夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『スーパー!』

2011年08月31日 | 映画(さ行)
『スーパー!』(原題:Super)
監督:ジェームズ・ガン
出演:レイン・ウィルソン,エレン・ペイジ,リヴ・タイラー,
   ケヴィン・ベーコン,ネイサン・フィリオン他

さて、やっとお盆休みに観た4本目について。
これはシネマート心斎橋にて『メタルヘッド』とハシゴ。
とりあえず再来週までは続映決定済みのようです。

シンプルすぎる邦題ですが、原題も“Super”。

ファミレスで来る日も来る日もハンバーガーのパテを焼く、
見た目まったくイケてない中年男フランク。
冴えない人生の中で、唯一自慢できることと言えば、
彼とは到底釣り合わないナイスバディの美女サラのハートを射止めたこと。
しかし、近頃なんだか彼女の様子がおかしい。

サラの留守中に彼女を訪ねてきたのは、
胸をはだけた色気むんむんのジョックという男。
不審に思いつつも、朝食の卵料理をジョックに振る舞うフランク。

それから数日後、サラが突然出て行ってしまう。
どうやらジョックは大物ドラッグディーラーで、
彼に入れあげたサラは、あっさりフランクを捨てた模様。

サラの居所を突き止めたフランクは、
彼女がクスリ漬けにされかけていることを知る。
最愛の妻を取り戻すため、フランクは悪と闘う決意をする。

コミック店で参考になりそうなヒーロー物を物色していると、
オタクな女性店員リビーがあれこれ教えてくれる。
コスチュームを身にまとい、手始めに街でひと暴れ。
事情を知ったリビーが相棒にしろと言いだし、
ふたりは“クリムゾンボルト&ポルティー”として、ジョック邸へ向かうのだが……。

『メタルヘッド』では父親役だったレイン・ウィルソンが主役。
ハシゴだったおかげで、役柄のギャップも楽しめました。
リビー役には『JUNO/ジュノ』(2007)のエレン・ペイジ。
『ローラーガールズ・ダイアリー』(2009)の女子高生役、
『インセプション』(2010)の大学生役など、
彼女の飄々とした雰囲気は意外にどんな役にもハマります。

愛しの妻にはリヴ・タイラー。相変わらず二の腕むちむち。(^^;
セクシーなジョック役にケヴィン・ベーコンは、ちょい年取りすぎ。
『ワイルドシングス』(1998)の「どうだ!俺のハダカは!」の頃が懐かしい。

そこそこ出演陣を知っていて、配役の妙も楽しめる人にオススメですが、
そうでなくても、きっとばかばかしさが嬉しくなる作品です。
『キック・アス』(2010)が気に入った人は、これも好きなはず。
けれど、こっちのほうがお下劣度はかなり上なので、あしからず。

お盆休みの4本は、真面目度、不真面目度に差はあれど、
どれも人生捨てたもんじゃない、なんとかなるさと思わせてくれる佳作でした。

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『うさぎドロップ』

2011年08月27日 | 映画(あ行)
『うさぎドロップ』
監督:SABU
出演:松山ケンイチ,香里奈,芦田愛菜,桐谷美玲,キタキマユ,
   佐藤瑠生亮,高畑淳子,池脇千鶴,風吹ジュン,中村梅雀他

お盆休みに観た4本目を書くはずが、今週本作を観て、先に書きたくなり。
4本目を書く頃には終映しているかもと心配でしたが、
来週いっぱいは上映予定なので、4本目は来週に。

さて、本作を観に行ったのは、私の場合はひとえに監督のせい。
劇場内を見渡せば、老若男女さまざま。子ども連れの人もたくさん。
ものすごく幅広い客層で、これは芦田愛菜ちゃん効果?

おそらく、今までのSABU監督を知らない人は満足、
今までのSABU監督に惹かれて観に来た人は、
なんだか監督が腑抜けちゃった印象をぬぐえない作品です。

27歳のダイキチが、祖父の訃報を受けて実家へ向かうと、
見慣れない6歳の女の子が。なんと祖父の隠し子らしい。
母親はどこの誰だかわからず、親戚一同は迷惑顔。

りんという名前のその女の子のいる前で
引き取り先を巡って親戚同士が揉め出し、
たまりかねたダイキチは、自分が引き取ると宣言してしまう。

実家ではまったく口を利かなかったりんだが、
亡き祖父にそっくりのダイキチにはすぐになつき、
子育ての経験皆無の独身男と女の子の生活が始まるが……。

腑抜けた印象と書きましたが、これはこれでいいです。
大会社の最も忙しい部署でバリバリ仕事をこなしてきて、
部下の信頼も厚いダイキチが、育児のために残業のない部署への異動を希望します。
異動先には見た目やんちゃ、実は子煩悩な男どもが大勢いて、
ダイキチの事情を知るや大歓迎。
りんがいなくなった折りには、急ぎの仕事を全員でほっぽらかして探しに。
これはあかんやろと苦笑しつつも、そう来ないと感動は膨らまないし。

保育園で親しくなるシングルマザーが雑誌モデルのゆかりで、
親しくなる前にダイキチが偶然その雑誌を開き、
モデルと自分が踊る妄想シーンがありますが、
これは本来のSABU監督を思い起こさせます。まるで『MONDAY マンデイ』(1999)。

いつもはブラックな笑いをもたらす監督がすっかり丸くなったのに、
以前の自分をどこかで見せておきたいと思うのか、こういうシーンが突然入ります。
従来のファンとしては嬉しいけれど、本作には不要のシーンで、中途半端。
それでも、『世界で一番パパが好き!』(2004)で毒のかけらもなくなったケヴィン・スミス監督に比べれば、
本来のSABU監督がいるのは楽しくもあり、
また、どこに向かうんだろうと心配になったSABU監督の前作『蟹工船』(2009)よりも好きでした。

とにかくどの作品でも出演者が「走る」、SABU監督作品。
その点は本作も健在。
普通によかった、というのが素直な感想。

こんな素敵な叔母さんと甥っ子の関係、いかがです?

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『この愛のために撃て』

2011年08月24日 | 映画(か行)
『この愛のために撃て』(原題:À Bout Portant)
監督:フレッド・カヴァイエ
出演:ジル・ルルーシュ,エレナ・アナヤ,ロシュディ・ゼム,
   ジェラール・ランヴァン,ミレーユ・ペリエ,クレール・ペロ他

観た順序とはテレコになってしまいましたが、
前々述の『海洋天堂』とハシゴした1本。
85分のコンパクトなフランス作品にして、傑作。

原題は“À Bout Portant”。
直訳すると「至近距離から」という意味らしく、
そう言われてもなんのこっちゃわかりません。
ベタな邦題で、窓口で言うのも恥ずかしいぐらいですが、
観終わればしっくりと来て、魂を撃ち抜かれた気分です。

パリ市内の病院に勤務するサミュエルは、心優しい看護助手。
出産間近の美しい妻ナディアと、生まれてくる子どものため、
正式な看護師になろうと勉強にもいそしんでいる。
質素だが、幸せいっぱいの毎日。

ある日、バイクにはねられた男性が病院へ搬送される。
意識不明の重体ではあったが、一命は取り留めた模様。
ところが、不審な人物が忍び込み、この患者の殺害をはかる。
偶然通りかかったサミュエルに驚いた侵入者は逃亡。
翌朝、殺されかけた患者は前科者のサルテであることがわかる。

帰宅したサミュエルは待ちかまえていた何者かに襲われ、身重の妻が誘拐される。
犯人から、3時間以内にサルテを病院から連れ出せと指示がある。
警察に通報すればナディアが殺されてしまう。
決死の覚悟でサミュエルはサルテを連れ出すのだが……。

冒頭、サルテが何事かに遭い、逃走するシーンが映し出されます。
スピード感に溢れているけれど、最近よくあるアクション映画のように、
何が起こっているのか目がついていかないほど速い、というわけではなく、
中年以上にも親切な作品と言えましょう。(^o^)

善人サミュエルに最初は同情することしきり。
やがて行動を共にすることになるサルテは、
チンピラかと思いきやかなりのキレ者、大物悪党の様子。
大がかりな陰謀が判明し、ビビるサミュエルの前で、ドキュンバキュン。

極悪に思えたサルテだけど、理不尽な殺しはしません。
血も涙もないはずの彼が、義理と人情に厚いところを見せて、
次第にサルテにも共感が湧いてきます。

妻を救いたい一心で無謀な行動に出るオッサンと、
世間からはみ出したホントはいいオッサン。
このコンビを応援せずにいられましょうか。

実は、撃ったのは初めのほうの一発だけ。
しっくり来る邦題だと言いましたが、このズレもナイス。
決して君を不幸にはしない。
その気持ちがあれば、撃てなくてもこんなふうに。

「善人顔すぎる」。
この台詞がツボにハマり、思い出しては笑っちゃう。

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『メタルヘッド』

2011年08月21日 | 映画(ま行)
『メタルヘッド』(原題:Hesher)
監督:スペンサー・サッサー
出演:ジョセフ・ゴードン=レヴィット,ナタリー・ポートマン,レイン・ウィルソン,
   デヴィン・ブロシュー,パイパー・ローリー,ジョン・キャロル・リンチ他

前述の『海洋天堂』を含め、お盆休みに劇場で観た4本はどれも大当たり。
それぞれに味わいがちがうので、どれがNo.1かは決めづらいですが、
DVD化されたときにどれか1本だけ買うとしたら、私はこれを買うでしょう。

原題は“Hesher”。
パンフレットによれば、“ヘッシャー”はメタル好きを表す俗語だそうです。
原題も邦題も、ヘヴィメタバンド“メタリカ”のロゴをパクったもの。
もちろん、作品中ではメタリカの曲(しかも初期のアルバム4枚から)が使用され、
ほかには“モーターヘッド”の曲も効果的に使われています。

両親とともに車で出かけた少年TJ。
家族そろっての楽しいドライブだったはずが事故に遭い、
母親だけが死亡してしまう。

あれから2カ月。
悲しみに打ちひしがれたままのTJと父親のポールは、祖母の世話になっている。
精神安定剤を多用し、日がな一日ソファで眠り続けるポールは、
ある日、事故に遭った車を見るのはつらいと廃車にする。
母親の思い出がいっぱい詰まった車を、どうしてパパは売ってしまうの。
中古車ディーラーに引き取られてゆく車を追いかけるTJ。

車にまとわりつくTJは、ディーラーの息子である悪ガキに追い払われる。
以降も執拗にいじめられ、久しぶりの学校も憂鬱なだけ。
鬱憤を晴らそうと、空き家のガラス窓をめがけて石を投げ込むと、
長髪、半裸、しかもヘタウマ風の刺青が胸にも背中にもある男が出て来て、
TJの首根っこをつかむ。驚いて声も出せずにいると、パトカーが。
男はバンでどこかへ去ってしまう。

数日後、TJの前に再び現れた男は“ヘッシャー”と名乗り、
祖母宅に居座るようになるのだが……。

TJがいじめられている場面にことごとく登場するヘッシャー。
普通なら、この変人がTJを救い出してくれると思うところ。
ところが、ヘッシャーはいじめられているTJを放置。
それどころか、勝手にいじめっ子のもとへ乗り込んでは
あり得ないいたずらをするものだから、
いじめっ子はTJの仕返しだと思い込み、さらに酷くいじめられます。

けれど、喪失感をぬぐいきれないTJ一家にヘッシャーがもたらすもの。
このラストシーンは、今年観た映画の中でいちばん好き。
おまけのオチにもニヤリ。

『ブラック・スワン』(2010)のナタリー・ポートマンが、
TJが淡い想いを寄せるスーパーの「おばちゃん」役で登場。必見です。
『(500)日のサマー』(2009)や『インセプション』(2010)の優男が
こんなヘヴィメタ男を演じているのも実に愉快。

来月は早くもDVDが発売されるので、やはり買いましょうかね。
と思うけれど、悪ガキの鼻が削がれるシーンが痛すぎて躊躇するなぁ。

ばあちゃんと、散歩しよう。

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『海洋天堂』

2011年08月18日 | 映画(か行)
『海洋天堂』(原題:海洋天堂)
監督:シュエ・シャオルー
出演:ジェット・リー,ウェン・ジャン,グイ・ルンメイ,
   ジュー・ユアンユアン,ドン・ヨン他

例年、お盆とは無縁のうちの職場。
しかし、今年は節電対策のために、有休を使って全員同日に休むようにとのお達し。
家にいても暑いので、1日2本ずつ映画をハシゴ。
2日間で観た4本はどれも大当たり。
観た順番に書きたいところですが、終映が近づいているものからご紹介。

ちなみに本作は、前述の『ツリー・オブ・ライフ』
エンドロールが回り始めると同時に9割以上の客が立ち去ったのに対し、
ただの一人も席を立つ人がいませんでした。

中国のチンタオ。
あと数年で50歳を迎える水族館職員ワン・シンチョンは、
21歳の息子ターフーとふたり暮らし。
妻はターフーがまだ幼い頃に他界。
以来、自閉症と重度の知的障害を持つターフーをシンチョンがひとりで育てている。

あるとき、シンチョンは自分が末期の肝臓癌に冒されていることを知る。
ターフーが遺されることを案じたシンチョンは、休暇を取って海へ。
自分と息子の足を縄で括り、一緒に溺れて死のうとするが、
泳ぎの得意なターフーは、縄から抜け出してすいすいと泳いでしまう。

考えを改めたシンチョンは、ターフーを受け入れてくれる施設探しに奔走。
それと同時に、自分の亡き後もターフーが生きて行けるよう、
ひとつひとつターフーに教え始める。

こんなストーリーのところへ、
世界的な名カメラマン、クリストファー・ドイルによる撮影、
でもって、あの久石譲による音楽と来たら、泣くこと必至。
けれど、お涙頂戴に走らない、ユーモアも交えた堅固なつくりの作品でした。

服の脱ぎ方、卵の割り方、バスの乗り方、買い物の仕方。
生活の術をターフーに丁寧に教え、いつまでもつきあうシンチョン。
ときにはいらついて声を荒げてしまう様子に、
『八月のクリスマス』(1998)の主人公の姿がかぶります。

シンチョンの人柄ゆえとはいえ、親子を見守る人びとのなんと温かいこと。
隣人のチャイをはじめ、水族館の館長、施設の校長など、
こんな人ばかりだったらいいのにと、願わずにはいられません。

エンディング曲の余韻にもう少し浸りたかったのに、
ブチっと切られてしまったのが悔やまれるところ。

武術の達人であれほど美しい動きを見せるジェット・リーが、
アクション皆無のこんな泣かせる話に主演するなんて、
老後の新境地を拓こうと企んでいるのかしらんと、
ちょっと意地悪な目で観始めたのですが、とんだ思い違い。ごめんなさい。

鑑賞後にジェット・リーがノーギャラで出演したことを知りました。
おみそれしました。

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