夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ポビーとディンガン』

2006年09月28日 | 映画(は行)
『ポビーとディンガン』(原題:Opal Dream)
監督:ピーター・カッタネオ
出演:クリスチャン・バイヤーズ,サファイア・ボイス,
   ヴィンス・コロシモ,ジャクリーン・マッケンジー他

英国人作家ベン・ライスの同名小説を映画化。
信じる者はやっぱり、救われる。

オーストラリアのオパール鉱山の町へ、英国人一家がやってくる。
一攫千金を夢見る父親、それを支える母親、
11歳の息子アシュモルと9歳の娘ケリーアン。

鉱山以外には何もない、寂れた小さな町に
なかなか溶け込めないケリーアンは、
ポビーとディンガンという架空の友だちを作ると
毎日、ままごとやかくれんぼ。空想の世界に浸っている。

こんな娘の空想癖に父親は辟易しているが、
原因は不安定な家庭環境にあると考える母親は、ケリーアンの心を癒そうと、
食卓もクリスマスプレゼントもポビーとディンガンの分まで用意する。

ある日、父親がポビーとディンガンを連れて
鉱山へオパール発掘に出かけるという。
父親が帰宅したとき、ケリーアンの目にはポビーとディンガンは見えなかった。
父親が鉱山へ置き去りにしたのだと、ケリーアンは半狂乱に。
探しに行くと言って聞かないケリーアンにつきあい、父親は再び鉱山を訪れる。

ポビーとディンガンを探すため、
夜中に他人の発掘場所に忍び込んだ父親は
駆けつけた男にこっぴどく殴られ、オパール泥棒の罪を着せられる。

父親は鉱山へ立入禁止、母親も泥棒の妻ということでパートをクビに。
ポビーとディンガンを失ったままのケリーアンはみるみるやつれて伏したきり。

ポビーとディンガンの存在を信じてやれば
妹が回復すると考えたアシュモルは、
ポビーとディンガンの特徴をケリーアンに訪ね、ひとりで鉱山へ向かうのだが……。

最初、ケリーアンがあまりに可愛げがなくて、
感情移入するにはキツイなぁと思っていました。
しかし、すべてを心洗われる話にしてくれるのは
お兄ちゃんのアシュモル。めちゃかわいい。
ポビーとディンガンなんて存在しないし、
おかしな妹の妄想だと思いつつ、妹を救う手段はこれだけだと奮闘します。
その愛すべきお兄ちゃんの姿を思わず応援。

やがてポビーとディンガンの存在を信じるようになり、
ふたりが死亡した証拠を見つけるアシュモル。
みんなでポビーとディンガンの葬儀をおこなえば、
妹が元気になるにちがいないと確信し、決行します。

強く信じていれば、いつかそれは本物に。

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秋に想う。

2006年09月23日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
9月の終わりから12月にかけてが
私のいちばん好きな季節です。
秋空に変わるとなんとなく寂しくなって、
切ない気持ちにさせてくれる映画ばかり観たくなります。

本日公開、キアヌ・リーヴスとサンドラ・ブロック共演の
『イルマーレ』は韓国映画のリメイク。
同じ海辺の1軒家に2004年と2006年に住むふたりが
時空のねじれが原因で手紙を交わすようになり、
会えない相手に想いを募らせます。

韓国版についてはこちらの日記をご覧ください。
日本人としてはこの空気はアジア的。
いくらハリウッドの人気俳優の共演でも
オリジナルは超えられんやろと観る前から思ってますが、
スペイン語圏の映画に惹かれる私は
監督がアルゼンチン出身なのが気になります。

いずれにせよ、郵便箱を介して生まれるふたりの恋は切なさいっぱい。
映画に便乗して郵便箱がネットで売られていることを知り、
何でも商売になるんだなと感心する一方、
郵便箱を観るだけで切なくなる私って何?

郵便箱といえばもうひとつ、
イタリア・フランス合作の『イル・ポスティーノ』(1994)。
タイトルを日本語に訳すと「郵便屋さん」。
イタリア、ナポリの小さな島にやってきた詩人宅へ
郵便を配達するようになった青年が、
詩人と友情を育むうちに詩の素晴らしさを知り、
一目惚れしたひとりの女性に詩を贈ろうとします。

この作品を観たのはもう10年以上前なので、
台詞を一言一句覚えていたわけではありませんでした。
その切ない台詞を思い出させてくれたのが
先日観た韓国映画、『永遠の片想い』(2003)。
スインという女性にこれまた一目惚れしたジファンが
勢い余ってすぐさま告白。迷惑だと言われたあと、
落ち込んだジファンは時計屋の前を通りかかり、
大きな壁掛け時計を購入します。

スインのいる喫茶店に駆けつけると、
ジファンは時計の針を1時間前に戻し、
ガラス越し、その時計とともにこんな手紙を掲げます。

「時計を1時間前に戻しました。
 僕が言ったこと、忘れてください。
 そして、今度偶然会えたら、
 友だちとして会いましょう」。

『イル・ポスティーノ』の台詞はスインの口から。
とても素敵な映画だから観てほしいと両親に薦めたあとで。

「僕は恋に落ちました。
 心が、とても、痛い。
 でも、この痛みを持ち続けていたいと思います」。

恋人も友だちも、片想いも両想いもみんな切ない。
そんなことを、秋に思う。

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『アイス・ハーヴェスト 氷の収穫』

2006年09月20日 | 映画(あ行)
『アイス・ハーヴェスト 氷の収穫』(原題:The Ice Harvest)
監督:ハロルド・ライミス
出演:ジョン・キューザック,ビリー・ボブ・ソーントン,コニー・ニールセン,
   ランディ・クエイド,オリヴァー・プラット他

私の大好きな2人の役者、
ジョン・キューザックとビリー・ボブ・ソーントンが
揃って出演しているというのに日本では未公開。

弁護士のチャーリーはヤクザと馴れ合いの果て、
にっちもさっちもいかなくなる。
クリスマスイヴの夜、人生の一発逆転を狙うチャーリーは、
カンザスの田舎町ウィチタから抜け出すため、
同業者のヴィクと手を組んで、ヤクザのボスの有り金を全部だまし取る。
すぐに動いては目立つだろうと、
明朝高飛びするまでは普段と同じく別行動をすることに。

チャーリーは行きつけのストリップバーへ。
目立つことをしてはいけないと
ヴィクから釘を刺されているにもかかわらず、
たちの悪い客に絡まれていたストリッパーを助けると
カネ払いのいいところも見せてしまう。

チャーリーの様子がちがうことに気づいたのが
ストリップバーの美人経営者レナータ。
前々からチャーリーの好意に勘づいていた彼女は
「ウィチタから出ていくつもりなら私も一緒に」と囁く。

やがて2人の仕業に気づいたヤクザのボスは、
チャーリーとヴィクの立ち寄りそうな店に
次々と用心棒を送り込み、血眼になって2人を探しまわる。

一刻も早くレナータを連れて逃げたいチャーリーだが、
カネはヴィクに預けたまま。
カネの在処を聞こうとヴィクの自宅を訪ねてみると
そこにあったのは人間の指で……。

同じ2人が共演する『狂っちゃいないぜ』(1999)の
人生の変わる瞬間には勝てませんが(これは私の中で傑作)、
この2人が主演ならおもしろくないわけがありません。
以前、「金(カネ)に目がくらむ」というネタを書いたことがありますが、
本作もカネに目がくらんで、登場人物の誰もが
目の前の人間を疑い始める心理描写が見事です。

もっとも笑ったシーンはリンカーンとベンツの対比。
巨漢の用心棒を取り押さえて箱に詰めたヴィクは
リンカーンの後部座席にその箱を入れようとします。
だけど、大きすぎて入らない。
チャーリーが「俺のベンツに入れよう」と言うと、
ヴィクは「リンカーンに入らないのにベンツに入るわけがない」。
観ている私もそう思う。ところがスッポリでびっくり。

怪しげな箱を運ぶならベンツ。

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『キスキス,バンバン L.A.的殺人事件』

2006年09月16日 | 映画(か行)
『キスキス,バンバン L.A.的殺人事件』(原題:Kiss Kiss Bang Bang)
監督:シェーン・ブラック
出演:ロバート・ダウニー・Jr.,ヴァル・キルマー,ミシェル・モナハン他

テンポ抜群、大々的に公開されなかったのが惜しい、
クライム・アクション・コメディ。
久々に最初から最後まで笑いっぱなし。

N.Y.に暮らすハリーはショボい泥棒。
今夜も空き巣に入るが、ドジって警報器を鳴らしてしまう。
階上のおばちゃんは泥棒を逃がしてたまるかと銃を乱射。
ただちにパトカーが駆けつける。

ハリーが逃げ込んだのはハリウッド映画のオーディション会場。
応募者とまちがわれたハリーは、
逃走中のテンションの高さが幸いして迫真の演技を披露。
オーディションを見事にパスして、
探偵役のスクリーンテストを受けるため、L.A.へ。

ハリウッドのセレブたちが集まる屋敷のパーティーに招かれたハリーは
探偵の役作りのため、本物の探偵でゲイのペリーに指南を乞う。
ふたりは翌日から行動をともにする約束をして屋敷を出る。

パーティーで見かけた三流女優ハーモニーに惹かれたハリーは
彼女の後を追ってパブに入る。
意を決してハーモニーに声をかけると、
「かわいい子がいっぱいいるのに、どうして私?」と問いただされる。
よくよく会話を進めてみれば、惹かれて当然、
ハーモニーは実は幼なじみ、ハリーの初恋相手だった。
憧れの女性に再会して心を弾ませるハリー。

翌日、探偵の見習いを始めたハリーが
ペリーに同行してターゲットを尾行中、目の前で車がかっ飛び、池に沈む。
トランクを開けてみれば女性の死体。
さらに別の場所でハーモニーの妹が自殺。
この2つの遺体はどこか接点があるらしい。
泥棒とゲイの探偵コンビのドタバタ捜査が始まる。

ハリー役はヤク中のロバート・ダウニー・Jr.、
ペリー役は超ワガママで有名なヴァル・キルマー。
ハリウッドの筋金入り問題児のふたりですが、コメディ・センスに脱帽。
ペリーの足をとことん引っ張るハリーと
冷ややかな目のペリーの掛け合いは絶妙。

アクション・シーンのおもしろさもさることながら、
初恋の人の前ではハリーが何もできなくなるところがおもしろい。
ホテルの一室、「何もしないなら隣に寝てもいい」とハーモニーから言われて
目はギンギンなのにまったく手を出せずにいるハリーの姿は
吹き出してしまうほど可笑しい半面、愛おしさも感じます。

最後は痛快、もちろんハッピーエンド。
胸に撃ち込まれた弾丸の痛みよりも上ですね、初恋の胸の痛み。

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『ステイ』

2006年09月13日 | 映画(さ行)
『ステイ』(原題:Stay)
監督:マーク・フォースター
出演:ユアン・マクレガー,ナオミ・ワッツ,ライアン・ゴズリング他

公開時のキャッチコピーは、
「そのリアルを疑え。現実が消えていく世界で、
僕らはどんな愛を知るのか?
この映画の謎は、頭で考えても決して解けない」。
イリュージョン・スリラーと銘打たれた、
暗くて重くて怖そうなジャケットと裏腹に
胸に突き刺さる切なさは何?

ニューヨークのオフィスビルの一室。
精神科医のサムは、体調不良の同僚ベスから
美術大生のヘンリーという患者の診察を引き継ぐ。
事前に医師の交替を知らされていなかったヘンリーは
サムに不信感を持っている様子。
初日は「雹が降りそうだから」とただちに退室する。

その日、本当に雹が降る。
天気予報士にもまさるヘンリーの予想にサムは驚き、
ヘンリーに興味を持つようになる。
後日、サムのもとを再び訪れたヘンリーは
21歳の誕生日に当たる次の土曜日に死ぬつもりだと話す。
土曜日まであと3日。

サムの恋人は美術大教授のライラ。
彼女が自殺未遂を起こしたさいに救ったのがきっかけで
ふたりは暮らし始めるようになった。
ヘンリーのことが頭から離れないサムは、
守秘義務を侵してライラに相談する。

やがてサムの身の回りに異変が起こる。
既視感に襲われ、次第に夢と現実の区別がつかなくなり……。

観ている側もどれが現実なのかわからなくなります。
ネタがバレバレになるのであらすじはこれ以上書けませんが、
これは私にとってはスリラーなんかじゃありません。
切ない切ないラブストーリー。

サム役は『スター・ウォーズ エピソード1』(1999)のオビ・ワン、ユアン・マクレガー。
『きみに読む物語』(2004)のライアン・ゴズリングが
絶望の淵にいるヘンリーを好演。
ライラ役は『キング・コング』(2005)のヒロイン、ナオミ・ワッツ。
どうすればヘンリーの自殺を止められるのかと
サムから相談された彼女の答えは、
「ヘンリーに伝えて。人生は美にあふれている」。

オチは「いまどきそれかよ?」と思わなくもないですが、
あのオチだからこそ余計に胸に迫る切なさ。
伝えたいのに伝えられなかったあの気持ち。
『きみに読む物語』で一生に一度の恋を貫いたゴズリングと本作の彼とを見比べると、
成就してもしなくても、恋ってやっぱり切ないもの。
だけどやっぱり恋していたい。

死ぬ直前、誰のことを想い、何を思いますか。

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