夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ダイアナの選択』

2009年07月30日 | 映画(た行)
『ダイアナの選択』(原題:The Life Before Her Eyes)
監督:ヴァディム・パールマン
出演:ユマ・サーマン,エヴァン・レイチェル・ウッド,
   エヴァ・アムリ,オスカー・アイザック他

レンタル最新作。
ウクライナ出身の監督によるアメリカの作品です。
大どんでん返しのラストは非常にいい意味で衝撃的。
オチは今年観た中でNo.1かもしれません。
知らない監督だと思っていましたが、『砂と霧の家』(2003)の人でした。
この素晴らしい余韻も納得。

郊外の町に暮らす17歳の高校生、ダイアナ。
教師には常に反抗的な態度を取り、タバコもところかまわず吸う。
母親は学校からしょっちゅう呼び出しを受けて怒りっぱなし。
クラスメートたちも彼女とは距離を置いている。

そんなダイアナがただひとり、心を許せる相手が
真面目で内気なモーリー。
一見対照的なふたりなのに、なんとなくウマが合い、
もちろん喧嘩もするが、どちらが優位に立つでもなく、
お互いのことを信じきっている。

ある日の授業開始直後、遅刻であることをわかっていながら
ダイアナとモーリーはトイレへ。
数分後、廊下から銃声と悲鳴が聞こえる。
そういえば、前日、同じクラスのマイケルが
生徒も教師も皆殺しにしてやると言っていたことを思い出すダイアナ。

やがて、トイレのドアが開き、銃を構えたマイケルが。
彼はふたりにこう問いかける。
「おまえらのうち、どちらかを殺す。どっちにする?」。
「殺さないで」と懇願するダイアナ。
涙ながらに「どうしても撃つなら私を撃って」と言うモーリー。
そして銃声が響く。

15年後。
あの銃乱射事件は、町の悲劇として語り継がれている。
ダイアナは不良少女だった昔とは打って変わり、
美術の教鞭を執り、夫と娘に恵まれて、幸せな生活を送っている。
しかし、ことある毎に呼び戻される忌まわしい記憶。
果たして自分の選択はあれで正しかったのか。

17歳と32歳のダイアナが交互に描かれます。
両者を演じる女優の容姿が異なりすぎるのですが、
それがどうでもよくなってしまうほど引き込まれる力強さ。

原題は“The Life Before Her Eyes”。
ラストで初めてこの原題の意味がわかりました。
先に知ってしまうと面白みがまったくなくなりますので、
ご覧になる方は、必ず何も知らずにどうぞ。

たびたび登場する「良心」という言葉。
これが本作のテーマです。
ハッピーエンドとはいえないのに、
ラストでは救われた気分になります。凄い。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『コレラの時代の愛』

2009年07月27日 | 映画(か行)
『コレラの時代の愛』(原題:Love in the Time of Cholera)
監督:マイク・ニューウェル
出演:ハビエル・バルデム,ジョヴァンナ・メッツォジョルノ,ベンジャミン・ブラット他

コロンビアのノーベル文学賞受賞作家、
ガブリエル・ガルシア=マルケスの同名小説を映画化。
監督は『フォー・ウェディング』(1994)で一気に知名度を上げ、
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005)のメガホンも取った人。

キャッチコピーは、
「51年9ヶ月と4日、君に飢えて眠り、君を求めて目覚める」。
初恋の女性と結ばれる日を50年以上も待ち続けた男性が主人公です。

1897年のコロンビア。
電報配達人の青年フロレンティーノは、
富裕なラバ商人の屋敷へ立ち寄ったさい、娘のフェルミーナに一目惚れ。
朝までかかって一通の恋文を書き上げる。
その恋文を渡そうと、来る日も来る日も屋敷へ通ううち、
彼女の心を掴むことに成功する。

ある日、バルコニー越しに彼からプロポーズ。
身分違いの恋を父親が許すはずもなく、彼女は迷うが、
「断れば一生後悔する」との叔母の言葉に、結婚を承諾。
それを知った父親は、案の定、激怒。
ふたりを引き離そうと、強引に娘を町から連れ出す。

数年が過ぎ、フェルミーナが町へ戻ってくる。
市場でフロレンティーノが声をかけた瞬間、
「あなたとのことは幻想だった」と言い放つ彼女。
やがて、コレラ撲滅に携わる著名な医師に見初められた彼女は結婚。
立ち直れないフロレンティーノは町を出る。

彼女と結ばれる日を迎えられるまで、
純潔を守り通す決意をしていたフロレンティーノは、
洋上で女性客の部屋に引きずり込まれてしまう。
その日から、寝た女性をすべて記すようになるのだが……。

その数、622人。
先日、人気漫画家との結婚を発表した叶井俊太郎氏が
女性経験600人以上と公言していますが、
200人を超えた頃から数えるのをやめたとのこと。
フロレンティーノはやめることなく、全部メモっています。
そのメモが実に淡々としていて面白い。

最初は不気味な勘違い男のイメージだったのに、
年を取り、社会的地位も築き上げると、
そんなに怖くも見えなくなるのが不思議。
自分と彼女と彼女の夫。みんな似たような年齢なのに、
彼女の夫が一番先に死ぬと信じているところはやはり怖いか。
だけど、彼の恋心は極めて純粋で、怖いだけとは言えません。

51年9カ月と4日待ち続け、
53年7カ月と11日目に結ばれる。
どれだけ寝ても、心は純潔のまま。
共感できますか?

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

そうだ、甲子園に行こう。

2009年07月23日 | 映画(番外編:映画とスポーツ)
なかば意地で購入し続けている甲子園の年間予約席。
昨日は前半戦最後の試合、ほとんど何の見どころもないまま終了。
帰宅したら、虎ファンのはずの近所のおっちゃんの家から歓声が。
どうやらおっちゃんは現実を直視できず、
延長戦で西武に勝ったオリックスに逃避していた模様です。

他球団に心のよりどころを求めるのは私にはムリなので、
こんな日は高校野球に行っとこ。

これまで書くタイミングを逸していましたが、
『ひゃくはち』(2008)は、今年前半に観た映画の中でも
上位3本に入るほど、心をがっちり掴まれた作品です。
キャッチコピーは「青春って、甲子園って、こんなに泣けたっけ」。

雅人とノブは、甲子園の常連、京浜高校野球部の補欠部員。
2人そろってベンチ入りしようと誓い合い、猛練習に耐える。
しかし、彼らに与えられる役回りといえば、
他校の偵察隊やレギュラーの世話係ばかり。

彼らにとって最後の年がやって来る。
ベンチ入りの当落線上ギリギリの2人が、
夏の甲子園では共に夢を果たせるかと思いきや、大物新人が入部。
ベンチ入りの枠は残すところ1つとなり、
あろうことか雅人とノブが最大のライバルとなってしまう。

……というストーリーです。

補欠部員にスポットを当てた、今までありそうでなかった映画。
タイトルの「ひゃくはち」は煩悩の数。
酒にタバコに女子大生との合コンなどなど、
いくら甲子園を目指す名門校の生徒といえども、
男子高校生の頭から煩悩が消えることはありません。
それが可笑しくもあり、切なくもあり、
いつしか彼らと毎日を過ごしている気分にさせられます。

純粋な野球少年らしからぬ彼らの姿を見て絶句する新米女性記者や、
そんな彼女を甘いとせせら笑う先輩記者。
プロ野球のスカウトと癒着しまくりの野球部監督。
綺麗事ばかりじゃない世界もきっちり描かれています。

ネタバレですが、
レギュラー選手が故障して、ベンチ入りできることになったとき、
喜んでいいかどうかわからない友だちに向かって、
「不謹慎だけど、喜べ!」という台詞は、
それこそ不謹慎ですけれど、心に響きました。

ベンチ入りしても、試合に出られることはきっとない。
だけど、一瞬でも甲子園の土を踏めることがあるならと、
雅人とノブが懸命にあることを練習するシーンは、
そのタネ明かしがされたとき、もうボロ泣き。

野球を愛するすべての人に。
あらためて、野球が好きになります。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『キューティ・バニー』

2009年07月21日 | 映画(か行)
『キューティ・バニー』(原題:The House Bunny)
監督:フレッド・ウルフ
出演:アンナ・ファリス,コリン・ハンクス,エマ・ストーン,
   カット・デニングス,キャサリン・マクフィー,ルーマー・ウィリス他

これも日本では未公開。
超B級お色気っぽいDVD用の邦題ですが、意外な見どころが。

1つめは、『PLAYBOY』誌の創刊者であるヒュー・ヘフナー氏が
本人役で登場しているということ。今年83歳。
2つめは、トム・ハンクスの息子と、
ブルース・ウィリス&デミ・ムーア元夫妻の娘(父親似)が、
共に脇役で出演しているということ。
主役を張るにはルックス的にちと厳しい。

孤児のシェリーは、里親に巡りあうことのないまま育つ。
地味だった子ども時代から突然ブレイクスルーを果たし、
『PLAYBOY』のヌードモデルたち(=プレイメイト)が暮らすお屋敷、
すなわちプレイボーイ・マンションで、ゴージャスな毎日を送っている。

シェリーの27歳の誕生パーティーが盛大におこなわれた翌日、
朝食に添えられていたのはヘフナー氏からの手紙。
27歳は年を取りすぎなのか、即刻屋敷を出て行くようにと書かれていた。

傷心のシェリーには行く当てがない。
仕方なく車中でひと晩過ごそうとするが、
警官から売春婦だと間違われ、その日は留置所送りに。

一夜明け、シェリーが辿り着いたのは、
まるでプレイボーイ・マンションの縮小版と思われる瀟洒な建物。
それは大学の人気女子寮“ミュー”で、シェリーは入寮を希望するが、
学生でなければ無理だとあっさり断られる。
ならば寮母にしてくれと言い募ったところ、
向かいの別の寮なら雇ってくれるのではと言われる。

向かいの寮“ゼータ”に行ってみれば、
そこはダサダサの女子学生だらけの不人気寮。
入寮者を増やせなければ閉寮される予定で……。

最初はシェリーに反感を持つゼータの学生たち。
だけど、外見を磨けばたちまち人気者になれるんだと知り、
変身する様子はとても楽しい。
また、男のことなら何でも聞け!状態だったシェリーが、
色気が通用しない相手もいると知り、
逆指南を受ける姿は可愛いです。

そして、外見さえよければいいってものじゃない、
自分らしさを大切にというメッセージも含まれているのが、
優等生っぽいけれどいいところ。

余談ですが、ヘフナー氏は、現在でもプレイメイトたちと
プレイボーイ・マンションに住んでいるのですね。
どんなエロ爺かと思いきや、ちっともギラギラしていません。さすが。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ベイビーママ』

2009年07月17日 | 映画(は行)
『ベイビーママ』(原題:Baby Mama)
監督:マイケル・マッカラーズ
出演:ティナ・フェイ,エイミー・ポーラー,グレッグ・キニア,
   ダックス・シェパード,ロマニー・マルコ,モーラ・ティアニー他

日本では未公開のレンタル新作。

「ベイビーママ」とは代理母のこと。
代理出産をめぐるドタバタ・コメディ。
妊娠をテーマにした作品は、ビミョーな台詞が飛び交って、
げんなりさせられてしまうことも多いですが、これはイイかも。

主演のティナ・フェイは、
アメリカでは人気のコメディ女優兼脚本家なのだそうな。
見るからにコメディ女優というふうではなく、何でもこなせそう。
キュートな才女とお見受けしました。

オーガニック食品会社で部長を務めるケイト。
独身のままバリバリ仕事をこなしてきたが、
37歳となった今、子どもがほしくてたまらない。
しかし、いきなり子どもがほしいと熱弁を振るう彼女に見合い相手はドン引き。

結婚相手を探すのに断念したケイトは精子バンクへ。
人工授精を試みるが、ちっとも妊娠しない。
診察の結果、子宮の形に問題があり、
彼女が妊娠する確率は100万分の1であることが判明。

それでも子どもをあきらめきれず、代理出産を依頼することに決める。
厳しい審査を通過した女性にのみ代理母の資格が与えられるので、
不安は抱かなくて大丈夫だと斡旋所の女所長は語るが、
紹介された代理母アンジーはとんでもなくがさつな女性で……。

内縁の夫と喧嘩してケイトのマンションに転がり込んだアンジーは、
TVゲームで飛ぶわ跳ねるわ、ジャンクフードを食べまくり、
ガムを噛んではテーブルの下に貼りつけるわで、ケイトは唖然。
外見も性格も正反対の2人のやりとりは痛快です。

ケイトとロマンスを繰り広げるジュース店のオーナーに
三枚目役の印象が強いグレッグ・キニア。今回は堂々のイケメンぶり。
斡旋所の女社長にシガニー・ウィーバー、
ケイトの上司にスティーヴ・マーティンと、
大御所が変な脇役で出演しているのも見どころ。

ケイトの姉が、自分の子どもの手に付いた茶色いものを
「それはチョコレート?ウンチ?」と尋ねてペロリと舐めるシーン。
「もしウンチだったらどうするの?」と驚くケイトに、
「それも楽しい」と笑う顔が素敵でした。

ついでに。
レッドブルを飲むアンジーにケイトが呆れるシーンも登場します。
これは、眠気を覚ますときの私の愛飲品。めっちゃ効く。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする