夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『インスタント沼』

2009年11月30日 | 映画(あ行)
『インスタント沼』
監督:三木聡
出演:麻生久美子,風間杜夫,加瀬亮,相田翔子,
   温水洋一,宮藤官九郎,松坂慶子他

先週末にレンタル開始になったところ。
ネットの口コミを読むと、怒ってる人もいました。
笑いのツボが同じ人かどうか知りたいときは、
三木監督の作品を一緒に観てみるのがいいかも。

私はもはやこの監督の作品を観ずに済ますことはできず。
いろいろ過去に書いていますのでご参考までに。
まったくもってナンセンスですが、そのくだらなさがたまらん。

出版社でオシャレな雑誌の編集長を務めるハナメ。
ところが、その雑誌の売れ行きがふるわず、廃刊が決定。
ハナメは辞表を提出する。

じり貧状態がいつまで続くのかと嘆いていたところへ、
母親の翠が池にはまって意識不明だと警察から電話が。
自殺を図った可能性があると刑事は言うが、
彼女のそばにキュウリを付けた釣り竿が落ちていたことから、
翠は河童を捕獲するつもりだったのだとハナメは確信する。

鑑識官が池の底をさらうと、昔、盗まれた郵便ポストが出現。
配達されなかった郵便物の中には、翠が男性に宛てた封書があった。
刑事からその手紙を受け取ったハナメは、
自分の本当の父親が別に存在している可能性に驚愕する。

ハナメは、翠と関係があったらしい男性が営む骨董屋へ。
恐ろしくイケていないその骨董屋の店主は、
「電球のオッサン」と呼ばれていた。
会いに来た理由は明かせないまま、
ハナメはなんとなくその骨董屋に通い始めるようになり……。

過去に観た三木聡監督の作品と比べると、
小ネタがこそっと出て来るというよりは全開の雰囲気で、
ちょっと嫌みであざとく感じてしまいました。
それも最初の間だけで、みるみるうちに三木ワールドにドボドボと。

麻生久美子のコメディエンヌぶりもさることながら
トサカ頭のパンクロッカーを演じる加瀬亮が秀逸。
相田翔子の「よろしくお願い島津藩」には引きましたが、(^^;
やはり本作もクスッと笑えるネタが満載です。
「強い子のミロ」に、牛乳を少しだけ混ぜて、
ほとんど液体化させずにスプーンで食す「シオシオミロ」が謎を解くカギに。

落ち込んだときは、水道の蛇口をひねるのだ!
しょうもない日常はそう簡単には洗い流せませんけれど、
観終わったときには、それでほんとにスッキリしそうだと思えてしまいます。

そうそう、「白い骨董屋」の店主役が、
高校のクラブの先輩だったことにビビりました。

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『60歳のラブレター』

2009年11月27日 | 映画(ら行)
『60歳のラブレター』
監督:深川栄洋
出演:中村雅俊,原田美枝子,井上順,戸田恵子,イッセー尾形,綾戸智絵,
   星野真里,内田朝陽,石田卓也,金澤美穂,原沙知絵,石黒賢他

住友信託銀行が50歳以上を対象に毎年募集している、
夫から妻へ、妻から夫へのラブレター。
大人気のこの企画は今年10回目を迎えるそうで、
過去の応募作品をヒントに制作された映画がこれ。

登場するカップルは3組です。

大手ゼネコンを定年退職した橘孝平と妻のちひろは、
これを機に離婚を決める。
愛人が経営するベンチャー企業にパートナーとして加わり、
家はちひろに渡して、愛人宅へ。
30年間、専業主婦だったちひろは、家事の腕前を活かして、
売れっ子女性翻訳家のお手伝いさんとして働くことに。

その翻訳家、長谷部麗子。
厚化粧にヘヴィースモーカー、仕事のできる彼女は、男性に敬遠されがち。
医療用語の翻訳に関してアドバイスを頼んでいる内科医、佐伯静夫に
ひそかに好意を寄せているが、彼が既婚者なのかどうかすら知らない。
意を決して尋ねてみると、奥さんとは5年前に死別したとわかり、
晴れて麗子は静夫を食事に誘う。

ちひろの行きつけの魚屋の主人、松山正彦。
糖尿病を患っており、妻の光江の厳しい監視下、摂生中。
担当医の静夫のもとへはいつも夫婦そろってやって来る。
ある日、正彦の診察に訪れたつもりが、
光江に脳腫瘍の疑いがあることが判明し……。

晩に観たら、翌日もまぶたが腫れるんちゃうかと思うほど泣けましたが、
だからめっちゃ良かったかと言われると、それはまた別で。
あまりに感動的すぎて、そんな上手いこと行くかいなみたいなアマノジャク的根性が。(^^;

それでも、いい具合に歳を重ねている出演陣の演技はさすが。
中村雅俊にろくでなしは似合わないと思っていましたが、
情けない男振りが板に付いていましたし、
ひっつめ髪の原田美枝子の変身ぶりには目を奪われます。
イッセー尾形が歌うビートルズも味があり、綾戸智絵との夫婦の会話は絶妙。
大腸菌を語らせたら止まらない井上順も良いし、
戸田恵子がまくし立てるシーンは涙なしでは見られません。

ベテラン俳優に混じって登場する娘役たちも鮮やか。
いちばん良かったのは、石田卓也の役どころ。
これはちょっとしたサプライズでした。

同監督作ならば、『真木栗ノ穴』(2007)のほうが好きだけど、
う~ん、素直に「良かった」と言っておくべきやろなぁ。

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『40男のバージンロード』

2009年11月24日 | 映画(や行)
『40男のバージンロード』(原題:I Love You, Man)
監督:ジョン・ハンバーグ
出演:ポール・ラッド,ジェイソン・シーゲル,ラシダ・ジョーンズ,
   アンディ・サムバーグ,J・K・シモンズ,ジェーン・カーティン他

日本では未公開の作品です。

その昔は、ブラピの元妻ジェニファー・アニストンと
『私の愛情の対象』(1998)で共演していたポール・ラッド。
最近の出演作の大半はDVDスルーされてしまっていますが、
それでもそんな作品の中では主役、
もしくは主役の友人ぐらいのポジションはきっちり保っています。
いつのまにか彼も40歳とは感慨深いものが。

タイトルから下ネタ満載の軽いコメディかと思ったら、意外にマジメ。

大手不動産会社の営業社員ピーターは、
同棲中のゾーイに運命を感じてプロポーズ。
満面の笑みを浮かべた彼女は即答で“Yes”。
友人たちに次々と報告の電話をかけ始めるゾーイ。
ピーターも誰かに電話したいのではと彼女が問いかけるが、
特に急いで報告する人はいないとの返事。

翌日、出勤したピーターは、婚約を発表して驚かせようと、
仕事のあとに同僚らを飲みに誘うが、
別の同僚が婚約したことを先に聞かされたうえ、
ピーターを除くみんなで祝いに飲みに行く予定なのだと知る。
もともとあまりつきあいがいいとは言えないピーターには、
誰もわざわざ声をかけなかったらしい。

飲みに行く当てが外れ、早めに帰宅したピーター。
自宅ではゾーイが友人を呼んでパーティーを開催中。
ピーターの帰宅に気づいていない彼女たちは、
どうやらピーターには親しい友人がいないようだと話している。
ベストマン(=花婿に付き添う独身男性)を頼める友人がいない男性は、
ちょっと考えものかもと噂されているのを聞き、
ピーターは結婚式までに親友を見つけようと俄然張り切る。

母親や弟に友人候補を紹介してもらうが上手く行かず、
あきらめかけていた折り、
自分が担当する不動産のオープンハウスにやって来たシドニーと出会い……。

自分には親友と呼べる友人がいないことに気づいた主人公が、
友人探しに躍起になる姿は『ぼくの大切なともだち』(2006)に似ています。
もっとも、あの主人公よりもピーターのほうがずっと謙虚ですけれど。

友だちって何だろう。
そんなことを考えつつ、個性豊かな家族や友人たちにクスッ。
ゲイの弟が教える友人探しのルールも可笑しいです。
不動産の宣伝にも目が釘付け。
いや、しかし、想定外のマジメさでした。

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『おと・な・り』

2009年11月20日 | 映画(あ行)
『おと・な・り』
監督:熊澤尚人
出演:岡田准一,麻生久美子,谷村美月,岡田義徳,池内博之,
   市川実日子,郭智博,清水優,とよた真帆,平田満,森本レオ他

タイトルには「お隣」と「音鳴り」の意味が掛け合わされています。
『虹の女神 Rainbow Song』(2006)や『ニライカナイからの手紙』(2005)と同監督の作品。
観終わると心がぽかぽか温まる、
派手さのないストーリー展開にいつも惹かれます。

東京のとある町にたたずむ古いアパート。
人気モデルのシンゴの専属カメラマンを務める聡と、
近所の花屋に勤めている七緒は、隣同士。
挨拶どころか、顔を合わせたこともないが、
壁越しに聞こえてくるお互いの何気ない生活音に、
いつのまにか安らぎを感じるようになっている。

聡は、気難しいシンゴの親友であることから
彼の撮影を任されるようになったが、
本当に撮りたいのは風景写真。
シンゴの写真集の仕事を片付けたら、
風景を撮るためにカナダへ渡る計画を立てている。

ところが、シンゴにカナダ行きを打ち明けようとしたそのとき、
シンゴが行方不明になる。
シンゴの恋人だという茜がアパートに押しかけてきて、
自分は妊娠中の身であり、シンゴが戻るまで聡の部屋に居座ると宣言する。

一方の七緒は、フラワーデザイナーになるべく、
フランス留学を控えて勉強中。
ある日、花屋を訪れた近所のコンビニの店長から、
突然好きだと告白されて困惑する。

「基調音」の話がなかなかおもしろいです。
ここに登場する基調音とは、耳に入ってきてはいるのに、
特に意識されることもなく、当たり前のように受け入れられている音。
隣から聞こえる生活音はひとつまちがえれば騒音ですが、
聡と七緒には隣の音が心地よく響いています。
水を流す音、コーヒー豆を挽く音、すすり泣く声も鼻歌も。
それがなくなると寂しい。

展開としては、金城武主演の『ターンレフト ターンライト』(2002)を思い出しました。
これも同じアパートの隣同士に住む男女の話でした。
玄関から出て歩き出すときに、必ず右に進む男性と、必ず左に進む女性が、
アパートでは一度も顔を合わせることがなく、別の場所で恋に落ちます。
これも最後まで隣同士だとわからなくて、
『おと・な・り』よりも衝撃的な判明の仕方で、ほとんど反則技でした。
けれど、どちらもとってもハッピーなエンディング。

当分、鼻歌は、はっぴーえんどの『風をあつめて』で。

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『The Clash ザ・クラッシュ』

2009年11月17日 | 映画(さ行)
『The Clash ザ・クラッシュ』(原題:Stuck)
監督:スチュアート・ゴードン
出演:ミーナ・スヴァーリ,スティーヴン・レイ,
   ラッセル・ホーンズビー,ルキヤ・バーナード他

先月は生涯初の血尿にビビり、
今週はおそらく20年ぶりのめばちこに泣いています。
「めばちこ」って関西弁ですよね。
「ものもらい」よりもこの症状を端的に表しているような気がして、
なりたくはないけれど、気に入っている関西弁です。

さて、めばちこのせいで重たいまぶたもパカッと開く、
94分のコンパクトなサスペンス映画がこれ。
ホラーばりの映像は、『死霊のしたたり』(1985)の監督と聞いて納得。
日本では未公開、もうじき新作レンタル落ちの作品です。

失業中で家賃を滞納し、ついに大家に追い出された中年男性トム。
職業紹介所に予約を取るも、大家との言い争いで時間に遅れ、
4時間も待たされた挙げ句に、トムの名前は未登録だと言われる。
書類を用意し直して郵送するように指示され、失意のまま退出。

セントラルパークで夜を明かそうとするが、
ここも見回りにやってきた警官に追い出される。
ホームレスを泊めてくれる教会に向かって、
別のホームレスからもらったカートを押しながら、
深夜の町をとぼとぼと歩き始めるトム。

そこを車で通りかかったのが、介護士の女性ブランディ。
昼間に上司から昇進を示唆され、1杯飲んで上機嫌で帰宅する途中。
ドラッグディーラーである恋人と自宅で落ち合う予定で、
携帯に気を取られているうちに、
赤信号で横断していたトムをはねてしまう。

せっかく昇進の話をもらったところなのに、
こんな事故を起こしてはすべてが台無しになる。
警察にも病院にも行くことはできない。
そう考えたブランディ。

トムはフロントガラスを突き破り、体ごと車に刺さった状態。
空に向かって脚をばたつかせ、
血だらけで助けてくれと懇願する彼を乗せたまま、
ブランディは自宅へと車を走らせる。
ガレージへと車を入れると、対策を練り始めるのだが……。

これ、2001年にテキサス州で実際にあった話だそうです。
事実は小説よりも奇なり。恐ろしや。

冒頭、献身的に仕事に打ち込んでいたブランディが、
この事故を境に人が変わったようになり、
保身のために一度開いた悪意はとどまるところを知りません。
かなりのワルに見える恋人すらドン引きするようなことを
平気でやってのけようとします。

あ~、結末をバラしてしまいたい~。怖すぎる。

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