夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『フィッシュストーリー』

2009年09月28日 | 映画(は行)
『フィッシュストーリー』
監督:中村義洋
出演:伊藤淳史,高良健吾,多部未華子,濱田岳,森山未來,
   大森南朋,石丸謙二郎,渋川清彦,大川内利充,江口のりこ他

読んだことはないのに、
無意識のうちに映画化された作品を選んで観ている作家なら、
まずは重松清、そして、この伊坂幸太郎。
たぶん、原作も好きにちがいないと、映画を観ていて思います。

1975年、1982年、2009年、2012年と、
4つの時代を交差させながら物語が紡がれ、
最後にはそれがひとつになるという、
そもそも私の大好きなパターンです。

2012年、彗星が地球に激突するまであと5時間。
生き残れるわずかな可能性に賭け、
人びとは高いところを目指して逃げてしまった。
誰もいない町を電動車椅子で進んでいた中年男性は、
レコード店から音楽が流れていることに気づき、
すっくと立ち上がるとそのレコード店に足を踏み入れる。

レコード店には店長のほか、男性客が一人。
地球滅亡の危機にさらされているというのに、
彼らは昔のレコードをかけて盛り上がっている。
それは、1975年、時代を先取りしすぎたために
まったく売れなかったパンクバンド「逆鱗」の一曲だった。
そのタイトルが『フィッシュストーリー』。

物語の核になるのはこの1975年の出来事ですが、
この曲にまつわる噂が取り上げられる1982年もいいし、
一見どう繋がるかわからない2009年がこれまたいい。
2009年、修学旅行の途中に眠りこけてしまい、
北海道まで行く船に取り残されてしまった女子高生。
ところがこの船がシージャックに遭い、女子高生の目の前に現れたのは、
幼い頃から「正義の味方になれ」と父親に言われて育ったケーキ職人。
シージャック犯との対決シーンはなかなかの見物です。

映画や本で郷愁を憶える場合、
監督や著者が同年代であることが圧倒的に多いです。
本作の監督や原作者とは、私と同年代と言うと、
向こうに嫌がられるかもしれない微妙な年齢差がありますが、
岩崎宏美の『万華鏡』のコーラス部分に男性のうめき声が入っているとか、
当時の噂話も出てきたりして笑いました。
ところどころに出てくる台詞もなんだか可笑しい。
カップ焼きそばを見て「焼きそばは焼かないとマズイですよね」とか、
居酒屋で焼きうどんを見て「うどんは焼いたら変ですよね」とか。
即座に「うどん、焼いたらうめぇぞ!」なんて返事もあって、同感。

郷愁とともに、ピタリとはまる爽快感。
映画で感じるささやかな幸せ。

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『プライド』

2009年09月24日 | 映画(は行)
『プライド』
監督:金子修介
出演:ステファニー,満島ひかり,渡辺大,高島礼子,及川光博他

ジャケット写真にドン引きして、
レンタルを躊躇していましたが、好奇心が勝って。

小中学生の頃、どんな漫画雑誌を読んでいたかは、
同年代で話しているとわりと定期的に出るネタです。
私は『別冊マーガレット』と『りぼん』派でした。
その『りぼん』の代表作家として必ず挙がる一条ゆかり。
デビューから40年後の今も活躍中とはスゴイ。
本作は『コーラス』に連載中の同名漫画の実写版映画化。

オペラ歌手を目指す超金持ちの女子大生、史緒。
彼女の邸宅をハウスクリーニングのバイトで訪れたのは、
同じくオペラ歌手を目指す苦学生、萌。
自分とはかけ離れた暮らしぶりに唖然とする萌に、
一緒にオペラに行こうと、史緒は声をかける。
萌は夢見心地でコンサート会場へと向かうが、
そこでも史緒の華やかな交友関係に驚き、嫉妬する。

ところが、その数日後、史緒の父親が経営する会社が倒産。
予定していた史緒のイタリア留学もおじゃんに。
大学で相談したところ、オペラのコンクールに出場してはどうかとのこと。
優勝者にはイタリア留学の権利が与えられるというのだ。

史緒の実力からして優勝はまちがいないと思われていたが、
同コンクールにやはり参加していた萌から、
出番寸前に動揺を誘う事実を聞かされ、優勝は萌の手に。
ここから史緒と萌の壮絶な闘いが始まる。

思いっきり昼ドラの世界っぽい人間関係です。
萌が想いを寄せるのはレコード会社の副社長、神野。
神野は萌のしたたかさを高く評価し、史緒と張り合わせますが、
結婚相手として考えているのは、
たとえ文無しでも生まれついてのお嬢様、史緒。
一方、無一文同然となった史緒を助けるのは、
銀座の高級クラブのママの一人息子で、音楽家志望の蘭丸。
こんな四角関係だけでもドロドロなのに、
クラブの客の爺さんや意地の悪い秘書も登場して大変。
だけど、下品になる一歩手前でとどまっています。
そこまでするか的なものはなくて、不思議な安心感。

素晴らしいのは、史緒と萌の歌。
顔も見たくない仲なのに、ふたりが奏でるハーモニーは絶品。
音楽さえあれば、一瞬であろうとも心は通う。

そうそう、思わず唸った名台詞をひとつ。
高島礼子演じるクラブのママが、息子の蘭丸に言ったこと。
「女が二股をかけるときは、どうでもいいか、
どうにもならないかのどちらかのとき」。大納得。

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『イエスマン “YES”は人生のパスワード』

2009年09月17日 | 映画(あ行)
『イエスマン “YES”は人生のパスワード』(原題:Yes Man)
監督:ペイトン・リード
出演:ジム・キャリー,ゾーイ・デシャネル,ブラッドリー・クーパー,
   ジョン・マイケル・ヒギンズ,テレンス・スタンプ他

劇場ではあっというまに終映になってしまい、
観に行かなかったことを悔やんでいましたが、
DVDになってから観てみたら、レンタルで良かったという気も。
家で観るなら十分楽しめます。

銀行の融資担当を務めるバツイチの中年男、カール。
離婚以来まるで覇気がなく、何事にも後ろ向き。
友人からの誘いはすべて断り、
仕事ではローンの申込者の話をろくに聞かず、
即座に申請書に却下のスタンプを押す毎日。
街頭で配られているビラを受け取ることすら拒否し、
どんなときでも「ノー」としか言わない。
親友の婚約パーティーまですっぽかしてしまった彼は、
友人たちから愛想を尽かされる。

そんなある日、友人のひとりが訪ねてくる。
自己啓発セミナーに無理やり連れて行かれたカールは、
新興宗教じみた雰囲気に逃げ出そうとするが、
主宰者であるテレンスに立ちはだかられ、
意味のある人生を送るためのルールはただひとつ、
どんなことにも「イエス」と答えるようにと言われる。

つきあってはいられないと思うのだが、
セミナーからの帰り、車に乗せてくれと頼んできたホームレスに
なんとなく「イエス」と答えてしまう。
送り先の公園に着くと、ホームレスは金をくれと言い、それにも「イエス」。
しかし、その帰りにガス欠になり、ガソリンスタンドまで歩くはめに。
どんなことにも「イエス」だなんて、災いを招くだけだと思った矢先、
単車に乗った女性で若くて可愛いアリソンが、
カールを送って行こうかと声をかけてきて……。

「イエス」ということを始めたら、まずは素敵な女性と恋仲に。
仕事で「承認」のスタンプを連発したら、
それが思いの外いい方向へ進み、顧客からは感謝されて昇進まで。
こんなに上手く行くわけはないですが、
何でもどうやって断るかから考えるより、
受け入れてみることから考えるのはいいことなのかもしれません。

ところで、本作にもレッドブルが登場します。
レッドブルについてはブログ内検索でどうぞ。
本作では、「テンションが高いわね」と言われたカールが
「レッドブルを飲んだからね」と答えるシーンが。
実際にレッドブルを飲んでから撮影に臨んだら、
異様なハイテンションになったそうな。
確かに、レッドブルは夜更かし時の私の友。

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『チョコレート・ファイター』

2009年09月14日 | 映画(た行)
『チョコレート・ファイター』(英題:Chocolate)
監督:プラッチャヤー・ピンゲーオ
出演:ジージャー・ヤーニン,阿部寛,ポンパット・ワチラバンジョン,
   アマラー・シリポン,タポン・ポップワンディー他

『マッハ!!!!!!!!』(2003)の監督によるタイの作品。
ブルース・リーにありったけの敬意を払っていることが
ひしひしと感じられるスーパーアクションにシビれました。

タイに渡っていた日本の大物ヤクザ、マサシは、
現地のマフィアのボスであるナンバー8の情婦、ジンと恋に落ちる。
やがて、度重なる密会がばれて、ナンバー8の逆鱗に触れる。
マサシの身を案じるジンは、マサシに帰国を促し、
自分はこの世界からすっぱり足を洗うことに。

実はマサシとの子どもを身ごもっていたジンは、
ひとりで出産して育てていた。
貧しいながらも娘とふたりの生活に喜びを感じ、
数年経ってから、マサシにもそのことを綴った手紙を送る。

娘のゼンは知的障害を抱えていたが、その身体能力の高さは超人的で、
目にしたアクションを一瞬にして体得する能力を備えていた。
体は大きいがいじめられっこのムンといつしか仲良くなり、
ゼンの能力を生かして、ふたりは小銭を稼ぎ始める。

ある日、ジンが大病を患っていることがわかる。
高額な薬代をどうやって工面するかをゼンとムンが悩んでいたとき、
昔、ジンがお金を貸していた人物のリストを見つける。
ゼンとムンは借金の回収に乗り出すのだが……。

ゼン役のジージャー・ヤーニンがめちゃキュート。
あの顔で、11歳からテコンドーを始め、12歳で黒帯、
14歳でインストラクターになったというのだから恐れ入ります。
そんな彼女が、本作に出演するために、
4年間みっちりアクションを叩き込まれたのだそうな。
同監督のウリは、常にノー・ワイヤー、ノー・CG、ノー・スタントですから、
本作も当然そう。マジでこんなことができるんかいなとビビります。

笑えるシーンも多々あって、
こんな楽しいアクション映画はひさしぶり。
特に精肉市場で繰り広げられるゼンと借金主らの対決シーンは笑いっぱなし。
全然頼りにならないけど、ゼンを守ろうと必死のムンも良し、
鍛え抜いた体を披露した阿部ちゃんの演技も抑えめでイケてます。
マフィアの女たちがみんなオカマなのもご愛嬌。

知的障害を持つスーパーアクション・ヒロインとは、
日本では及び腰になりそうで宣伝しづらいと思うんですけど、オススメ。
エンドロールもお見逃しなく。

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『誰も守ってくれない』

2009年09月10日 | 映画(た行)
『誰も守ってくれない』
監督:君塚良一
出演:佐藤浩市,志田未来,松田龍平,木村佳乃,
   佐々木蔵之介,石田ゆり子,柳葉敏郎他

こちらで告白していますが、こっそり『踊る大捜査線』フリークでした。
その『踊る大捜査線』シリーズの君塚良一と亀山千広が関われば、
ミーハーの入った社会派ドラマになることは間違いなし。

いつもと変わらない日を送っていた15歳の沙織は、
教師からただちに帰宅するようにと言われる。
彼女の兄が小学生姉妹殺人事件の容疑者として逮捕されたのだ。
自宅前にはおびただしい報道陣と野次馬。

加害者家族の保護のため、両親と沙織は引き離されることに。
刑事の勝浦は、避難先のホテルへ彼女を連れて行くが、
どこで聞きつけたのか、そこにもマスコミが。
仕方なく、勝浦は自分の家に沙織を連れ帰り、
知人で精神科医の令子に沙織のケアを頼む。

やがて、勝浦の家にもマスコミが押しかける。
勝浦と沙織は、ある海辺のペンションに車で向かうのだが……。

実際にこんなことがなされるのかと、目からウロコ。
たとえば、加害者である兄は未成年で、名前は公表されませんが、
誰かが調べてどこかで暴露されるのも時間の問題。
で、加害者の家族であることを隠すため、
両親はただちに離婚し、即座に妻の籍に入り直します。
離婚届も婚姻届もその場に用意されていて、躊躇している間はなし。

勝浦には沙織と同じ年頃の娘がいて、その娘は両親の不仲を心配しています。
しかし、娘が両親を想って提案した家族旅行も、この事件のせいでボツに。
また、勝浦には、ある事件の犯人を泳がせたがために、
幼い子どもを見殺しにしてしまったという過去も。
その事件の被害者家族がペンションを経営しているという設定。

逃げても隠れても、どこまでも追いかけてくるマスコミと、
それ以上に怖いインターネットの世界。
加害者の家族が受ける仕打ちは酷いものですが、
被害者の家族にとっては憎い犯人の家族でしかありません。
落としどころが難しかったでしょうが、丸くまとめすぎると偽善的。
この終わらせ方はちょうどいい案配だと思います。

余談ですが、今まであまり格好良いとは思っていなかった松田龍平。
佐藤浩市演じる勝浦の部下役で出演していますが、この彼は○。

今年の初めに本作公開前の特別番組として
『誰も守れない』がフジテレビで放映されたそうですが、
全然知らなくて観逃しました。くっすん。

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