下級武士だった志村金吾(中井貴一)は、家中随一の剣術の腕前を認められ、
藩主である大老・井伊直弼(中村吉右衛門)の近習(=主君の側近)に抜擢される。
同じ時期にセツ(広末涼子)を娶り、金吾の両親は良いこと尽くめだと大喜び。
直弼の人柄に触れた金吾は、命に替えても主君をお守りすると心に誓う。

1860(安政7)年、雪のちらつく日。
直弼を狙う者ありとの書状が投げ込まれ、金吾らは警戒するが、
直弼はそうなればそれもまた運命と微笑み、彦根藩邸上屋敷を出立、登城する。

江戸城桜田門外に差しかかったところへ現れた水戸浪士・佐橋十兵衛(阿部寛)。
身構える金吾に、駕籠の中から直弼が言う。
命がけで訴状を持って現れた人物のことをおろそかに扱ってはならぬと。
十兵衛が掲げる訴状を受け取ろうとしたところ、
わらわらと出てきた20名足らずの水戸浪士に取り囲まれてしまう。

その場から抜け出した十兵衛を追いかける金吾。
十兵衛ともみ合っている間に、人数のうえでは勝っていたはずの彦根藩士が壊滅。
浪士の刀が駕籠に突き立てられて、直弼もあっけなく殺される。

直弼の命を守れなかった金吾のことを両親は恥じて自害。
金吾自身は切腹を許されず、逃亡した水戸浪士を討ち取れとの下命。
以降、献身的なセツに支えられて、仇を探しつづける日々。

13年が経過し、時代は明治へ。
世の中が変わろうともいまだに身も心も武士である金吾のことを
かつて剣術を磨き合った仲の内藤新之助(高嶋政宏)は心配し、
当時、水戸浪士の取り調べを担当した評定所御留役・秋元和衛(藤竜也)に相談。
秋元のもとを訪ねた金吾は、水戸浪士のうちのたったひとりの生き残り、
十兵衛について知らされるのだが……。

斬ったほうも斬られたほうも心に傷を負い、気持ちの整理をつけられずにいます。
やっと探しあてた十兵衛の居場所。十兵衛の引く人力車に乗る金吾。
あの日と同じように雪がちらつくなか、ふたりは言葉を交わしながら柘榴坂へ。
憎しみしか感じられなかったはずの相手、十兵衛の話を聞くうち、
何かが金吾の心の中で変わってゆきます。

ここから柘榴坂の対峙に至るまでの緊迫感に満ちた場面。
まさに斬らんかというときに浮かび上がる椿の花。

ところどころ、ちょっぴり泣きました。

ひたむきに、生きよ。

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『TOKYO TRIBE』

2014年09月27日 | 映画(た行)
『TOKYO TRIBE』
監督:園子温
出演:鈴木亮平,YOUNG DAIS,清野菜名,大東駿介,石田卓也,市川由衣,
   叶美香,中川翔子,佐藤隆太,染谷将太,でんでん,窪塚洋介,竹内力他

なんばまで行こうと思ったのは本作ゆえ。
公開時からどうしても時間が合わず、現在夕方1回のみの上映。
この日を逃したらDVD待ちになると思い。

私にとっては鈴木亮平といえば『HK/変態仮面』(2013)しかないわけですが、
NHK朝の連ドラ『花子とアン』の村岡英治役で人気沸騰した模様。
先日参加した同窓会でも、『ホットロード』を観に行ったという同級生がいて、
「なんで?」と尋ねたら、「英治さんのファンだから」とのこと。
同様に鈴木亮平目当ての客がこの日も多かったようで、中高年女性がたくさん。
劇場入口の上映作品案内のチラシ前で写真を撮っている人もいました。

しかし、鈴木亮平だけが目当ての人はやめておいたほうが無難です。(^^;

近未来の東京。
渋谷新宿歌舞伎町練馬、高円寺、武蔵野を仕切るトライブ(=族)が存在する。
それぞれの縄張りは絶対で、よそ者が紛れ込むことは許されない。
お互いの縄張りを荒らさないことで、なんとか均衡が保たれていた。

ブクロWU-RONZのリーダーはメラ(鈴木亮平)。
彼はムサシノSARUのリーダーである海(YOUNG DAIS)を激しく憎み、
海を倒す機会を虎視眈々と狙っている。

ブクロWU-RONZには大物ヤクザのブッパ(竹内力)という後ろ盾がいる。
ブッパは、自らが経営する風俗店“SAGA”で働かせる女を確保するため、
路上でたむろする女性をしばしばWU-RONZに拉致させていた。
その中にいたのが上玉のスンミ(清野菜名)。

海をWU-RONZの縄張りに出向かせて取り押さえようと、メラは罠を仕掛ける。
それは、ムサシノに潜り込ませたWU-RONZのメンバーに、
風俗店に行きたくて仕方ないSARUのメンバー、キム(石田卓也)を誘わせて、
スンミの写真を餌にSAGAまで連れてくるというもの。
キムがブクロへ向かったと知れば、海が慌てて追いかけてくるだろうと。

メラの思惑どおりとなったとき、
ついでにトーキョー全土を牛耳りたいブッパが戦争をおっぱじめる。
WU-RONZに加え、ブッパの命令下、各地に襲いかかる悪事の集団WARU。
海はほかのトライブのリーダーたちに招集をかけて事情を説明。
一致団結してメラやブッパと戦うのだが……。

園子温監督の作品は、暴力的ながら笑えるシーンがあったり、
心にずしんと来たりする作品が多いですが、これはほぼ笑えません。
私が笑ったのは大司祭役ででんでんが登場したときぐらい。
あとは、こんなことができる監督ってスゲェとふいたシーンがいくつか。
竹内力が叶美香の乳を揉ませるなんて。
清楚な顔立ちの清野菜名にいとも簡単に脱がせるなんて。
そして、しょこたんと叶美香と竹内力にあんな死に方をさせるなんて。
こういった物語のナレーション的役割を務める染谷将太
ブッパの息子役の窪塚洋介はちょっと光った存在です。

それにしてもこの監督、引き出しが多いですね。
ラップのミュージカルなんて、ありそうでなかったもの。
キャストが豪華で、さまざまなものにお金がかけられていると下品に見えない不思議。
(だけど、竹内力、サイテー(笑)。)
きちんと地位を築いていなければ、こんな作品は撮れなかったでしょうし、
地位なくして撮ったところでは、C級映画になってしまったでしょう。
そういう意味ではおもしろいです。

鈴木亮平が「ち○ぽ」なんて口走る映画、英治さんファンは観たくなかったと思いますが、
世の中の喧嘩なんて、所詮発端はそんなこと。
戦争だって、もとのもとをたどれば実はものすごく些細なことから始まったのかもしれない、
そう思いました。

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『ゲッタウェイ スーパースネーク』

2014年09月26日 | 映画(か行)
『ゲッタウェイ スーパースネーク』(原題:Getaway)
監督:コートニー・ソロモン
出演:イーサン・ホーク,セレーナ・ゴメス,ジョン・ヴォイト,
   レベッカ・バディグ,ブルース・ペイン他

いったい何回目か、ダンナの「今年最後の出張」(笑)。
と言っても去年までのような2週間以上の出張ではなく、
週明けに出発して週末には帰国という短期出張。
ちょこちょこ用事をこなしながら毎日1本以上は映画を観ることに。

秋分の日、午前中は予定あり、そのまま車で大阪市内へ。
気になる映画は数本あるものの、どれも決定打に欠ける。
紙に書き出した鑑賞候補は梅田でなら3本、なんばでなら2本。
作品自体が決め手に欠けるなら、鑑賞にかかる金額で決めようと思ったら、
映画鑑賞料金と駐車場料金との総額はどちらも同じ。
悩みに悩んで、同額ならば3本観られる梅田にしようとスカイビルへ。

ところが、このごろ観光地化しているスカイビル、どこのコインパーキングも満車。
これで踏ん切りがつき、そのままスカイビルを素通りしてなんばまで。
日本橋駅付近のタイムズに駐車してTOHOシネマズなんば別館へ向かいました。

余談ですが、TOHOシネマズなんば別館近くのローソンは、
店員さんがほぼ100%、中国人ですね。
100%じゃないかもしれないけど、私が寄ったときは100%。
長蛇の列を達者な日本語でさっさか捌く礼儀正しい店員さんたちにいつも感謝。

このところのミュージカルばやりには驚きますが、今年はなんだか車関係の映画も多い。
そんな映画には出そうにもないイーサン・ホークに興味が湧き。
イーサン・ホークがシェルビー・マスタングGT500に乗ってひたすら走ります。

ブルガリアの首都ソフィア。
クリスマス、元プロレーサーのブレントが帰宅すると、
部屋は派手に荒らされ、妻のリアンの姿がない。
そこへかかってきた電話を取ると、聞き覚えのない男の声。
「妻を返してほしければ、言うとおりにしろ」と。

謎の男の指示により、ブレントはとある駐車場へ。
駐められていたシェルビー・マスタングGT500スーパースネークを盗む。
男が寄越す分単位の課題をクリアできなければ、妻は殺されてしまう。
交通ルールを無視、建造物を破壊、人々がなごむ公園の中まで突っ切らされ、
警察に追われながら、ただただ妻の無事を祈って車を走らせる。

男からの次の指示を待って停車中、銃を持った少女がブレントの前に現れる。
ただの物盗りだと思ったら、彼女は車の所有者らしく、車を返せと怒っている。
人質として彼女を一緒に車に乗せろとの指示を受け、
ブレントはさらに車を走らせるのだが……。

どうなんですか、これ。
ま、迫力もスピード感も(ゲロ酔いしそうになった箇所も)ありますけれど、
車に興味がなければ、「ふ~ん」でおしまいなのでは。
盛り上げておいて、オチはそれかよ。ひょっとして続編でも狙っています?
巻き込まれ型でひたすら犯人の指示どおりに車を走らされる作品では、
私は今は亡きポール・ウォーカー主演の『逃走車』(2013)のほうが好きでした。

少女役のセレーナ・ゴメスはディズニー・チャンネル出の売れっ子女優兼歌手とのこと。
『モンスター・ホテル』(2012)のヒロインの声が印象に残っています。
イーサン・ホークはこんなアクションも意外に似合っていましたが、
悪徳警官にならざるを得なかった『クロッシング』(2009)のほうがハマっているし、
私はやっぱり『ガタカ』(1997)の彼が好き。

これは劇場で観るべき作品でしょ。
というのか、劇場でなければ観なくていいと言うべきか!?

エンドロールに出てくる名前が“v”と“va”で終わる人だらけでワロた。

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『FORMA フォルマ』

2014年09月24日 | 映画(は行)
『FORMA フォルマ』
監督:坂本あゆみ
出演:松岡恵望子,梅野渚,ノゾエ征爾,光石研,仁志原了他

先週の土曜日、甲子園へ行く前にTOHOシネマズ西宮にて。

これが長編デビューとなる新鋭の女流監督の作品。
第64回ベルリン国際映画祭フォーラム部門で国際映画批評家連盟賞を受賞。
ちなみにこのとき、コンペティション部門で銀熊賞の審査員グランプリを受賞したのが『グランド・ブダペスト・ホテル』
女優賞を受賞したのが『小さいおうち』の黒木華でした。
キャッチコピーは「145分のアンチテーゼ。」。

私にとって、何度説明されてもわかりづらい言葉のひとつが“アンチテーゼ”で、
「誰かが唱えた説に反対の説のこと」と言われたら、
「ふ~ん」と一応納得できるのだけど、自分では具体例を挙げて説明できません。
そんなことを考えながら本作を観ていたら、
誰かが唱えた説がどれで、アンチテーゼは果たして何になるのだろうかと、
またしてもわからなくなってしまいました。(--;

OLの綾子(梅野渚)は、仕事帰りに通りかかった工事現場で立ち止まる。
警備員に知っている顔を見つけたから。
それは高校時代に近所に住んでいた部活仲間、由香里(松岡恵望子)だった。
9年ぶりに再会したふたりは、一緒にテニスをする。
その折り、綾子は自分が勤務する会社に来ないかと由香里を誘う。

綾子の紹介により、すぐに由香里も同じ会社で働きはじめるが、
綾子から聞いていた会社の状況とは全然ちがう。
人手不足のはずが、コピーにお茶汲み、トイレ掃除と、回ってくるのは雑用のみ、
しかもわざわざ捻出したような仕事ばかり。違和感をおぼえる由香里。

ある日の終業後、由香里は婚約者の田村(仁志原了)と会う予定。
それを知った綾子は自分も同席すると言う。親友なんだから、紹介して当然でしょと。

綾子は由香里の高校時代について田村が知っているのかと、由香里にしつこく問う。
なんのことかと由香里が訝ると、男関係が派手だったとか云々。
後日、綾子は田村を呼び出し、由香里のことをあれこれ話す。
田村がそれとなく由香里に探りを入れようとして失敗、由香里は綾子の行動を知る。

会社での冷たい態度や田村に対する告げ口のほか、
綾子の不可解な言動によって、由香里は次第に追い詰められて行くのだが……。

冒頭、人気のなくなったオフィスで段ボールをかぶってうろつく綾子の姿。
蛍光灯っぽく見える電灯が殺伐とした空気を醸し出しています。
145分間、BGMいっさいなし。全編を覆う虚無感。

由香里と綾子それぞれが人に聞かせる話が食い違っていて、
最初は圧倒的に性格の悪そうな綾子の作り話に思えます。
光石研演じる父親と二人暮らしの綾子は、毎晩食事しながら由香里の悪口。
自分から職場に誘っておいて「使えない」だのなんだの。
そんな綾子の話にたいした反応なく相づちだけ打つ父親。
女って怖いな、このまま妄想がつづく物語なのかなと思わされるのですけれど。

そんな思いがひっくり返されるのは、残り45分になった頃。
誰だったっけ、この人という登場人物がいきなりメインになって面食らっていると、
裏で起きていたあれこれが明かされて、見事なサスペンスとなっています。

物事を片側から見るだけではわからないし、必ず双方の言い分が存在する。
物の大小の捉え方はさまざまで、片方にとっては些細なことでも、
もう片方にとっては奈落の底に突き落とされるほどの出来事だったりする。

ラスト、電車の音にかき消される声。そこでどんな会話がなされたのか。
“アンチテーゼ”は相変わらずよくわからないけれど、想像力をかき立てられます。
難解なつくりになっているわけではなく、非常におもしろい。
だけど、この救いのない絶望感。
この手の作品が好きで、しかも元気な人にしかオススメできず。

これからが楽しみな監督です。

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