夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

低予算映画にのみ出現するもの(小ネタ)

2008年03月28日 | 映画(番外編:映画と邦題・字幕・台詞)
その映画にどれぐらいお金が注ぎ込まれたか、
判断するひとつの目安として、
エンドロールの長さに注目しているとこちらに書いたことがあります。

エンドロールまで至らずとも、
低予算映画の醸し出す雰囲気というのはそこここに漂っているものですが、
そんな「のどかな苦節みたいな雰囲気」とは別に、
こりゃ低予算だとガクッと来る瞬間があります。

字幕なんですけど。
低予算映画に限って、「借」と「貸」の誤用が出現するんです。
普通に変換したら、「貸してね」とか「借りるよ」になるんだから、
「借してね」や「貸りるよ」なんて、あり得ん。
漢字と平仮名をわざわざ別に入れないと、
こんな字幕は作れんやろと思うのですが、なんで?
さらに、低予算がゆえに誰もチェックしないから
そのまま世に送り出されてしまうっちゅうことなんでしょか。

もうひとつは「ら抜き」。
これも、低予算映画でないとお目にかかりません。

日本語の乱れがどうとかなんて言う気は全然ないですし、
そんなこと言えるような日本語も使ってません。
ほれ、実際、私の文章は「使ってません」なんて「い抜き」だらけ。
「い抜き」はどちらかと言えば好きなんですけど、
「ら抜き」だけはどうも気色悪い。

映画の話から外れますが、
テレビ番組でインタビューを受けた側が「ら抜き」で話しているとき、
テロップではちゃんと「ら」が入っているとホッとします。
大好きな歌でも、「ら抜き」の歌詞があると、
カラオケでその部分を歌うときにちょっと抵抗があったりして。
今井美樹の『PIECE OF MY WISH』の「どうしてもっと自分に素直に生きれないの」、
河島英五の『生きてりゃいいさ』の「人を信じれず眠れない夜にも」。
お願い、ら~入れて~。

食事するときや買い物をするときも、
「食べれます」とか「見れます」という表記を見ると、
この店、大丈夫かいなと一抹の不安を抱きます。

と言いつつ、「来る」だけは、
「来られる?」が落ち着かなくて、
「来れる?」と言ってしまうのでした。
勝手です、ホント。

あ、話がズレ過ぎ。
「ら抜き」は世の中の流れとして
いずれはごく普通のことになってしまうのかもしれないけれど、
「借す」と「貸りる」は勘弁して。
映画を観る子どもたちが間違って覚えないように、
正しく使った字幕を作ってほしいなぁ。
ま、低予算の子ども向け映画なんて、あんまり存在しませんわね。

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『机のなかみ』

2008年03月25日 | 映画(た行)
『机のなかみ』
監督:吉田恵輔
出演:あべこうじ,鈴木美生,坂本爽,清浦夏実,
   踊子あり,内藤トモヤ他

TSUTAYA DISCAS、月額1,974円のプランでは
レンタル枚数は上限8枚で全然足らん。
スポットレンタル(月額とは別に支払ってレンタル)、しまくり中。
レンタル枚数が多ければ多いほど割引率が高くなり、
5枚以上なら13泊14日というのは嬉しい限り。

昨春公開された拾いもの。
吉本興業のピン芸人とミス週刊少年マガジンが主演です。

同じ時間に、複数の登場人物の身に何が起こっていたか、
種明かしのように描かれるのは、
『運命じゃない人』(2004)と同じ手法ですが、
この手法で撮られた作品にハズレなしかも。今のところ。

フリーターの馬場は、高校3年生の望の家庭教師となる。
母親のいない望は、父親から溺愛されており、
その父親から「くれぐれも変なことにはならないように」と釘を刺されるが、
望のあまりの可憐さに、馬場はアホほど妄想を膨らませる。

望の成績では志望大学の受験は無謀かと思われたが、
馬場が家庭教師を始めてからというもの、成績はうなぎのぼり。
しかし、受験結果は不合格。
打ちひしがれる望をベッドに押し倒し、服を脱がせる馬場。
と、その瞬間、父親がドアを開けて……。

ここまでが約45分。そして、ここから話は時間を遡って、
同じ時間に望がどうしていたか、何が起こっていたかが描かれます。

この最初の45分はひたすら苦痛。
何がって、あべこうじ演じる馬場のうざいこと。
勘違い野郎もいいとこで、最後まで観る自信がなかったほど。
ところが、そこまでうざくする必然性があったんですね。
後半を観て大納得。
この前半の腹立たしさがあったからこその面白さ。

後半では、望の学校生活を中心に、
彼女の行動や気持ちが明らかにされていきます。
前半の馬場と一緒だったシーンを思い返してみれば、
あのときの彼女の表情はそういう意味だったのかとか、
あのときはこんなことがあったのかなど、
なるほどとうなずかされることばかり。

望の過ごした時間がすべて明らかにされると、
父親がドアを開ける、問題のシーンから再開。
あれだけうざかった時間はどこへやら、
最後は思わずもらい泣きしてしまうぐらい、
切ないラブストーリーと化すのでした。

『運命じゃない人』が座布団3枚なら、
これは1枚半、差し上げたい。

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『ウェイトレス おいしい人生のつくりかた』

2008年03月21日 | 映画(あ行)
『ウェイトレス おいしい人生のつくりかた』(原題:Waitress)
監督:エイドリアン・シェリー
出演:ケリー・ラッセル,ネイサン・フィリオン,ジェレミー・シスト,
   シェリル・ハインズ,エイドリアン・シェリー,アンディ・グリフィス他

アメリカ南部の田舎町。
パイがウリのダイナーに勤めるジェンナは、
誰もが認めるパイ作りの名人。
毎日次々と新しいレシピを生み出し、
とびっきり美味しいパイを提供している。

ジェンナの願いは、幼稚でDVな夫アールのもとを離れること。
そのためには、隣町でもうすぐ開催される全米パイ・コンテストに出場して、
賞金25,000ドルを獲得するしかない。
そんな彼女の企てを知らずとも、
嫉妬深いアールがパイ・コンテストへの出場を許すわけもなく、
出場料と家出資金をこつこつとヘソくるジェンナ。

ところが、ある日、妊娠が発覚。
アールに無理やりお酒を飲まされた日に妊娠したに違いない。
夫の子どもなんて生みたくない。
だけど子どもの命は絶てない。
絶望的な気持ちで産婦人科を訪れたジェンナの前に現れたのは、
古くから町にいるベテラン女医ではなく、
新任のポマター先生だった。

ジェンナに好意を抱いたポマター先生は、
診察を理由に彼女を呼び出そうとする。
変わり者ではあるが、優しく誠実に見える彼に
いつしかジェンナも惹かれ、ダブル不倫に。

自らの妊娠中に脚本を書き始めたという監督。
徹底的に女性の視点で描かれていて、
男性の気持ちを考える隙はありません。そこが痛快。
おそらく、男性が観ても、
中途半端に「男の気持ち」を綴られるよりいいのでは。

ジェンナの同僚ベッキーとドーン(監督が演じる)も
人間として非常に面白く、魅力的。
男性陣ではアールとポマター先生が本当にヘタレですが、
店のマスターで、口うるさいカルや、
オーナーとおぼしき、文句言いの客であるジョーと
ジェンナとのやりとりは愛すべき台詞の応酬。

妙ちくりんな名前を付けられるパイも
合わされるフルーツやクリームを見ているだけで幸せ。
「不倫でアールに殺されるパイ」と
「不倫は悪いしアールに殺されたくないパイ」は特に。
バナナを抜いてしまうところもご愛嬌。
しかし、ほとんどのパイの色づかいはいかにもアメリカ的。
そんな原色ド派手なパイを並べられても。

残念ながら、監督は本作完成後、40歳にして他界。
ご近所さんとのトラブルによるものだったそうです。
こんなにも女性を勇気づける映画なのに、この後日談はアンマリ。

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『リトル・レッド レシピ泥棒は誰だ!?』

2008年03月17日 | 映画(ら行)
『リトル・レッド レシピ泥棒は誰だ!?』(原題:Hoodwinked!)
監督:コリー・エドワーズ
声の出演:アン・ハサウェイ,グレン・クローズ,ジム・ベルーシ,
     パトリック・ウォーバートン,アンソニー・アンダーソン他

童話『赤ずきん』をモチーフにしたアニメ。
2005年の作品ですが、日本公開は昨秋。
現在新作レンタル中です。これ、サイコー。
ただし、子どもさんにはちとむずかしいかも。

少女レッド(=赤ずきんちゃん)は、
パケットおばあさんの作る美味しいお菓子を
森の人びとに自転車で配達するのが日課。

さて、最近、森ではお菓子のレシピ泥棒が発生している。
森中のレシピが盗まれると、
誰も美味しいお菓子を作ることも食べることもできなくなる。
いったい誰が、何の目的で、レシピ泥棒をはたらいているのか。

ストーリーはこれだけなんですけど、
いや~、めちゃくちゃおもしろい。

パケットおばあさんの家を訪れたレッドが、
おばあさんになりすましたオオカミに
いきなり襲いかかられるシーンで幕が開けます。

「キャーッ」と思ったら、バタンと物置のドアが開いて、
紐でぐるぐる巻きにされたパケットおばあさんが飛び出す。
次の瞬間にはCMタレントを目指す大男カークが
なぜか斧を振り回してわめきながら窓を突き破って乱入。
何が何だかわけがわかりません。

全員無傷だったものの、
この一件とレシピ泥棒事件との関係をにらんだ警察は、
レッド、オオカミ、カーク、パケットおばあさんの4人を
容疑者として連行しようとします。
そこへダンディーなカエルの探偵ニッキーが登場。
事件を解明するため、4人からそれぞれ話を聴くことに。

ひとりずつの話を聴いてみると、いろいろと辻褄が合ってきて、
あるとき「そやったんか~!!」という物語の作りは
そんなに珍しくもないことかもしれません。
最近観たなかでは、『キサラギ』(2007)もそうでした。
そんなに珍しくもないことでも、
この手の真相が明らかにされていく過程は本当におもしろい。

さまざまな伏線が張られていて、
「そうか、あのとき、ヤツはそんなことしとったんか~」と
明らかにされるひとりひとりの行動は、
辻褄の合わせ方がユーモアに溢れています。

ジェットコースターあり、パラグライダーあり、
エックスゲームありで、スピード感もバッチリ。
レッドの声がちょっと大人びてけだるそうなのも可笑しい。
ちなみに吹替版では上野樹里が担当しているそうです。
それも観てみようかな。

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『恋愛睡眠のすすめ』

2008年03月12日 | 映画(ら行)
『恋愛睡眠のすすめ』(原題:La Science des Reves)
監督:ミシェル・ゴンドリー
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル,シャルロット・ゲンズブール,
   ミュウ=ミュウ,アラン・シャバ,エマ・ドゥ・コーヌ他

まだTSUTAYA DISCASお試し期間中のため、
新作ではない作品が続きます。

昨年秋にDVD化された、2005年のフランスの作品。
原題は“La Science des Reves”(=睡眠の科学)で、
「恋愛睡眠」なんて意味不明な言葉はしっくり来ませんけれど、
観れば邦題の苦労の跡も納得なほど、イッちゃってます。

メキシコ人の父とフランス人の母を持つステファンは、
ちょっと顔が可愛らしいだけのダメダメ男。
両親が別れるさいに、メキシコで父と暮らす道を選ぶが、
その父が他界。母を頼ってパリへと移る。

母が大家をしているアパートに住むことになったステファンは、
隣室に引っ越してきたばかりのステファニーと知り合う。
最初は、彼女の友だちであるゾーイに惹かれたステファンだったが、
いつのまにかステファニーに恋してしまう。

キャッチコピーは、「夢ではどこまでも幸せ」。
幼い頃から、マズイ状況に陥ると夢の中に逃げ込んでいたステファンは、
恋も仕事も行き詰まると、夢の世界に浸ります。
それについて行くのがかなり大変。
現実と夢(というより妄想)の世界が知らない間に切り替わり、
ポニーのぬいぐるみが走り出したり、セロファンの波がキラキラしたり。
前半は集中して観ることができず、らりらりヨレヨレ。
だけど、次第に夢に切り替わるポイントがわかってきて、
カラフルでポップな映像を楽しめるようになりました。

妄想癖が激しくとも、
現実の世界でステファンがステファニーに語る台詞はなかなか。
泣くとそれを隠すために眼鏡をかけるステファニーに、
そんな君が好きだと一旦言っておきながら、
「いや、好きじゃない。君の涙はイヤだ。僕のためでなきゃね」。
また、つれないステファニーに向かって、
「僕と70歳になったら結婚してくれる?
僕らが結婚する40年後のために準備しようよ」なんて。
自意識過剰にも、自信なさげにも見えます。

ちなみに本作の監督は、ほかに2人の奇才監督とともに、
今夏公開予定のオムニバス映画『TOKYO』の1本を担当。
スティーヴン・セガールの娘、藤谷文子が主演し、
加瀬亮や伊藤歩、妻夫木聡、大森南朋などが共演します。
あとの2本も蒼井優や竹中直人が名を連ねていますので、ご注目。

災害カレンダーはイケてると思う。

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