夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

お坊さんの足もと

2009年04月28日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
体調不良につき、執筆意欲がイマイチ湧かないので小ネタです。

先日、同じところに20年勤務していて初めて、
ホンモノの非常警報が鳴りました。
どうせまた点検だろうと慌てもせずにいたら、
なんとなく廊下がざわざわ。
「たぶん誤報だと思うけど、念のため外に出てください」とのおふれが。

結局、誤報だったのですが、
館内の人が全員集合すると、結構な数ですね。
うお~、こんなに人がおったんや!と驚きました。
いちばんエライ人のご挨拶があるまで待つこと数十分。
ホンマの火事だったら、こんなに時間がかかったら大変です。
いい避難訓練にはなりました。

こんな中、ウケたこと、ひとつ。
たまたま来館されていたチベット仏教のお坊さんが2名、
やはりみんなと一緒に避難されていました。
『ザ・カップ 夢のアンテナ』(1999)や
『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(1997)に出てくる、
ラマ僧そのまんまのいでたち。
取り乱さず、手を前で合わせたまま。いや~、凛々しかったです。

なかなかグローバル?インターナショナル?な職場やな、
避難訓練(訓練ちゃうけど)でラマ僧とお会いできるなんて。
そう思っていましたが、ふと彼らの足もとを見ると。

めっちゃ、ナイキのスニーカーやん。
裸足ちゃうんかいな。
すみません、笑いました。

その後もたびたびエレベーターの中で彼らと遭遇しますが、
澄ました顔で会釈してくださるときも、
思わず足もとに目が行ってしまうのでした。

ナイキがお気に入りのようです。

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『スラムドッグ$ミリオネア』

2009年04月24日 | 映画(さ行)
『スラムドッグ$ミリオネア』(原題:Slumdog Millionaire)
監督:ダニー・ボイル
出演:デヴ・パテル,マドゥル・ミッタル,フリーダ・ピント,
   アニル・カプール,イルファン・カーン他

アカデミー賞では、本命として2作品が噂されていると、
作品賞と監督賞をその2作品で分け合う場合がよくあるのですが、
本作はそのどちらも含む8部門を見事に受賞。
社会派ドラマかと思いきや、ラストまで観ればびっくりの純愛もの。
そして、とびきりのファンタジー。降参です。

日本ではみのもんたの司会でお馴染みの“クイズ$ミリオネア”。
まったく知らないという人は、ルールを少し知ってからどうぞ。

インド、ムンバイ(旧ボンベイ)のスラム街で育ったジャマールは、
国民的人気番組の“クイズ$ミリオネア”に出演し、
問題を次々とクリアする。
ところが、残すは賞金2000万ルピーの問題のみとなったところで、
不正の疑いがあるとして逮捕されてしまう。

まともな教育すら受けたことのない青年が
なぜあんな難問に答えられるのか。
不正の手口を吐くようにと警察で拷問を受けるが、
ジャマールはただ「答えを知っていたから」と言うだけ。

興味を持った警部が拷問を中止すると、
ジャマールは自分が答えを知り得た理由を話し始めるのだが……。

物語は、警察署内でのジャマールの話を再現したシーンと、
“クイズ$ミリオネア”への出場シーンを交差させながら進みます。

難問の答えは、すべて彼が生きてきた中で知ったことでした。
たとえば、ラーマ神が右手に持っているのは何か。
ヒンドゥー教徒の襲撃を受けた経験から、彼はその答えを知ります。
アメリカの100ドル紙幣には誰の肖像が描かれているか。
リボルバーの発明者は誰か。
どれも、過酷な思い出により、目と心に焼きつけられた「答え」。

当てれば何千万円という問題が
そんなに都合よく自分の人生に合わせて出題されるわけもなく、
そこは優しいファンタジー。
だけど、スラム街の様子は凄惨で、
同情を買うためなら子どもの目をも潰すような世界。
ここに、ダニー・ボイル監督お得意のスピード感が加わって逸品に。

お金なんてなくても幸せだなんて、
ある程度、お金を持っている人が言うことだと思っていました。
今もそう思っていますけれど、
本作を観ると、純粋な想いがあってこそ報われる。そんな気がしました。

ジャマールがこだわり続けたのは、初恋の人。
二度と逢えないと思っていても、こだわり続ければいつか叶う。

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『マルタのやさしい刺繍』

2009年04月21日 | 映画(ま行)
『マルタのやさしい刺繍』(原題:Die Herbstzeitlosen)
監督:ベティナ・オベルリ
出演:シュテファニー・グラーザー,ハイジ・マリア・グレスナー,
   アンネマリー・デューリンガー,モニカ・グブザー他

出演者の中に「ハイジ」なんて名前の女優さんがいるのが
いかにもスイスの作品。
チーズで有名なエメンタール地方のお話です。

トループ村に住む80歳のマルタは、
一緒に雑貨店を営んでいた夫を半年前に亡くして以来、
すべての気力を失って、家にこもりっきり。

友人たちはマルタのことが心配でならない。
ことある毎に彼女を誘い出そうとするが、
マルタはさっぱり乗って来ない。

牧師である息子は、外面が良いだけの男。
義母の店をどうするつもりなのかと妻に聞かれ、
とっとと店を片付けるようにとマルタに告げに行く。

店の整理を始めたマルタは、
戸棚の奥底にしまい込んでいた箱を取り出す。
箱の中には美しいランジェリーの上下セットが。
それは、かつて洋裁の勉強をしていたマルタが、
いつかパリでランジェリーショップを開くことを夢みて、
自分でデザインしたものだった。

マルタを慕うリージは、そのランジェリーを見て目を輝かせる。
どうしてこんな技術を持っていることを
今まで黙っていたのかと尋ねるリージに、
「言わないほうがいいと夫に言われたから」と答えるマルタ。

この店をランジェリーショップにしようと意気込むリージに背中を押され、
マルタは昔の勘を取り戻しながら、
次々とランジェリーの製作を始めるのだが……。

保守的な村では、マルタの夫が生前に懸念していたとおり、
派手な下着専門店を開店するなんてもってのほか。
ハレンチ極まりないと嘲笑する男性陣。
そんな男性陣の奥様方は、本当は興味津々なのに、
噂になるのを怖れて店に近寄れません。

村の有力者から妨害を受け、息子にも激しく非難されて、
マルタは開店をあきらめかけますが、
息子の不倫現場を目撃し、
自分のことを棚に上げて恥さらしだと罵る息子なんぞに
夢を壊されてたまるものかと奮起します。

最初は遠巻きに見ていた友人たちも、
段々とマルタから勇気をもらったかのように、
言われっぱなしじゃない人生へと踏み出します。
車の免許取得、インターネット。
ちっちゃなことだったとしても、そこから開ける人生が。
何事も、始めるのに遅すぎることはなし。

ラストはとっても小気味よく。
いまどきの女の子のフォローも鮮やかに。
ナイス、おばあちゃん。

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『梅田優子の告白』

2009年04月16日 | 映画(あ行)
『梅田優子の告白』
監督:深井朝子
出演:焼広怜美,本多菊次朗,山口オン,野口かおる,三島ゆたか,
   川村りか,加藤由子,吉田晋一,川田義宗他

タイトルに惹かれて借りた50分の作品。

下北沢にある短編映画専門の異色映画館、トリウッドが、
映画学科や放送学科などを持つ専門学校、東京ビジュアルアーツとともに、
2006年に立ち上げた「学生による商業映画製作プロジェクト」。
過去に学生による2本の作品が製作・上映され、
3本目となったのが本作。監督はまだ20歳です。

梅田優子。
昼は牛丼屋、夜はセクシーキャバクラで働く。
寝た男の名前と評価を手帳に書きとめ、
「男たちを積み重ねて行くこと」がひそかな楽しみ。

そんな優子なのに、
牛丼屋の気になる常連客、山田啓介に対してだけは、
行動に出ることができない。

セクキャバの同僚で親友の真奈美と行きつけのバーで飲んでいると、
後方のテーブル席に女連れの啓介が。
恋する気持ちを真奈美に打ち明けると、
啓介を品定めするように眺めた真奈美は、
「あんな上等なスーツを着ている男が
私たちのような女を相手にするわけがない」とピシャリ。

しかし、募る想いをどうしても抑えきれない優子は、
牛丼屋で自分なりの意思表示を始める。

好きな人の前でだけは素直になれないどころか、
変な人になってしまう優子が憎めません。
紅生姜を山盛りサービスしてしまったり、
色っぽく見えるようにスプーンを舐め回してみたり。
優子に怒りを燃やすパートのおばちゃんのほうが、
好きな人の前で素直な素振りを見せるのが面白いです。
ただし、その素振りは普通の男性ならドン引き。
やはり自分の年齢は考えんと。(^^;

とってもいいな~と思ったのは、
優子がある問いかけを牛丼屋のハゲた店長にしたところ、
店長の答えを聞いて、優子がニッコリするシーン。
店長の答えは「そ、そうなん?」と言いたくなるものでしたが、
優子がそんな店長をカッコイイと評するのを聞いて、
こっちまでニッコリしてしまいました。

実際にセクキャバ勤務経験のある監督が描く店内の様子や、
セクキャバのお局様との笑える修羅場も興味深いもの。
体を張って生きる女たちがそこにはいます。

百年の恋も冷めるとはこのことというオチ。
そして、それでも前向きな優子を応援したくなりました。
若いときはこうでなくちゃ。
年を取ってもこんなところは持ち続けなくちゃ。
痛い目に遭うことをおそれずに。

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『ブロック・パーティー』

2009年04月13日 | 映画(は行)
『ブロック・パーティー』(原題:Block Party)
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:デイヴ・シャペル,ローリン・ヒル,カニエ・ウェスト,
   エリカ・バドゥ,モス・デフ,ジル・スコット他

『僕らのミライへ逆回転』(2008)が楽しかったので、
同監督の2006年のドキュメンタリーを観ました。

2004年9月。
デイヴ・シャペルが企画したブルックリンの路上無料ライヴと、
当日までの様子を収めています。
失礼ながら、私は彼の名前を初めて聞いたのですが、
アメリカではとても人気のあるコメディアンだそうです。

タイトルとなっている「ブロック・パーティー」とは、
ひとつの街区に住む住民たちによる地域のお祭りのこと。
野外でおこなわれることが多く、
必要な電源をその辺の街灯から勝手に頂戴する場合も、ままあるようです。
そんなときは、警察も大目に見てくれるとか。
特に、治安の良くない街区だと、
ブロック・パーティーが開かれている日はみんながそこに集まって、
よそでの悪さが減るからという理由で。

デイヴ発案のこのブロック・パーティーは、
当日までNYのどこで開催されるか内緒。
パーティーの数週間前、デイヴは生まれ育った町に立ち寄り、
お世話になったタバコ屋のおばちゃんや、
音楽好きのやんちゃな青年たちにチケットを配ります。
当日のバスと宿泊場所も彼が用意。
若者の音楽になんてついて行けるかしらと言いながら、
NY訪問を心待ちにするタバコ屋のおばちゃんの顔が可愛らしい。

いわゆるミステリーツアーと同じ、当日の会場行きのバス乗り場には、
口コミでパーティーの開催を知り、チケットをゲットした人の大行列。
人種も年齢もさまざまでも、誰もがワクワクの表情。

ヒップホップはあまり好んで聴きたいジャンルではないけれど、
本作を観てイメージは変わりました。
デイヴの趣旨に賛同した参加ミュージシャンたちの音楽は、
社会への不満を題材にした辛辣な歌詞が多くても、
文句を言っているだけには終わりません。

出演者の1人であるワイクリフ・ジョンが、
地元大学のマーチングバンドのメンバーたちに向かって、
「自分の境遇が良くないことを白人のせいにするな。白人は悪くない。
勉強しろ。本を読め」と言っていたシーンはくり返し観ました。
ハイチ出身で、人種と言語の壁に悩まされ、
勉強して、勉強して、人気ラッパーとなった彼だからこその言葉です。

音楽は生きる力の源。どんなジャンルであっても。

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